糖尿病は、一度発症すると一生涯共に生きていかなければならない病気です。
薬物治療だけでは、血糖値のコントロールはできません。
では、健康診断で血糖値が高いといわれたとき、どのように改善や予防をするのがよいのでしょうか。
この記事では糖尿病を予防する方法について紹介します。
- 検査データの見方
- 糖尿病の症状
- 糖尿病予防のための生活習慣の改善方法
糖尿病予備軍と診断された人や肥満などの糖尿病リスクがある人は、ぜひ参考にしてください。
糖尿病になりやすい人となりにくい人の差
糖尿病は、個人差が非常に大きい病気です。
菓子パンが大好きで毎日食べていても、血糖値が基準値内の人はいます。
一方、まだ30代で肥満体型ではなく、規則正しい生活を送っていても糖尿病を発症する人がいます。
糖尿病を発症しやすい人としにくい人の差は、膵臓から分泌されるインスリンの量です。
インスリン分泌量は遺伝的要素で決まっている
分泌されたインスリンの作用の強さは、数年前からの生活習慣や遺伝的によって決まっています。
糖尿病になりやすい素質をもつ人のインスリンの作用低下は、不摂生だけでは発症しないといわれています。
発症した自分に、不摂生のレッテルを貼る必要はありません。
効果的に糖尿病を予防するには、自分で体調管理ができるようになるのが望ましいです。
健康診断で分かる検査の数値を、理解できるようになりましょう。
糖尿病を予防するために健康診断で注目する数値
健康診断で測る血糖値は朝食を食べずに検査を受けるため、空腹時血糖と呼ばれています。
糖尿病が最初に疑われる数値は、空腹時血糖の値とHbA1cの値です。
血糖値について詳しく知ると、自分がどの段階にあるのか判断できます。
軽症の段階で、速やかに対応していきましょう。
血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を指します。
摂取した炭水化物などの影響で血糖値は変動するため、健康な人でも食前と食後で血糖値は変わります。
成人の基準となる値は70〜109㎎/dlです。
空腹時血糖値
- 100~109㎎/dl:正常範囲内だが高値
- 110~125㎎/dl:精密検査が必要
- 126㎎/dl以上:糖尿病が疑われるため専門医療機関の受診が必要
HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)とは
HbA1cの最初についているHb(ヘモグロビン)は、赤血球内に含まれているタンパク質の一つを表しています。
ヘモグロビンの役割は体中の細胞に酸素を運ぶことです。
このヘモグロビンにブトウ糖がくっついているものを、HbA1c(糖化ヘモグロビン)と呼びます。
つまりHbA1cとは糖化ヘモグロビンがすべてのヘモグロビンの中に、どれくらいの割合で存在しているかを表した数値です。
ヘモグロビンの糖化は、糖分の過剰摂取や運動不足で起こります。
糖化されてできた糖化物が体内に蓄積されると、多くの末梢血管に少しずつダメージを与え肌が老化したり骨が弱くなったりします。
HbA1cは過去1〜2か月前の糖化ヘモグロビンの量が如実に出るため、どれほど血液内に糖分があったのかが明らかになります。
HbA1cの基準値・異常値
- 正常値:~5.5%
- 要注意:5.6~5.9%
- 糖尿病が否定できない:6.0~6.4%
- 糖尿病:6.5%~
糖尿病は一つの検査の値だけでなく、自覚症状の有無などを基に総合的に判断します。
空腹時血糖とHbA1cのどちらか一方が基準値以上だった場合は、医療機関の受診が必要です。
HbA1cが6.5~6.9%
- 膵臓のインスリンを分泌するβ細胞の数や、インスリン分泌能力は半分以下になっていると推定される
- 治療が開始されると膵臓の機能の復活が期待され、取り組み方次第では健康な人と同様な生活を送れる
HbA1cが7%台
- 糖尿病の三大合併症が進行する状態
- 医療機関で薬物療法を速やかに開始し、厳密な食事療法を取り入れ血糖値のコントロールをする
- HbA1cをゆるやかに下げ、合併症の進行を食い止める
HbA1cを下げるには、食後や空腹時の血糖値を普段から抑えることが大切です。
カテキン、イソフラボン、アントシアニンなどで知られるポリフェノールには血糖値を抑制する効果が確認されています。
食事習慣に取り入れていくように心がけていきましょう。
ポリフェノールの最新研究データ
再検査は必ず受ける
健康診断に関して再検査、要受診になってもおよそ4人に1人の人が再検査していないという調査結果があります。
再検査していない理由は以下の通りです。
- 必要性を感じない
- 仕事が忙しかった
- 面倒だった
- どの病院を受診したらよいか分からなかった
糖尿病は血糖が上昇しても自覚症状があまりないため、必要ないと捉える人は多いです。
しかし、糖尿病が進行した場合、仕事を続けるのは困難な場合があります。
血糖値を良好にコントロールして、好きな仕事ができている人は多くいます。
これからも自分や家族の人生を支えるためにも、早期の受診をおすすめします。
糖尿病の初期症状
初期症状を自覚した段階で、糖尿病はすでに悪化している状態と捉えられます。
主要な初期症状は下記の通りです。
- 口の渇き、頻尿、多尿
- 全身のだるさ
- 手足のしびれ
- 肌のかさつき、かゆみ
順に、見ていきましょう。
喉が渇く、頻尿、多尿
耐えられないような喉の渇きを感じます。
水分を多くとっているにも関わらず、多尿のため脱水症状を引き起こします。
全身がだるい・疲れを感じやすい
インスリンの効果が不足しているため、ブドウ糖を体内に取り込めません。
そのため糖分が血液中にあふれ、体がエネルギー不足になり、疲労感を強く感じます。
手足のしびれ
体内の余分なブトウ糖が細胞の活動を狂わせ、末梢神経に障害を与えるとしびれが起きます。
末梢神経と共に末梢血管もダメージを受けるため、神経細胞に酸素などが行き渡らなくなります。
そのため神経障害が悪化し、ピリピリとした痛みを常に感じるようになるのです。
肌のかさつき、かゆみ
多尿により体に必要な水分も尿で排泄されるため、脱水になり皮膚が乾燥しやすくなります。
神経障害があると自律神経のバランスが崩れ、発汗が上手にできなくなります。
発汗がないと皮膚の湿度が低下し、皮膚がかさつきやすくケアが必要です。
糖尿病を予防するための簡単な取り組み
初めに、現状把握から行います。
下記の項目を、ノートに書き出してみましょう。
- 1週間の中で食べた食事内容
- 食事を摂取した時間帯
- 就寝時間、起床時間
- 睡眠が浅かったか深かったか
- 途中で目を覚ました回数
- 意識して取り組んだ運動の内容
- 運動の時間、疲労度
できていない内容が多くても、自分を責めてはいけません。
足りていない部分を知り、少しずつ生活の習慣を改善します。
これなら簡単、と思えるものから始めます。
規則正しい食事とは何かを知る
規則正しい食生活の利点は、食事と食事の間の時間が一定であるため血糖値が乱高下しにくいことです。
寝坊して朝食を食べないと空腹感を感じ、昼食にたくさんの量を食べてしまう経験はありませんか。
このように変動が激しいとインスリンの分泌作用が低下し、慢性的に高血糖の状態となります。
下記に該当する人は、血糖が乱高下している可能性を考えましょう。
- 朝食を抜く日が週に3日以上ある
- 朝食と夕食の時間が8時間以上空く
- 夕食の時間が22時を過ぎる
夜遅くに食事をとると、エネルギーとして使用せず蓄積してしまい高血糖、肥満に繋がります。
血糖値の乱高下を予防するために重要なこと
人は年齢や活動量によって、一日の適正摂取カロリーが決まっています。
目安は成人男性で2,000〜2,400kcal、成人女性は1,400〜2,000kcalです。
適正カロリーを意識し、食生活を整えましょう。
- 夕食後の甘いものや晩酌が習慣化している人は、野菜や果物の摂取量を増やす
- 夜間に仕事をしている人は夕食の半分を夕方に食べ、残りを夜間帯に摂取する分割食がおすすめ
- 夜遅い時間の食事量を減らし、食事回数を増やして対応
- 夜遅くに夕食を摂らなければいけない人は、昼食と夕食の間に小さなおにぎりなどを食べる
- 食べたおにぎりの炭水化物は夕食から減らし、1日分の摂取エネルギーが増えないようにする
- ゆっくりよく噛んで食べる意識を持つ
糖尿病を予防するためには、食事面での対策は必須です。
低GI食品を選ぶ、食べる順番を工夫するなど、糖分の吸収を穏やかにする工夫をするようにしましょう。
また、糖分の吸収を抑えたり、インスリンの効き目を高める機能があるポリフェノールの摂取などもオススメです。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
自己流の運動療法は危険
血糖の高さが指摘され、いざ運動を始めようと思っても膝や腰に痛みがあり、満足に体を動かせない人が一定数いることが2015年の研究調査で分かりました。
ウォーキングを毎日30分取り組んだ結果、足を痛めてしまっては本末転倒です。
- 自分に適した運動の強さ、内容
- 筋力低下のレベル
自己流の怪我を予防するためには、上記への理解が必要です。
さらに調査では、運動療法の指導を受けたことがない人もおり、運動は取り入れたいが具体的な方法が分からず困っている状況が分かりました。
患者一人一人の状態は異なるため、受診の機会があれば下記の項目を尋ねてみましょう。
- どのような運動が望ましいのか
- 参考になる本やパンフレットがないか
- 理学療法士の指導が受けられないのか
健康診断で血糖値が高いものの基準値内で経過している人は、筋肉で糖の消費を促すだけで血糖が低下することがあるため、積極的に取り入れましょう。
運動の時間が取れない人は、日常の中で意識して活動量を増やします。
日常でできる筋力アップ、運動量増加の方法
仕事や家事、子育てで手いっぱいで運動する時間がない人も、工夫次第で筋力アップができます。
運動は、継続が何より大切です。
1日1万歩を目指したり1時間ジョギングを目標にしたりせず、小さな目標を達成して楽しめる内容にしましょう。
自宅の場合
- テレビのCM中は足踏みをする
- テレビのリモコンは自分の近くに置かない
- 内ももにタオルなどを挟め力を入れる、緩めるを繰り返す
- 寝る前のストレッチを習慣化する
- 運動のやり方を描いた紙を冷蔵庫やテレビの横に貼っておく
- 近い場所は車ではなく徒歩で移動
- 姿勢を正して家事をする
外出先や勤務先の場合
- 万歩計をつけて生活する、もしくはアプリをスマホに入れて歩数を測る
- 信号待ちをしているときは片足立ちする
- 最寄り駅から一駅前で降りる
- 車通勤から自転車通勤に変更する
- 昼食後5分間ストレッチをする
睡眠と糖尿病
日本人の睡眠時間は、世界でも極端に短いです。
厚生労働省の調査では、睡眠時間が6時間未満の成人は約4割にものぼります。
睡眠時間の不足で起きること
- 脳と体を休めず、交感神経系の活動が活発となりストレスホルモンの値の上昇食欲をコントロールするレプチンというホルモンの血液内の濃度の低下
- 食欲が刺激され、暴飲暴食
睡眠時間を延長すると、空腹時血糖の低下やインスリン分泌能力の改善が見られます。
睡眠障害とは
以下の症状が長期間継続し、心身の不調を自覚した状態を指します。
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅く何度も目が覚める
- 明け方に覚醒し二度寝ができない
不眠が継続すると、今日も眠れないのだろうかと入眠時に不安を感じ余計にストレスとなって眠りにくくなります。
他にも、早い時間から就寝してみようとするとさらに緊張が高まってしまい悪循環になりやすいです。
睡眠の質を改善する方法
脳の働きを休ませる工夫が重要です。
以下の方法を意識的に取り組みます。
- 毎日同じ時刻に起床し、朝日を浴びて体内リズムを整え
- 1時間早く床につく
- 入眠30分前の仕事、スマホ、テレビをやめる
- ライトを暗くする
- 学校や職場にいる時間を考慮する
- 家事労働時間を減らす
- 胃の働きが活発になると睡眠が浅くなるため、食事は寝る3~4時間までに済ませる
- 夜遅い時間に食事をとらない
- アルコールは睡眠の質を低下させてしまうため極力摂らない
- 日中に有酸素運動をする
上記の方法を試しても睡眠の質が改善しない場合は、病院を受診し早急に相談しましょう。
夜勤従事者の睡眠時間の対策
日本人の5人に一人が、夜間帯も仕事をしています。
不規則な交代勤務の人は、糖の吸収と消費の作用低下が起き、血糖値が乱高下しやすいです。
下記の対策を取り入れてみましょう。
- 仮眠時間は必ず休憩し疲労の軽減に努める
- 勤務明けの仮眠は軽めにし、夜間に寝るようにする
- 仮眠室の環境を整える
- 仮眠の必要性を職員の中で共有する
交代勤務は心臓疾患の発症に影響を与えるほど、負担の大きい勤務です。
日の光をよく浴びたり、日中に起きたりする努力をして体内リズムを整えましょう。
糖尿病とサプリメント
3食すべてで栄養素をバランスよく摂取するのは手間がかかり、知識も必要で難しい面があります。
しかし、サプリメントは薬ではありません。
そのため、血糖降下に明確な根拠はないです。
薬の代用品ではないと認識し、あくまで補助的な役割をするものと捉えましょう。
糖尿病を予防するために体調を自分で管理する
健康にトラブルがある状態は、人に多大な影響を与えます。
いつから対策を取り始めても遅くはありません。
1人で頑張らず医療機関に相談し、糖尿病の悪化を予防しましょう。
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