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喉が渇く症状とそれ以外に気をつけたい糖尿病の初期症状について詳しく説明

糖尿病の初期症状を解説

糖尿病になると、異常に喉が渇くという情報を耳にする人もいるのではないでしょうか。

実は糖尿病と水分摂取には密接な関係があり、喉が渇く症状が続く場合は糖尿病を発症している可能性があります。

喉の渇きを感じるのは激しい運動をしたり、炎天下で作業したりして多量に汗をかいた場合が一般的です。

しかし糖尿病になると運動後や炎天下での作業にかかわらず、水分を摂取しても喉が渇いて常に水分を摂りたい感覚に陥るときがあります。

糖尿病と診断された人の一部には異常に喉が渇いているのを不安に感じ、検査をしたら糖尿病が発覚したという人もいます。

では糖尿病になると、必ず喉が渇く症状が現れるのでしょうか。

本記事では血糖値と喉の渇きとの関係性や気を付けたい症状、喉の渇きに関連する病気について解説していきます。

この記事でわかること
  • 糖尿病を発症する仕組み
  • 糖尿病になると水分が欲しくなる理由
  • 喉の渇き以外に自覚する糖尿病の初期症状
  • 糖尿病合併症と水分摂取の留意点
目次

糖尿病は自力で血糖が調節できなくなるまで高血糖が持続した結果起こる病気

自力で糖を下げられなくなる病気

糖尿病は糖分の多い食事の摂取や運動不足といった生活習慣の乱れ、遺伝的な要因などが原因で慢性的に血糖値が高くなり、自力で糖を下げられなくなる病気です。

正常な人間の血液はナトリウムやカリウム、糖であるグルコースなどの物質が一定の濃度で保たれています。

血液中に含まれている糖(血糖)は空腹時で70〜110mg/dL、食後で140mg/dLに保たれているのが適正な状態です。

人間の血糖値は常に一定ではなく、糖が不足したり多くなったりした場合でも血糖を適正な範囲に保つため、インスリンやグルカゴンといったホルモンを分泌して適宜調整します。

しかし糖尿病になると、インスリンの分泌量が減ったり働きが弱くなったりするため、高くなった血糖値を自分の身体の力では思うように調整できません。

結果的に血糖値が高い状態に保たれてしまい、糖尿病の発症に繋がります。

喉の渇きを感じると糖尿病が進行している可能性がある

糖尿病では喉の渇きを感じるものの、ある程度病気が進行しなければ症状は出現しません。

ごく初期の糖尿病はインスリンの分泌量が多少維持されているため、糖尿病には典型的な初期症状に乏しく、無症状で進行する場合もあります。

糖尿病と診断された人のほとんどは健康診断の結果による精密検査がきっかけですが、なかには体調の異変を感じて受診したところ、糖尿病が発覚した場合もあります。

糖尿病を発症してから喉の渇きを自覚するまでに、いくらか時間がかかるのはインスリンの分泌が関係しているのが理由です。

糖尿病がある程度進行し、インスリン抵抗性が増したりインスリン分泌量が減少したりすると、頻繁に喉の渇きを感じるようになります。

基本的に喉の渇きを感じるようになるのは、血糖値が250mg/dL以上の高血糖状態である場合です。

通常、血液は糖や電解質などのバランスが適切に保たれているため、血液が滞りなく体内を循環できるよう調整されています。

しかし血液中に占める糖の割合が異常に多くなると、血液がドロドロした状態になります。

ドロドロした血液は放っておくと固まるため、身体は血液の濃度を元に戻さなくてはなりません。

その際に、過剰になった糖を薄め、血液の濃度を戻す役割を担うのが電解質です。

電解質はエネルギー源としても使用されるため、血管内だけでなく血管外の細胞にも貯蔵されています。

血管内で不足した電解質を補う場合、身体は血管外の細胞にある電解質を利用します。

しかし、電解質を失った細胞が水分不足に陥り、引き起こされるのが脱水という現象です。

一方で電解質を取り込んだ血管内は血液量が増え、腎臓が増加した血液を尿として排泄しようと働いてしまい、血管内の水分も不足します。

結果的に体内の細胞と血管内の両方で水分不足に陥り、身体が電解質を取り込もうする働きによって、水を飲んでも喉が渇くようになります。

糖尿病は進行すると喉の渇き以外にも様々な症状が出現する

喉の渇き以外の症状

喉の渇きを感じるようになるまでに糖尿病が進行すると、他にもさまざまな症状が出現するようになります。

糖尿病は腎臓や神経、目に関する合併症と密接に関係しているため水分摂取や尿に関する症状だけではなく、目や手足の感覚に関連する症状にも気を配るのが大切です。

糖尿病合併症は、未治療のままで経過するとそれぞれの合併症が進行し、透析を余儀なくされたり失明したりとその後の生活に影響します。

合併症の進行を防ぐには、身体が発する小さな異変への気づきが必要です。

以下では糖尿病を発症した場合、喉が渇く以外に高頻度で出現する糖尿病の症状について3つ紹介します。

糖尿病に関して日頃から心配な人や当てはまる症状があって不安に思う人は、一度医療機関での検査をするとよいでしょう。

1.頻尿や尿量の増加、尿糖の出現

糖尿病になると、尿に関連した症状がいくつか出現します。

喉の渇きのほか、代表的な症状は頻尿や尿量の増加、尿糖の出現です。

前述したとおり、血糖値が高くなると血液中の糖を薄めるために細胞内から電解質が血管内に移動します。

血液量が増えると体内では血液が増えたと認識し、腎臓で尿を生成する作用が働く結果、多尿や頻尿が起こります。

そして腎臓は尿を作るだけではなく、糖の再吸収や糖の生成と利用を担う大切な器官です。

糖尿病の進行とともに糖代謝を担う腎臓の機能も徐々に低下するため、血管内の余分な糖を再吸収しきれず、尿と一緒に多量の糖が体外に排泄されます。

血管内で溢れてしまった余分な糖が尿と一緒に排泄されると、尿から甘い匂いを感じるようになります。

「最近尿から甘い匂いがしてくる」と気になる場合は、尿糖が陽性である可能性もあるため医療機関での受診が必要です。

2.手足のしびれ

早めの対処が必要

糖尿病になると初期症状として、手足のしびれを感じるようになります。

糖尿病は血液中の糖分が平常時と比較して高いため、血液がドロドロとしており、流れが悪い状態です。

血液の流れが悪い状態が続くと微小血管で気づかぬうちに血栓が形成される場合や、全身に隈なく血液を送り出せない場合があります。

その結果引き起こされるのは、体内の主要臓器である腎臓や肝臓などへの血流は十分に保たれるものの、手先や足先のなどの細かい血管には血液が円滑に届かなくなる状況です。

細かい血管に富む手足は血流が悪化すると、むくみが生じたり触覚や痛覚が鈍くなったりします。

さらに血流が悪くなると手先にある神経に対して、血液中の酸素や栄養を供給するのが難しくなるため、時間の経過とともに感覚障害なども出現します。

手先のしびれは、後に触覚や痛覚などの感覚が乏しくなっていく前兆でもあるため、指先などの感覚が変だと感じた場合は早めの対処が必要となる症状です。

3.目のかすみや見えづらさ

糖尿病から糖尿病性網膜症に発展すると目がかすんだり、視力が落ちたように感じる人が少なくありません。

数日間で急激に目がかすんで見えるような状況になる場合は、眼科疾患の可能性も考えられますが、数年から数ヶ月単位で症状が継続している場合は網膜症の可能性もあります。

糖尿病性網膜症は、糖尿病の3大合併症のひとつとされています。

慢性的な高血糖による動脈硬化などが原因となり、目の微小血管が傷つき、視力が低下していく疾患です。

発見が遅れたり、長期間治療せずに放置しておいたりすると、失明するケースもあります。

視界が良くないと感じる場合や物がかすんで見えると感じる場合は、糖尿病性網膜症の可能性も考慮する必要があります。

定期的に健康診断を受けている人は、視力検査などで異常が指摘され、詳しい検査が実施されるため網膜症の早期発見が可能です。

異常に喉が渇く場合に気をつけたい高血糖や脱水に伴う急性合併症

高血糖や脱水に伴う急性合併症

糖尿病を患っている人がいつにも増して喉の渇きを感じる場合、無意識のうちに高血糖に陥っている可能性があります。

前述したように、血液中のグルコース濃度が異常に高くなると、血液の流れを良くするために細胞内の水分が血管内に移動して異常に喉が渇きます。

ただし血液中の糖が少しでも増えたからといって、センサーのように喉が渇くわけではありません。

喉の渇きを感じたときには、すでに血管内で糖と電解質のバランスを調整しようと可能な範囲で細胞内の水分を使ってしまった状態です。

喉が渇く症状に慣れてしまいそのまま放置すると、高血糖から急性合併症に発展する危険性があります。

急性合併症は糖尿病性昏睡をはじめ、命に関わる状態に発展する可能性が高いため早い段階での対処が大切です。

糖尿病性昏睡を起こす原因となる病態には、糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群の2つがあります。

1.糖尿病ケトアシドーシス

高血糖に伴う代表的な合併症のひとつは、糖尿病ケトアシドーシスです。

糖尿病ケトアシドーシスは、血液中で糖が溢れた結果エネルギーとして使用できず、代わりに脂肪を分解してエネルギー源として利用してしまう現象をいいます。

体内の脂肪が分解されると各々の臓器を保護する目的でケトン体が放出されますが、酸性であるケトン体は体内の血液も酸性に傾けてしまい、脱水状態になります。

糖尿病ケトアシドーシスは高血糖による脱水が進行してから起こるため、初期症状の段階では異常な喉の渇きを感じるのが特徴です。

高血糖と脱水が同時に起こる糖尿病性ケトアシドーシスは、重症化すると昏睡やショック状態に陥ります。

血糖や電解質の補正のみならず、全身の集中治療を必要とするケースも少なくないため、症状が出現したら早めに対処する必要があります。

糖尿病ケトアシドーシスに陥ると出現する症状は、以下の通りです。

急激に起こる初期症状口渇、多飲、多尿、体重減少、全身の倦怠感、眠気、悪心
進行すると起こる症状腹痛、嘔吐、意識障害、昏睡、呼吸困難、精神的混乱、けいれん、クスマウル呼吸(速く深い呼吸)

上記の表に示したように喉の渇きや多飲、多尿は高血糖や糖尿病ケトアシドーシスの典型的な初期症状です。

高血糖は血中のグルコース濃度が250mg/dLまで上昇すると、糖尿病ケトアシドーシスに発展する危険性が急激に高まります。

糖尿病には全くインスリンが分泌されない1型糖尿病と、インスリンの分泌量がある程度保たれている2型糖尿病があります。

高血糖から糖尿病ケトアシドーシスに発展する可能性が高いのは、1型糖尿病とされているものの2型糖尿病でもリスクがないわけではありません。

2型糖尿病でも血糖コントロールが悪い場合には、食後や炎天下で作業をしている時などさまざまな状況で高血糖に陥るケースがあります。

ほかにも発熱や感染症などの体調不良時や夏場に、脱水予防を目的にスポーツドリンクなどの糖が含まれている液体を多量に摂取するのが高血糖の原因となり得ます。

糖尿病の種類にかかわらず高血糖かもしれないと感じる症状がある場合は、医療機関を受診するなど早めの対処が必要です。

2.高浸透圧高血糖症候群

高浸透圧高血糖症候群

高浸透圧高血糖症候群は著しい高血糖によって血液の浸透圧バランスが崩壊した結果、極度の脱水に陥る状態をいいます。

高浸透圧高血糖症候群は、1型糖尿病の人より2型糖尿病の人が発症する傾向にあります。

特に高齢になると高血糖の自覚症状に対する気づきの遅さから、重篤な合併症に発展する場合も少なくありません。

肺炎や尿路感染症などの疾患由来のほか、手術などのストレス、血糖値を上げる作用のあるステロイドの服用や利尿薬の服用などが主な原因です。

糖尿病性ケトアシドーシス同様に高浸透圧高血糖症候群は、糖尿病性昏睡に陥る可能性があります。

両者とも点滴での電解質の補充とインスリン注射が基本的な治療となりますが、糖尿病性昏睡に発展すると命に関わるため、厳密な全身管理が必要です。

上記に示した二つの合併症を予防するには、いち早く高血糖への気づきが重要となります。

喉の渇きのほかに全身の倦怠感や悪心などの症状が出現した場合には、高血糖症状の可能性もあるため医療機関への受診が必要です。

糖尿病は服薬だけではなく水分摂取などの自己管理が大切

摂取する飲み物の選択

高血糖を防ぐには、日頃の自己管理が大切です。

糖尿病の治療をしている人の場合は薬の服薬方法の間違いや飲み忘れ、インスリンを使用している人は注射忘れや注射単位の間違いが原因となります。

服薬カレンダーを活用したり薬局に内服薬を一包化してもらったり、インスリン使用時は家族と一緒に注射単位を確認するなど、服薬方法を間違えないような工夫が大事です。

そして食生活はもちろん屋外での活動やスポーツをする際は、基本的な自己管理を行い、熱中症などによる脱水予防も必要となります。

水分摂取は脱水予防に必須ですが、特に摂取する飲み物の選択は高血糖を防ぐうえで大切なポイントです。

スポーツドリンクや野菜ジュースなど甘味のある飲み物は、糖が液体に溶け込んでいるため体内に糖が吸収される速度が早まります。

特にスポーツドリンクには、血管内で水分を保持する役目を担うナトリウムが豊富に含まれており、効率的に血管内にナトリウムを取り込めます。

しかしナトリウムは血管内に補充されても、汗として体外に排出されるのに対して、糖分は摂取しても汗として体外には排出されません。

それによって引き起こされるのは、時間の経過とともに脱水や高血糖が進行するといった弊害です。

屋外での活動や運動する場合には、健康な人はもちろん糖尿病と診断されている人も水分摂取の頻度だけではなく、摂取する飲み物の成分にも気を配りましょう。

一方、高齢者など水分摂取自体は必要としていても、持病により摂取量の制限が必要な人もいます。

しかし極度の脱水は腎機能に負担をかける可能性もあり、脱水を防ぐにはある程度の水分は摂取しなければなりません。

例えば持病がない高齢者の場合、時間を決めて水分を摂取したり一日あたりの飲水量をあらかじめ設定するなどの方法があります。

持病で水分制限がある人は医師に適切な摂取量を聞き、脱水とならないよう調整が必要です。

食事での糖分摂取量や服薬管理、運動を行う際は体調を確認するなどの方法で高血糖や脱水に伴う合併症を防ぎましょう。

喉が渇く症状は糖尿病以外の病気と関連している場合もある

喉が渇く症状が、必ずしも糖尿病のサインであるとは限りません。

頻繁に水を飲んでもすぐに喉が乾いてしまうのは、糖尿病以外にも何らかの病気が原因している可能性もあります。

一般的に、喉が渇く場合は体内から尿や汗として排泄される水分量に対して、水分摂取量が圧倒的に不足している場合などが原因です。

そして日常的に漬物を食べたり、ラーメンをスープまで完食したりする習慣のある人は、塩分の摂りすぎによる高血圧が関係している可能性もあります。

ほかにも脳腫瘍や尿崩症といった脳の病気、腎泌尿器系の病気の可能性もあるのを考慮しておくのが大切です。

異常に喉が渇く症状に悩まされている人は、糖尿病以外の病気と関連している場合があるのも念頭に入れて、心配な場合は医療機関を受診しましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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