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糖尿病で目がかすむのは糖尿病網膜症の自覚症状!原因と症状を詳しく解説

目がかすむ原因と症状

糖尿病の三大合併症のひとつである糖尿病網膜症は、成人の失明原因の上位に位置している疾患です。

糖尿病は全身の血管に影響を及ぼす疾患であり、目の網膜に血管障害が起こる合併症を糖尿病網膜症といいます。

糖尿病網膜症は、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。

しかし進行すると目がかすむようになり、視力の低下が起こったときには重症化しているケースも多くあります。

糖尿病網膜症は、自覚症状が現れる前の早期発見が非常に重要な疾患です。

この記事では、糖尿病で目がかすむ原因である糖尿病網膜症について解説します。

この記事でわかること
  • 糖尿病で目がかすむ原因
  • 糖尿病網膜症の症状
  • 糖尿病網膜症の3つの分類
  • 糖尿病網膜症の治療法

糖尿病網膜症を発症させない方法についても詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病網膜症は目の網膜に障害が起こって発症する糖尿病合併症のひとつ

目の網膜に障害が起こる

糖尿病網膜症は糖尿病性腎症、糖尿病神経障害と並ぶ糖尿病の三大合併症のひとつです。

糖尿病は高血糖状態の継続によって全身を巡る血管に影響を与える疾患であり、体中のさまざまな場所に合併症を引き起こします。

糖尿病網膜症は、目の網膜に障害が起こって発症する合併症です。

網膜には細かい血管が張り巡らされており、栄養や酸素を運んでいます。

血糖コントロールの悪化が長期間続くと網膜の血管に障害が起こり、目のかすみや視力の低下が現れます。

さらに病状が進むと引き起こされるのは、失明などの深刻な状態です。

初期の段階で発見するために、糖尿病と目の関係について理解を深めましょう。

以下では、網膜の機能や糖尿病網膜症の原因について解説します。

網膜には光や色を感じる働きがある

網膜は眼球の一番奥に広がっている0.1〜0.4mm程の神経の薄い膜であり、光や色を感じる神経細胞からなる組織です。

網膜の毛細血管には、神経細胞に酸素や栄養を届ける働きがあります。

網膜の神経細胞で感じ取った光の刺激は、電気信号として脳へ伝達され、映像化されます。

人がものを見るために、網膜は重要な役割をもつ組織です。

網膜に起こる代表的な疾患として、網膜剥離があります。

網膜剥離とは、10層で組織される網膜の最も外側の色素上皮層が内側の視細胞層から剥がれてしまう状態のことです。

色素上皮層から視細胞層に栄養が行き届かなくなるため、視細胞層の機能が低下します。

それにより、視野の狭まりや視力の低下が現れます。

その他の網膜剥離の主な症状は、ひもやくず状の浮遊物が見える飛蚊症や、剥離した部分が見えなくなる視野欠損などです。

糖尿病では高血糖によって網膜の血管に障害が起こり、網膜剥離を起こすリスクが高まります。

糖尿病で目がかすむのは高血糖による網膜の血管障害が原因

糖尿病で起こる目のかすみは、高血糖によって網膜の血管が損傷を受けたり血管が詰まったりするために起こります。

目のかすみは、糖尿病網膜症の特徴的な症状のひとつです。

視界がぼやけて見える、ピントが合わないなどの症状が現れた場合、糖尿病網膜症が進行している可能性があります。

糖尿病網膜症は、血糖コントロールの悪化によって高血糖が長期にわたって継続した場合に発症します。

高血糖の主な原因は、以下の通りです。

  • 不規則な食事
  • 運動不足
  • 肥満
  • ストレス
  • 喫煙
  • 過度な飲酒
  • 遺伝

血糖値を下げるホルモンであるインスリンは、加齢とともに分泌量が減少し、効き目も低下します。

そのため、加齢に伴って糖尿病網膜症の発症率が上がります。

糖尿病網膜症の進行予防には、食事や運動による治療と定期的な検査による早期発見が重要です。

糖尿病網膜症は進行状態によって3つに分類される

進行状態によって3つに分類

糖尿病網膜症は、進行状態によって次の3つに分類されます。

  • 単純網膜症
  • 増殖前網膜症
  • 増殖網膜症

以下では、糖尿病網膜症の3つの分類と糖尿病で起こる視力低下の原因として最も多い糖尿病黄斑症について詳しく解説します。

単純網膜症は自覚症状がなく早期では改善が可能な状態

単純網膜症は高血糖状態の継続によって網膜の血管がもろくなり、血管障害が出始めた初期の段階です。

網膜でもろくなった血管は破れて出血を起こし、血液中から漏れ出た脂質やたんぱく質が広範囲に蓄積します。

この状態では、自覚症状はほとんどありません。

しかし網膜症が網膜の中心部まで進行すると、目のかすみや見えにくさなどの症状が現れる場合もあります。

眼底検査では、毛細血管瘤という血管壁の盛り上がりや小さな出血の有無によって状態の確認を行います。

単純網膜症の段階では、血糖値を安定させると網膜症が改善される場合があるため、定期的な眼底検査による早期発見が重要です。

増殖前網膜症はほとんど自覚症状がないまま新生血管が作られ始める

増殖前網膜症は、単純網膜症よりも一段階進行した状態です。

この段階に至ると目がかすむなどの症状が出る人もいますが、ほとんどの場合で自覚症状がないまま進行します。

網膜では血液の不足によって神経のむくみが起こり、静脈の拡張や蛇行が起こります。

血管内の広い範囲に血栓ができると、網膜の神経細胞に栄養や酸素が行き届きません。

十分な酸素が血管に行き渡らなくなると、網膜内では酸素不足が発生します。

その状態を改善するために、網膜内では新生血管と呼ばれる新しい血管を作り始めます。

新生血管は、本来体内に存在しない異常な血管です。

さらに新生血管には、簡単に血管が壊れて出血を起こすリスクがあります。

増殖前網膜症が発見された場合、新生血管の増加を抑えるために網膜光凝固術というレーザー治療の早期開始が必要です。

増殖網膜症は網膜症がかなり悪化した状態で目のかすみや視力の低下が起こる

増殖網膜症は、網膜症が重症化した状態です。

ほとんどの場合、この段階になってはじめて目のかすみや視力の低下などの自覚症状が現れます。

症状が出始めた段階で網膜内で起こっているのが、網膜出血や網膜剥離です。

網膜内の酸素不足によって発生した新生血管は、眼球内部の硝子体で出血を起こす場合があります。

硝子体は透明なゼリー状で、眼球の形状を保つ機能や光を屈折させる機能を持つ組織です。

新生血管が硝子体内で多量に出血した場合、視界にひもやくず状の浮遊物が見える飛蚊症や急激な視力低下が現れます。

さらに進行すると増殖組織という繊維性の膜が発生し、網膜表面に広範囲に広がります。

増殖組織が網膜を引っ張るために起こるのが、網膜剥離です。

この段階に至ると、手術による治療を必要とします。

しかし、手術を行っても十分に視力の回復を得られない場合もあります。

増殖網膜症の段階へ進むと、血糖コントロールの改善を行っても、網膜症の進行を止められません。

糖尿病黄斑症は糖尿病網膜症のどの段階でも発症し早期に視力の低下がみられる

糖尿病黄斑症は、糖尿病網膜症の合併症として発症する病気です。

糖尿病網膜症の初期から末期の3つの段階のうち、どの段階でも発症する可能性があります。

黄斑は網膜の中心部にあり、視細胞が集まった部分です。

視細胞は光を感じとって、脳に形や色を認識させる機能をもちます。

黄斑は、人が物を見るために重要な役割をもつ組織です。

網膜症によってもろくなった血管は正常に機能せず、血管から血液の水分を漏れ出させ、むくみを起こし黄斑を傷つけます。

糖尿病黄斑症は網膜症によって黄斑が傷つけられ、機能が低下した状態です。

発症後は、早い段階で急激に視力の低下が起こります。

糖尿病で視力の低下が起こる一番多い原因は、糖尿病黄斑症です。

糖尿病黄斑症を発症すると、硝子体出血や網膜剥離がない状態でも視力の低下が起こります。

糖尿病網膜症には病状に応じて主に3つの治療法がある

代表的な3つの治療法

糖尿病網膜症には、網膜症の進行段階や障害の発生状態に応じて主に3つの治療法があります。

代表的な治療方法は、以下の3つです。

  • 網膜光凝固術(レーザー治療)
  • 硝子体手術
  • 薬物注射

糖尿病網膜症は、初期段階では治療によって症状が改善される場合があります。

しかし、重症化すると進行を遅くするための治療のみを行い、症状は改善されません。

治療によって視力がさらに低下するリスクがありますが、網膜症の進行を止めるためには治療を余儀なくされる場合もあります。

以下では、それぞれの治療方法について詳しく解説します。

網膜光凝固術は増殖前網膜症や増殖網膜症の進行を防ぐための治療方法

網膜光凝固術は主に増殖前網膜症や増殖網膜症、糖尿病黄斑症に対して効果があります。

レーザー照射によって新生血管が新たに生じるのを抑制したり、すでに発生している新生血管を凝固したりするのが主な目的です。

網膜光凝固は網膜症の悪化を防ぐ治療方法であり、網膜を治すための治療ではありません。

新生血管の発生を抑えても視野の回復はできず、むしろ治療後の視力が低下する可能性もあります。

しかし、網膜症の悪化や失明を防ぐためには重要な治療です。

レーザーの照射数や照射範囲は、網膜の血管障害の進行状態によって調整されます。

網膜光凝固術は、外来受診による治療が可能です。

硝子体手術は網膜剥離や硝子体出血に有効な治療法

硝子体手術は、網膜症が進行して網膜剥離や硝子体出血が起こった場合に行われる治療法です。

網膜光凝固術で網膜症の進行予防ができなかった場合や、糖尿病黄斑症の治療でも行われます。

硝子体手術では眼球に3つの穴を開け、そこに細い手術器具を挿入して硝子体内の出血や増殖組織の除去を行い、剥離した網膜を元に戻します。

顕微鏡下で繊細な操作が必要とされるため、非常に高度な手術であり、入院による治療が必要です。

薬物注射は黄斑浮腫や新生血管の出現を抑制する効果がある

薬物注射は、ステロイドや抗血管内増殖因子薬を硝子体内に注入する治療方法です。

黄斑浮腫を減少させたり、新生血管の出現を抑えたりする効果があります。

薬剤の効果は一時的であり、定期的に繰り返しの投与が必要です。

再発した場合には、再投与をするか他の治療法へ移行する場合もあります。

眼球やその周囲に注射する治療法であり、外来受診による治療が可能です。

糖尿病網膜症の予防には血糖と血圧コントロールが必要であり定期検査も重要

糖尿病網膜症の予防法

糖尿病網膜症は高血糖の長期間の継続によって、症状のないまま進行する合併症です。

糖尿病治療の基本は食事と運動であり、日々の生活のなかで良好な血糖値を保てるようコントロールをします。

網膜症は、高血圧によっても引き起こされる病気です。

糖尿病の人が高血圧になると、糖尿病網膜症を発症するリスクが高くなります。

予防のためには、血糖値と血圧をコントロールし、良好な状態に保つのが非常に重要です。

以下では、糖尿病網膜症の予防法について解説します。

良好な血糖コントロールで糖尿病網膜症の進行を予防する

糖尿病網膜症の予防には、良好な血糖コントロールによって安定した血糖状態を維持するのが重要です。

血糖コントロールの状態が悪く、血糖値の高い状態が継続すると、網膜症の発症や重症化するリスクも高くなります。

血糖コントロールで大切なのは、食事と運動です。

血糖値は食事によって上がるため、食事の管理をしっかりと行います。

バランスの良い食事を一日三食摂り、よく噛んで食べる習慣をつけましょう。

お米やパンなどの糖質が多い食品を食事の最初に食べると、血糖値の急上昇を招きます。

反対に野菜やきのこなどの食物繊維を多く含む食品から食べ始めると、血糖値の上昇が穏やかになり、血糖値の急上昇を防げます。

運動ではウォーキングなどの有酸素運動や、腹筋やダンベルなどの筋力運動を行うと効果的です。

血糖値は運動によって下げられるため、毎日の継続的な運動で血糖値を管理しましょう。

高血圧は糖尿病網膜症を悪化させる原因であるため血圧コントロールも重要

糖尿病の人が高血圧になると、糖尿病網膜症を悪化させるリスクが高まります。

糖尿病網膜症の新たな発症や重症化を防ぐためには、血圧コントロールが大切です。

血圧コントロールも血糖値と同じく、食事と運動が基本となります。

食事では、塩分を控えた減塩食が血圧管理に重要です。

毎日の食事には野菜や果物を多く取り入れ、ファストフードや加工食品は食べないようにしましょう。

運動では定期的に有酸素運動を行う習慣を身につけると、高血圧の予防に効果的です。

筋力トレーニングも、高血圧の予防効果が得られます。

エレベーターではなく階段を利用する、休憩時間にストレッチをするなど日常生活の中でも軽めの運動を行うのも重要です。

症状がなくても定期的な眼底検査で糖尿病網膜症を早期発見する

初期段階での治療が重要

糖尿病網膜症の初期では、ほとんど症状が現れません。

糖尿病網膜症は初期の段階で治療を開始し、良好な血糖コントロールを行うと改善される場合があります。

そのため、自覚症状が全くなくても定期的な検査で早期発見をするのが非常に重要です。

糖尿病網膜症は、眼底鏡や眼底カメラを用いた検査を行います。

眼底検査を行う際は、瞳孔を大きく開かせるために散瞳薬という目薬を挿し、瞳孔が完全に開いた状態で血管の詰まりや出血がないかなど網膜の状態を確認します。

検査後5〜6時間程は、まぶしく見えたり視界がぼやけて見えたりするため自動車や自転車の使用はできません。

目がかすむ症状が出たときは糖尿病網膜症が進行している可能性がある

糖尿病で目がかすむ症状や視力の低下が起こったときには、糖尿病網膜症がかなり進行している可能性があります。

糖尿病網膜症は目の網膜にある細かい血管に障害が起こり、血管のつまりや出血を起こす合併症です。

糖尿病になってから5〜10年以上経過して発症する場合が多く、初期ではほとんど症状がありません。

重症化すると網膜出血や網膜剥離を起こし、治療が遅れると失明の危険性もあるため早期発見が重要です。

糖尿病網膜症は、網膜の血管や視神経の状態をみる眼底検査によって調べられます。

たとえ自覚症状がなくても、年に一度は必ず眼底検査を受けましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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