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糖尿病と血糖値の関係性について血糖値の変化で現れる症状や合併症

糖尿病と血糖値の関係性について血糖値の変化で現れる症状や合併症を確認

血糖値は健康診断の血液検査で参照される数値であり、数値が高かった場合は高血糖や糖尿病の疑いがあります。

糖尿病はインスリンというホルモンが十分に働かないために、血液の中にあるブドウ糖という糖が増えてしまう病気です。

血糖値が適切にコントロールされていないと血管が脆くなり、将来的には心不全や腎不全、そのほかにも失明や足の壊死などが起こります。

この記事では血糖値と糖尿病の関係性や、血糖値の変動に伴って生じる症状について解説します。

この記事で分かること
  • 血糖値と糖尿病の関係性
  • 糖尿病の種類と仕組み
  • 血糖値の変化で生じる症状
  • 血糖値の治療目標値

健康診断の血液検査の結果で気をつけて見てほしい糖尿病に関する情報も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

血糖値は糖尿病を判断する数値

血糖値は糖尿病を判断する数値

血糖値は、血液検査で糖尿病や高血糖を判定する一つの基準です。

血糖とは血液中に含まれるブドウ糖のことで、血液によって全身に運ばれ、体を構成する細胞のエネルギー源として人間の生命維持に重要な役割を果たしています。

血糖値

血糖値とは、血液中の糖濃度のことです。

血液検査での表記単位は、1dlの血液中に何mgのブドウ糖が含まれるかを示しています。

血糖値が高いとすぐに健康問題が生じるわけではありませんが、高血糖状態が続くと血液が粘り気を帯び血管を弱くします。

高血糖により、心不全腎不全などのリスクが高まるのです。

血糖値は食事や運動といった生活習慣が大きく影響するため、血糖値を測定する際には通常、最低でも10時間絶食した後の値を基準とします。

糖尿病は初期段階で自覚症状が少なく、気づくことが難しい病気です。

そのため、健康診断や尿検査を通じて指摘されることがよくあります。

糖尿病の診断では、1〜2ヶ月間の血糖値の変動を示すHbA1cなどの値も考慮されます。

血糖値で糖尿病を判断する際の基準となる値は、以下のとおりです。

糖尿病を判断する数値
正常値糖尿病
空腹時血糖70~99mg/dL126mg/dL~
随時血糖200mg/dL~
75gブドウ糖負荷試験~139mg/dL200mg/dL~

初回診断では、上記3つの血糖値のいずれかに該当し、かつHbA1cの値が6.4%より上であった場合に糖尿病と診断されます。

また、HbA1cの値が6.5%より下回っていても、6.0~6.4%の範囲内にある場合は糖尿病予備群とされます。

HbA1cを下げるにはインスリンの働きが大切になってきます。

ポリフェノールの一種には、インスリンの分泌を促す、インスリンの効き目を高める作用がみつかっています。

詳しくは「インスリンの効き目向上。空腹時と食後血糖値をまとめて下げる」の記事をご覧ください。

糖尿病の種類は大きく4つに分けられる

糖尿病は、大きく分けると以下の4種類があります。

糖尿病の種類

1型糖尿病

1型糖尿病は、糖分を分解するためのホルモンである膵臓のインスリンを出す細胞が、突然破壊されてしまう病気です。

インスリンがほとんど出なくなることが多く、1型糖尿病と診断された場合は永久的にインスリン製剤を使います。

1型糖尿病は、10代や20代の若い人の発症がほとんどで発症原因は不明で自己免疫疾患に関連するといわれています。

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリン分泌の低下によって結果的に血糖値が高くなってしまう病気です。

体に糖分が送られてもインスリンが出にくくなり糖分解ができなかったり、インスリン抵抗性によって分泌されたインスリンが糖分解で効きにくくなったりします。

1型糖尿病とは異なり、食生活や運動不足、肥満などの生活習慣が関連して発症するといわれています。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に発生した高血糖状態のことです。

妊娠時に高血糖の状態が続くと、流産形態異常など様々な合併症が胎児に起こる可能性があるため、胎児の発育のために栄養管理をしながら細やかな血糖コントロールが必要となります。

妊娠中は胎児に栄養を送り続けているため、妊婦の場合は空腹時血糖が非妊娠時と比較して低くなりがちです。

その一方で、妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンであるヒト胎盤性ラクトーゲン、プロゲステロンなどが大量に分泌されます。

これらのホルモンは、インスリン抵抗性を上げるため糖尿病になりやすい状態をつくります。

多くの場合、妊娠期の高血糖状態は出産後に正常化することが多いです。

妊娠糖尿病を罹患した経産婦は、将来的に糖尿病に罹患する可能性が高いといわれています。

その他

場合によっては、薬剤の使用などで糖尿病に罹患する場合があります。

ステロイド薬は抗炎症作用や免疫抑制作用をもつため、炎症性疾患や免疫系疾患など幅広い疾患の治療薬として使用されます。

しかし、ステロイド薬の主な成分はグルココルチコイドです。

グルココルチコイドはインスリンに拮抗するホルモンでもあるため、ステロイド薬の使用によってインスリンの抵抗性が強くなります。

そのため、ステロイド薬の使用は血糖値を上昇させる作用をもつため、高血糖となり糖尿病を発症させる可能性があります。

糖尿病の合併症は糖尿病の進行によって現れる

糖尿病の合併症は糖尿病の進行によって現れる

糖尿病の進行は重大な合併症を引き起こすため、注意が必要です。

糖尿病を発症すると血糖値が持続的に高い状態が続き、血液中に増え過ぎたブドウ糖は行き場を失って血管の壁にある内皮細胞に入り込みます。

そうすると血管の中で血管を酸化させる活性酵素が活発になり、血管を傷つけてしまうのです。

これらの原因から、高血糖状態が続くと全身の血管が傷つけられ、さまざまな合併症が起こると考えられています。

糖尿病の合併症については、以下の通りです。

三大合併症

糖尿病網膜症

高血糖により眼底の血管が障害、破壊されることで発生する合併症です。

糖尿病を罹患して数年で発症するといわれています。

気づかない間に徐々に視力が低下し、最悪の場合は失明に至ります。

糖尿病性神経障害

糖尿病により余分なブドウ糖によって細胞が正常に働かなくなり、神経細胞内に異常な物質が溜まってしまうことで生じる合併症です。

高血糖は血管を脆くすることに加えて血流を悪化させてしまうため、神経に必要な栄養や酸素が届かなくなることで発生するともいわれています。

症状としては足先のしびれ冷感感覚がなくなるなどが挙げられます。

糖尿病性腎症

高血糖により、腎臓の血管が障害・破壊されることで発生する合併症です。

尿検査で尿タンパクが検出されたり、足や顔がむくむようになったりします。

糖尿病を発症して数年〜数十年後に発症する事例が多く、そのほとんどでは人工透析などの侵襲的な治療が必要となります。

その他の合併症

心筋梗塞・狭心症

高血糖による血管破壊や高血糖のため血液の粘性が強くなり、心臓を栄養する血管である冠動脈が詰まってしまうことで起きる合併症です。

心臓の筋肉に栄養が届かなくなり、心筋梗塞狭心症が起こります。

心筋梗塞では、心臓の上に象が乗ったような感じと表現されるほどの激しい胸の痛みにおそわれるといわれています。

脳梗塞

高血糖のため血液粘性が強くなり、脳の血管が詰まって脳細胞が死んでしまうことで起きる合併症です。

脳梗塞の場合は発症後になるべく早い処置が必要になりますが、梗塞の範囲が広いと手足が動かなくなったり、ろれつがまわらなくなったりして後遺症が残ります

歯周病

歯周病を罹患していると、歯周ポケットと呼ばれる出血や膿を出している部分から炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されます。

ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくするインスリン抵抗性を高めます。

逆に近年の研究では、歯周病の治療が糖尿病の改善に関連すると言われており注目を集めている合併症です。

足壊疽(えそ)

糖尿病では、足の血管が高血糖によって障害されている上、神経障害の発症によって足の感覚が低下しやすくなります。

靴ずれ巻き爪足の水虫などが原因で、足の皮膚に感染が起こりやすいです。

清潔ケアや早い段階での発見と治療を実施しなければ、最悪の場合、皮膚がとけて骨がむき出しになり足を切断する必要があります。

血糖値の変化で生じる症状がある

血糖値の変化で生じる症状がある

血糖値の基準値は先ほど説明したように、実際には一時的に血糖値が200mg/dLになったとしても体の自覚症状としてはほとんど何も生じません。

自覚症状がなくても血管がだんだんと脆くなり、体の至る所を蝕んでいくのが糖尿病の恐ろしい病態です。

ここでは、自覚症状が出る目安としての血糖値の変動を共に紹介します。

低血糖と症状

低血糖とは、血糖値が正常範囲以下に下がった状態のことをいいます。

冷や汗動悸意識障害などが代表的な症状です。

糖尿病を患っている患者さんは治療のためにインスリンを注射飲み薬などで体外から投与して血糖コントロールをしていますが、インスリンが効き過ぎてしまって起こります。

低血糖は最初に症状が起きた時に正しく対処すると、正常値に戻る可能性があります。

低血糖と症状
血糖値症状
血糖値60mg/dL以下異常な空腹感・体のだるさ
冷や汗・動悸・ふるえ・熱感
不安感・悪心など
血糖値45mg/dL以下眠気・強い脱力感や疲労感
集中力の低下・めまい
見当識障害・かすみ目など
血糖値30mg/dL以下意識朦朧・痙攣・深い昏睡など

高血糖と症状

高血糖とは、血糖値が正常範囲を上回った状態です。

200mg/dL程度の血糖値の上昇では、ほとんど症状は見られません。

しかし、血糖値が300〜400mg/dL程度に上昇してくると、喉の渇き頻尿などの症状が現れます。

高血糖と症状
血糖値症状
血糖値500mg/dL~強い吐き気・昏睡など
血糖値300mg/dL~喉の渇き・多尿など
血糖値200mg/dL~ほとんど症状なし

長年糖尿病を患っている患者さんでは低血糖45mg/dLや、高血糖600mg/dLでも自覚症状がなく普通に生活できてしまう人もいます。

そのため、糖尿病を患っている患者さんは自覚症状の有無に関係なく、定期的に血糖値を測定してモニタリングする必要があります。

血糖値が高いと、頻尿や喉の渇き、疲労感が現れることがあります。
さらに、視力のぼやけや傷の治りが遅くなることもあります。
放置すると、長期的に糖尿病合併症のリスクが増します。

近年の研究では、ポリフェノールの一種に血糖値を下げる働きがあることがわかっています。
普段の生活に上手にポリフェノールを取り入れるなど、少しずつ対策と工夫をしていきましょう。

ポリフェノールと血糖値の効果こちらの記事をご覧ください。

血糖コントロールの目標値を設定して治療する

糖尿病の治療では、血糖値や体重、血圧などの良好なコントロールが重要です。

安定した血糖値を長期的に維持して合併症の発症予防や進展を防ぎ、QOLの維持や健康寿命の延長を目標としています。

そのためには血糖値を可能な限り正常範囲に近づけ、良好な状態を維持することが重要です。

さらに、血糖値の推移も可能な限り自然な推移を目指します。

急激に高くなっても低くなってもいけないため、経過を見ながら治療します。

血糖管理を評価するための指標として用いるのは、HbA1cという検査値です。

血糖値は1日のなかで食事や運動などさまざまな影響を受けて常に変動するため、採血時から過去1〜2ヶ月間の平均血糖値を反映するHbA1cが血糖コントロール指標として使われます。

糖尿病の人は食事の改善や運動、飲み薬とインスリン注射薬などを使用した治療を実施します。

日本糖尿病学会で定められている血糖コントロール目標値は、以下のとおりです。

血糖値コントロール目標値

いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとなっています。

血糖正常化を目指す際の指標HbA1c:6.0%未満
合併症予防のための目標HbA1c:7.0%未満
治療強化が困難な際の目標HbA1c:8.0%未満

血糖正常化を目指す際の目標では、食事療法や運動療法、薬物療法を実施しても副作用の出現がなく達成可能な目標としています。

合併症予防の指標では、HbA1cの目標は7.0%未満です。

HbA1cが7.0%未満の対応血糖値は、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間後血糖値180mg/dL未満を目安にしています。

参照元:日本糖尿病学会編・著:糖尿病ガイド 2016-2017 文耕堂:p.27,2016 より

糖尿病にならないためには生活習慣を整えることが大切

糖尿病は初期段階では全く自覚症状がなく、徐々に体を蝕んでいきます。

糖尿病にならないためには、普段から生活習慣を整えていく意識づけが必要です。

バランスの取れた食事、定期的な運動、健康的な体重の維持などの生活習慣を整える必要があります。

健康診断や受診時の検査などで血糖値をチェックし、異常があれば早期に対処しましょう。

もし糖尿病になっていたとしても医師の指示のもと、適切な目標値の設定や治療によって改善は十分に見込まれる病気です。

日頃から、自分の血糖値に目を向けていきましょう。

血糖値の異常があれば早期対処

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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