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糖尿病は筋トレで改善できる!筋肉と糖尿病の関係や筋トレのポイントを解説

血糖値との関係や筋トレのポイント

糖尿病を発症する原因の一つとして肥満があげられますが、痩せている人でも糖尿病を発症する場合があります。

それには、筋肉と血糖値の関係が影響しています。

肥満や運動不足による内臓脂肪の増加や筋肉量の減少は、血糖値を上げる原因です。

筋肉量の少ない人は肥満ではなくても、血糖値を下げられなくなり、糖尿病の発症リスクが高い状態になってしまいます。

本記事では糖尿病と筋肉の関係や、筋トレで糖尿病が改善される仕組みについて解説します。

この記事でわかること
  • 筋肉の働きと糖尿病の関係
  • 筋トレが血糖値に与える効果
  • 筋トレをする際のポイント

糖尿病の予防に効果的な筋トレのポイントについても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

筋肉は身体機能の維持や血糖コントロールに重要な役割をもつ

身体機能の維持や血糖コントロール

筋肉の役割は、単に体を動かすなどの運動機能だけではありません。

内臓や心臓を動かしたり、体の水分量や体温を調節したりする働きなどによって身体機能を維持しています。

筋肉は、血糖コントロールにおいても重要な役割をもつ器官です。

筋肉には体内の糖を貯蔵する働きがあり、血糖値を安定させます。

糖尿病の人は筋力低下のリスクが高く、筋肉量の減少によって糖尿病を悪化させる場合があります。

糖尿病の予防や改善には、筋力の維持が重要です。

以下では、筋肉の働きの基本や筋肉と血糖値の関係について解説します。

筋肉には3つの種類があり生命活動を維持するための様々な役割がある

筋肉は、たくさんの筋繊維が集まってできた組織です。

筋肉は構造や働きによって、以下の3つに分類されます。

  • 骨格筋:運動で増加する筋肉であり、筋肉全体の40%を占める
  • 心筋:心臓を動かす筋肉
  • 平滑筋:消化管や血管の周りにあり、内臓の運動や血管の収縮を助ける

骨格筋は自分の意思で動かせる筋肉であり、心筋と平滑筋は自律神経によってコントロールされています。

筋肉には様々な役割があり、生命活動において重要な働きをしています。

筋肉の主な役割

体を動かす・姿勢を安定させる筋肉の伸び縮みによって歩く、走るなどの動作を行う。関節を安定させて姿勢を保ち、体を支える。
外部の衝撃を吸収する転倒や打撲などによる衝撃から内臓や骨を守る。血管や内臓の周りも筋肉によって守られている。
血液を循環させるポンプの働き心臓には全身に血液を送り、循環させる役割がある。心臓から遠い場所は血液の勢いが弱くなるため、筋肉の伸び縮みによって血液循環を促す。
体温を調整する筋肉は常にエネルギーを消費し、体温を維持している。筋肉量が多いと、基礎代謝が上がって肥満の予防が可能となる。
免疫力を向上させる筋肉内に蓄えられたアミノ酸であるグルタミンによって免疫細胞を活性化し、免疫力を上げる。
ホルモンをつくる骨格筋によってつくられるホルモンの役割には、筋肉や骨の形成に加えて抗炎症作用、糖質や脂質の代謝などがある。
水分を蓄える人体において、筋肉は最も多く水分を蓄えられる組織。女性は男性と比較して脂肪量が多く、筋肉量の多い男性の方が体内の水分量が多くなる。

筋肉には体内の糖を貯蔵する役割がある

筋肉は体内の糖を貯蔵する役割があり、安定した血糖値を維持するために重要な組織です。

食事によって摂取した炭水化物などの糖質は、体内でブドウ糖に分解されます。

ブドウ糖は、体や脳を動かす即効性のあるエネルギー源です。

血液中に入ったブドウ糖は、全身を巡って細胞内に取り込まれます。

余分なブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンの作用によってグリコーゲンに変換され、筋肉や肝臓で貯蔵されます。

グリコーゲンは、空腹時や運動をした後などにエネルギー源として利用される物質です。

筋肉量が多い場合、グリコーゲンを貯めておく場所が多くなるため血糖値の上昇が抑えられます。

反対に筋肉量が少ない場合は、グリコーゲンを貯蔵する筋肉が少なくなるため十分に血糖値を下げられません。

筋肉量の少ない高齢者や女性では、肥満ではなくても糖尿病のリスクが高くなります。

高齢者はサルコペニアの予防が重要

サルコペニアとは骨格筋の量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態のことです。

歩行や立ち上がりなどの日常的な動作ができなくなり、放置すると歩行さえも困難になって介護が必要な状態になる場合もあります。

サルコペニアの主な原因は加齢であり、高齢者はサルコペニアの予防が重要です。

筋力の低下は40代頃から始まり、70代を超えると自覚症状が現れはじめます。

糖尿病の人は加齢とともに下肢の筋力が衰えるリスクが高く、筋力の低下によって血糖値の調整が困難になります。

高齢者のサルコペニアは、糖尿病を悪化させる原因です。

サルコペニアは、筋トレによる筋力の向上と食事による栄養補給によって予防ができます。

筋トレは筋肉量の多い下半身を中心として、スクワットやふくらはぎの強化を行いましょう。

食生活では高齢者に不足しがちなタンパク質をしっかりと摂取し、カルシウムやビタミンなども摂り入れたバランスの良い食事が効果的です。

継続的な筋トレには血糖値を下げる効果がある

血糖値を下げる効果がある

筋トレの継続には、血糖値を下げる効果があります。

筋力がつくまでにかかる時間には個人差がありますが、一般的には2〜3ヶ月です。

最初は効果を実感できなくても、徐々に目に見えて変化を感じられるようになります。

継続をしているという状態が自信となり、前向きな気持ちになれる場合もあります。

筋トレは体に負担のかからない程度の運動量で行い、継続させましょう。

以下では、筋トレの継続によって血糖値が下がる理由について解説します。

筋トレによる筋肉量の増加と基礎代謝の向上によって血糖値が下がる

筋肉には、血液中のブドウ糖をグルコースとして貯蔵する働きがあります。

筋トレによって筋肉量が増加すると、糖を貯蔵する筋肉が増えて血液中の余分な糖を減らすため血糖値が安定します。

さらに、筋肉の増加は基礎代謝の向上に効果的です。

基礎代謝とは呼吸や心臓などの臓器を動かすなど、生命活動の維持に必要な最低限のエネルギー消費量のことをいいます。

基礎代謝が上がると、運動をしていない状態におけるエネルギー消費量が上がるため、肥満や内臓脂肪の蓄積を抑える働きにも期待ができます。

肥満や内臓脂肪の蓄積はインスリンの機能を低下させるため、筋トレによる筋肉量の増加は糖尿病の予防に重要です。

筋トレの継続によってインスリン抵抗性が改善される

インスリン抵抗性とは、インスリンが十分に分泌されていても効きが悪くなっている状態のことです。

インスリンの効きが悪くなった状態では、血液中のブドウ糖をエネルギーとして細胞に取り込めず、血糖値を下げられません。

血糖値を下げられない状態が継続すると、膵臓からはより多くのインスリンが分泌され、血糖値を下げようとします。

この状態は高インスリン血症といい、血液中のインスリン濃度が高い状態です。

高インスリン血症が起こると、さらにインスリン抵抗性が進み、糖尿病を悪化させてしまいます。

インスリン抵抗性が高くなる主な原因は、肥満や筋肉量の低下です。

筋トレによる筋力の増加は、インスリン抵抗性を改善させる効果があります。

筋トレによるインスリン抵抗性の改善効果は3日程とされるため、週に2、3回程度のペースで継続的に行うと効果的です。

筋トレによるうつ症状の改善効果が血糖値を安定させる

筋トレによって得られる効果に、セロトニンの分泌量の増加があります。

セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、幸福感や気分の安定に関わる神経伝達物質です。

セロトニンの増加によって、抑うつ症状を抑えたり不安感をなくしたりする効果が期待できます。

糖尿病ではうつ病になるリスクが高く、うつ病による食事や運動への影響や、生活意識の低下は血糖コントロールを悪化させる原因です。

筋トレの継続によって得られる充実感や満足感は、自己肯定感の向上にもつながります。

ストレスの解消効果や睡眠の質の向上にも期待ができるため、うつ症状の予防や改善に効果的です。

筋トレには様々な効果があり有酸素運動と併せて行うとより効果的

有酸素運動と併せてより効果的

筋トレには、血糖値を下げる以外にも様々な効果が期待できます。

以下は、筋トレによる主な効果です。

  • 生活習慣病の予防
  • 肥満の予防
  • 冷え性の改善
  • 肩こりやむくみの解消
  • 美肌効果
  • ストレス解消

筋トレは有酸素運動と併せて行うと、血糖値を下げる効果や脂肪の燃焼効果が高まります。

筋トレはジムに通わずに自宅ですぐに始められるため、手軽にできる運動方法です。

日常的な筋トレ習慣を身につけて、糖尿病を改善させましょう。

以下では、筋トレをする際のポイントと血糖値の改善に効果的な筋トレについて解説します。

有酸素運動と並行して行う

筋トレは有酸素運動と併せて行うと、より血糖値を下げる効果が得られます。

有酸素運動はウォーキングやジョギングなど、体内に酸素を取り入れながら軽い負荷をかける運動です。

有酸素運動にはインスリンの効きを高め、血糖値の上昇を抑える効果があります。

有酸素運動は、20分以上の継続的な運動を週に3回以上行うと血糖値を下げる効果が高まります。

食後3時間以内の有酸素運動は、食後血糖値の急上昇を抑えるのに有効です。

水中の歩行やエクササイズは、有酸素運動と筋トレの両方が行えます。

筋トレをする際は低血糖対策を行う

糖尿病の人が筋トレをする際に、最も気をつける必要のある症状が低血糖です。

運動によって筋肉内のエネルギー消費が活発になり、低血糖を起こすリスクが上がります。

インスリンや経口血糖降下薬による治療を行っている場合は、特に低血糖を起こす可能性が高くなります。

糖尿病で治療を行っている場合は、運動量についてかかりつけ医に事前の相談が必要です。

筋トレを行う際はブドウ糖やブドウ糖を多く含む食品などを身近に用意しておき、長時間の激しい運動や空腹時の運動は控えるようにしましょう。

低血糖の主な症状は、以下の通りです。

  • 冷や汗
  • 手足の震え
  • 急激な空腹感
  • 脱力感
  • 頭痛
  • 寒気
  • 動悸

筋トレをしている際に上記の症状が現れた場合は、ブドウ糖を補給して様子を見ます。

症状の改善が見られない場合は、早急に医療機関の受診が必要です。

血糖値の改善に効果的な3つの筋トレ

効果的な3つの筋トレ

血糖値を下げるためには、筋肉量の多い下半身を中心とした筋トレが効果的です。

糖尿病の人や高齢者は下半身の筋肉量の低下がみられるため、特に足や腰を鍛える筋トレを紹介します。

筋トレは、週に2〜3回のペースで行うと効果的です。

筋トレの方法と期待できる効果

スクワット足を肩幅に開いて立ち、5秒かけてゆっくり腰を下ろし5秒かけて立つ。10回を1セットとして3セット行う。足腰の筋力の強化。バランス感覚の向上による転倒予防の効果。
かかとの上げ下げ運動足を肩幅に開いて立ち、かかとを持ち上げた状態で3秒キープし、ゆっくりと下ろす。1日30回程度。ふらつく場合は座ったままで行う。第二の心臓とも呼ばれるふくらはぎの筋力を高める。下肢の血流改善。下肢静脈瘤の予防効果。
階段の上り下り毎日10分程度、3階(約60段)分の階段の上り下りを行う。おしりや太ももの筋肉の強化。心肺機能の向上。

体調が悪い日は無理せずに、休んだり回数を減らしたりして行いましょう。

筋トレには血糖値を安定させる効果があり糖尿病を改善する

筋トレは筋肉量の増加や基礎代謝の向上によって血糖値を下げるため、糖尿病の改善が期待できます。

筋肉はブドウ糖をグルコースとして筋肉内に貯蔵する働きをもち、血液中の余分な糖を減らすため血糖値を安定させます。

筋トレによる筋肉量の増加は、良好な血糖コントロールの維持に重要です。

他にも筋トレには、インスリンの効きをよくする効果があり、血糖値を下げます。

筋トレは有酸素運動と並行して行うと、血糖値を下げる効果がより高まります。

糖尿病の人や高齢者は下半身の筋力の低下がみられるため、下半身を中心としたスクワットやかかとの上げ下げ運動、階段の上り下りなどが効果的です。

筋トレは無理のない範囲で行い、低血糖や膝や腰への負担がかからないようにしましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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