糖尿病は厚生労働省発表の「平成28年 国民健康・栄養調査」によると男性16.3%、女性9.3%と多くの人が患っている病です。
糖尿病は誰しもなる可能性があり、加齢とともに患者数も増加します。
では、糖尿病にならないためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
この記事では、糖尿病を予防する食事について解説します。
- 糖尿病予防の食事
- 糖尿病の改善のための食事療法
- 糖尿病改善のための運動
糖尿病の症状が出た場合の食事療法や運動療法についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
糖尿病とは
糖尿病とは、インスリンが十分に働かず、血液中にブドウ糖が増えてしまう病気です。
インスリンが十分に働かない要因として、以下の2つが挙げられます。
- インスリンの分泌が低下している
- インスリンの抵抗性がない
膵臓の機能低下や運動不足、食べ過ぎなどが原因となり、インスリンが十分に働かなくなります。
インスリンには血糖を抑制する働きがあるため、健康な体でいるためには重要な要素です。
血液中のブドウ糖が増えたまま放置していると、血管が傷つき、心臓病や腎不全など重い病気になる可能性があります。
血糖値が高くならない限り症状がでないため、無自覚のまま健康診断などで判明する場合もあります。
早い時期に糖尿病が判明すると血糖コントロールが可能なため、定期的な健康診断は必要です。
糖尿病の種類
糖尿病の種類は、大きく分けて2種類に分類されます。
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓がほとんどインスリンを作れない糖尿病です。
糖尿病患者の中でも1型糖尿病は少なく、全体の10%も満たしていません。
1型糖尿病は、インスリンを作成できないため、インスリン注射しなければ症状は改善されません。
2型糖尿病は、インスリンは作られるものの、量が十分ではない糖尿病です。
糖尿病のほとんどの人が2型糖尿病であり、年配の人だけでなく、若い人も発症します。
2型糖尿病の治療には、インスリン注射やGLP-1受容体作動薬などを使用しますが、基本的に食事指導と運動療法で治療を行います。
どちらの糖尿病も、適切な処置が必要です。
糖尿病による症状を改善させるためにも、糖尿病に関する知識を増やし、上手に付き合っていきましょう。
糖尿病の症状
糖尿病は、初期段階ではほとんど症状がありませんが、進行すると体に支障が出始めます。
糖尿病の主な症状は、以下の通りです。
1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
---|---|
喉が乾きやすい 体重が減少する 疲れがとれない 頻尿 | 皮膚が乾燥し痒みを伴う 感染症にかかりやすくなる 目眩がある 手足の感覚が麻痺する 頻尿 疲れがとれない 喉が乾く |
糖尿病で引き起こされる症状も心配ですが、合併症を引き起こす可能性もあります。
糖尿病患者に多い合併症は、糖尿病網膜症や糖尿病腎症、糖尿病神経障害などが挙げられ「三大合併症」といわれています。
合併症を治すのは大変ですが、糖尿病を予防できると合併症の予防にもなるのです。
糖尿病予防の食事とは
糖尿病予防には、日頃の食生活が重要です。
糖尿病予防となる食生活を送るためには、以下の項目に注目しましょう。
- 脂質に注目する
- 食物繊維を摂取する
糖尿病を予防するためには、糖質や食物繊維との関係性は重要です。
糖質はでんぷんを含むため、エネルギーを得るには重要な要素となります。
しかし、糖質の摂取は時には糖尿病になるリスクを高める可能性があります。
一方で、食物繊維は腸内環境改善の効果が期待できるのです。
それぞれの性質がどのように糖尿病に関係するのか、詳しく解説していきます。
糖質に注目する
糖尿病を予防する際は、糖質に注目しましょう。
糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたものです。
糖質はエネルギーの元となる栄養素で、でんぷんやオリゴ糖などがあてはまります。
糖質の多い食べ物と少ない食べ物を、見てみましょう。
糖質の多い食べ物 | 糖質の少ない食べ物 |
---|---|
ごはん 餅 麺 パン とうもろこし じゃがいも さつまいも ぶどう パイナップル マンゴー 和菓子 ケーキ ポテトチップス | 大根 白菜 レタス 魚介 肉類 卵 乳製品 |
糖質の高い食べ物をまったく食べないのではなく、バランスよく食べるのを意識しましょう。
さらに、糖質の少ない食材でも、濃い味付けや揚物で食べると糖質の摂取量は上がります。
同じ味付けで飽きた場合は、蒸したり、焼いたりして調理方法を工夫してみましょう。
糖尿病予防には、糖質の摂取量を抑えたり、糖の吸収を抑制することが重要になります。
最近の研究で、ポリフェノールの一種に体内での糖の吸収を抑える効果があることも知られています。
詳しくは「糖質の吸収を抑え、食後血糖値が上がりにくくする成分」の記事をご覧ください。
食物繊維を摂取する
食物繊維を積極的に摂取するのも、糖尿病予防では重要でしょう。
食物繊維とは、小腸で消化や吸収がされず、大腸まで到達する栄養素です。
便秘の予防や血糖値上昇の抑制、コレステロール濃度の低下などに効果があります。
食物繊維が多い食品は、以下の通りです。
玄米
麦めし
とうもろこし
納豆
さつまいも
里芋
こんにゃく
ごぼう
セロリ
アスパラガス
白菜
キャベツ
バナナ
みかん
しいたけ
えのき
わかめ
食物繊維が不足すると腸内環境が悪くなり、便秘の要因となります。
さらに、生活習慣病である糖尿病になる可能性も高くなるのです。
糖尿病を予防するためにも、食物繊維は積極的に摂取しましょう。
血糖値の上昇を抑える低GI食品。よく耳にする言葉ですが、例えばどんな食品が低GIなのか分かりますか?低GI食品についてまとめました。
【完全理解】低GI食品とは?
糖尿病の人が食事療法を行う目的
糖尿病の人が食事療法を行う目的は、食生活を改善し、血糖値が上昇しないようにコントロールするためです。
糖尿病と診断された場合は、血糖値のコントロールは必須となります。
しかし、食事療法は食事制限を行なうわけではありません。
体内で必要となる栄養素を摂りすぎることなく、摂取するのを目的としています。
1日で必要となるエネルギー量の目安は、男性は2,200±200kcal、女性は1,400〜2,000kcalです。
カロリー別の摂取量を、見ていきましょう。
年齢・性別 | エネルギー | 主食 | 副菜 | 主菜 | 牛乳 乳製品 | 果物 |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 6〜9歳 女性 身体活動量が低い70歳以上 女性 6〜11歳 70歳以上 女性 身体活動量が低い12〜69歳 | 1,400〜2,000kcal | 4〜5つ | 5〜6つ | 3〜4つ | 2つ (子供は2〜3つ) | 2つ |
男性 身体活動量ふつう以上 70歳以上 男性 10〜11歳 女性 身体活動量ふつう以上 12〜69歳 | 2,200±200kcal (基本形) | 5〜7つ | 5〜6つ | 3〜5つ | 2子供は2〜3つ) | 2つ |
男性 身体活動量ふつう以上 12〜69歳 | 2,400〜3,000kcal | 6〜8つ | 5〜7つ | 4〜6つ | 2〜3つ (子供は2〜4つ) | 2〜3つ |
引用元:農林水産省 みんなの食育
表から分かるように、エネルギー量によって摂取できる量は異なります。
スポーツなどを頻繁に行う身体活動量が多い人は2,400〜3,400kcalを目安に、身体活動量が少ない人は1,400〜2,000kcalを目安に摂取します。
自分の生活スタイルに合う摂取量を意識するだけで、糖尿病は改善されるでしょう。
食事療法を行う際の注意点
食事療法の注意点には、以下の内容が挙げられます。
- 1日3食食べる
- バランスのよい食生活を心がける
- 腹八分目を目安に満腹にしない
- 食べ方を工夫する
食事療法は、糖尿病を改善するための基本となる治療です。
体内に入るブドウ糖の摂取量を食事療法で抑えられると、膵臓の負担を軽減させ、機能の回復を早めます。
食事療法が正しく行われないと、他の治療方法を行っても効果は得られないでしょう。
食事療法の注意点について、詳しく解説していきます。
1日3食食べる
食事は、朝昼夜と3食決まった時間に食べるようにしましょう。
決まった時間に食事をとると、空腹の時間が少なくなり、過食を防ぐ効果もあります。
一方で、朝を抜いたり、1回にまとめて食べたりすると膵臓に大きな負担がかかります。
膵臓への負担は、糖尿病悪化の要因となるのです。
さらに、食事の間隔を空けると血糖値の上昇を防げるため、血糖値が安定する効果も得られます。
どうしても3食食べられない場合は、寝る前の食事は避け、1日のエネルギー摂取量を間食などで補うようにしましょう。
バランスのよい食生活を心がける
バランスのよい食生活を心がけるのも、食事療法では大切です。
厚生労働省が5年ごとに発表している「日本人の食事摂取基準」を満たした食事が、栄養バランスのよい食事の目安となります。
バランスのよい食生活とは、以下の栄養素を含む食事です。
- エネルギー
- タンパク質
- 脂質(4項目)
- 炭水化物(2項目)
- ビタミン(13種類)
- ミネラル(13種類)
栄養素は、偏って摂取した場合効果は発揮できません。
年齢や身体活動レベルによって摂取する量は異なりますが、体が必要とする量を適切に摂取するのが重要です。
腹八分目を目安に満腹にしない
普段の食生活では、腹八分目を目安に満腹にしないようにしましょう。
食べ過ぎはブドウ糖を多く作る要因となり、糖尿病には大敵です。
とくに脂肪分が多く含まれている肉類の食べ過ぎは、カロリーの過剰摂取となります。
全く食べないのは望ましくありませんが、脂肪分の少ない部位を選ぶ、魚と交互に食べるなど工夫して食べるようにしましょう。
さらに、よく噛んで食べると満腹感が得られるため、食べ過ぎを防ぐ効果もあります。
外食する場合は、油物や肉類はなるべく避け、魚メインの和食を選択すると食べ過ぎ予防にもなります。
食べ方を工夫する
食事療法を行う際は、食べ方も工夫しましょう。
血糖値の上昇を防ぐ食べ方は、以下の順番です。
- 野菜
- タンパク質
- 炭水化物
血糖値が上昇すると、インスリンが大量に分泌され、糖尿病のリスクが高くなります。
野菜には、血糖値の上昇を抑える食物繊維やクエン酸などが多く含まれています。
そのため、野菜を最初に食べると血糖値の上昇を抑えられるのです。
次に、タンパク質を摂取します。
タンパク質は消化に時間が要するため、吸収を遅らせる効果があります。
炭水化物は、すぐに血糖値を上昇させるため、野菜とタンパク質で胃の動きをゆっくりにさせてから摂取すると血糖値は急激に上昇しません。
血糖値の急激な上昇・降下は血管にダメージを与える可能性があり、動脈硬化のリスクも高めるといわれています。
食後の血糖値の動きには、特に注意が必要です。
対策についてはコチラの記事も参考にしてください。
運動療法も大事
糖尿病には、食事療法だけでなく、運動療法も大事です。
運動が大切となる理由は、以下の通りとなります。
- ブドウ糖を消費する
- インスリンの動きが活発になる
- 脂肪細胞が小さくなりインスリンが動きやすくなる
- 基礎代謝がアップする
適度な運動は、健康を保つだけでなく、糖尿病の予防や改善に繋がるのです。
効果的な運動方法に、ウォーキングや軽めのジョギング、階段の上り下りなどの有酸素運動が挙げられます。
効果を得るためには、10分程度の短い時間でも良いので、毎日続ける姿勢が重要です。
まとまった時間がとれない人は、通勤は一駅手前で降りて歩く、エレベーターではなく階段を使用するなど日ごろの生活に運動習慣を組み込むとよいでしょう。
さらに、より効果が高まるのは血糖値が高まる食後30分〜1時間の間です。
軽い体操や掃除などを食後に行い、エネルギーを消費しましょう。
糖尿病を防ぐためには日ごろの食事が大切
糖尿病を防ぐためには、日ごろから食事に気をつかいましょう。
糖尿病は、ストレスや運動不足なども原因となりますが、その中でも食生活は重要です。
タンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなど、決められた摂取量をバランスよくとるのが糖尿病の予防となります。
さらに、野菜から食べる、ゆっくり噛んで食べるなど食べ方にも気をつけましょう。
糖尿病になった場合、基本的な治療方法は食事療法となるため、食生活の見直しは重要です。
日ごろから食生活に気をつかって、糖尿病を予防しましょう。
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