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血糖値対策としてのかかと落としで老化や生活習慣病の予防もできる

血糖値対策としてのかかと落としで老化や生活習慣病の予防もできる

血糖値を下げるためには運動が効果的であり、中でもかかと落としは手軽に実施できる運動として知られています。

かかと落としは運動として効果的なだけではなく、血糖値を直接下げる働きがあります。

他にも、老化や生活習慣病の予防にもつながるとの研究結果が発表されているのです。

この記事でわかること
  • かかと落としは血糖値を下げる効果がある
  • かかと落としによってオステオカルシンが分泌される
  • オステオカルシンは血糖値を安定させる働きがある
  • 食後高血糖の予防にもかかと落としは効果的
  • オステオカルシンには老化や生活習慣病予防の効果もある

かかと落としを正しく日常生活に取り入れ、血糖値や自分の身体とうまく付き合っていきましょう。

目次

かかと落としをすると運動と骨刺激により血糖値が下がる

かかと落としをすると運動と骨刺激により血糖値が下がる

かかと落としは、高齢者に対しても推奨される身近な運動であるうえ、かかとを下ろした際の衝撃が骨を刺激して血糖値を下げます。

運動と骨刺激の両面で血糖値を下げられるため、糖尿病や糖尿病予備群だけでなく予防にも効果的です。

かかと落としは、立位でかかとを上げ下げする運動で、ふくらはぎの筋肉を使用します。

自分の体重を負荷として行う自重運動の一種であり、幅広い年齢で実施可能です。

かかと落としには特別な道具を必要としないため、時間や場所を選ばず実施可能な利点があります。

かかと落としの基本的なやり方を、見てみましょう。

かかと落としのやり方

かかと落としは、基本的に立位で行います。

ふらつきが心配な人や高齢者などは、椅子の背もたれをつかんだり壁に手を付いたりして実施しましょう。

  1. 足を肩幅程度に開いて立つ
  2. 目いっばいつま先立ちをする
  3. かかとに刺激を感じるように、一気にストンとかかとを下ろす

回数は、30回程度繰り返します。

余裕がある場合は、つま先立ちの状態で2〜3秒止めるとさらに効果的な筋力トレーニングになります。

反対に難しい場合は、1度に行う回数を少なくし朝晩実施する、椅子に座った状態で実施するなどの工夫も可能です。

かかと落としの運動効果

かかと落としをすると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋が働きます。

下腿三頭筋は、ポンプ作用により下半身の血流を上半身に戻す働きもある、重要な筋肉のひとつです。

かかと落としをすると、運動効果として以下のようなしくみで血糖値が下がります。

  1. 有酸素運動により、筋肉の血流量が増える
  2. 血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれる
  3. インスリンの効果が高まり血糖値が下がる

参照元:糖尿病の運動のはなし – 糖尿病情報センター

ただし運動の強度が高い場合には、動くためのエネルギーを補給するためにホルモンが分泌され、一時的に血糖値が上がってしまう場合もあります。

かかと落としは自重運動のため、強度が高くなりすぎない点も血糖値対策として適しているのです。

かかと落としの骨刺激による効果

かかと落としをすると、かかとを下ろした際に地面から受ける衝撃により、適度な骨刺激が得られます。

骨刺激により血糖値が下がるしくみは、以下のとおりです。

  1. かかとから伝わる骨への刺激により、骨芽細胞からオステオカルシンというホルモンが分泌される
  2. オステオカルシンがすい臓に作用して、インスリンの分泌を促す
  3. 同時にオステオカルシンは、インスリンが作用する細胞に働きかけてインスリン感受性を改善する
  4. オステオカルシンは小腸にも作用して、GLP-1(ジーエルピーワン)の分泌を促し、GLP-1の働きでインスリンの分泌量が増加する
  5. インスリンの働きにより、血糖値が下がり全身の代謝が改善される

参照元:骨が全身の代謝を改善 – 九州大学

かかと落としにより骨へ刺激が伝わると、オステオカルシンの分泌により複数のしくみでインスリンが分泌されます。

糖尿病など血糖値が高い人は、インスリンの分泌不足や働き不足の結果、高血糖の状態に陥っています。

かかと落としでインスリンの分泌が促されると、根本原因の改善につながるため、効率良く血糖値対策ができるのです。

血糖値の基礎知識が得られるとかかと落としの効果をより理解できる

血糖値の基礎知識を知っておけばかかと落としの効果をより理解できる

かかと落としで血糖値が下がるしくみを解説しましたが、血糖値の基礎を知るとさらに理解が深まります。

血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度です。

インスリンは血液中のブドウ糖を一定にコントロールする働きがありますが、インスリンの分泌が低下したりインスリンの働きが悪くなったりすると血糖値が上がってしまいます。

糖尿病の判別には、食事を取らずに測った空腹時血糖値や、血液中のヘモグロビン量を表すHbA1c(ヘモグロビンA1c)の検査を実施します。

糖尿病の基準は、以下のとおりです。

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値~99mg/dl~109mg/dl~125mg/dl126mg/dl~
HbA1c~5.5%~5.9%~6.4%6.5%~

血糖値は食事によって上昇し、その後インスリンの分泌によって食後2時間以内に正常値に戻ります。

食事から2時間後に計測した血糖値が140mg/dl以上ある場合、食後高血糖と判断されます。

参照元:食後高血糖 – 厚生労働省

食後高血糖は通常の検診で発見するのが困難なため、気付かない間になっている場合が多いのも特徴です。

一過性の高血糖は血管内皮障害を引き起こし、動脈硬化のリスクを高めます。

参照元:食後高血糖のターゲットは食後2時間でよいのか?

食後高血糖を予防し、速やかに血糖値を正常に戻すのは血管の健康を考える上でも重要です。

食後にかかと落としを実施すれば、オステオカルシンによりインスリンの分泌が促されます。

食後高血糖を予防するためにも、かかと落としは有効なのです。

オステオカルシンはインスリンの分泌以外にも多くの健康効果があるため、特に血糖値が気になる人にとってかかと落としは欠かせません。

オステオカルシンは血糖値を下げるだけでなく筋力や免疫力も向上させる

かかと落としによって分泌されるオステオカルシンは、血糖値を下げる他に筋力や免疫力、記憶力などを向上させる働きがあります。

つまり血糖値対策としてかかと落としを始めれば、数々の健康効果が得られるのです。

以下に、現在論文などで発表されているオステオカルシンの働きを示します。

  • 記憶力向上
  • 筋力向上
  • 免疫力向上
  • 男性ホルモン産生
  • 糖代謝の調節
  • 脂質異常症の改善

参照元:“骨が作る若返り物質”が運動で増える?! – 岡山大学オステオカルシンが動脈硬化進展と次世代の生活習慣病発症に及ぼす影響 – 九州大学

骨は長年、身体や内臓を支える支柱としての役割が注目されてきましたが、このように近年では内分泌器官としての役割も明らかになっています。

かかと落としは血糖値を下げるのに役立つだけではなく、オステオカルシンの分泌を通して老化による機能低下や生活習慣病の予防にも役立つのです。

かかと落としを習慣にすると血糖値に振り回されない毎日を手に入れられる

かかと落としは、今すぐにでも始められる身近な運動です。

食後すぐにかかと落としをする習慣が身につけば、運動が苦手な人や時間の確保が難しい人でも無理なく継続できます。

例えば、食後の食器を片付ける際に台所で洗い物をしながら実施してもよいでしょう。

外食時でも、トイレに行った際に30回かかと落としをする程度であれば難しくありません。

血糖値が高い状態はさまざまな病気のリスクが高まるため、食事や生活習慣など日常的に意識しなければならない面も多くなります。

そのような生活上の制限によるストレスは、健康に悪影響を及ぼします。

かかと落としという簡単な運動を習慣にし、血糖値とうまく付き合って行きましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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