急性虫垂炎(盲腸)

急性虫垂炎(盲腸)とは

急性虫垂炎とは急性虫垂炎とは、何らかの原因によって虫垂内に閉塞を起こす病気です。多くの場合は異物や糞石などが原因となり、閉塞部が細菌やウイルスに感染することで化膿し、炎症を引き起こします。また、虫垂が穿孔を起こした状態を穿孔性虫垂炎と言います。この状態を放置すると、病状が進行して腹膜炎などの重い合併症を引き起こす恐れがあるため、疑わしい症状が現れた際には早期受診・早期治療することが重要です。

急性虫垂炎の原因

急性虫垂炎の原因はまだはっきりとは明らかになっていませんが、複数の要因が複合的に関わって引き起こされると考えられています。

閉塞による細菌・ウイルス感染

虫垂炎の原因の中でも最も多いものが、閉塞部の細菌・ウイルス感染となります。閉塞の原因は様々なケースが考えられ、金属などの異物や糞石、植物の種などのほか、虫垂のねじれやごく稀なケースとして寄生虫などが原因となることもあります。細菌やウイルスに感染すると、閉塞部が化膿して炎症を引き起こします。

暴飲暴食・寝不足・過労・運動不足

食事習慣の乱れや寝不足、過労、運動不足なども、急性虫垂炎を誘引すると考えられています。

便秘

長期間の便秘症状によって虫垂が圧迫され続けることで、炎症を引き起こすケースもあります。

ストレス

過度なストレスの蓄積によって体内の好中球が増加すると、これら好中球が活性酸素を排出し、身体の組織が損傷して急性虫垂炎を引き起こすことがあります。

急性虫垂炎の症状

急性虫垂炎の症状急性虫垂炎の最も一般的な症状は腹痛となります。まずは上腹部やへその周辺が突然痛み出し、次第に右下の腹部(回盲部)へと痛みが移っていきます。腹痛以外の症状としては、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。その他、ガスが出たり便がでなくなるなどの便通異常を引き起こすこともあります。
また、虫垂が穿孔を起こす穿孔性虫垂炎へと進行すると、汎発性の腹膜炎などの重度の合併症を引き起こします。腹膜炎になると、腹部全体に激しい痛みが現れるようになります。その他の症状としては、37~38度の発熱や白血球の増加が見られることもあります。

急性虫垂炎の分類

虫垂炎は下記の3つに分類されます。

分類 症状 状態
カタル性虫垂炎 軽症 粘膜のみに炎症が起こり、肥大して表面が充血している状態です。粘膜が膨張すると、内膣が狭くなります。
蜂窩織炎性虫垂炎 中程度 虫垂壁(虫垂の壁)の全層にわたって炎症が及び、膨張と充血が進んだ状態です。蜂窩織炎や小膿瘍がみられます。
壊疽性虫垂炎 重症 虫垂が太く腫れ、壊疽が見られる状態です。右下腹部痛、発熱、嘔吐、下痢などの消化器症状が悪化し、虫垂壁が破れてしまう場合もあります(穿孔性虫垂炎)。

急性虫垂炎の検査・診断

急性虫垂炎の検査・診断急性虫垂炎の初期症状は上腹部やへそ周辺の腹痛であるケースが多く、このような症状は他の病気でも多く見られるため、虫垂炎と自己判断することは難しいです。従って、症状が現れた際にはできるだけ早い段階で医療機関を受診し、専門医による問診や診察を受けるようにしましょう。
診察の結果、急性虫垂炎が疑われた場合には、血液検査を実施して炎症の状態を確認したり、腹部超音波検査やCT検査等を実施して虫垂のサイズや虫垂内部・周囲の膿の有無、周囲への炎症の拡大の有無などを確認します。なお、当院ではCT検査が必要と判断した場合には、連携する医療機関をご紹介いたします。

急性虫垂炎の治療

急性虫垂炎の治療は、以前は虫垂の切除手術が主流でしたが、近年の研究により虫垂は腸内環境や免疫機能などに関与していることが分かってきたため、軽症の場合は切除せずに薬物療法によって改善を図るケースが増えてきています。ただし、急性虫垂炎は1〜3割の割合で再発を起こすため、何度も再発を起こす場合には最終的に切除手術を行うこともあります。
従って、急性虫垂炎は早期発見・早期治療ほど患者様の身体や費用の負担も少なくて済みます。気になる症状が現れている場合にはできるだけ早期に医療機関を受診し、適切な治療を行うことが大切です。

薬物療法

上記の通り、軽症〜中等症の場合は抗生物質を投与して炎症を抑える治療が中心となります。しかし、その後再発した場合には、点滴により炎症を抑えてから虫垂の切除手術を行うこともあります。

腹腔鏡下

軽症〜中等症の場合、薬物療法以外では腹腔鏡下手術を検討することもあります。これは、腹部に小さな穴を開けて腹腔内に極小のカメラを挿入し、腹膜炎の状態を確認したり虫垂の洗浄・切除を行う手術治療です。腹腔鏡下手術では腹部に1cm程度の穴を空けるだけで済むため、開腹手術よりも患者様の負担が少ない上、術後の傷も残りにくいというメリットがあります。ただし、症状が重度の場合には腹腔鏡下手術が行えないこともあります。
当院では、腹腔鏡下手術が必要と判断した場合には、連携する医療機関をご紹介いたします。

開腹手術

開腹手術は中等症〜重度の場合に多く適用される治療法で、既に虫垂が破裂している場合などに検討されます。症状が重度の場合、虫垂が細菌やウイルスに感染して化膿し、腹腔内に膿が拡大することで腹膜炎を合併したり、膿の中の細菌やウイルスが血流に感染して敗血症を合併する恐れもあるため、その場合には化膿部分を生理食塩水で洗い流す処置を行います。
なお、開腹手術は入院治療となりますので、当院では連携する医療機関をご紹介いたします。

急性虫垂炎の予防

急性虫垂炎の原因はまだはっきりとは明らかになってはいませんが、様々な要因が複合的に関わって発症すると考えられています。一般的には、食べ物の残りかすや便の塊である糞石などの異物によって虫垂が閉塞を起こして発症するケースが多く見られます。そのため、急性虫垂炎の予防法としては、食事の際に魚の骨や果物の種などをあまり多く摂取しないように配慮することが有効です。また、糞石の場合は便秘が原因であることが多いことから、普段からバランスの良い食事習慣を意識し、良好な腸内環境を維持することも大切です。その他では、過度なストレスの蓄積や過労、暴飲暴食、寝不足など生活習慣の乱れが原因となることもあるため、上手にストレスを発散したり十分に睡眠時間を確保するなど、生活習慣を整えることも急性虫垂炎の予防には効果的です。

TOPへ