多くの人が、食後に急な眠気やだるさに襲われた経験があると思います。
実は、食後の眠気やだるさは、血糖値の急激な変化が原因です。
食後に血糖値が急上昇すると、上がった血糖値を下げようと多量のインスリンが分泌されます。
その反動で、血糖値が急降下する状態が血糖値スパイクです。
この血糖値スパイクが、眠気やだるさを引き起こしています。
この記事では、食後の眠気と血糖値スパイクについて詳しく解説しています。
- 食後の眠気が血糖値スパイクに関係している原因
- 血糖値スパイクが身体に与える影響
- 血糖値スパイクの予防対策
食後の強い眠気やだるさは血糖値スパイクが大きく関与している可能性がある
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を示しており、食事の前後や日常生活を通して変動しています。
健康な人の場合、血糖値は70〜130mg/dl程度で、変動の波は緩やかです。
しかし、血糖値が急上昇や急降下する血糖値スパイクが生じてしまうと、脳に供給されるブドウ糖が不足します。
脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足すると引き起こされる症状が、眠気やだるさです。
血糖値スパイクの原因
血糖値スパイクの主な原因は、インスリン分泌が正常に行われないためです。
加齢や肥満などは、インスリン分泌を司る膵臓の機能を低下させます。
膵臓の機能が低下すると、食後に適切な量のインスリンが分泌されなくなり、分泌のタイミングも遅れるようになります。
インスリンの分泌低下やタイミングのずれが生じると引き起こされるのが、食後高血糖です。
食後高血糖によって血液中のブドウ糖濃度が急上昇すると、血糖値スパイクが生じます。
食後高血糖
通常、食後2〜3時間の血糖値は110mg/dl未満です。
しかし、食後2時間を過ぎても血糖値が140mg/dl以上の場合、食後高血糖と診断されます。
血糖値スパイクを起こさない為にはインスリンの働きが重要です。
日本人はインスリンの分泌が少ないので、インスリンの効き目を高める工夫が大切になります。
詳しくは「インスリンの分泌を促し、効き目を高める成分」の記事もご確認ください。
血糖値スパイクによる血糖値の乱降下は身体へさまざま悪影響を及ぼす
血糖値の急上昇や急降下は、動脈硬化を引き起こすため血管にとって大きな負担です。
動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなり、弾力性が失われた状態をいいます。
また、血糖値を正常に戻そうとする過剰な働きによって自律神経が乱れ、心身の不調が出現します。
血糖値スパイクが毎日のように繰り返されると、このように身体にはさまざまな悪影響が及びます。
血糖値スパイクによる主な身体への影響や引き起こされる病気を、以下にまとめました。
- 動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす
- 自律神経の乱れ
- 糖尿病発症のリスク
なぜ動脈硬化を引き起こすのか
急激な血糖値の上昇は、有害物質である活性酵素を発生させ、血管壁を傷つけます。
その傷を修復させる働きにより、血管内部の壁が厚く硬くなり、動脈硬化となります。
動脈硬化の発生する部位ごとに生じる重大な病気を、下記にまとめました。
①心臓 | 狭心症:心臓の冠動脈が詰まって狭くなり、十分な酸素や栄養が届かない状態。 心筋梗塞:冠動脈が塞がり血流が途絶え、心臓の筋肉が壊死し生命に関わる重篤な状態。 |
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②脳 | 脳梗塞:脳の血管が詰まり、血流が途絶え、脳の神経細胞が壊死する状態。 脳細胞は壊死すると再生は困難なため、発症すると重大な後遺症が残り、生命にも関わる。 |
③腎臓 | 腎硬化症:血液を濾過し尿を生成する働きのある糸球体の血流が悪くなると、徐々に硬化し老廃物の濾過ができず、慢性腎不全に至る。 |
なぜ自律神経が乱れるのか
食後高血糖の状態になると、急上昇した血糖値を下げるために、多量のインスリンが分泌されます。
その結果、血糖値が下がり過ぎ、反応性低血糖を起こします。
その危機を回避しようと、身体は血糖値を上昇させ、交感神経を過剰に興奮させます。
これが繰り返されると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、心身に支障をきたします。
自律神経とは
自律神経の働きは、身体のさまざまな内臓器官や血管、分泌腺などの調節です。
自律神経は作用の違いによって、以下の二つに分けられます。
- 交感神経
- 副交感神経
交感神経と副交感神経の作用の違いは、以下の通りです。
自律神経 | 交感神経 | 副交感神経 |
---|---|---|
心拍数 | ↑ | ↓ |
血圧 | ↑ | ↓ |
呼吸数 | ↑ | ↓ |
体温 | ↑ | ↓ |
筋緊張 | 緊張 | 弛緩 |
血糖値 | ↑ | ↓ |
瞳孔 | 散大 | 縮小 |
汗 | ↑ | ↓ |
唾液 | ↓ | ↑ |
精神状態 | 緊張 | リラックス |
モード | 活動モード | 休息モード |
交感神経
交感神経は、血液の循環を促進し筋肉の収縮を増加させ、身体の活動性を高めます。
具体的には心拍数の増加、血管収縮、瞳孔散大や汗の分泌です。
一方で、腸の運動や粘液分泌は抑制されます。
アドレナリンとは、副腎髄質より分泌されるホルモンの一種です。
アドレナリンが大量分泌されると、イライラを引き起こしたり、恐怖感や不安感が増大したりします。
そのほかにも筋肉が過剰に収縮し、肩こりや頭痛を自覚する場合もあります。
副交感神経
副交感神経の働きは、血液の循環を緩やかにし、筋肉を弛緩させて身体をリラックス状態に促すものです。
副交感神経の働きが低下すると消化管の機能が低下し、消化不良や便秘を引き起こします。
また、睡眠障害によって熟睡感が得られず、中途覚醒の悩みを抱える人もいます。
自律神経の乱れは、不安やうつ症状を増悪させ、免疫機能の低下を引き起こす報告もされています。
自律神経を過剰に働かせないためには、血糖値スパイクの予防が重要です。
なぜ糖尿病発症リスクが上昇するのか
血糖値スパイクは、糖尿病予備軍といわれています。
頻回に血糖値スパイクを引き起こしている糖尿病予備軍の人が、生活習慣の改善を行わない場合、3年以内にその1/3が糖尿病になる可能性があるとされています。
そのため、通常の血液検査だけでは血糖値スパイクの有無は判断できません。
血糖値スパイクを調べるには、75g経口ブドウ糖負荷試験という検査を受ける必要があります。
75g経口ブドウ糖負荷試験とは
75g経口ブドウ糖負荷試験とは、10時間以上の絶食後に75gのブドウ糖を含んでいる液体を飲み、血糖値の推移を測定する検査です。
この検査は、医療機関に行かないと受けられません。
食後に眠気やだるさといった症状が強く出る場合は、血糖値スパイクの可能性があるため、医療機関の受診をおすすめします。
・食後や空腹時の血糖値の上昇を抑制する
・インスリンの効き目を高め分泌を促す
など、糖尿病予防におけるポリフェノールの研究が進んでいます。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。
薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究
血糖値スパイクを避けて食後の眠気を予防するためには
食後に急な眠気やだるさに襲われる回数が多い人は、血糖値スパイクを起こしている可能性が高いと考えられます。
急な眠気やだるさは、仕事や学業の効率を下げるだけでなく、思わぬ事故を招きかねません。
血糖値スパイクの影響による、食後の眠気を予防するための生活習慣を以下にまとめました。
- 朝食を抜かない
- 食事は野菜から食べる
- 炭水化物の摂りすぎに注意する
- 甘いお菓子や清涼飲料水は控える
- 腹八分目を心がける
- 食後に軽いウォーキングなどの運動をする
朝食はなぜ重要なのか
人体は、空腹時間が長いほど、次に食べた栄養をより多く体内に取り込みます。
朝食を抜くと、午前中の血糖値は低い状態です。
その反動から昼食後の血糖値が急上昇し、血糖値スパイクを引き起こします。
そのほかにも、朝食を抜くと脳がエネルギー不足となり、集中力が低下したりイライラしたりします。
そのような状態が頻回に起きてしまっては、仕事や学業に支障が出てしまうでしょう。
朝食は、血糖値スパイクの予防としてはもちろん、脳を活性化してやる気を起こすためにもとても重要です。
食事は野菜から食べる
野菜には、食物繊維が多く含まれています。
食物繊維には消化吸収をゆっくりにし、血糖値の急激な上昇を抑える働きがあるため、先に野菜を食べると血糖値スパイクを予防できます。
具体的に推奨されているのは、主食を摂る約15分前です。
また、先に野菜を摂ると早めに満腹感を感じられ、食事量も自然と減っていきます。
その結果、糖分の摂取量自体が抑えられます。
炭水化物の摂りすぎに注意
炭水化物とは、ブドウ糖や果糖から構成されている有機化合物の総称です。
炭水化物は血糖値を上昇させ、体や脳を動かすエネルギー源として使われています。
脳は多くのエネルギーを必要とするため、安定した働きができるように食事からしっかりと炭水化物を摂取しなければいけません。
脂肪が肝臓や骨格筋などにも蓄積されると、毒性を発揮し、インスリン抵抗性が生じます。
インスリン抵抗性とはインスリンの作用が十分に得られない状態です。
インスリン抵抗性はさらに血糖値スパイクを引き起こす要因となります。
丼物や麺類、麺とご飯のセット物中心の食事は、炭水化物の摂り過ぎになります。
タンパク質や副菜、汁物などを含んだ、バランスの良い食事を意識しましょう。
甘いお菓子や清涼飲料水は控える
甘いお菓子や清涼飲料水に含まれる糖質は、消化酵素に分解されません。
そのままの状態で腸から吸収され、直接細胞の中へと入っていきます。
そのためインスリンが関与せず、血糖値を急激に上昇させます。
スポーツ後やお風呂上がりにスポーツドリンクを常飲していると、気付かないうちに大量の糖質を摂取している可能性があります。
水分は、水や麦茶などから摂取するようにしてください。
腹八分目を心がける
腹八分目を心がけると、カロリーの摂りすぎを防ぎ、血糖値の上昇を抑えられます。
食事を開始してから身体が満腹と感じるまでには、20分以上要します。
早食いをすると、満腹と感じる前に食べ過ぎてしまうため、よく噛みゆっくり味わって食事をしましょう。
食後に軽いウォーキングなどの運動をする
食後の運動は、血液中のブドウ糖を筋肉で大量消費するため、血糖値の急上昇を防ぎます。
運動は、食後1時間以内に行うのが、より効果的です。
運動時間は15分程度でも糖の吸収を和らげ、高血糖を抑えられます。
運動内容は、最初に体内の糖質をエネルギー源として消費させるウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。
重要なのは運動の継続で、運動を続けていると身体の筋肉量が増え、それだけで糖の消費を促します。
スクワットなどの簡単な筋力トレーニングも少しずつ取り入れると、より効果的に血糖値スパイクを予防できるでしょう。
食後の眠気を引き起こさないよう血糖値を安定させて心身の健康を守ろう
食後の強い眠気やだるさは、血糖値スパイクが影響している可能性があります。
仕事や学業の妨げになるだけでなく、予期せぬ事故も招きかねません。
また、血糖値スパイクは動脈硬化の進行や、自律神経を乱れさせる恐れがあります。
食後に、頻回強い眠気に襲われる場合は、まずは生活習慣を見直しましょう。
炭水化物の摂り過ぎや、清涼飲料水の摂取を控えても症状が持続する場合は、すでにインスリン抵抗性が生じているかもしれません。
ただの眠気だろうと放置してしまうと、症状の進行や悪化を招く可能性があるため、医療機関の受診をおすすめします。
血糖値の安定は、身体だけでなく心の安定にも繋がります。
心身の健康のために、血糖値スパイクを予防しましょう。