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糖尿病が健康診断ではわからない原因と仕組みを徹底解説

糖尿病が健康診断ではわからない原因と仕組みを徹底解説

糖尿病は、血液中にブドウ糖が増加している状態であり、さまざまな合併症を引き起こす生活習慣病の1つです。

糖尿病は要因によって4つに分類されており、そのほとんどは健康診断で発見できますが、中にはわからない糖尿病もあります。

この記事では、糖尿病の概要や健康診断ではわからない原因や仕組みについて詳しく解説しています。

健康診断で糖尿病の可能性を指摘された人や、糖尿病が気になる人は、是非参考にしてください。

この記事でわかること
  • 生活習慣による糖尿病は2型に分類される
  • 糖尿病は血糖値とHbA1cで診断される
  • 血糖値とは血液中の糖分濃度のこと
  • HbA1cはヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合
  • 一部の糖尿病は健康診断ではわからない
目次

糖尿病とは血液中のブドウ糖が多くなる病気

糖尿病とは血液中のブドウ糖が多くなる病気

糖尿病とは、インスリンの分泌や働きが悪いため血液中のブドウ糖が多くなる病気のことです。

通常、食事で摂取された糖分は、小腸で吸収されて血液に運ばれます。

そして吸収された糖分はすい臓から分泌されるインスリンによって、筋肉で燃焼されてエネルギーとなるのが正常な身体の働きです。

これに対し糖尿病であると、インスリンの分泌量減少や機能低下により、血液の糖分濃度が上昇します。

そのため糖尿病の診断には、血液に含まれる糖分を調べる検査が必要です。

また血液中で糖分濃度が上昇した状態が続くと血管や神経が傷み、合併症を併発するリスクもあります。

糖尿病の進行により、引き起こされる可能性が高い合併症は以下のとおりです。

糖尿病の進行による合併症
  • 網膜症
  • 腎症
  • 神経障害
  • 脳梗塞
  • 心筋梗塞
  • 末梢動脈疾患
  • 歯周病
  • 糖尿病ケトアシドーシス
  • 高浸透圧高血糖症候群

特に糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群は急性であるため、発症後は早急な処置をしなければなりません。

定期的な検査は、糖尿病の診断や発症リスクの抑制のためにも必要不可欠です。

生活習慣による糖尿病は2型に分類される

糖尿病は要因によって以下のように分類され、生活習慣による糖尿病は2型とされています。

糖尿病の種類
糖尿病特徴
1型・何らかの要因により、すい臓でインスリンを出すβ細胞が破壊されているため、インスリン不足の状態となる
・治療にはインスリン製剤を使用
・若い人を中心に幅広い年代で発症
2型・生活習慣や遺伝的な影響が要因
・インスリン分泌低下やインスリン抵抗性により、血糖値が高くなる
・中高年、肥満の人に多い
・主な治療は、食事療法、運動療法、薬物療法
その他特定の機序、疾患によるもの糖尿病以外の病気、治療薬の影響が要因
妊娠糖尿病・胎盤から出るホルモンの影響により血糖値が上昇
・出産後は元に戻る場合が多い

さらに糖尿病1型は、症状の進行速度により以下の3つに分けられます。

  • 劇症1型糖尿病
  • 急性発症1型糖尿病
  • 緩徐進行1型糖尿病

劇症1型糖尿病は1週間前後、急性発症1型糖尿病は数ヶ月、緩徐進行1型糖尿病は半年~数年でインスリン不足の状態になります。

特に劇症1型糖尿病は、発症からインスリン不足になる状態までが非常に短期であるため、健康診断で発見される可能性が低いです。

糖尿病は血糖値とHbA1cで診断される

糖尿病は血糖値とHbA1cで診断される

糖尿病の診断は、血液検査における血糖値とHbA1cの数値によって行われます。

HbA1cとは、血液中のヘモグロビンに対する糖分と結合したヘモグロビンの割合のことであり、ヘモグロビンエーワンシーと読みます。

血糖値とHbA1cでわかる血液の状態は、以下のとおりです。

血液中の糖分濃度を調べる
血糖値/HbA1c数値が示す体の状態
血糖値検査時点での血液中の糖分濃度
HbA1c過去1~2ヶ月の血液中の糖分の状態

つまり上記の項目が含まれる血液検査がある健康診断では、糖尿病が見つかる可能性は十分にあるということです。

なお健康診断では尿糖の検査も行いますが、他の病気の可能性もあるため、陽性反応のみで糖尿病とは診断されません。

血糖値とは血液中の糖分濃度のこと

血糖値とは、血液1dL当たりに含まれる糖分の量のことであり、単位はmg/dLです。

血糖値により検査時点での血液中の糖分濃度が表され、その値によって正常型境界型糖尿病型の3つに分けられます。

一方で血糖値は食事などで変動するため、空腹時と食後では異なります。

健康診断における血液検査では、主に2種類の指標によって糖尿病の診断が行われます。

2種類の指標とその概要、3つの型に該当する血糖値の基準は、以下のとおりです。

糖尿病診断 基準値1
指標概要正常型境界型糖尿病型
空腹時血糖値10時間以上食事を取らない状態で測定した血糖値110mg/dL未満110mg/dL以上
126mg/dL未満
126mg/dL以上
随時血糖値食事からの時間を決めずに測定した血糖値– 200mg/dL以上

参照:一般社団法人日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024 1章 糖尿病診断の指針

空腹時血糖値で110mg/dL未満の場合は正常型と判定されますが、特定健診においては100mg/dL以上を高血糖と認定しています。

なお随時血糖値は、200mg/dL以上で糖尿病型と判定されますが、正常型と境界型の基準は明確になっていません。

糖尿病を診断する指標として空腹時血糖値と随時血糖値の他に、ブドウ糖負荷試験による血糖値があります。

ブドウ糖負荷試験とは、空腹状態にブドウ糖を投与した際の血糖値の推移を判定する方法のことであり、具体的な手順は以下のとおりです。

75g経口ブドウ糖負荷試験
  1. 食後10時間以上経過した状態で、空腹時血糖値を測定
  2. 75gのブドウ糖が入ったソーダ水を服用
  3. 服用後30分、1時間、2時間で血糖値を測定

一般的には75gのブドウ糖を投与して2時間後の血糖値が指標とされており、空腹時血糖値と合わせて3つの型に分類します。

ブドウ糖負荷試験における基準は、以下のとおりです。

糖尿病診断 基準値2
正常型境界型糖尿病型
ブドウ糖負荷試験以下に該当
・空腹時血糖値110mg/dL未満
・ブドウ糖投与2時間後血糖値140mg/dL未満
以下のいずれかに該当
・空腹時血糖値110mg/dL以上126mg/dL未満
・ブドウ糖投与2時間後血糖値140mg/dL以上200mg/dL未満
以下のいずれかに該当
・空腹時血糖値126mg/dL以上
・ブドウ糖投与2時間後血糖値200mg/dL以上

ブドウ糖負荷試験は、精度が高い方法として病院などで実施されています。

ただし、ブドウ糖負荷試験は正しい手順で行わなければならないため、健康診断では実施されていません。

HbA1cは6.5%以上で糖尿病型と判定される

糖尿病診断 基準値3

HbA1cとは、ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合を示す数値です。

全身に酸素を運ぶヘモグロビンは、糖分と結合すると糖化ヘモグロビンとなります。

1度糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命である120日間は元に戻りません。

つまりHbA1cは、1~2ヶ月間の血液中の糖分の状態を示しているということです。

したがって、当日の食事など短時間での血糖値の変動は、反映されません。

一般社団法人日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024によると、HbA1cが6.5%以上の場合を糖尿病型としています。

一方で特定健診におけるHbA1cの正常値は5.6%未満とされており、5.6~6.4%で特定保健指導、6.5%で医療機関の受診を推奨しています。

HbA1cを下げるには、食後や空腹時の血糖値を普段から抑えることが大切です。

カテキン、イソフラボン、アントシアニンなどで知られるポリフェノールには血糖値を抑制する効果が確認されています。
食事習慣に取り入れていくように心がけていきましょう。
ポリフェノールの最新研究データ

糖尿病の診断は血糖値、HbA1cだけでなく症状や家族歴なども参考にされる

糖尿病診断の指標である血糖値とHbA1cで糖尿病型と判定される基準は、以下のとおりです。

血糖値/HbA1c糖尿病型の判定基準
血糖値以下のいずれか
・空腹時血糖値126mg/dL以上
・随時血糖値200mg/dL以上
・ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上
HbA1c6.5%以上

一般社団法人日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、以下のいずれかに該当した場合、糖尿病と診断されます。

  • 糖尿病型を2回確認
  • 血糖値で糖尿病型を1回確認かつ慢性高血糖症状がある
  • 過去に糖尿病と診断されている

最終的な糖尿病の診断は上記だけでなく、症状や家族歴、体重歴なども参考に総合判断します。

糖尿病型と2回確認された場合、血糖値とHbA1cのいずれかのみが糖尿病型であったものの、もう一方が糖尿病型ではなかった場合など糖尿病と診断できないケースがあります。

その際に行う再検査の診断基準は、以下のとおりです。

血糖値・HbA1cと糖尿病診断
血糖値HbA1c診断もしくは再検査再検査結果及び診断
糖尿病型糖尿病型糖尿病と診断確定
糖尿病型糖尿病型ではない・糖尿病の典型的な症状もしくは糖尿病網膜症がある場合は糖尿病診断確定
・糖尿病の典型的な症状もしくは糖尿病網膜症がない場合は再検査
・血糖値及びHbA1cいずれか糖尿病型である場合は糖尿病診断確定
・血糖値及びHbA1cいずれも糖尿病型でない場合は、糖尿病の疑いありとして3~6ヶ月後に再検査
正常型、境界型糖尿病型再検査
ただし、血糖値は必須
・血糖値が糖尿病型である場合は糖尿病診断確定
・血糖値が糖尿病型でない場合は、糖尿病の疑いありとして3~6ヶ月後に再検査

上記のとおり1回の採血で血糖値及びHbA1cのいずれも糖尿病型に該当した場合は、その時点で糖尿病と診断されます。

また血糖値が糖尿病型であり、以下の慢性高血糖症状がある場合も、糖尿病と診断されます。

  • のどの渇き
  • 過剰な水分摂取
  • 尿量の増加
  • 体重の減少
  • 糖尿病網膜症

上記の慢性高血糖症状をふまえた糖尿病の診断には、HbA1cの判定結果は含まれません。

なお過去に糖尿病と診断された経緯がある人は、検査時点で血糖値及びHbA1cが正常型でも、糖尿病と診断されます。

糖尿病に関係する健康診断の数値について解説しています。
動画でもご確認ください。

健康診断でほとんどの糖尿病がわかる

健康診断でほとんどの糖尿病がわかる

糖尿病は、血糖値とHbA1cの両方を含んだ血液検査がある健康診断でわかる可能性が高いです。

一方で血糖値やHbA1cのみではわからない糖尿病もあるため、健康診断の結果のみで判断せず、気になる症状が出た場合はかかりつけの病院を受診しましょう。

健康保険の健康診断には年齢制限がある

健康診断はかかりつけの病院などで自費で受けられるほか、加入している健康保険によっては低価もしくは自己負担なしで、受けられます。

ただし健康保険の健康診断には、対象となる年齢が定められています。

例えば、多くの会社員などが加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)で、血糖値またはHbA1cの検査がある健康診断は、以下の2つです。

健康診断名対象者
一般健診35~74歳の被保険者
特定健康診査40~74歳の被保険者の扶養者

特定健康診査とは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)による生活習慣病のリスクを検査や改善指導を行う保険制度のことであり、2008年より健康保険の種類にかかわらず実施されています。

協会けんぽ以外の健康保険で代表的なものは、大企業などに多い健康保険組合と自営業の人などが加入する国民健康保険です。

健康保険組合の中には、年1回の健康診断を自己負担なしで組合員全員を対象に実施しているところもありますが、年齢によっては血糖値やHbA1cを含む血液検査がない可能性があります。

一方で国民健康保険は、特定健康診査のみ実施している市町村が多く、40~74歳の人は血糖値やHbA1cの検査が受けられます。

どの健康保険でも、血糖値やHbA1cの検査が含まれる血液検査の対象者は、35歳もしくは40歳以上の人です。

したがって、対象年齢未満の若い人の糖尿病は、気づかない可能性があります。

勤め先の健康診断などで血液検査がない場合や、血液検査の対象年齢ではない場合は、年に1回程度は自発的に病院での検査を受けましょう。

気になる症状が出た場合はすぐに病院で検査を受けましょう

血糖値やHbA1cを含む血液検査がある健康診断で、ほとんどの糖尿病がわかります。

一方で健康診断でもわからない可能性がある糖尿病は、以下のとおりです。

健康診断で判断困難な糖尿病
  • 劇症1型糖尿病や急性発症1型糖尿病
  • 隠れ糖尿病

劇症1型糖尿病や急性発症1型糖尿病は、短期間でインスリン不足の状態となるため、発症と健康診断のタイミングが合わない限りわからない可能性が十分あります。

隠れ糖尿病とは、空腹時血糖値は正常型または境界型であるものの、食後の血糖値は糖尿病型にある糖尿病のことです。

したがって空腹時血糖値で判定する健康診断では、隠れ糖尿病は分からないケースが多く、気づかないうちに進行している場合があります。

健康診断ではわからない糖尿病は、以下のタイミングなどで発覚します。

  • 献血での分析結果
  • 自覚症状
  • 糖尿病による合併症の発症

献血では、血液の成分検査を実施しているため、糖尿病の疑いを指摘されるケースがあります。

さらに、以下の症状が見られる場合は、糖尿病である可能性があります。

  • 喉の渇き
  • 尿量の増加
  • 身体のだるさ
  • 体重の減少

糖尿病は上記のような症状が多いため、気づかないうちに進行しているケースが少なくありません。

献血や自覚症状で糖尿病が発覚する際の多くは初期段階ですが、合併症の症状が見られると糖尿病が進行している可能性があります。

合併症の中には命にかかわるものもあるため、糖尿病、合併症ともに早急な治療が必要です。

合併症の発症前に糖尿病を発見するためにも、不調が気になるときは、すぐにかかりつけの病院で詳しい検査を受けましょう。

糖尿病には様々な種類がありますが、いずれも体内のインスリンの働きが悪くなることが要因となります。
日本人はインスリンの分泌が少ないので、インスリンの効き目を高める工夫が大切です。

インスリン量の分泌を増やす対策についてはこちらの研究レポートもご確認ください。

健康診断で糖尿病は高い確率でわかるものの完全ではない

健康診断で糖尿病は高い確率でわかるものの完全ではない

糖尿病は、その要因によって4つの型があり、生活習慣による糖尿病は2型に分類されます。

2型糖尿病は、血液中の糖分濃度を示す血糖値やヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合を示すHbA1cがある血液検査によって診断されます。

血液検査は、健康保険で実施している健康診断の検査項目となっていますが、対象年齢でない場合は受けられません。

さらに隠れ糖尿病など、健康診断ではわからない糖尿病もあります。

合併症が発症する場合は糖尿病が進行している可能性が高いため、軽微な自覚症状であっても、かかりつけの病院で詳しい検査を受けてください。

そして糖尿病にならないように、日頃から適度な食生活、運動など生活習慣を改善していきましょう。

糖尿病にならないよう、生活習慣改善を!

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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