糖尿病は早期の発見で合併症の発症を防ぎ、健康な人と同じような生活が送れます。
しかし、血糖値の高さを医師から指摘されても、具体的な対策方法が分からない人も多いのではないでしょうか。
原因が明確に分からず自覚症状がないため、どのように生活習慣を代えたら良いか分からないと思っている人も多いでしょう。
この記事では、糖尿病の種類や糖尿病の原因について解説します。
- 糖尿病とはどのような病気か
- 糖尿病の原因は何か
- すぐに取り入れられる糖尿病悪化を防ぐ方法
働き盛りの40代の男性は未治療の割合が他の年代よりも高く、重症化した段階で受診となる例が珍しくありません。
糖尿病の悪化を防ぐ方法についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
糖尿病とはどのような病気か
糖尿病は、血液中のブトウ糖が体内の細胞に吸収されずに血管内にあふれている病気です。
生活習慣病の1つで、初期症状はほとんどありません。
進行すると全身の血管がダメージを受け、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害の3大合併症を発症するリスクがあります。
重症の場合は透析をしたり、失明したりし日常生活が一変してしまいます。
1型糖尿病と2型糖尿病
糖尿病には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、インスリンを作っている膵臓の一部が急速に破壊され、まったく生成できない状態を指します。
インスリンが生成されないと、血糖値が上昇し続け昏睡状態となる危険があります。
これまで血糖値の指摘を受けた経験のない人が発症する例もあり、急激な体重減少や強い口喝感には注意が必要です。
膵臓の一部の細胞が壊れる原因は、まだすべては明らかになっていません。
治療法は、インスリンの自己注射で血糖値をコントロールし、完治は困難です。
糖尿病全体では約10%程度を占め、2型糖尿病との違いは、生活習慣とは無関係なことです。
2型糖尿病
お菓子やケーキなどの甘いものや米などの炭水化物を食べると、胃や小腸などでグルコースに分解され、体内に取り込まれます。
健康な人ではグルコースの血液内濃度が増えると、膵臓からインスリンが分泌されます。
そのため血液内のグルコースが高濃度となり、血管の壁を傷つけボロボロにし、手足が冷たく痛みを感じるようになるなど悪影響を及ぼします。
日本人の多くが2型糖尿病です。
2型糖尿病が発症する原因
スーパーやコンビニに行けば手軽に摂取できる食べ物がたくさんあります。
それらの食品の多くに糖質や脂質、塩分が多く入っており、摂取エネルギーが過剰となる傾向にあります。
しかし日本人の大多数が慢性的な運動不足であり、摂取したエネルギーを消費できずに体に貯めこんでいる状態です。
体にため込み肥満となった結果、糖尿病発症リスクを高めてしまいます。
2型糖尿病の原因には、主に以下のようなものが挙げられます。
- 肥満
- ストレス
- 食べ過ぎ
- 運動不足
一つずつ解説していきます。
原因①肥満
近年、食習慣の変化や運動量の不足により、肥満の人が急増しています。
糖尿病をはじめ、高血圧や心疾患などの生活習慣病を誘発する要因となる、体脂肪を過剰に蓄積している人も多いです。
肥満度の判定には国際的な標準指標のBMI(Body Mass Index)=[体重(kg)]÷[身長(m)2]を使用します。
標準値はBMIは22.0で、男女共通の指標です。
BMIが25.0以上で肥満と判断され、1〜4度までステージが分類されています。
- BMI18.5未満 低体重(やせ)
- BMI18.5以上25未満 普通体重
- BMI25以上30未満 肥満(1度)
- BMI30以上35未満 肥満(2度)
- BMI35以上 高度肥満
しかしこの数値だけでは体脂肪率が高い状態の隠れ肥満は分からないため、一つの指標として捉えます。
肥満になると膵臓から出るインスリンの血糖降下作用が低下し、高血糖の状態が続くため、糖尿病を発症します。
アジア人は糖尿病になったとき、欧米人と比較してインスリンの分泌が少なくなる場合が多いです。
そのため、内服治療やインスリンの注射率が高くなる傾向にあります。
肥満は食品加工の保存技術の発達やネット社会の発展、コンビニエンスストアの増加など、環境による要因も深く関わっています。
そのため肥満は個人の責任だと捉えてストレスをため込むと、さらに症状を悪化させる恐れがあります。
原因②ストレス
日本人の糖尿病の発症の原因はこれまでに、食生活や肥満、慢性的な運動不足が指摘されています。
さらにストレスも強く影響していると、近年判明しました。
ストレスが心身に加わると体が危機を感じ、対抗するためのホルモンが分泌されます。
血糖値を上昇させるホルモンは数種類ありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンだけです。
カナダで行われた研究で、糖尿病未発症の35~60歳の女性を約9年間の追跡調査したものがあります。
日常的に不安にさらされると、高血糖の状態が続いてしまいます。
さらにストレスを緩和するために飲酒量が増えたり、甘いものを摂取する機会が増えたりし、血糖がより上昇する傾向にあります。
原因③食べ過ぎ
食生活の乱れで糖尿病を発症する人の多くが、糖質の摂取過剰を指摘されています。
厚生労働省の日本人の食事摂取基準によると、糖質の理想的な摂取量は男女ともに1日に287.5gです。
多くの菓子パンには、糖質の成分表示はありません。
しかし、炭水化物をおおよその糖質の量と考えると、菓子パン1個あたりの40~60gも糖質が含まれています。
さらには、清涼飲料水の飲みすぎも糖質の摂取過剰の一つです。
清涼飲料水には20~50gもの糖質が含まれています。
しかし、味の良さや飲みやすさで、つい手に取ってしまいがちです。
清涼飲料水の1人あたりの年間消費量は176.8Lで、国民一人当たり毎日483ml飲んでいる計算になります。
清涼飲料水をほぼ毎日摂取した人を対象に調べた研究では、5年後の糖尿病発症率に関連があるという研究結果もあります。
原因④運動不足
筋肉量が減ると筋肉内の糖の消費量が減るため、血糖値が上がる要因となります。
インスリンは血糖降下作用の他に、細胞の成長を促す作用があります。
血糖値が急上昇や急降下を繰り返して、インスリンの分泌量低下がみられると筋肉細胞の成長が滞ってしまう危険性があります。
様々な要因によるインスリンの働きの悪化が糖尿病をまねきます。
インスリンの分泌量を適正にしたり、効き目を高める工夫を知っておくとよいでしょう。
例えばポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンには、インスリンの分泌を促す作用が確認されています。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
糖尿病の悪化を防ぐ方法
これまでの生活習慣を変えるのは、簡単ではありません。
アルコールをたくさん飲んだり、惣菜ばかり食べたりするのは良くない食生活だと多くの人が知っているでしょう。
しかし、肥満や糖尿病の患者数は横ばいで経過している現状があり、治療継続の難しさが分かります。
怖がる必要はなく、生活の中に少しの工夫を取り入れ、数年後の生活を変えていきましょう。
ここからは、糖尿病の悪化を防ぐ方法を解説していきます。
食生活を改善するには
日常で、無理なく取り組めるようにするのが重要です。
野菜ばかり摂取し炭水化物を一切摂らないなど、偏った食事にならないようにしましょう。
低糖質食品を取り入れる
最近、注目を集めている低糖質の食品を活用し、糖質の摂り過ぎを防ぎましょう。
それにより、糖質摂取で脳から快感ホルモンであるドーパミンが分泌されるのです。
低糖質のものを摂取する習慣をつけ炭水化物の摂取を控えると、脳と味覚がリセットされます。
血糖値の乱高下を防ぐ
麺類や丼物を好んで食べる人は、血糖値が急上昇した直後に急降下する現象が起きやすくなります。
これは血糖が乱高下している状態のため、血管にダメージを与え続け動脈硬化や心筋梗塞の要因となります。
食後の血糖値がゆるやかに下降するように、よく噛める食品を取り入れたり、サラダなどの野菜類から食事を始めたりしましょう。
主食の食べ方
炭水化物の取り入れ方を考え直すのは、血糖値をコントロールする上で最適な方法です。
血糖の吸収速度を緩めるために、食物繊維がたっぷり入った全粒穀物を取り入れると良いでしょう。
- 白米は雑穀や玄米などをブレンドして炊き、量は半分にする
- カレーライスや牛丼などは意識的にごはんの量を減らす
- パンは全粒粉やライ麦を選択する
- 大豆粉などを使用した低糖質パンもおすすめ
- 菓子パンが食べたいときは、小さくカットして一気に食べないようにする
- 麺類は食物繊維やミネラルを多く含むそば粉の割合が高いそばを選ぶ
- パスタは少量の摂取にし、サラダやスープ付きのセットにすると良い
- 全粒粉パスタもおすすめ
- 調理の際はオリーブオイルの入れすぎに注意する
太らないような間食をする
間食はお菓子のみと決めずに、栄養摂取の一つにすると良いでしょう。
ポイントは、1日約200Kcal以内におさめることです。
おすすめの間食は、下記の通りです。
- タンパク質が豊富なヨーグルトやチーズ
- ゆで卵やナッツ類
- 魚肉ソーセージや乾物
- 小さい玄米入りのおにぎり
食べ方の注意点
- 個包装に分かれた食べきりサイズのものを選び、数を決めて食べる
- 少量をゆっくりと噛んで食べる
- お菓子は目のつかない場所にしまっておく
一切スイーツを食べないのはストレスがたまるため、週に1〜2回などと回数を決めて食べるようにしましょう。
2型糖尿病の初期段階であれば、食事や運動治療に取り組むことで、すい臓の機能が回復する方もいらっしゃいます。
特に普段の食事で意識して摂取しておきたい食材や成分についてまとめていますの、こちらの記事も参考にしてください。
インスリンの働きを高める食材、成分
楽しみながら体を動かす
普段体を動かしていない人が水泳やランニングなど、負荷の強い運動を取り入れると挫折しやすいです。
普段の動作に少しだけ負荷を加えて、運動量アップを目指すと良いでしょう。
食後に体を動かすと血糖値の上昇が緩やかになるため、より効果が期待できます。
何も運動をしない状態よりも、1分でも2分でも体を動かした方が血糖値が安定するため、習慣化できるまでこつこつと取り組んでいきましょう。
- 最寄り駅より1つ手前で降りて歩く
- 休みの日は歩いて買い物に行く
- 犬との散歩の距離を今より伸ばす
- 立ったままテレビを見る
- 子どもと鬼ごっこをする
- タオルを使って伸びをする
- ストレッチをする
- 座ったままの時間を減らす
- 座っている間、両脚を上げ下げしたり足の指を開いたり閉じたりを繰り返す
- 家中、掃除機をかける
- ラジオ体操をする
下半身を中心にトレーニングを行うと、より効率的に筋力アップできるでしょう。
筋力がアップしてきたら、有酸素運動のウォーキング、サイクリングなどを取り入れるとさらに効果が高まります。
ストレスとの向き合い方
ストレスの軽減は、血糖値の管理を行う上で重要です。
万が一ストレスを受けてしまった場合に備え、瞑想やヨガを生活に取り入れるなどで自分の心と向き合い、否定的な感情にさらされる時間を短くしましょう。
20~30分、自然が豊かなところで過ごすとストレスホルモンの減少もみられます。
公園や川の近くなどを散歩してみましょう。
糖尿病の原因を理解して治療へのモチベーション維持を
血糖値をコントロールする上で最も難しいのは、食事療法や運動療法をどのように継続していくかです。
健康診断で糖尿病予備軍の指摘を受けた人は、医師や看護師からバランスの良い食事や適度な運動を勧められているでしょう。
結果がすぐに見えないものに取り組み続けるのは簡単ではなく、途中で治療をやめてしまう人も多くいます。
途中で治療をやめてしまいそうなときは、生活改善をして10年後、20年後をどう過ごしていたいかを具体的に考えてみるのも良いでしょう。
適度な運動を取り入れずに20年過ごした場合、糖尿病性腎症となり透析の必要性もでてきます。
簡単に旅行ができなくなったり、大切な家族の顔が見えなくなってしまう恐れがあります。
自分のために長期間モチベーションを維持するのは非常に困難を伴いますが、大切な誰かのために、体調管理を継続していくと考えると良いでしょう。
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