ヘモグロビンA1cは、人の血中糖度の状態を判断するうえで重要な検査結果です。
血中糖度が高くなると、身体にさまざまな支障を来してしまい、糖尿病リスクを高めてしまいます。
状況によっては、入院をして治療に専念しないと危険な状態に陥るかもしれません。
今回は、ヘモグロビンA1cが10以上になった場合の対処について解説します。
ヘモグロビンA1cが上昇する原因や発生する症状、および下げるための対処方法についても紹介します。
- ヘモグロビンA1cは糖と結合したヘモグロビンの割合を指す
- ヘモグロビンA1cが10以上の場合は状況に応じて入院を要する場合も
- ヘモグロビンA1cの上昇は血糖値と関係が深い
- インスリン異常や不規則な食生活などがヘモグロビンA1c上昇の要因になる
- ヘモグロビンA1cが高いと喉の渇きや疲労感などさまざまな症状を引き起こす
- 運動や食事の改善などによりヘモグロビンA1cを下げる効果が得られる
今回の記事を参考にして、ヘモグロビンA1cが高くならないよう適切に予防し、健康な生活を維持しましょう。
ヘモグロビンA1cは糖と結合したヘモグロビンの割合を算出したもの
ヘモグロビンA1cとは、血中内全体のヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合のことです。
ヘモグロビンは、一旦糖化すると寿命が来るまで元に戻りません。
血中糖度が高い状態であるとヘモグロビンの糖化が進み、それに伴ってヘモグロビンA1cが上昇します。
ヘモグロビンA1cは、血中糖度の高さを判断する重要な数値です。
ヘモグロビンA1cについて、以下の2点を中心に解説します。
- 過去2か月程度の血糖値の平均値を評価するのに有効
- 数値結果により糖尿病リスクを判断できる
ヘモグロビンA1cがそもそもどのようなものであるかを理解したうえで、上昇する問題点などを考慮しましょう。
過去2か月程度の血糖値の平均値を評価するのに有効
ヘモグロビンA1cは、過去2ヶ月程度の血糖値の平均値を評価する場合に有効な検査です。
血中糖度の検査といえば、血糖値の測定を連想する人も多いでしょう。
血糖値とは、血中の糖質の量を測定して得られる結果のことで食事後に急上昇するなど、変動が大きい特徴があります。
糖化ヘモグロビンはすぐにはなくならず、しばらく血中で活動します。
一時的な変動の影響が抑えられるため、血糖値よりも長期間の血中糖度の状態を測定するのに適しています。
糖尿病リスクなど血糖関連の疾病を判断する際には、ヘモグロビンA1cと血糖値の測定結果を組み合わせて判断するのが一般的です。
数値結果により糖尿病リスクを判断できる
ヘモグロビンA1cの数値の結果により、糖尿病リスクの判断が可能です。
一般的に、ヘモグロビンA1cの数値によって以下のような判断を行います。
- 正常値:5.9以下
- 境界型:6.0以上6.4以下
- 糖尿病型:6.5以上
正常値の結果であったとしても、5.9に近い高い値が出た場合には、生活改善が推奨されます。
境界型は、糖尿病予備群とみなされる範囲です。
生活習慣の見直しをして、血糖値を上げないように努める行動が推奨されます。
糖尿病型は、糖尿病に罹患している、あるいは罹患するリスクが高いと判断される数値です。
人によっては症状がみられない場合もありますが、医療機関による治療の開始が推奨されます。
ヘモグロビンA1cの結果により糖尿病に罹患するリスクを判断し、高い結果が出た場合は血糖値など他の検査結果も踏まえながら治療の可否を検討するのが一般的です。
ヘモグロビンA1cが10以上の場合は入院が必要な場合もある
ヘモグロビンA1cが10以上となった場合には、即座に入院をして治療を開始する場合もあります。
人によっては、10以上の検査結果が出ても無症状の場合がありますが、糖尿病リスクが高いと判断される水準です。
しかし、放置していると高い確率で病気に発展してしまうため、治療の開始が推奨されます。
ヘモグロビンA1cが10以上になった場合の基本的な対処や状況として、以下の2つの視点で解説します。
- 入院によりインスリン注射などの治療を即座に実施する場合もある
- ヘモグロビンA1cが12を超えると危険な状態と判断
医療機関の判断と指示に従いながら、適切な治療を受けましょう。
入院によりインスリン注射などの治療を即座に実施する場合もある
ヘモグロビンA1cが10以上の場合には、早急に入院をしてインスリン注射などの治療を実施する場合があります。
状態に応じて、インスリン注射をせずに飲み薬を利用して経過を見るケースもあります。
しかし、危険な状態であるのは間違いがないため、何らかの治療を開始するケースが多いです。
ヘモグロビンA1cが10以上の状態が継続すると、症状が無くても次第に目が見えづらくなったり、疲労感が消えなくなったりと異常が発生する可能性が高くなります。
ヘモグロビンA1cが10以上の場合は、危険な状態であると判断し、医療機関の指示に従って適切な治療を受けましょう。
ヘモグロビンA1cを下げるには、普段からの改善対策が必要となります。
特に食事面での見直しを考えられている場合は、こちらのページも参考にしてください。
ヘモグロビンA1cが12を超えると危険な状態と判断
ヘモグロビンA1cが12を超えると、さらに危険な状態であると判断されます。
人によって症状の出方には違いがありますが、主に以下のような異常がみられるケースが多いです。
- のどが異常に渇く
- 尿量および排尿の回数が増える
- 何もしていないのに体重が減少する
ヘモグロビンA1cが12以上の状態が継続すると、ケトアシドーシスと呼ばれる状態に陥っている可能性が高いと判断されます。
糖尿病の合併症の1つであり、緊急性が高いため早急に治療をする必要があります。
ヘモグロビンA1cが12を超える検査結果が出た場合は、医療機関と相談の上、早急に治療を開始しましょう。
ヘモグロビンA1cが上昇するのは血糖値の上昇と関係が深い
ヘモグロビンA1cが上昇するのは、血糖値の上昇と関係が深いと考えられています。
ヘモグロビンA1cは血中の糖化ヘモグロビンの割合であるため、血糖値が高いとそれに伴ってヘモグロビンA1cも高くなるケースが多いです。
ヘモグロビンA1cが上昇する要因として、主なものを以下に6項目紹介します。
- インスリンの分泌量および働きの低下が原因の場合
- 過度なストレスを継続して受ける
- 食習慣が乱れる
- 運動習慣がない
- 遺伝による先天性
- 加齢による影響
ヘモグロビンA1cが上昇する要因を理解し、適切な対処法を取り入れるための参考にしてください。
インスリンの分泌量および働きの低下が原因の場合が多い
インスリンの分泌量および働きが低下すると、ヘモグロビンA1cの上昇につながります。
インスリンとは、膵臓で分泌されるホルモンのことで、食事により血液中のブドウ糖が増えると分泌が促進されます。
したがって、インスリンが正常に働かないと血中のブドウ糖が処理されずに残ってしまい、ヘモグロビンA1cの上昇につながってしまいます。
インスリンが正常に働かない要因にはさまざまあり、中には先天的にインスリンの分泌が不足している人もいます。
しかし、生活習慣の乱れによる後天的な要因でインスリンの働きが低下するケースが多いです。
過度なストレスを継続して受ける
強いストレスを継続して受け続けると、ヘモグロビンA1cの上昇につながります。
ストレスを感じると交感神経が刺激されて、血糖値を上昇させる以下のようなホルモンの分泌が促進されます。
- グルカゴン
- アドレナリン
- 甲状腺ホルモン
さらに、ストレスを受けると分泌量が増えるコルチゾールも、血糖値を上昇させる作用のあるホルモンです。
ストレスを発散させるために暴飲暴食をしてしまうなど、生活リズムが乱れてしまう場合が多いのも問題です。
ストレスを解消できる方法を取り入れ、リラックスして過ごせるようにすると、ヘモグロビンA1cの上昇を抑えられます。
食習慣が乱れる
食生活の乱れも、ヘモグロビンA1cを上昇させる要因になります。
特に、糖質を多く含む炭水化物を中心にした食事をしていると、ヘモグロビンA1cが高くなるケースが多いです。
果物はビタミンが豊富でバランスの良い食事に有効だと考えられがちですが、種類によっては糖質を多く含むものもあります。
普段の食生活で、炭水化物に偏らずにバランスよく栄養素を摂取するのが大切です。
運動習慣がない
運動の習慣がない人も、ヘモグロビンA1cが高くなる場合が多いです。
活動によって消費されたエネルギーは、血中のブドウ糖を取り込んで補給されます。
しかし定期的に運動をしないと、体内のエネルギー消費が十分におこなわれません。
特に加齢が進むと基礎代謝が少なくなっていくため、エネルギー消費量も減少します。
若い頃は基礎代謝が高いためにブドウ糖が消費されていたとしても、中高年で同じ生活をしているとヘモグロビンA1cが高くなってしまう場合が多いです。
定期的な運動習慣がない人は、エネルギー消費が不足してヘモグロビンA1cが高くなってしまいます。
遺伝による先天性のケースも
遺伝により、先天的にインスリンの働きが十分得られずにヘモグロビンA1cが高く維持されてしまう人もいます。
日本人は、遺伝的にインスリンの働きが弱い人が多いとされています。
血糖値やヘモグロビンA1cの値を調べる中で、遺伝により糖尿病リスクが高いと判断される場合があります。
先天性であると判断された場合は、医療機関の診断やアドバイスに従って、治療を受ける必要があるでしょう。
加齢による影響もある
ヘモグロビンA1cの上昇は、加齢が影響する場合もあります。
前述の通り、加齢が進むと基礎代謝が減少してエネルギー消費量が減る点も1つの要因です。
加えて、加齢により各臓器の働き自体が衰えてくる点も影響していると考えられています。
年齢を重ねるごとに、身体の衰えが進むのは避けられません。
高齢になるにつれて、普段の食生活や運動習慣により配慮して、ヘモグロビンA1cを高めない努力が必要になります。
ヘモグロビンA1cが高いとさまざまな症状を引き起こす
ヘモグロビンA1cが高いと、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。
血糖値やヘモグロビンA1cが高い状態は、糖尿病に罹患している可能性が疑われ、現れる症状もさまざまです。
しかし、人によっては自覚症状がない場合もあるため、ヘモグロビンA1cや血糖値が異常値を示した場合には症状がなくても対処を検討する必要があります。
ヘモグロビンA1cが高いと発生する症状のうち、主なものを以下に4例紹介します。
- 排尿の量と回数が増え喉が渇く
- だるさや疲労を覚え吐き気や嘔吐を併発する
- 意識障害など重篤な状態になる場合も
- 糖尿病に罹患しさまざまな合併症の原因になる
以上のような症状がみられた場合には、血糖関連の異常を疑い、受診を検討するとよいでしょう。
排尿の量と回数が増え喉が乾く
ヘモグロビンA1cが高いと、排尿の量や回数が増え、喉が異常に渇く症状がみられる場合が多いです。
血中糖度が高いと、腎機能に影響がおよび普段よりも尿が生成されます。
排尿量の増加や喉の渇きは、糖尿病の初期症状の代表例です。
普段よりもトイレに行く回数が増えたり、水分が欲しいと頻繁に感じたりした場合は、ヘモグロビンA1cなどの検査を検討した方がよいでしょう。
だるさや疲労を覚え吐き気や嘔吐を併発する
ヘモグロビンA1cが高い状態が続くと、だるさや疲労を覚え悪心や嘔吐を併発する場合があります。
インスリンの働きが不足し、血中の糖質をエネルギーに変換する作業が不足すると、恒常的にだるさや疲労感を覚えます。
さらに、糖尿病に罹患した人は体内の環境を調整している迷走神経に異常をきたし、糖尿病性胃麻痺になるケースが多いです。
理由なく吐き気や嘔吐の増加がみられた場合は、糖尿病の初期症状として警戒したい状態です。
しかし、疲労感や吐き気などはヘモグロビンA1cの上昇ではなく他の要因でも発生する症状であるため、一概に判断できません。
身体に異常を感じた場合は、早めに医療機関に相談して判断を求めましょう。
意識障害など重篤な状態になる場合も
ヘモグロビンA1cの高い状態が続くと、意識障害など重篤な状態に陥る可能性があります。
インスリンの働きが弱まっている状態で、感染症や暴飲暴食およびストレスなど血糖値を高める要因が重なると、意識障害が起こる場合があります。
状況によっては前触れなく発生する可能性もあるでしょう。
そのため、血糖値やヘモグロビンA1cの値が高い結果が出ている人は、普段から急激な血糖上昇を引き起こさないように行動する必要があります。
糖尿病に罹患しさまざまな合併症の原因になる
ヘモグロビンA1cが高い状態が続くと、糖尿病に罹患しさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
糖尿病の合併症の代表例は、以下の3種類です。
- 糖尿病性神経障害:手足の痺れや感覚の鈍化
- 糖尿病性腎症:腎臓の働きの悪化
- 糖尿病性網膜症:視力の低下が起こり失明の可能性がある
他にも、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性もあり、命に関わる危険な状態に陥るリスクが増します。
糖尿病そのものの症状に加え、以上のような合併症が発生するのが糖尿病の恐ろしい点です。
ヘモグロビン異常や血糖値の上昇がみられた場合には、糖尿病に罹患する前に早めに対策を取り予防に努めましょう。
・食後や空腹時の血糖値を抑制する
・インスリンの効き目を高め分泌を促す
など、糖尿病予防におけるポリフェノールの研究が進んでいます。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。
薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究
高くなりすぎたヘモグロビンA1cを下げる方法を理解しよう
前述のとおり、ヘモグロビンA1cが高くなりすぎた状態が継続すると、糖尿病をはじめさまざまな症状が現れます。
ヘモグロビンA1cの検査結果が高かった場合には、適切な対処をして正常値に近づける努力が必要です。
状況に応じて医療的な治療を開始する場合もありますが、一般的には日常生活の見直しで改善を目指します。
高くなりすぎたヘモグロビンA1cを下げるための方法として、主なものを以下に3点紹介します。
- 運動習慣を取り入れる
- 食事の取り組み方も重要
- 医療機関を最大限に活用する
病気になる前に適切な対処をして、予防するのが肝要です。
運動習慣を取り入れる
ヘモグロビンA1cを下げるためには、運動する習慣を取り入れるのが有効です。
運動によりエネルギー消費が促進され、血中の糖質消化を助けます。
インスリンの働きを助ける効果もあるため、血中糖質の処理が促進されます。
有酸素運動とは、呼吸をしながら長時間継続して実施する運動のことで、ジョギングやウォーキングなどが該当します。
筋力トレーニングは、身体の基礎代謝を高める効果があるため、効率よくエネルギーを消費する身体づくりにつながります。
ヘモグロビンA1cを下げるために運動習慣を取り入れる際は、無理のない範囲で継続できる内容にしましょう。
食事の取り組み方も重要
食事への取り組み方も、ヘモグロビンA1cを下げるうえで重要な点です。
糖質の吸収が早い食事や嗜好品を極力避けて、ゆっくりと糖質の吸収が行われる食材を優先します。
たとえば、甘いジュースは急速に血糖値を高める恐れがあります。
水分補給の目的でジュースを多く摂取していると、ヘモグロビンA1c上昇のリスクが高いです。
ゆっくり噛んで食べるといった、基本的な取り組みも効果があります。
ヘモグロビンA1cの上昇を抑えるため、食事の摂り方にも十分配慮して取り組みましょう。
医療機関を最大限に活用する
ヘモグロビンA1cの上昇が顕著にみられる場合は、医療機関に相談する必要があります。
糖尿病に罹患している場合には、長期的に治療を継続する必要があるため、通いやすく信頼できる医療機関を選ぶ方がよいです。
インスリン注射などで体内のインスリン分泌を補ったり、服薬治療を開始したりするケースが多くみられます。
ヘモグロビンA1cの結果が高かった場合は、信頼できる医療機関に相談しながら治療を進めて効果的な対策を講じるのが大切です。
ヘモグロビンA1cが10以上になったら入院を視野に入れて早急に対処しよう
ヘモグロビンA1cは、血糖値と併せて糖尿病リスクを判断する際に有効な検査です。
ヘモグロビンA1cとは、血中で糖と結合したヘモグロビンの割合を表した数値のことで、血糖値よりも長期的な視野で血中の状態を診断できます。
検査結果が10以上になった場合は、人によっては入院をして治療を受ける必要があります。
症状が出ない人もいるため、状態をみながら入院の是非を判断するのが一般的です。
ヘモグロビンA1cが上昇する理由には、インスリンの分泌異常や過度なストレスなど、さまざまなものが考えられます。
他の病気の可能性もあるため、医療機関の診断を受けながら適切に対処するのがよいでしょう。
高くなりすぎたヘモグロビンA1cを下げるためには、運動面や食事面の改善が欠かせません。
ヘモグロビンA1cが高くなってきた場合は、糖尿病になるリスクを抑えるため、医療機関に相談しながら早急に対策を取るのが重要です。
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