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血糖値が高いと病気になる恐れがある!血糖値が上がるしくみや対策を解説

血糖利が上がる仕組みと対策

健康診断で血液検査を受け、血糖値が高いと言われた経験がある人もいるでしょう。

血糖値の高い状態が続くと体に悪影響を及ぼし、病気になる恐れがあります。

今回は血糖値が上がるしくみや引き起こされる病気、数値を下げるための対策について解説します。

この記事でわかること
  • 血糖値が上昇するしくみを解説
  • 血糖値が高くても自覚症状のない人が多い
  • 血糖値の高い状態が続くと病気を引き起こす
  • 血糖値を下げるためには食事や運動などの対策が必要

血糖値が高めの人、数値を下げる方法について知りたい人はぜひ参考にしてください。

目次

食事を取った後に血糖値が上昇するしくみを詳しく解説

インスリンの分泌で抑える

最初に、食事を取った後に血糖値が上昇するしくみについて解説していきましょう。

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことです。

食事や飲み物から摂取した糖質は酵素の働きによって消化され、血管内に吸収されます。

吸収された糖質は肝臓に運ばれ、ブドウ糖に分解されます。

それにより血液中のブドウ糖が増え、血糖値が上がるしくみです。

食事により血液中にブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌されます。

インスリンとは血糖値を下げ、一定の範囲に保つ働きがあるホルモンのことです。

糖質がエネルギーに変換されるのを促すため、血液中のブドウ糖が減って血糖値が下がります。

通常は食事で血糖値が上昇しても、上限が140mg/dL以下になるように維持されます。

健康な人は食後2時間程度で元の数値まで下がり、空腹時の血糖値は70〜110mg/dL程度です。

参照元:e-ヘルスネット – 厚生労働省

しかし、インスリンの分泌量や作用が不足していると血糖値の高い状態が続きます。

血糖値が正常範囲よりも高い状態を高血糖と呼び、これには生活習慣が関係しているといわれています。

高血糖には食事や運動などの生活習慣が大きく影響している

食事や運動などの生活習慣は血糖値に大きく影響を及ぼし、高血糖を引き起こす可能性があります。

以下は、高血糖になる原因の具体例です。

  • 糖質が多い食事
  • 飲み過ぎや食べ過ぎ
  • 過度な飲酒
  • 肥満
  • 加齢
  • 慢性的な運動不足
  • 過度なストレスなど

糖質が多い食事や飲み過ぎ、食べ過ぎにより血液中の糖質が増え、血糖値が急激に上昇します。

過度な飲酒や肥満、加齢はインスリンの分泌量を減少させる要因の1つです。

筋肉にはインスリンの効きを良くする働きがあり、慢性的な運動不足によって筋肉量が少なくなると血糖値に影響します。

他にも過度なストレスは交感神経を活発にし、血糖値を上昇させる以下のホルモンを分泌させます。

  • グルカゴン
  • アドレナリン
  • 甲状腺ホルモン

これらの生活習慣は、インスリン抵抗性を引き起こす恐れがあります。

インスリン抵抗性とは作用が十分に発揮できない状態のことで、インスリンの効きが悪くなります。

血糖値がなかなか下がらないため、より多くのインスリンが必要です。

参照元:e-ヘルスネット – 厚生労働省

血糖値はさまざまな原因で上昇しますが、数値が高めでも症状を感じない場合があります。

血糖値が200mg/dL前後でも自覚症状を感じない人が多い

HbA1cで血糖の状態を把握

高血糖の程度が軽いと自覚症状がない場合があり、血糖値が200mg/dL前後でも症状を感じない人が多くいます。

血糖値の正常範囲は、以下のとおりです。

種類数値
空腹時血糖値70mg/dL〜109mg/dL
食後の血糖値140mg/dL未満

血糖値が300mg/dL〜400mg/dLを超えると、以下のような症状が現れます。

  • 喉の渇き
  • 頻尿
  • トイレの回数が増える
  • 物忘れ
  • 倦怠感
  • 体重の減少
  • 集中力の低下など

さらに高血糖が進むと意識障害が起こったり、昏睡状態になったりする場合もあります。

血糖値以外に血糖の状態を把握する指標として参考になるのが、HbA1c(ヘモグロビンA1c)です。

HbA1cは血液中の状態を表す指標で、過去2ヵ月程度の血糖値の平均が反映されます。

HbA1cの正常範囲は、5.6%未満が目安です。

健康診断などで血糖値やHbA1cが正常範囲を超えている人は、医療機関の受診を勧められる場合があります。

しかし数値が正常範囲より高くても自覚症状がないため、放置している人もいるでしょう。

血糖値の高い状態が続くと、体にさまざまな悪影響を与えます。

血糖値の高い状態が続くと糖尿病や動脈硬化を引き起こす原因になる

血糖値が高い状態が続くと血管や神経が損傷し、糖尿病や動脈硬化などの病気を引き起こす原因となります。

高血糖により血液の粘度が高くなって血流が悪化し、酸素や栄養が行き届かなくなって血管がもろくなってしまうためです。

結果として血管が詰まったり、血栓ができたりして血管の病気にかかるリスクが高まります。

空腹時血糖値が正常な人でも、血糖値スパイクを起こしている可能性もあります。

血糖値スパイクとは食後の血糖値が一時的に上昇し、急降下する現象のことです。

高血糖と血糖値スパイクはどちらも血管を傷つけ、さまざまな病気を引き起こします。

ここからは高血糖が引き起こす病気について、詳しく解説していきましょう。

糖尿病は食後に上がった血糖値が下がらずに高血糖の状態が続く

糖尿病の種類と基準

糖尿病はインスリンの分泌量の不足や作用の低下により食後に上がった血糖値が下がらず、高血糖の状態が続く病気です。

すい臓機能の低下により、血液中の糖質が取り込まれないまま残ってしまいます。

糖尿病の種類は、以下の2つです。

種類1型糖尿病2型糖尿病
発症する年齢子供や若年層に多い40歳以上の中高年に多い
原因自己免疫疾患など遺伝的要因と生活習慣などの環境要因が重なって発症
体型やせ型が多い比較的肥満型が多い
治療インスリンの自己注射食事療法、運動療法、薬物療法

患者数は2型糖尿病のほうが圧倒的に多く、9割以上を占めています。

血液検査により血糖値やHbA1cの数値を測定し、診断が行われます。

糖尿病と診断される基準は、以下のとおりです。

指標数値
空腹時血糖値126mg/dL以上
食後2時間の血糖値200mg/dL
HbA1c6.5%以上

ただしHbA1cが6.5%未満で、以下のいずれかを満たす人は、糖尿病予備群と診断されます。

指標数値
空腹時血糖値110mg/dL〜125mg/dL
経口ブドウ糖75gを負荷後2時間の血糖値140mg/dL〜199mg/dL

参照元:糖尿病 – 糖尿病情報センター

2型糖尿病を発症するリスクが高まるため、生活習慣の見直しが必要です。

糖尿病は全身の神経や血管に影響を及ぼし、以下のような合併症を引き起こす可能性もあります。

  • 糖尿病神経障害
  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 高浸透圧高血糖症候群など

上記のうち神経障害と網膜症、腎症は糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

合併症の中には命に危険を及ぼす病気もあり、予防と早期の発見が大切です。

高血糖の状態が続くとプラークが形成されて動脈硬化が進行する

高血糖の状態が続くとコレステロールが蓄積してプラークと呼ばれる塊が形成され、動脈硬化が進行します。

動脈硬化とは動脈が硬くなり、弾力が失われた状態のことです。

動脈は心臓から全身に血液を送る血管であり、体中に酸素や栄養を届ける働きをしています。

通常はしなやかな弾力がありますが、以下のような危険因子により硬くなります。

  • 老化
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 脂質異常症
  • 高血圧など

高血糖の人は脂質異常症や高血圧を併発している場合が多く、動脈硬化が進行するリスクが高まります。

動脈硬化には、以下の3種類があります。

  • 粥状(じゅくじょう)アテローム動脈硬化
  • 細動脈硬化
  • メンケベルク型動脈硬化(中膜硬化)

一般的に動脈硬化というとアテローム動脈硬化を指す場合が多く、冠動脈や主要な臓器の動脈に起こります。

初期の動脈硬化にはほとんど自覚症状がなく、多くの人は健康診断や血液検査で発見されます。

症状が進行した後の自覚症状は、以下のとおりです。

  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 階段の昇り降りによる動悸
  • 足のしびれや痛みなど

症状を感じる頃には、動脈硬化がかなり進行している恐れがあります。

さらに動脈硬化によって血管が狭くなったり、血流が悪くなったりするため、さまざまな病気を引き起こします。

以下は、動脈硬化が原因で発症する病気の具体例です。

  • 脳梗塞
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 腎硬化症など

動脈硬化は体中に起こる恐れがあり、部位によって発症する病気が異なります。

進行すると命に関わる病気につながる可能性があるため、予防と適切な治療が大切です。

血糖値スパイクにより心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まる

血糖値スパイクが繰り返し起こると血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を発症するリスクが高まります。

以下は、血糖値スパイクによって引き起こされる病気の具体例です。

  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 糖尿病
  • 動脈硬化など

血糖値スパイクは血糖値がなかなか下がらず、食後高血糖につながります。

食後高血糖とは食後の血糖値が異常に上がり、食事から2時間たっても血糖値が140mg/dL以上ある状態のことです。

糖尿病を発症するリスクが高いため、隠れ糖尿病とも呼ばれています。

血糖値スパイクが起こる原因は、インスリンの分泌量不足または作用の低下です。

しかし、以下のような生活習慣も大きく影響しています。

  • 糖質の多い食事
  • 早食い
  • 運動不足
  • 睡眠不足

自覚症状はほとんどありませんが、食後の眠気や頭痛を感じる場合があります。

血糖値スパイクは食事から数時間たつと数値が正常に戻るため、血液検査では発見が難しい症状です。

やせている人や血糖値が正常範囲の人にも起こる可能性があり、見落とす場合も多いでしょう。

血糖値が正常値にもかかわらず、HbA1cの数値が高めの人は血糖値スパイクが起こっている可能性があります。

病気の発症を防ぐためには、血糖値を下げるのが大切です。

食事や運動など生活習慣の改善で血糖値を下げるための方法を紹介

血糖値を下げる方法

血糖値は生活習慣が大きく関わっており、食事や運動など生活習慣の改善で血糖値を下げるための方法は以下の4つです。

  • 1日3食を規則正しく食べる
  • 早食いや食べ過ぎを避ける
  • 食品選びや食べる順番にも気を配る
  • 食後に運動する習慣を付ける

病気の発症を防ぐには、血糖コントロールが重要な役割を果たします。

血糖コントロールとは、血糖値をできる限り正常な数値に近付けることです。

高血糖を改善して血糖値スパイクを防げるため、病気の発症や症状の進行を避けられます。

血糖コントロールの基本となるのは食事と運動であり、今回紹介する方法が血糖コントロールに役立ちます。

具体的な対策について1つずつ解説していきましょう。

1日3食を規則正しく食べて食事の間隔が空きすぎないようにする

血糖値を安定させるためには1日3食を規則正しく取り、食事の間隔が空きすぎないようにするのが大切です。

食事の間隔が短すぎると血糖値が下がりきらず、血糖値の高い状態が続きます。

前の食事から最低でも2〜3時間空け、食事の間隔がなるべく等間隔になるように心がけましょう。

反対に空腹の時間が長すぎても食べ過ぎや早食いにつながり、血糖値が急上昇する原因になります。

朝食を食べないと昼食後に血糖値が急激に上がってしまうため、食事は抜かないようにします。

夕食を夜遅くに食べると血糖値の上昇につながるため、就寝の2〜3時間前までに済ませるのが理想です。

夜遅くの食事は睡眠や体内時計に関係するメラトニンというホルモンが分泌され、血糖コントロールが乱れると考えられています。

就寝の2〜3時間前に夕食を取るのが難しい人は昼食と夕食の間に軽食を食べ、夕食を軽くする方法もあります。

食事は早食いや食べ過ぎを避けてゆっくりよくかんで食べる

血糖値の急上昇を避けるためには早食いや食べ過ぎを避け、ゆっくりよくかんで食べるのが大切です。

早食いすると満腹中枢が働く前に食べ切ってしまい、食べ過ぎにつながります。

満腹中枢とは血糖値の上昇を感知して、体に食欲を抑えるように指令を出す神経のことです。

食事を開始してから満腹中枢が機能するまでに約15分かかるため、最低でも食事には15分以上かけるようにしましょう。

かむ行為には以下のような効果があり、血糖値に良い影響を与えます。

  • インスリンやインクレチンの分泌を促す
  • 満腹感につながり食事量を抑えられる
  • 食後のエネルギー消費量が増える

インクレチンは小腸から分泌されるホルモンであり、すい臓からインスリンが分泌されるのを促します。

よくかんで食事をすると満腹中枢が刺激されて満腹感が感じられるため、食事量を抑えるのに効果的です。

さらにかむ回数が多いほど胃や小腸の消化活動が活発になり、食後のエネルギー消費量が増えます。

厚生労働省が推奨しているかむ回数は、一口あたり30回です。

参照元:肥満予防法 – 厚生労働省

よくかんで食べると食事時間が長くなり、血糖コントロールに役立ちます。

食事の際は血糖値の上昇を抑える食品を選び食べる順番にも気を配る

血糖値上昇を抑える食品選び

食事の際は血糖値の上昇を抑えられるGI値の低い食品を選び、食べる順番にも気を配る必要があります。

GI値とは、食後の血糖値の上昇速度を表す指標のことです。

ブドウ糖を摂取した場合の上昇速度を100とし、GI値の低い食品ほど食後の血糖値がおだやかに上昇します。

食品は、GI値によって以下の3つに分類されます。

分類GI値
低GI食品55以下
中GI食品56以上69以下
高GI食品70以上

低GI食品は食後に血糖値が急上昇するのを抑えられるため、血糖値が高めな人は積極的に取り入れたい食品です。

低GI食品の具体例には、以下が挙げられます。

  • きのこ
  • 海藻
  • 大豆食品
  • 肉や魚
  • 乳製品
  • 精製されていない麺類やパンなど

日本人の主食である白米は高GI食品に分類されるため、代わりにそばや玄米を選ぶと良いでしょう。

他にも食物繊維やタンパク質を多く含む食品は、糖質の吸収をおだやかにする作用が期待できます。

タンパク質には、インクレチンの分泌を促進させる働きもあります。

インクレチンは血糖値を上昇させるグルカゴンを抑制するため、血糖値を下げるのに効果的です。

食べる順番は先に食物繊維やタンパク質の多いおかず、後から炭水化物を食べます。

最初に野菜を食べる食事方法はベジファーストと呼ばれ、食後の高血糖を防ぐのに有効です。

食物繊維の多い食品は食べ応えがあるため、食べ過ぎも防げます。

食後に運動する習慣があると血糖コントロールに役立つ

血糖コントロールに適した運動

運動には血糖値の上昇を抑える効果があり、食後に運動する習慣があると血糖コントロールに役立ちます。

運動によって血液中の糖分が筋肉に運ばれ、エネルギー源として使われるためです。

インスリンの効きを良くする働きもあり、血糖値を下げられます。

血糖コントロールに適した運動は、有酸素運動と筋肉トレーニングです。

有酸素運動は、ウォーキングやジョギングなどの長時間継続できる全身運動を表します。

週3回以上、ややきついと感じるぐらいの運動をするのが推奨されています。

筋肉トレーニングとは筋肉に負荷をかけ、筋力を向上させる運動のことです。

筋肉はエネルギーの貯蔵庫であり、血糖値を調整する働きがあります。

そのため筋肉が増えるとインスリンの効きが良くなり、インスリン抵抗性が改善します。

参照元:e-ヘルスネット – 厚生労働省

推奨される筋肉トレーニングの頻度は、週2〜3回です。

足や背中、腰などの大きな筋肉を中心に全身の筋肉を使ってトレーニングを行います。

運動に最適なタイミングは、血糖値の上昇がピークになる食後1時間以内です。

継続しないと3日程度で効果が消えてしまうため、無理のない運動を続けましょう。

血糖値が高い状態が続くとさまざまな病気を引き起こす原因になる

血糖値の高い状態が続くと体の血管や神経が損傷するため、さまざまな病気を引き起こす原因になります。

高血糖が原因で発症する代表的な病気は、糖尿病や動脈硬化などです。

血糖値の高い状態が続くと糖尿病の合併症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクも高まります。

病気の発症や症状の進行を防ぐためには、血糖コントロールが必要になります。

血糖コントロールは、食事や運動などの生活習慣を整えるのが基本です。

食事は1日3食を規則正しく取り、食品選びや食べる順番にも気を配ると血糖値の急上昇を防げます。

継続的な運動には、血糖値を下げる効果が期待できます。

血糖値が高めの人は今回紹介した方法で血糖値を下げ、病気の発症や症状の進行を予防しましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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