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血糖値が高いとどうなる?高血糖が続くと起こる症状や合併症について解説

血糖値が高いとどうなる?高血糖が続くと起こる症状や合併症について解説

厚生労働省の平成28年国民健康栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人とされ年々増加しています。

しかし、そのうち現在治療を受けている人の割合は76.6%です。

糖尿病にかかっている、約2割の人が治療をせずにいます。

血糖値は高くても症状がほとんど現れないため、放置してしまう人が少なくありません。

食事制限や運動療法がつらくなり、途中で治療をやめてしまう人もいます。

糖尿病は症状がなくても、体の中で進行する病気です。

症状がないからといって高血糖を放置すると、治療が手遅れになる場合もあります。

では、血糖値が高いとどうなるのでしょうか。

この記事で分かること
  • 血糖値が高くなる原因
  • 血糖値が高いと起こる症状
  • 糖尿病の三大合併症
  • 高血糖による動脈硬化が引き起こす疾患

血糖値が高くなる原因や合併症について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

血糖値が高くなる原因

血糖値が高くなる原因

血糖値は食事運動不足ストレスによって高くなります。

健康な人であれば、インスリンの働きによって血糖値が一定の数値に保たれます。

血糖値が高くなる原因

体の中で血糖値を下げられるホルモンは、インスリンだけです。

なんらかの理由でインスリンがうまく機能しないと血糖値をコントロールできず、高血糖になってしまいます。

血糖値を上手にコントロールするために、血糖値が上がる原因を理解したうえで改善に取り組みましょう。

血糖値が上がりやすい人の特徴や、原因となる食事と生活習慣について解説します。

血糖値が高くなりやすい人の特徴

糖尿病は、中高年の発症が多い傾向があります。

年齢が上がるにつれてインスリンの働きが低下し、血糖値が上がりやすくなるためです。

特に中高年で肥満の人は糖尿病にかかりやすいため、普段から食事や運動に気をつけて糖尿病を予防しなければなりません。

糖尿病の原因は、遺伝とも深く関係しています。

血縁者に糖尿病の人がいる場合は、血糖値が高くなりやすい体質の可能性があります。

家族の既往歴を把握しておくと、かかりやすい病気をあらかじめ知っておけるため、糖尿病予防にも重要です。

血糖値を上げやすい食事

高血糖の人の特徴 食事

血糖値は食事によって上がるため、食べるものや食べ方の影響を強く受けます。

血糖値を上げやすい炭水化物や糖分を多く含んだお菓子などを大量に食べると、一気に血糖値が上昇します。

どか食い暴飲暴食も、血糖値を上げる原因です。

日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が弱いため、普段から洋食が多い人は血糖値が上がりやすい傾向があります。

血糖コントロールでは、食事の順番に工夫をすると高血糖を予防できます。

野菜などの食物繊維を多く含む食品から食べ始めると、血糖値を緩やかに上昇させるため血糖値を急上昇させません。

血糖値を上げやすい生活習慣

高血糖の人の特徴 生活習慣

運動不足やストレス、喫煙、過剰な飲酒は血糖値を上げ糖尿病リスクを高めます。

特にストレスは睡眠不足や暴飲暴食を起こしやすく、改善せずにいると血糖値が常に高い状態にもなりかねません。

適度な運動やストレス解消をすると、血糖値をコントロールしやすくなります。

タバコも、血糖値を上げる原因の一つです。

タバコに含まれるニコチンは、血糖値を上げやすくします。

生活習慣の乱れによって血糖値が高くなると、気がつかないうちに糖尿病が進行している場合もあります。

血糖値が高いと起こる症状

血糖値が高いと起こる症状

糖尿病は症状が出にくい病として知られており、血糖値が高くても初期症状はほとんどありません

しかし、血糖値が高い状態を放置すると、症状がなくても体内では少しずつ高血糖の影響が出ています。

症状が出たときには、糖尿病が進行していて合併症を発症しているという場合もよくあります。

糖尿病を発見するためには定期的な検査が重要であり、症状が出たときに早急に病院を受診する判断が必要です。

ここでは、血糖値が高いと起こる症状について解説します。

高血糖によって体内で起こっている血管障害

高血糖が起因する血液障害

高血糖状態が続くと、体内では血管に異常が出はじめます。

血糖コントロールができていないと、長い時間をかけて血管は弾力が失われた状態になり詰まりやすくなります。

体の外に現れる症状よりも前に起こっているのが、血管の障害です。

全身の血管に異常が起こるため、複数箇所で同時に血管障害が進行する場合もあります。

糖尿病の合併症は、ほとんどが血管障害によって起こる病気です。

高血糖を改善せずに放置すると、血管を破壊し糖尿病の合併症を引き起こしやすい状態にしてしまいます。

高血糖によって現れる症状

高血糖がかなり進むと、症状として体に変化が現れます。

主な症状は、以下の通りです。

高血糖症状
  • 口の渇き
  • トイレの回数が増える
  • 体重の減少
  • 疲れやすい
  • 傷が治りにくい
  • 集中力の低下

インスリンの働きが弱まると体の中のブドウ糖をエネルギー源として利用できず、疲れやすくなり集中力が続かないといった症状が出やすくなります。

これらの症状が現れても糖尿病とは関係ないと思ってしまう人が多く、発見が遅れてしまう場合もあります。

普段から自分の体調の変化に意識を向け、ちょっとした体調不良も見逃さないようにしましょう。

高血糖を予防するには、普段からの対策が重要となります。
特に食事面での見直しを考えられている場合は、こちらのページも参考にしてください。

糖尿病を早期発見するためには

糖尿病は、健康診断などで定期的に血糖値の検査をすると早期発見ができます。

しかし、健康診断では空腹時の血糖値を調べる場合がほとんどで、食後高血糖を見逃しかねません

食後高血糖とは、食後の血糖値の急上昇によって血管が傷つけられることです。

初期の糖尿病では空腹時の血糖値が正常値でも、食後の血糖値だけが異常に高い場合がよくあります。

75gブドウ糖負荷試験

食後高血糖は、75gブドウ糖負荷試験によってみつけられます。

75gブドウ糖負荷試験とは、ブドウ糖の入ったソーダ水を飲み、時間をおいて血糖の数値を調べる検査のことです。

食後2時間の数値が200mg/dL以上で、糖尿病と診断されます。

気になる症状が出たときや、糖尿病が気になりはじめたときは早めに検査を受けるようにしましょう。

糖尿病は早期発見によって、進行を防げます。

糖尿病の三大合併症

糖尿病の三大合併症

高血糖によって、全身の細い血管や神経が傷つけられて引き起こされる病気を、三大合併症といいます。

糖尿病が悪化したときの症状としてよく聞く失明足の切断は、この三大合併症によって起こります。

3つの合併症に共通するのは、早期発見をしなければ重篤な状態に進行しかねない病気である点です。

それぞれの病気について、解説します。

糖尿病性網膜症

三大合併症1

糖尿病網膜症は、目の網膜に起きる病気です。

血糖値が高い状態が続くと網膜に広がる毛細血管が傷つけられ、血管障害が起こります。

進行すると網膜出血や網膜剥離を引き起こし、視力の低下や失明する場合もあります。

たとえ進行していても自覚症状はほとんどなく、症状が現れたときにはすでに失明の危険性が高い状態です。

失明を防ぐためには、早期に発見して治療を開始しなければなりません。

血糖値の高い人は、自覚症状がなくても年に一度眼底検査を受けて網膜の状態を調べる必要があります。

糖尿病性腎症

三大合併症2

糖尿病性腎症は腎臓の糸球体が傷つけられ、腎機能が低下する合併症です。

糸球体には毛細血管が多く、血液中の老廃物を濾過する機能をもちます。

高血糖が続くと糸球体の毛細血管がもろくなり、出血や血管の詰まりが起こりやすくなります。

そのため、腎臓がうまく機能できず、血液中の老廃物を尿中に排出できなくなってしまうのです。

糖尿病性腎症も初期はほとんど症状がなく、進行すると貧血高血圧むくみといった症状が現れます。

さらに進行すると体内で血液を浄化できなくなり、人工透析をしなければならない状態になってしまいます。

糖尿病性腎症には、尿中アルブミン検査という尿検査が有効です。

早期発見に役立てられるため、定期的な検査で予防しましょう。

糖尿病性神経障害

三大合併症3

糖尿病性神経障害は、高血糖の影響で全身の神経に障害を起こす合併症です。

三大合併症の中でも、早い時期から自覚症状が現れます。

特に症状が現れやすいのは、足の先です。

体の末端には血液や栄養が届きにくいため、足先や指先に神経障害が起こりやすくなります。

神経障害の初期に起こりやすいのは、以下の症状です。

  • 足の先がしびれる
  • 足が冷えやすい
  • 手や足の感覚が鈍い
  • 足の感覚に異常がある
  • 足がつる

痛みを感じとる感覚神経の障害が進むと、しびれ痛み、足に潰瘍壊疽ができます。

足の壊疽は細胞が腐敗して広範囲に広がると、それ以上の広がりを防ぐために壊疽した部分の切断を余儀なくされる場合もあります。

早めの段階で症状が出やすいからこそ、早期に気づいて治療を始めなければなりません。

糖尿病による手足のしびれの場合は左右対称に出る、安静時に強く出るといった特徴があります。

近年の研究で糖尿病予防におけるポリフェノールの効果に注目が集まっています。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。
薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究

高血糖による動脈硬化が引き起こす疾患

動脈硬化

高血糖が続くと動脈硬化が起こり、さまざまな病気のリスクを高めます。

動脈硬化とは、心臓から血液を全身に運ぶ動脈の血管が厚く硬くなってしまう状態のことです。

血管が硬いと弾力が失われ、血液が流れにくく詰まりやすくなります。

高血糖による動脈硬化は、糖尿病になる前段階から進行をはじめます。

動脈硬化が引き起こす心筋梗塞脳梗塞は、命にも関わる疾患です。

高血糖が引き起こす動脈硬化による病気について、解説します。

冠動脈疾患

冠動脈疾患には、狭心症心筋梗塞などがあります。

冠動脈は、心臓の筋肉に血液を送る血管です。

この冠動脈の血流が悪くなると、心臓に障害が起きやすくなります。

心筋梗塞では突然発症する人もいますが、急な胸の痛みや呼吸困難、嘔吐などの前兆がある人もいます。

しかし、糖尿病の人は心筋梗塞になっても症状がはっきりとはわかりにくく、疲労感や食欲不振のみの場合も少なくありません。

健康診断の心電図検査で異常が見つかる場合もあるため、心臓の定期検査が大切です。

脳血管障害

脳血管障害とは、脳の血管に起こる障害によって血管が詰まったり破れたりすることです。

脳梗塞の最大の原因は高血圧といわれていますが、糖尿病も脳梗塞のリスクを高めます。

脳梗塞は脳の血管が詰まって血液を送れなくなり、血液が届かない部分が壊死してしまう病気です。

急に起こる場合が多く、症状が出たらすぐに治療をしないと手遅れになりかねません。

早急に治療できないと、半身麻痺などの後遺症が残る可能性もあります。

脳梗塞には頭痛めまい手足のしびれ舌がもつれるなどの症状があります。

気になる症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。

血糖値は高いままで放置すると血管を傷つけ合併症を引き起こす

血糖値が高いまま治療をせずにいると、糖尿病を進行させ合併症を引き起こします。

糖尿病は中高年の発症が多いため、健康診断などで検査数値をよく把握しておく必要があります。

肥満も血糖値が上がる原因になるため、食事や生活習慣には気をつけなければなりません。

症状がない間も体の中では、血管の障害が進行している場合があります。

高血糖を放置してしまうと、糖尿病の三大合併症や動脈硬化による疾患の発症リスクが高くなります。

糖尿病は、生活習慣の改善や定期的な検査で予防ができる病気です。

血糖値の高さが気になったときは、早めの検査と生活習慣の見直しで糖尿病を予防しましょう。

糖尿病を予防しよう

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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