血糖値は健康診断などで測定される数値で、血糖値が高い状態が続くと糖尿病の可能性が出てきます。
しかし、病気が見つかる前や初期段階だった場合、食事の改善によって血糖値を下げられます。
では、どのような食材が血糖値を下げる効果を持っているのでしょうか。
この記事では、血糖値を下げる食べ物について解説します。
- 血糖値と糖尿病の関連性
- 血糖値を下げる食べ物の種類
- 血糖値を下げる食事の仕方
食事の改善から治療できる2型糖尿病や、組み合わせられる運動療法についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
血糖値の上昇がインスリン以上に繋がって糖尿病になる
血糖値とは、血液中のグルコース(ブドウ糖)濃度を指す数値です。
炭水化物や砂糖に含まれている糖分は、体内でブドウ糖に変換された後、体を動かすエネルギーとして利用されます。
ブドウ糖をエネルギーとして利用する際は、すい臓から分泌されるホルモンのインスリンが必須です。
しかし、すい臓やインスリンに何らかの異常が発生していると、自分で血糖値を下げられません。
高血糖が続いた場合、血液や血管の状態が悪化して、さまざまな病気に発展する可能性があります。
インスリン異常によって血糖値が高い状態が恒常化している場合、糖尿病に該当します。
2型糖尿病は初期であれば食べ物の改善から治る可能性が高い
糖尿病は1型と2型の2種類に分けられており、それぞれ原因や異常の出方が異なっています。
- 1型糖尿病:免疫異常が原因で、すい臓のインスリン分泌が停止する
- 2型糖尿病:生活習慣の乱れや遺伝が原因で、インスリンの分泌が少なくなる、もしくは効果が薄まる
1型糖尿病は普段の生活を健康的に過ごしていても、突然発症する可能性があります。
発症した後は自分でインスリンを作り出せなくなるため、注射によるインスリンの補給が必要です。
一方、2型糖尿病は以下のような生活習慣の乱れや遺伝により、血糖値の上昇が発生します。
生活習慣の乱れ | ・血糖値の上昇に繋がる糖分の過剰摂取 ・インスリンの働きを弱める脂質の過剰摂取 ・運動不足 ・睡眠不足 ・ストレス |
---|---|
遺伝 | 糖尿病にかかった親族がいる場合、糖尿病を発症する可能性が高くなる |
遺伝も原因の1つになりますが、糖尿病の症状の悪化は、生活習慣の乱れの方が大きく影響しています。
糖尿病にかかる人の多くは2型糖尿病に該当しますが、症状が進行する前に生活習慣の乱れを改善できれば治療可能です。
血糖値を下げる食べ物は血糖値の吸収やインスリンに作用する
血糖値を下げる食べ物の多くは直接的に数値を下げるのではなく、糖質の急激な吸収を抑えたり、インスリンの働きを活発にしたりします。
しかし、血糖値を下げる食べ物を過剰に食べ過ぎると、糖分不足になる可能性もあります。
血糖値を正常な状態に保つためには、糖分や脂質を含めてバランスの良い食生活が必要です。
血糖値を下げつつ、栄養バランスを重視する食事は、以下の点を意識します。
- 糖分をコントロールする:エネルギー生成には必要であるため、年齢や体質に合わせて適量を摂取する
- 脂質の摂取量を減らす:過剰な摂取は内臓脂肪となり、肥満に繋がるため、必要な量を摂取する
- 食物繊維を多めに摂取する:糖質の吸収を穏やかにして、血糖値の急上昇を防ぐ
血糖値を急上昇させる食べ物と、栄養バランス的におすすめの食べ物を見ていきましょう。
炭水化物や砂糖の多い食べ物と飲み物は血糖値の急上昇に繋がる
糖質は栄養素として必須ですが、過剰に摂取すると血糖値を急上昇させる原因になります。
以下のような炭水化物、もしくは砂糖の多い食べ物や飲み物は、食べる量や回数に気をつけた方が良いでしょう。
- 精白米
- うどんやパスタなどの炭水化物の多い麺類
- 砂糖の多い菓子、菓子パン
- 清涼飲料水
好きな食べ物や飲み物を摂取できないと、ストレスを感じて、そこから生活習慣の乱れを引き起こす可能性もあります。
血糖値が正常な場合は、過度な糖質制限にもならないように、適量を摂取します。
雑穀米や全粒粉パンは炭水化物の摂取量が抑えられる
米やパンなどの主食になる食べ物には炭水化物が多く含まれますが、以下の食べ物に置き換えた場合、炭水化物の摂取量を抑えられます。
- 精白米→雑穀米(玄米、麦、アワ、ヒエなど)
- 普通のパン→全粒粉パン
- うどんやパスタ→そば
上記の食べ物にも炭水化物は含まれているため、食べ過ぎると過剰な糖質摂取に繋がります。
動物性脂肪を魚の不飽和脂肪酸に置き換えて内臓脂肪を防ぐ
内臓脂肪になるのは動物性脂質であるため、必要な脂質は以下の魚などに多く含まれる不飽和脂肪酸に置き換えるのがおすすめです。
- まぐろ
- さば
- 鮭
- さんま
一方で、肉類も余分な脂身を取り除けば、脂質を減らしながらタンパク質などのさまざまな栄養素を摂取できます。
魚を食べるのが苦手な人は、普段食べる肉類を脂肪分の少ない部位に置き換えましょう。
食物繊維が多い食品には他の栄養素も多数含まれている
血糖値の上昇を防ぐ効果がある食物繊維は、以下のような食品に多く含まれています。
野菜 | ・モロヘイヤ ・ブロッコリー ・オクラ |
---|---|
海藻類 | ・わかめ ・昆布 |
大豆類 | ・大豆 ・インゲン豆 ・納豆 |
キノコ類 | ・まいたけ ・えのき ・しめじ ・しいたけ |
野菜類や納豆は食物繊維以外の栄養素が豊富であるため、栄養バランス的にも有用な食べ物です。
カリウムやリコピンも血糖値の下降やインスリンの働きを高める
食物繊維以外で血糖値やインスリンに対して効果がある主な栄養素は、以下のとおりです。
栄養素 | 効果 | 含まれる主な食べ物 |
---|---|---|
カリウム | 血糖値を下げる作用 | ・昆布 ・ぶどう ・バナナ ・納豆 ・さわら ・切り干し大根 ・ほうれん草 |
ケルセチン | 抗酸化作用からインスリンの働きが良くなる | ・たまねぎ(外皮に多い) ・リンゴ ・サニーレタス ・ブロッコリー ・モロヘイヤ |
リコピン | インスリンの分泌促進 | ・トマト ・金時人参 ・すいか |
昆布や納豆、ブロッコリーなどは食物繊維も含まれている食べ物であるため、2つ以上の栄養素から血糖値を下げる効果が期待できます。
ブルーベリーなどに多く含まれるプロアントシアニジンには、糖の吸収を抑えたり、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。
プロアントシアニジンを多く含む食材を意識するなども心がけるとよいでしょう。
プロアントシアニジンを多く含む食品一覧
ジュースや栄養ドリンクを別の飲み物に置き換えて血糖値の上昇を防ぐ
ジュースや栄養ドリンクなどの清涼飲料水を常飲していた人は、飲み物も置き換えてみましょう。
以下の飲み物は含まれている栄養素や成分から、血糖値やインスリンに対しても効果があります。
- 牛乳:ホエイプロテインがインスリンの働きを助ける
- 緑茶:カテキンが血糖値の上昇を抑える
- コーヒー:カフェインが血糖値の上昇を抑える
ただし、牛乳には脂質が含まれており、コーヒーには砂糖が入った商品もあります。
牛乳は低脂肪乳、コーヒーは砂糖抜きの商品を選んで、1日あたりの摂取量に気をつけながら飲みましょう。
食事療法では食事の回数や食べる順番も重視される
糖尿病の治療で行われる食事療法では、栄養バランスと同時に食事の仕方についても医師や栄養士から指導されます。
糖尿病にかかる前でも食事の回数や食べる順番を工夫すれば、血糖値の上昇を抑えたり、食べ過ぎを防いだりできます。
食事の仕方として意識したい項目は、以下のとおりです。
- 決まった時間の食事
- 間食する回数の削減
- 摂取する栄養素の順番
- 食べるスピード
- 食べ過ぎない
それぞれの項目を糖尿病との関連性に当てはめながら、詳しく見ていきましょう。
1日3食をある程度決まった時間に食べる
1日の食事は朝昼晩の3回に分けて食べますが、このうちの1回でも抜けてしまうと、他の時間帯の食事量が少し多くなります。
食事量の増加は糖質を摂り過ぎる可能性が高くなり、血糖値の上昇を招くため、望ましくありません。
そのため、1日の食事は3回に分けて、ある程度決まった時間に食べましょう。
朝食は食べないという人が多いですが、寝る前の最後の食事から次の昼食までの時間が6時間以上空く可能性が高くなります。
栄養を一切摂っていない状態で糖質を摂取すると、急激な血糖値の上昇に繋がるため、朝食抜きは推奨できません。
どうしても空腹になってしまう場合は間食も1つの手ですが、間食では甘いものを取ってしまう人もいます。
次の血糖値の上昇を抑える食べ方を実践するためにも、さまざまな栄養素が摂取できる通常の食事で、なるべくお腹を満たしましょう。
食物繊維からゆっくり摂取して血糖値の上昇を抑える土台を作る
食物繊維などの一部の栄養素には血糖値の上昇を抑える効果がありますが、先に炭水化物や砂糖を摂取すると、上昇を抑える効果が間に合いません。
食事を摂る際は以下の順番を意識して、血糖値の上昇を抑える土台を作りましょう。
- 野菜やキノコ類などの食物繊維の多い食材を食べる
- 肉や魚などのタンパク質が豊富な食材を食べる
- 米や麺などの炭水化物を含む食材を食べる
食物繊維などの血糖値の上昇を抑える効果は数分経たないと現れないため、野菜を食べてもすぐに肉や米を食べていいわけではありません。
最初に野菜やキノコ類をゆっくりよく噛んで食べてから、次のタンパク質を含んだ食材に移りましょう。
食べ過ぎないように腹八分目や間食の回数を減らすよう心がける
食事の回数や食べる順番を守っていても、1回あたりの食事量が多くなると、糖質や脂質を過剰摂取する可能性があります。
自作の弁当や店で購入する際は、腹八分目になるような量に調整しましょう。
間食は砂糖を抑えられる食べ物であれば、3食の間の空腹を埋めるのに有効な手段です。
しかし、間食で食べ過ぎてしまうと、本来の3食で十分な栄養が摂取できない可能性があります。
3食では腹八分目を目標にしつつ、なるべく間食に頼らないで済むような量を自分で見つけていきましょう。
食事のタイミングや内容は血糖値を抑える工夫として重要です。
特に普段の食事で意識して摂取しておきたい食材や成分については、こちらの記事も参考にしてください。
インスリンの働きを高める食材、成分の一覧
運動療法で摂取した栄養素を効率よく取り込む
糖尿病の治療では、食事療法と合わせて運動療法も行われています。
適度な有酸素運動は体内のインスリンの働きを活発にするため、分泌量や効果が薄まった状態を改善できます。
糖尿病にかかる前でも以下のような効果が期待されるため、食事と合わせた運動はおすすめです。
- 体内のブドウ糖が体を動かす際のエネルギーとして消費されるため、血液中の余分なブドウ糖を消費できる
- 脂質もエネルギーとして消費されるため、肥満対策にもなる
上記以外にも程よい運動がストレス発散になったり、睡眠の質を良くしたりするため、さまざまな面で健康的な効果があります。
血糖値を下げる食べ物を取り入れて栄養バランスの良い食事を目指す
血糖値を下げる食べ物としては、食物繊維の多い野菜やキノコ類などが挙げられます。
しかし、血糖値を上げる糖質も体に必要な栄養素になるため、さまざまな栄養素を適量かつバランス良く摂取する必要があります。
1日で食べる回数や量を調整しつつ、食物繊維から摂取して血糖値の上昇を抑えるような食べ方を心がけましょう。
食事と合わせて運動も適度に取り入れた場合、糖尿病を未然に防いで、健康的な生活が送れます。
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