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糖尿病になったら知っておきたい足病変と爪のケア

糖尿病の合併症には神経障害がありますが、神経障害は痛みや冷たさへの感度が鈍くなるため、足のけがに気づかず放置してしまいがちです。

それを原因とする感染症、足の切断を余儀なくされるケースがあります。

さらに糖尿病になると爪が変形したり巻き爪になったりする事例も多く、そこから細菌感染すると、感染症が重症化する傾向があります。

この記事では、感染症を防ぐために日頃からどのように足や爪をケアすべきなのかまとめました。

この記事を読んでわかること
  • 足病変とは何か
  • 糖尿病に関係している爪の変化について
  • 足や爪のケア方法
目次

糖尿病の「足病変」とは

糖尿病の「足病変」とは

糖尿病に起こる足病変は、水虫や細菌をはじめとする感染症が原因で足や爪が変形したり変色したりします。

最悪の場合、足の壊死を引き起こす恐れのある合併症です。

糖尿病になると、動脈硬化がきっかけで血管が詰まるリスクが高くなるだけでなく血管が細くなり、血流が悪化します。

血流が悪くなると全身の神経に血液を介して必要な酸素や栄養が供給されず、結果的に神経障害を引き起こすのです。

糖尿病が進行して神経障害を引き起こすと、足の痛みや痒みをはじめとする感覚が障害されます。

受傷しているにも関わらず、感覚障害から受傷に気づかずに症状が悪化してようやく気づく場合が多いのです。

足病変は糖尿病と診断された早期からの予防が何よりも大切で、日々の適切なケアによって壊疽えそ切断は十分に避けられます。

足病変の主な原因

糖尿病性足病変

なぜ、糖尿病になると足のけがが壊疽にまで発展してしまうのでしょうか。

足病変の原因は、糖尿病によって起こる神経障害血流障害により起こります。

単なるけがが、壊疽を引き起こすまでに発展する原因は主に3つあります。

1.神経障害

糖尿病による神経障害は、糖尿病の3大合併症の1つです。

神経障害は血液中における糖の濃度が高い状態が持続し、細胞の活動サイクルが機能しなくなった結果として起こるものです。

症状としては手足の痺れや感覚が鈍るところから始まり、進行していくに従って温度感覚や痛覚が鈍くなっていきます。

日常的に起こりうる靴ずれや深爪だけでなく、虫に刺されても気がつかず放置してしまって傷口から細菌が感染する場合があります。

その結果、重篤な感染症を引き起こす場合があります。

2.血流障害

足病変の原因の2つ目が、血流障害です。

糖尿病になってから長期間において血液中の糖の濃度が高い状態になると、血管が傷つき動脈硬化が進行する要因になります。

動脈硬化は狭心症や脳血管疾患などの重大な病気を引き起こすだけでなく、下肢では「下肢閉塞性動脈硬化症」を引き起こす危険性があるのです。

足の血流障害によって引き起こされる症状は以下の通りです。

  • 指先が青白く変色する
  • いつも冷えるような感じがある
  • 一定の距離を歩くとふくらはぎが痛くなり休まないと歩けない

上記の症状のほかに、進行すると安静にしていても足の痛みが治らないケースや、血流が不十分で足先まで血流が行き渡らず足が黒く変色し壊死するケースもあります。

足の壊死は感染症を引き起こしたときだけではなく、血流障害が進行した結果として血流が足先まで届かず壊死する場合もあります。

3.足の形や爪そのものの変形

糖尿病による神経障害は、感覚神経だけではなく運動神経の障害にも起こります。

そのため、足が扁平足に変形する場合や足の筋肉が萎縮するほかに、爪が厚くなったり巻き爪になったりするのも足病変が起こる原因の1つです。

足の変形具合によっては、特定の場所に体重がかかり、特定の箇所だけ傷がつく場合もあります。

早期に発見できなければ、細菌感染が起こり結果的に下肢の切断が必要になる場合もあるのです。

糖尿病による足病変が進行すると、足の変形や重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

糖尿病予防のために普段の食事で意識して摂取しておきたい食材や成分についてまとめていますので、こちらの記事も参考にしてください。
インスリンの働きを高める食材、成分

足病変に深く関係している爪の変化

足病変に深く関係している爪の変化

糖尿病になると爪の肥厚(厚くなる)変色などの変化が起こりますが、これらは足病変と深く関係しています。。

糖尿病の場合は爪の状態が日々変化するため、可能な限りは毎日の観察が望ましいです。

足病変に関わる爪や足の変化

足全体だけでなく爪の状態も日々観察しておくとちょっとした変化に注意が行きとどくため、予防だけではなく早期対処につながるでしょう。

ここでは、糖尿病になると現れがちな爪の変化についてまとめています。

巻き爪

足病変と爪1

巻き爪は爪が丸く皮膚を抱き込むような変形の仕方をするため、爪が皮膚に食い込んでしまい、体重がかかった部分から皮膚が切れてしまうため感染症の原因となります。

糖尿病になると、足の形状のバランスが不均衡になったり血行障害による歩行異常が生じたりするため誰でも巻き爪になり得ます。

さらに神経障害を引き起こしている人は、巻き爪になっても痛みや感覚の異常を感じにくいので、皮膚が切れて出血していても気がつかず放置されがちです。

巻き爪が放置されると、爪の状態がさらに悪化して陥入爪から潰瘍に発展し悪化の一途をたどる人もいます。

巻き爪になっていたら巻き爪になった部分を清潔に保ち、早めに医療機関を受診しましょう。

爪の肥厚や変色

足病変と爪2

糖尿病になると爪が厚くなるため、割れたり剥がれたりという変化が頻繁に起こります。

爪が厚くなる原因は、糖尿病だけではなく爪白癬つめはくせんによる感染もあるのです。

糖尿病患者は血糖値が高いままで経過している場合が多く、細菌やウイルスに対しての抵抗力が弱まるため、感染症の進行は早い上に化膿も進みがちです。

糖尿病患者は水虫をはじめ様々な感染症の感染リスクが高く、感染しても気がつかずに放置した結果、化膿したり感染症が全身に及ぶ場合も少なくありません。

水虫が悪化して爪が割れても神経障害や感覚障害で気がつかず時間が経過してしまい、処置が遅れる場合もあります。

爪を観察していて白く濁っていたり分厚くなったりしている場合や縦線が入っているときには、糖尿病による症状である可能性も視野に入れ、医療機関の受診を検討するとよいでしょう。

タコや魚の目

足の長さや幅に見合わない靴を履いていると、足にタコや魚の目ができる原因になります。

サイズの合わない靴を履くと足と靴底に摩擦が生じるため、足の皮膚を摩擦から守るためにタコや魚の目ができるリスクが高まりますが、初期の場合は気づかず見逃されがちです。

特に糖尿病患者は魚の目やタコが悪化して真皮を刺激していたり出血していたりしても、神経障害が起こっていると痛みを感じとるのが難しいため、足の状態が悪化していても気がつきません

結果的に、皮膚の状態が悪化して傷が出来た場所から細菌に感染する可能性もありますのでタコや魚の目が出来ていないかもチェックするとよいでしょう。

足の変形

糖尿病から神経障害を引き起こしていると、足の指が熊手のように屈曲し足がハンマーのような形に変形する場合があります。

それだけでなく足裏に歪みが出る場合は、立ったときに足裏に均等な圧力がかからず、足を擦りむいたり傷がつく危険性が高くなります。

日常のちょっとした出来事が原因で足に傷ができる場合もしばしば出てくるため、足の変形がないかどうかを把握するのも大切です。

糖尿病による神経障害が進行すると、足の感覚が鈍くなり、傷や圧力に気づきにくくなります。
定期的な足のチェックと適切なケアが重要です。

日頃から血糖値に気を配り、糖尿病予防をしましょう。
食事面からの対策についてはこちらの記事もご確認ください。

フットケアの方法

フットケアの方法

糖尿病と診断された場合は、早期からフットケアを始めるとよいでしょう。

フットケアは専門外来もあり、フットケアを始めるのが早ければ早いほど足病変が防げます。

足や爪の変化を観察するうえで、ポイントとなる点を以下にまとめました。

足病変を予防フットケア

足の皮膚や爪を毎日観察する

足の皮膚や爪は毎日観察する必要がありますが、その理由は糖尿病になると視力が低下につながり、傷口の小さな変化を見逃すためです。

糖尿病の合併症でもある「糖尿病性網膜症」は、視力が低下していても徐々に低下している場合視力の低下具合に気がつきません。

月1回などの頻度で足を観察すると、視力の低下から些細な変化や傷の存在に気がつかない場合もありますので毎日の観察を習慣づけましょう。

すでに神経障害や網膜症を指摘されている場合には、より一層注意して観察するのが大事です。

以下の点に重点を置いて、観察していきます。

フットケア足の皮膚や爪の観察
  • 足全体だけではなく足裏全体の皮膚は変色していないか
  • 爪先が冷たかったり、紫色に変色していないか
  • 爪は正常か
  • 巻き爪や爪が分厚くなっていないか
  • 爪が割れていたり深爪になっていないか
  • タコや魚の目はできていないか

このような観察項目をチェックリストなどにして、1つずつ観察していきましょう。

感染症を防ぐために足を清潔に保つ

糖尿病になると皮膚表面のバリア機能が低下するため、容易に細菌感染してしまう状態です。

加えて、感染すると原因菌に対する抵抗力が低いため回復が遅いだけでなく重症化を招きます。

感染症を防ぐためには、細菌が侵入しないよう皮膚を清潔に保つのが大切です。

毎日入浴するかどうかに関わらず、足は爪も含めてせっけんを使用してなるべく毎日洗いましょう。

足を洗うときは柔らかめのスポンジを使用し、せっけんは弱酸性で泡立ちの良いものを使用して洗うのが効果的です。

足を洗った後は清潔なタオルで足の指を1本ずつしっかり水分を拭き取り、皮膚は乾燥させないよう保湿クリームでしっかり保湿します。

足の爪についてもネイルオイルやベビーオイルなどを使用して、爪を保護するとよいでしょう。

入浴や足湯をする際は神経障害があると、気づかないうちにやけどする可能性があるため、入浴前に温度計を使うか手で確かめて熱すぎないか確認します。

こまめに爪をケアする

フットケア:こまめな爪のケア

爪を切るときは深爪にならない程度に切り、入浴や足湯を終えて足の爪が柔らかくなっているときに切るのが安全です。

爪の長さは白い部分が約1〜1.5ミリ程度残るのを目安とし、スクエアカット(スクエアオフ)という四角い形に整えるのが望ましいとされています。

足湯で爪の周囲を洗うときには、柔らかめのブラシを使用して、しっかり爪と皮膚の間も綺麗に洗います。

爪を切った後は、体の皮膚を傷つけないようしっかり爪やすりでケアするのが大切です。

足を保護するために靴下を履く

フットケア:足に合った靴を履く

足の血管が詰まっていたり細くなっていたりすると、足先が冷えるだけでなく、けがも増え治りも遅くなります。

足を保護するために靴下を履くとよいでしょう。

靴下は季節や気温によって適切な素材を選び、蒸れを防止するのが大切です。

夏場や気温が高いときには麻やガーゼなどの生地を選び、秋から冬は暖かい日でも通気性の良いウールや綿の素材を選びます。

感覚が鈍ってしまった場合には、潰瘍ができたり出血していても気がつかずに経過したりしている可能性もあるため、白や水色など色の薄いものがおすすめです。

濡れたり汗で蒸れた場合には乾いた布で汗を拭き取り、新しい清潔な靴下に履き替えましょう。

足のサイズや形に見合った靴を履く

足の形状やサイズに見合わない靴を履くと靴ずれや転倒などのけがの原因となるだけでなく、足の変形を助長させてしまう可能性もあります。

靴を選ぶ際は、シューフィッターから靴を選んでもらうなどの工夫が必要です。

さらに、靴を選ぶ時間帯はむくみが出てくる夕方が適しています。

靴を履くときは靴紐をしっかりと結び、靴の中に小石や砂利が入っていないかよく確認しましょう。

正しい歩き方をする

糖尿病になると、足の変形や巻き爪によって歩き方に変化が出てきます。

すり足歩行や歩くときの体重のかけ方に偏りが出てくると、足の変形につながるだけでなく巻き爪になったり巻き爪を悪化させたりします。

巻き爪や魚の目などで歩くときに痛みがある場合は早めに病院を受診するとよいでしょう。

歩くときの体重のかけ方や姿勢を改善すると、巻き爪の予防だけでなく足全体に適切な圧力がかかり魚の目なども予防できます。

爪や足のトラブルは見逃さないのが大事

爪や足のトラブルは見逃さないのが大事

糖尿病の足病変は、靴ずれや切り傷だけではなく爪白癬の感染や巻き爪など爪に由来するものもあります。

爪のトラブルは血行障害や神経障害などで見逃しがちになるため、悪化する可能性もあります。

日頃から爪はもちろん足全体を観察するのが大切です。

日々の観察で違和感や心配事があったときにはフットケア外来などの受診も検討してみましょう。

フットケア外来では、糖尿病のフットケアを専門とする看護師による爪の観察や処置が受けられるだけでなく、正しいケアの方法を身につけられます。

初期の段階で足の皮膚や爪の変化を見つけられると重症化の予防につながり、体の負担を最小限に留められるため、日々の観察をするところから始めていきましょう。

日頃からの足・爪の観察やフットケア外来受診で糖尿病性足病変の進行を防ぐ

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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