厚生労働省の平成29年1型糖尿病の実態調査によると、全国で1型糖尿病にかかっている人は約10〜14万人です。
人口に占める割合は0.09〜0.11%で、およそ1,000人に一人が1型糖尿病にかかっています。
発症する年齢層は幅広く、一度発症すると生涯にわたり治療が必要です。
1型糖尿病は正しい治療と安定した血糖コントロールによって、健康な人と同じように生活ができます。
今回は、1型糖尿病について解説します。
- 1型糖尿病とは
- 1型糖尿病の治療方法
- 1型糖尿病の急性合併症
1型糖尿病の治療法や合併症について解説しているため、ぜひ参考にしてください。
1型糖尿病とは
1型糖尿病は、インスリンの分泌低下によって血糖値を下げられなくなる病気です。
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、不足すると慢性的な高血糖を起こします。
突然症状が現れて発症する場合がよくあり、治療が遅れると意識障害などの重症化リスクを高めます。
小児から成人まで幅広い年代で発症しますが、発症のピークは思春期頃で子どもにも多い病気です。
ここでは、1型糖尿病の基本情報について解説します。
1型糖尿病の原因
ほとんどの1型糖尿病は、自己免疫の異常が原因となって発症するといわれています。
自己免疫の異常とは、本来ウイルスや細菌などの異物から体を守る免疫システムが自分の細胞を攻撃してしまうことです。
自己免疫がβ細胞を破壊する原因ははっきりと解明されておらず、遺伝やウイルス感染が関係しているとも考えられています。
1型糖尿病は生活習慣を原因とする2型糖尿病とは違い、生活習慣は関係ありません。
1型糖尿病の症状
1型糖尿病には、高血糖によって起こるさまざまな症状があります。
高血糖によって起こる代表的な症状は、以下の通りです。
- 喉の渇き
- 尿の回数が増える
- 体重の減少
- 疲れやすくなる
- 集中力が低下する
糖尿病の典型的な症状では、喉の渇きがよく起こります。
血液中にブドウ糖が増えすぎると、腎臓が機能し余分なブドウ糖を尿として排出します。
そのときに、体の中で大量の水分が利用されて起こるのが脱水症状です。
症状が出たら、早めに医療機関を受診し治療を開始する必要があります。
1型糖尿病の種類
1型糖尿病は進行の早さによって、主に3つの種類に分けられています。
種類によって、症状が出てからインスリン依存状態になるまでの経過が違います。
インスリン依存状態とは、体内でインスリンがほとんど分泌されなくなり、早急なインスリン補充が必要な状態のことです。
1型糖尿病の種類
劇症1型糖尿病 | 最も急激に発症し、進行が早い糖尿病。 症状が出てから1週間以内に、インスリン依存状態になる。 インスリン治療の開始が遅れると、重症化のリスクが高まる。 |
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急性発症1型糖尿病 | 最も発症の頻度が高い、典型的な1型糖尿病。 症状が出てから、数ヶ月でインスリン依存状態になる。 |
緩徐進行1型糖尿病 | 半年から数年かけて、ゆっくりとインスリンの分泌量が低下する。 発症の初期はインスリン治療を行わなくても、血糖値を抑えられる。 初期の状態は2型糖尿病と似ているため、あとから1型糖尿病だとわかる場合がある。 |
近年の研究では、ポリフェノールの一種に「空腹時血糖値」「食後血糖値」を抑える効果が知られています。
普段の食事に上手に取り入れるなど対策をしていきましょう。
空腹時と食後の血糖値をまとめて下げるポリフェノールの一覧
1型糖尿病の治療方法
1型糖尿病では、ほとんどの場合でインスリン注射による治療が必要です。
インスリンを補充しないと血糖値が下げられなくなり、命にも関わります。
血糖値の変動には常に注意を払い、体調の異変にすぐ気がつくようにしておきましょう。
血糖値が安定している人には運動制限やつらい食事制限がなく、スポーツや趣味を楽しんでいる人もたくさんいます。
糖尿病の治療についてよく理解し付き合っていくと、制限のない生活が可能です。
1型糖尿病の主な治療法について、解説します。
インスリン療法
インスリン療法は、体内で分泌できないインスリンを外から補い血糖値を安定させる治療法です。
インスリン療法では、インスリンの基礎分泌と追加分泌を補う必要があります。
基礎分泌とは、1日の血糖値を安定させるために分泌されるインスリンのことです。
追加分泌は、食事による血糖値の上昇を抑えるために分泌されるインスリンをいいます。
インスリン療法で一般的な方法は、皮下注射とインスリンポンプです。
皮下注射は、ペン型の注入器で皮膚と筋肉の間に注射を打ちます。
インスリンポンプは機器を体に装着して、インスリンを注入する方法です。
インスリン注射は医療機関からの指導を守り、安全に配慮して行います。
食事療法
1型糖尿病の治療には、健康的な食習慣の継続が重要です。
インスリン注射を規則正しく行うためには、食事量と食事時間をできるだけ一定にする必要があります。
血糖値が下がりやすい時間帯に間食をして血糖コントロールをする場合や、血糖値の変動を小さくするために食事を5〜6回に分ける食事療法もあります。
カーボカウントという、炭水化物の摂取量を把握して血糖値を安定させる食事療法も有効です。
間違った食事療法や必要以上の間食は、肥満や脂質異常の原因になります。
食事療法は主治医や栄養士の指導のもとで、正しく行いましょう。
肥満によるすい臓機能の低下で、インスリンの効き目が悪くなり血糖値が下がりにくくなります。
ポリフェノールの一種にはインスリンの効果を高める機能がありますので、普段の生活に取り入れていくのもオススメです。
アカシアポリフェノール-薬科大学・国立大学が注目する効果とは
運動療法
1型糖尿病の治療には、運動も大切です。
運動には、インスリン注射の働きを高める効果が期待できます。
適度な運動は血液中の中性脂肪を減らしたり血圧を安定させたりするため、動脈硬化の予防にもなります。
運動は、低血糖を起こす可能性があります。
低血糖は、運動によって血流がよくなりエネルギーの消費が活発になるために起こります。
低血糖の予防には、運動前の軽めの食事やインスリン量を変えるなどの調整が必要です。
運動中に低血糖になった場合は、早急に糖分を多く含む清涼飲料水などを飲み、早めに医療機関を受診しましょう。
1型糖尿病の急性合併症
糖尿病には、さまざまな合併症があります。
急性合併症とは、症状が出たときに早急な治療を必要とする合併症のことです。
急性合併症は、治療が遅れると命にも関わる昏睡などの意識障害を引き起こします。
1型糖尿病は、インスリン注射や食事療法によって自己管理が大切な病気です。
1型糖尿病で起こりやすい急性合併症と予防法について、解説します。
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスは1型糖尿病で起こりやすい急性合併症で、治療が遅れると昏睡状態にもなりかねない危険な合併症です。
インスリンの不足によって血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなると、体は代わりに脂肪を分解してエネルギーとして利用します。
脂肪が分解されると血液中にケトン体という物質が増え、血液が酸性に傾きます。
その状態が、ケトアシドーシスと呼ばれる状態です。
喉の渇きや尿量の増加などの糖尿病の典型的な症状が起こり、急速に悪化します。
嘔吐や頭痛、呼吸困難になり意識障害に進行する場合もあり、早急な治療が必要です。
低血糖
低血糖はインスリン療法をしている人や、糖尿病の治療薬を服用している人に多くみられます。
血液中のブドウ糖濃度が異常に下がった状態で起こる症状で、ブドウ糖の補給が遅れると意識障害が起こる場合もあります。
低血糖は血糖値が70mg/dL未満になると症状が現れ、50mg/dL未満になると早急な治療を必要とする状態です。
以下のような症状が出た場合、早急にブドウ糖補給と医療機関への受診が必要です。
血糖値70mg/dL未満 | 冷や汗 急激な空腹感 寒気 動悸 手足のふるえ 力が入らない 頭痛 |
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血糖値50mg/dL未満 | 頭がぼーっとする 異常な行動をする ろれつが回らない 意識を失う けいれんを起こす |
急性合併症の予防方法
急性合併症を予防するためには、普段から自分の血糖値を把握しておく必要があります。
インスリン注射をしている人は、血糖値を自分で測る自己血糖測定を行います。
自己血糖測定は、簡易血糖測定器を用いて自分で血糖値を測る方法です。
普段から血糖値の測定結果と測定したタイミングを記録しておくと、血糖コントロールの参考にでき、治療や急性合併症の予防に役立ちます。
高血糖や低血糖があった場合には前後の食事や運動、体調など詳しく書いておくと、危険な要素を避けられるようになります。
どのような状態で高血糖や低血糖になったかを把握しておけば、事前にインスリンの量や注射のタイミング、糖分補給が必要かどうかの判断がしやすくなり重症化を予防できます。
体調の変化にいち早く気づき、急性合併症が起こったときに対処できるようにしておきましょう。
1型糖尿病はインスリンによる治療が必要であり、急性合併症の予防が大切
1型糖尿病は、自己免疫の異常によってインスリンの分泌が不足する病気です。
インスリンが分泌されないと血糖値を下げられず、命にも関わります。
1型糖尿病の多くは、インスリン注射によって血糖コントロールを行うインスリン治療が必要です。
食事療法ではインスリン注射を規則正しく行うために、健康的な食習慣を目指します。
運動はインスリンの効果を高める期待ができるため、継続して行うと効果的です。
普段から食事や運動などによる自分の血糖値の変動を記録しておくと、事前にインスリンの量や食事量を調整して急性合併症を予防できます。
治療法や合併症をよく理解し、病気と上手く付き合っていきましょう。
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