健康診断を受けるとき、「どうして食事を抜かなければいけないんだろう」と思ったことはありませんか。
それは、食事によって数値に影響を与える項目があるためです。
健康診断の血液検査で行う、血糖値の検査もその一つ。
健康診断では、主に糖尿病の診断のために空腹時の血糖値を調べます。
なぜ、空腹時の血糖値が糖尿病を調べるために重要なのでしょうか。
- 空腹時の血糖値とは
- 空腹時の血糖値が高いと発症する糖尿病
- 空腹時の血糖値が正常でも発症する隠れ糖尿病
空腹時の血糖値について知っておくと、健康診断や糖尿病の予防にも役立つため、ぜひ参考にしてください。
空腹時の血糖値とは
空腹時の血糖値とは、検査前10時間以上の絶食をした状態の血糖値のことです。
そもそも血糖とは、血液中のブドウ糖のことで、主に体や脳を動かすエネルギー源として利用されます。
人の体は、食事によって摂取した炭水化物を体内で消化、吸収してブドウ糖に変えます。
そのとき働くのが、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンです。
インスリンは、血糖をコントロールする役割をもち、血液中のブドウ糖濃度を一定に保っています。
この血液中のブドウ糖の濃度を、血糖値といいます。
血糖値が高すぎても低すぎても、体には悪影響です。
糖尿病を調べる検査の代表的なものとして、空腹時の血糖値があります。
では、血糖値を空腹状態で調べるのは、なぜなのでしょうか。
空腹時の血糖値を調べる理由と、糖尿病を調べる検査の種類について解説します。
空腹時の血糖値を調べる理由
血糖値は、1日の中でも上がったり下がったり変動します。
主な原因は食事や運動、入浴、ストレスなどです。
特に食事に大きく影響され、食べた時間や食べたものによって血糖値が上がります。
一般的には、食後10時間以上空けた絶食状態で検査をします。
健康な人は、食後2時間程でゆっくりと血糖値が正常値に戻りますが、絶食状態で血糖値が高ければ糖尿病の疑いがあります。
それだけでは糖尿病の確定診断はできませんが、空腹時の血糖値は糖尿病を調べるための重要な指標となるのです。
近年の研究では、ポリフェノールの一種に「空腹時血糖値」「食後血糖値」を抑える効果が知られています。
普段の食事に上手に取り入れるなど予防をしていきましょう。
空腹時と食後の血糖値をまとめて下げるポリフェノールの一覧
糖尿病を調べる検査の種類
糖尿病の確定診断は、複数の検査の組み合わせや、糖尿病の典型的な症状の有無などを総合的に判断して行われます。
糖尿病を調べる代表的な検査は、以下の4つです。
空腹時血糖値 | 正常値 | 糖尿病型 |
---|---|---|
10時間以上食事や甘い飲み物を摂取していない状態で調べる検査。 食事に影響されていない血糖値の状態がわかる。 | 70〜99mg/dL | 126mg/dL~ |
随時血糖値 | 正常値 | 糖尿病型 |
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食事時間と関係なく採取した血糖値状態を調べる検査。 | 139mg/dL | 200mg/dL~ |
HbA1c | 正常値 | 糖尿病型 |
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過去1〜2ヶ月の血糖値の状態を調べられる。 当日の食事の影響は受けにくい。 | ~5.5% | 6.5%~ |
75g経口ブドウ糖負荷試験 | 正常値 | 糖尿病型 |
---|---|---|
ブドウ糖を溶かした液体を飲み、30分後、1時間後、2時間後の数値を調べる検査。 | 2時間後の数値が~139mg/dL | 2時間後の数値が200mg/dL~ |
糖尿病の疑い(糖尿病型)を示す数値以下であっても、正常値を超えている場合は、将来的に糖尿病になる可能性があります。
空腹時の血糖値どの数値から危険なのかを動画で解説しています。
合わせてご覧ください。
空腹時の血糖値は、どこからが危険な数値なのかをお伝えします
空腹時の血糖値が高いと発症する糖尿病
糖尿病は初期症状が出にくく、空腹時の血糖値が高くても症状はほとんどありません。
症状が出たときには、すでに高血糖状態が長く続いたあとで、糖尿病を進行させている場合もあります。
高血糖が続いたときの主な症状
喉が渇く 頻尿 動悸 冷や汗 体重の減少 指の震え 集中力の低下など |
特に喉の渇きは、初期の糖尿病に多くみられます。
脱水症状になると体内の水分量が足りず、喉の渇きとなって体に症状が現れます。
いずれの症状も、気づいたら早急に病院を受診する必要があります。
糖尿病を予防し進行を防ぐためにも、糖尿病についての知識を持っておくのは重要です。
糖尿病の種類と三大合併症について、解説します。
糖尿病の種類
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度が高い状態が続き、体に不調が起こる病気です。
一度発症すると、完治はしない病といわれています。
糖尿病の種類は、大きく分けて4つです。
1型糖尿病 |
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膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されるため、インスリンがほとんど分泌されない。 原因はわかっていないが、若い年齢で発症する人が多い。 インスリンを体内で作りだせなくなると、インスリン製剤による治療を行う。 |
2型糖尿病 |
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インスリンの分泌が弱まって、血糖値が上がる。 原因は生活習慣や遺伝も影響するといわれ、多くは中高年で発症する。 食事や運動治療によって、血糖コントロールが必要。 |
妊娠糖尿病 |
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妊娠中の検査で発覚する、糖尿病の手前の状態。 原因は、妊娠によるホルモンの影響で血糖値が上がるため。 胎児に影響が出ないように治療する必要がある。 出産後は正常値に戻るが、将来的に糖尿病を発症しやすい。 |
その他の糖尿病 |
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糖尿病以外の疾患や、治療薬などが原因で血糖値が高くなり発症する。 |
糖尿病と聞くとインスリン注射を想像する人も多いですが、インスリンの自己注射を必要とするのは、ほとんどが1型糖尿病です。
糖尿病患者の9割を占めているのは2型糖尿病で、食事や運動療法、薬物療法によって治療を行います。
肥満によるすい臓機能の低下で、インスリンの効き目が悪くなり血糖値が下がりにくくなります。
ポリフェノールの一種にはインスリンの効果を高める機能がありますので、普段の生活に取り入れていくのもオススメです。
アカシアポリフェノール-薬科大学・国立大学が注目する効果とは
三大合併症
糖尿病は、高血糖状態の継続によって、全身の血管に異常を起こす病気です。
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こしますが、代表的なものを三大合併症といいます。
糖尿病性網膜症 |
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血糖値が高い状態が続き、網膜の細い血管が傷つけられて発症する。 進行すると、失明の可能性もある。 糖尿病患者は、定期的に眼底検査を受けて予防する必要がある。 |
糖尿病性腎症 |
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腎臓の細い血管が傷ついたり、詰まったりすると発症する。 進行すると腎臓機能が低下し、人工透析が必要になる。 糖尿病性腎症は、人工透析を受ける患者の原因の第一位。 |
糖尿病性神経障害 |
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高血糖によって、全身の神経に障害が起こる。 末端まで血液が行き届かなくなると、神経細胞に異常が生じる。 悪化すると、足が壊死し切断を余儀なくされる場合もある。 |
人によって、糖尿病が発覚するきっかけはさまざまです。
合併症を発症して、はじめて糖尿病に気がつく人もいます。
定期的に検査を受け、血糖値の状態をよく知っておきましょう。
糖尿病の初期症状を知っておき、自身の体調の変化にいち早く気づけば、早期発見につながり合併症を予防できます。
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空腹時の血糖値が正常でも発症する隠れ糖尿病
隠れ糖尿病とは、空腹時の血糖値が正常値でも、食後の血糖値が異常に高くなる状態のことです。
食後の血糖値が急上昇すると、血管を傷つけ動脈硬化を引き起こす原因になります。
動脈硬化とは、血管が固くなって弾力が失われ、もろくなっている状態のこと。
隠れ糖尿病は、健康診断では発見されにくく見逃されがちです。
ところが、初期の糖尿病では空腹時の血糖値は異常がなく、食後にのみ血糖値が異常に高くなる場合がよくあります。
気づかないうちに少しずつ進行してしまうのが、隠れ糖尿病の怖いところです。
空腹時の血糖値が高くなり、健康診断や症状が現れてから気づくには遅すぎる場合もあります。
早期発見方法と予防方法を把握して、隠れ糖尿病を予防しましょう。
隠れ糖尿病を早期発見するためには
空腹時の血糖値が100mg/dL〜109mg/dL、もしくはHbA1cが5.6%〜5.9%の人は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高いとされています。
この数値が出ていて高血圧や脂質異常、肥満などがある人は、食後血糖値の検査をして隠れ糖尿病を調べる必要があります。
糖尿病の典型的な症状である、喉の渇きや体重の減少が起こったときも、早めに病院を受診してください。
症状がなく病院を受診しにくい場合は、血液検査ができる薬局が増えているため利用するのもおすすめです。
さらに手軽にできる検査として、ドラッグストアなどで購入できる尿糖検査キットがあります。
尿糖とは、尿中に含まれる糖分のことです。
尿糖だけで糖尿病の診断はできませんが、食後の血糖値状態を調べられるため糖尿病の早期発見に役立ちます。
隠れ糖尿病を予防する方法
隠れ糖尿病は、食後高血糖ともよばれます。
食後の血糖値を急激に上げないためには、食事の摂り方を工夫して血糖コントロールをするのが効果的です。
食事で血糖値の急上昇を防ぐには、以下の方法があります。
- 早食いを避け、ゆっくりとよく噛んで食べる
- 食物繊維を多く含む野菜などの食品から食べはじめ、糖質を多く含む炭水化物を最後に食べる
- 脂質や糖質が多い食品を摂りすぎないようにして、栄養バランスのよい食事をする
- 外食を避ける
食事以外では、ウォーキングなどの有酸素運動や生活習慣の見直しで予防ができます。
特にタバコは、インスリンの働きを妨げる作用があり、糖尿病を発症しやすくします。
隠れ糖尿病以外にも、がんや生活習慣病の原因になるため早めの禁煙が重要です。
健康な人でも、暴飲暴食や運動不足、乱れた生活習慣を続けると隠れ糖尿病を発症しやすい状態になってしまいます。
日頃から食事や運動、生活習慣に向き合って、隠れ糖尿病を予防しましょう。
空腹時の血糖値は糖尿病を診断できるが、隠れ糖尿病には食後の血糖値も重要
健康診断では、主に糖尿病の診断のために空腹時の血糖値を調べます。
それは、血糖値が食事の影響を受けやすいため、空腹時の血糖値によって安定した数値を調べる必要があるためです。
しかし、空腹時の血糖値だけでは糖尿病の診断はできません。
糖尿病は、複数の検査や症状の有無によって確定されます。
空腹時の血糖値が高くても初期症状はほとんどないため、定期的な検査が重要です。
症状が現れたときは、早めの病院受診が大切です。
空腹時の血糖値が正常値でも食後の高血糖が続いている状態を、隠れ糖尿病といいます。
隠れ糖尿病は、健康診断で見つけるのは困難です。
隠れ糖尿病は、食事の摂り方の工夫や有酸素運動、生活習慣の見直しで予防ができます。
空腹時の血糖値は正常値であっても、油断はできません。
血糖コントロールを意識して、生活習慣の見直しをしましょう。
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