お酒に含まれるアルコールは、適量の摂取を続けていった場合、糖尿病対策によい効果があると言われています。
しかし、過剰摂取した場合は血糖値を上昇させる原因にもなるため、摂取量を調整しなければいけません。
この記事では、血糖値に対するアルコールの影響やお酒との付き合い方などをまとめました。
- 血糖値が変動する仕組み
- 血糖値に対するアルコールの影響
- 血糖値を上げないためのお酒の飲み方
お酒は飲みたいけれど、血糖値が気になる人は、飲み方を参考にしてください。
血糖値はすい臓から分泌されるインスリンによって正常な数値に戻る

血糖値は血液内の糖分量を示す数値であり、糖分を摂取すると一時的に上昇した後、正常な数値に戻ります。
正常な数値に戻るまでの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 糖質が体内でブトウ糖に変換されて、血糖値が上昇する
- すい臓からインスリンが分泌される
- インスリンが細胞と結合して、血液中のブドウ糖を取り込む
- 運動などでエネルギーを使う際、取り込んだブドウ糖が消費される
- ブドウ糖が余った場合、インスリンの働きでグリコーゲンや中性脂肪に合成される
- 体内の糖分量が減少して、血糖値が下降する
血糖値を下げるためには、ホルモンの1種であるインスリンの働きが重要になります。
インスリンの働きが弱まったり、身体がインスリンの効果を受け付けなかったりすると、血糖値を下げきれない場合があります。
遺伝的要因や生活習慣の乱れが原因でインスリン異常が発生する
血糖値が上昇する主な原因は、以下のとおりです。
- 遺伝的要因によるインスリンの分泌異常や受容異常
- 食生活の乱れ
- 運動不足
- ストレスや睡眠不足
- 過度な飲酒
- 喫煙
糖尿病は1型と2型の2種類に分類されており、遺伝的要因から発症した場合は1型糖尿病に該当します。
自力でインスリン異常を改善するのは難しく、場合によっては専門的な治療が必要です。
一方、過度な飲酒を含めた生活習慣の乱れから発症する糖尿病は、2型糖尿病に該当します。
国内で発症する糖尿病の多くは2型糖尿病であり、症状が進む前であった場合、生活習慣の改善から薬に頼らず治療できます。
飲酒に伴う食事やストレスからの飲酒で高血糖や糖尿病になる可能性が高まる
血糖値を上昇させる原因の食生活の乱れは、主に以下の2つの栄養素から血糖値の上昇やインスリン異常に発展します。
- 糖質:過剰摂取は血糖値を上げる直接的な原因になる
- 脂質:過剰摂取で肥満につながり、中性脂肪の増加はインスリンの働きを弱める
お酒は食事のときに飲む人が多く、過度な飲酒に加えて栄養の過剰摂取も重なった場合、血糖値には非常に悪影響です。
ストレスや睡眠不足から過度な飲酒をしてしまうなど、ほかの原因で結果的に過度な飲酒を行ってしまう人もいます。
そのため、現段階ではお酒を少し嗜む程度の人でも、食事やストレスの影響で血糖値が上昇する可能性があります。
お酒に含まれるアルコールは体内で糖質や脂質に対して影響がある

アルコールはお酒などを飲んで摂取した場合、主成分のエタノールが体内に影響を及ぼします。
アルコール摂取による身体の主な影響は、以下のとおりです。
- 全身の血行がよくなり、食欲が増す
- 肝臓でアルコールが代謝や分解されるときに、新たに糖を生成する(糖新生)のを一時的に抑制する
- 代謝の際に生じた有毒な物質を、体内のブドウ糖を消費して無毒化する
- 分解される過程で、中性脂肪の合成が促進される
- 利尿作用によりトイレに行く頻度が増える
上記の中でも食欲の増加や中性脂肪の合成は、血糖値の上昇につながってしまう可能性があります。
特に酔っぱらっているときは正常な判断ができずに、過剰な飲酒や食べ過ぎを引き起こす人は多くいます。
一方で、アルコールで身体に悪影響が生じるときは、基本的にお酒の飲み過ぎが原因です。
自分のアルコールの許容量を把握して、酔い過ぎない程度にお酒を飲める人は病気の対策になり得ます。
適切な飲酒による適量のアルコール摂取は糖尿病の発生を抑える
アルコールは適度な摂取量の場合、以下のように健康によい影響があるという調査結果が出ています。
- アルコールにより気分がよくなり、ストレス解消やリラックスの効果がある
- 血糖コントロール状態がよくなり、糖尿病や合併症の発症リスクも軽減される
- 適度な飲酒をする人は、普段から飲まない人よりも心疾患などのリスクが低い
ストレス解消や血行の改善は、血糖値を上げる原因の対策にもなるため、適切な飲酒は高血糖や糖尿病の対策になります。
ただし、少しでもお酒を飲み過ぎてしまうと、健康によい効果は発生しません。
過度な飲酒を続けると肝機能障害や脳卒中のリスクが高くなる
アルコールの過剰摂取を高頻度で続けた場合、以下のような病気にかかる可能性があります。
- アルコール性肝硬変:慢性的な高血糖やブドウ糖の放出がなくなって低血糖に陥る
- アルコール性すい炎:血糖値を上下する細胞が破壊され、高血糖や低血糖になる
- 脳卒中のリスク上昇
- 糖尿病や高血糖、肥満の人の心不全リスク上昇
- 肥満や体重が重い人の肝機能障害、肝疾患リスクの上昇
アルコール性の肝硬変やすい炎で血糖値を制御できなくなった場合、体内の糖分がうまく補充できずに、低血糖になる人もいます。
1日飲み過ぎた程度で急に発症するケースは稀ですが、毎日のようにお酒を飲み過ぎると身体への悪影響は避けられません。
アルコールで血糖値を上げないようにするお酒の選び方や飲酒量

お酒はストレス解消やリラックス効果から、趣味や仕事終わりの楽しみとして毎日飲みたい人もいるでしょう。
適量のアルコール摂取はよい効果を得られますが、お酒の種類や合わせて食べる食材選びによってはよい効果が打ち消されます。
毎日お酒を飲みたい人が、血糖値を上げないために意識したい点は、以下のとおりです。
- 糖質が多く含まれるお酒を避ける
- 1日のアルコール摂取量を抑える
- おつまみで糖質や脂質を過剰摂取しないように心がける
たまに嗜む程度の人も、1回の飲酒で血糖値を上げ過ぎないように、お酒の選び方や飲む量を参考にしてください。
果実やシロップを含むお酒は糖質まで過剰摂取する可能性がある
お酒にはさまざまな種類があり、アルコール以外の成分はお酒によって異なります。
中でも毎日の摂取は避けたいのは、以下のようなお酒です。
- 甘いカクテル
- 甘口ワイン
- 果実やジュースで割ったお酒:レモンサワーなど
上記はアルコール量が少ない商品も多いですが、シロップの砂糖や果物に含まれる糖分が血糖値を上げる原因になります。
毎日飲んでいると、アルコールではなく糖質の過剰摂取で身体に悪影響を及ぼしてしまいます。
糖質の過剰摂取を避けて、毎日飲むのに適しているのは、以下のお酒です。
- ビール
- 蒸留酒:ウィスキーや焼酎など
- 辛口ワイン
ビールには糖質が含まれていますが、果物やシロップを入れたお酒に比べると、糖分量は抑えられます。
お酒に対する強さによって1日あたりのアルコール摂取量は変わる
飲むお酒の種類を決めた後は、1日あたりで摂取できるアルコールを飲酒量で調整していきます。
一般的には女性の方がアルコール分解速度が遅いですが、男性でもお酒に弱い場合は半分の10gを基準にしてください。
性別以外にも、体格による肝臓の大きさや年齢で分解速度が変わる場合があります。
糖分量の少ないお酒について、アルコール20gの基準は以下のとおりです。
- ビール:ロング缶1本(500mL)
- ウィスキー:2杯(60mL)
- 焼酎:1敗(100mL)
- ワイン:2杯(120mL)
上記はあくまで目安であり、商品によってはアルコール含有量が20%を超える場合があります。
糖分量の少ないお酒は好きな商品を選んでよいですが、商品ごとにアルコールの含有量をよく確認しましょう。
お酒の影響で食事やおつまみを食べ過ぎないようにする

お酒は糖新生の抑制で低血糖になる可能性が高いため、お酒のみを飲むよりも食事をしながら飲むのが推奨されます。
理想的な食事の摂り方としては、主菜や副菜をしっかり食べつつ、お酒を少し嗜む程度がよいでしょう。
晩酌として楽しみたい人は、合わせて食べるおつまみの内容を考えなければいけません。
おつまみとして推奨されるのは、以下の食材です。
- ナッツ類:低糖質で植物性脂質を含んでいるため、健康にもよい
- チーズ:脂質分はある程度含んでいるが、タンパク質などの栄養が豊富
- 海藻類:食物繊維やミネラルが豊富で、低カロリー
- 枝豆:タンパク質などの栄養が豊富で、メチオニンの効果でアルコール分解もできる
上記の食材はお酒に合わせつつ、糖質や脂質を抑えられます。
ただし、味付けに多量の塩をかけたり、食べ過ぎたりすると身体に悪影響が出ます。
一方で、おつまみの定番である焼き鳥や揚げ物、スナック類は毎回は食べない方がよいです。
お酒で判断力が鈍っていると、普段の食事よりも食べ過ぎて糖質や脂質の過剰摂取になる可能性があります。
血糖値によい効果がある範囲でアルコールを摂取していく
お酒に含まれるアルコールは、摂取量によって身体への影響が変わります。
過度な飲酒は血糖値の上昇につながるだけでなく、さまざまな病気の発症リスクを高める飲み方です。
毎日の飲酒でアルコール量が20gを大きく超えている人は、20g以内に調整しましょう。
一方で、適量の摂取を継続した場合は血糖値コントロールや糖尿病対策として一定の効果が期待できます。
ただし、糖分の多いお酒は糖質の過剰摂取で血糖値を上昇させるため、飲むお酒の種類は選ばなければいけません。
お酒が好きな人は、血糖値によい効果がある範囲のアルコール量と糖分の少ないお酒を選んで、嗜んでみてください。