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体重減少は糖尿病末期のサイン?食べてもやせる理由や治療方法も詳しく解説

体重減少は糖尿病末期のサイン?食べてもやせる理由や治療方法も詳しく解説

ダイエットをしていないのに周りから痩せたと言われる、ベルトや服がどんどん緩くなってきたという症状はないでしょうか。

しっかり食べているにもかかわらず体重が減少していくという場合には、背景に糖尿病などの病気が隠れている場合があります。

糖尿病を早期発見するためには定期的な健康診断を受けるとともに、糖尿病にはどのような症状が現れやすいかを知っておくのが大切です。

この記事では、食べているのに体重が減少する原因や理由、糖尿病で現れる症状や治療法などについて解説します。

この記事を読んで分かること
  • 糖尿病で体重減少する原因や理由
  • 体重減少が現れる糖尿病の種類
  • 糖尿病で現れる症状や早期発見のポイント
  • 糖尿病の治療方法

糖尿病と体重減少の関連性や、糖尿病で現れる症状について知りたい人はぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病とはインスリンの作用不足により高血糖状態が続く病気のこと

糖尿病とはインスリンの作用不足により高血糖状態が続く病気のこと

糖尿病とは、糖の代謝を調節して血糖値を正常に保つインスリンが十分に働かないため、

血糖と呼ばれる血液中に含まれているブドウ糖の値が高くなる病気のことです。

血糖値

糖尿病は日本人がなりやすい病気の一つであり、厚生労働省から発表された平成24年国民健康・栄養調査報告では、糖尿病の可能性を否定できない者を含めて約2,000万人と推計されています。

引用元:平成28年国民健康・栄養調査結果の概要

人間の体は飲食したものが消化されて、さらに分解されてできたブドウ糖がエネルギー源となっています。

そしてすい臓から分泌されている「インスリン」というホルモンの一種が、食後に血糖値が上がり過ぎないようにブドウ糖をエネルギー源に変換する、という大切な働きを担っているのです。

健康な人は、飲食をした際一時的に血液中にブドウ糖が増えて高血糖状態になりますが、インスリンの働きによって数時間程度で正常な値に戻ります。

ところが何かしらの要因でインスリンが十分に働かなくなると、体の細胞にうまくブドウ糖を取り込めなくなり、血液中に糖があふれて高血糖の状態になってしまいます。

血糖値が一定の範囲を超えた高さが続く状態を高血糖といい、この状態が慢性的に続く病気が糖尿病です。

体重減少は糖尿病が進行してくると現れる症状の一つ

体重減少は糖尿病が進行してくると現れる症状の一つ

糖尿病と聞くと太った人がなりやすい病気というイメージがあり、一見すると糖尿病と体重減少は無関係に思えるかもしれません。

そのうえ糖尿病は、初期段階ではほとんど症状が現れないか、症状が出ても軽いため気付きにくいという特徴があります。

血糖値が高い状態が慢性的に続き糖尿病の中期段階になってくると、次第に症状が現れるようになります。

そして、進行して中期段階になってきた際現れてくるのが、特にダイエットなどしているわけではないのに体重が減少していくという症状です。

糖尿病が進行すると体重減少する理由

糖尿病の進行で体重減少

糖尿病が進行していくと、どうして体重が減少するのでしょうか。

それは、血糖値を正常に保つはずのインスリンが働かなくなると、食べ物から摂取したブドウ糖をエネルギーとして使えなくなるのが理由です。

健康な人であれば、すい臓から分泌されるインスリンの働きによって、食事から摂ったブドウ糖を筋肉などに送りエネルギーとして利用できます。

しかし、インスリンが働かなくなると、食事で摂取したブドウ糖をエネルギーとしてうまく取り込めなくなるのです。

臓器を動かすためのエネルギーが取り込めずに不足すると、体が別の方法でエネルギーを補おうして、脂肪や筋肉などのタンパク質を分解していきます。

そして高血糖状態が続くと、体はブドウ糖を尿で排出しようと必要以上に多くのカロリーを消費して、さらにエネルギー不足となるという悪循環も起こります。

この仕組みが、食べているのに体重が減少してしまう理由です。

近年の研究では、ポリフェノールの一種にインスリンの分泌を促し効き目を高める作用が発見されています。

詳しくは「ポリフェノールが血糖値を下げる効能を科学的に実証」をご覧ください。

体重減少とともに糖尿病でよく現れる症状

糖尿病が進行してくると、体重減少と併せて現れてくる症状は以下のとおりです。

体重減少に加えて、以下の症状が出ていないかをチェックしてみましょう。

体重減少以外の症状
のどが渇く水をたくさん飲むトイレの回数が増える疲れやすくなる
目のかすみケガが治りにくい皮膚の乾燥手足の感覚が鈍る

尿に関する変化は見逃せないサインの一つ

血糖値が高くなると、体が余剰なブドウ糖を体外に排出しようとするため排尿の量や回数が増えます。

その結果、多尿により体の水分が少なくなり、慢性的にのどが渇いて水をたくさん飲むというサイクルになるのが特徴です。

就寝中も何度もトイレに行きたくなるため、睡眠不足に悩まされる人も少なくありません。

さらに、体に吸収されなかったブドウ糖などが尿と一緒に排出されるため、尿に以下のような変化を感じる場合があります。

  • 尿の臭いが今までと変わった
  • 尿が少し濁るようになった
  • 尿がよく泡立つようになった

ほかにもインスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギーとして利用できないと、全身がエネルギー不足となるため、だるく疲れやすくなります。

糖尿病における高血糖の場合は、今まで普通に行っていた一般的な活動でも疲れを感じやすくなるのが特徴です。

糖尿病が疑われる体重減少の目安

医学的な体重減少

医学的な体重減少の定義としては、特別ダイエットをしているわけはないのに6~12ヶ月で体重が4.5㎏以上、または6ヶ月で体重が5%以上減少した場合を指します。

例えば60㎏程度の体重の人なら、特に食生活や運動など今までと変わらないのに体重が6ヶ月で3㎏程度、90㎏の体重なら4.5㎏程度減った場合には糖尿病の疑いがあります。

普段から体重を測っていない人であれば、周りの人に痩せたといわれ始めたり、以前よりベルトや服が緩くなったりしていないかを目安にすると良いでしょう。

体重減少とは反対に糖尿病の初期段階では体重増加の症状が現れる

体重減少とは反対に糖尿病の初期段階では体重増加の症状が現れる

糖尿病が進行してくると、体重減少や尿の回数が増えるなどの症状が現れる場合があると説明しましたが、実は糖尿病の初期段階で現れる症状の一つに体重増加があります。

しかし体重が増加しても、単なる食べすぎや運動不足だろうと思い、これが糖尿病の初期症状だと思う人は少ないでしょう。

こういった初期症状が分かりにくく見逃しやすいという点が、糖尿病は初期症状が現れないといわれている理由の一つに挙げられます。

糖尿病を進行させないためにも、体重増加は糖尿病の初期段階で現れる症状である点を理解しておくのが大切です。

初期症状で体重が増加する理由

糖尿病の初期で起きる体重増加

糖尿病の初期状態では、食事から摂取した糖分をうまく体内に取り込めなくなり、その取り込めなかった糖分が血液中にあふれて高血糖となります。

体に必要な糖分を取り込めないと脳が糖分不足と判断して、もっと食事をして糖分を摂取するように指令を出すため、食欲が出てしまい体重増加に繋がります。

さらに問題となるのが、インスリンがうまく働かないためいくら食べても十分に糖を体内に取り込めないという点です。

十分に糖を体内に取り込めないと脳がもっと食事から糖分を摂取するようにと指令を出すため、さらに食欲が出てしまい、体重増加にも繋がってしまいます。

糖尿病にならないためには、初期段階の時点で意識的に体重管理を行うのが大切です。

体重が増加してきたと思ったら食事に気を付けたり、適度な運動を取り入れたりして、生活習慣を見直すようにしましょう。

体重の増加も減少もインスリンの働きが大きく関係してきます。
日本人はインスリンの分泌が少ないので、インスリンの効き目を高める工夫が大切です。
インスリン量の分泌を増やすこちらの研究レポートもご確認ください。

体重増加以外に現れやすい初期症状

体重増加のほかに、糖尿病の初期症状として現れやすい症状は以下のとおりです。

体重増加以外の症状
  • イライラしたり疲れやすかったりする
  • 味覚が鈍くなる
  • 爪に白い線ができたり白く濁ったりする

高血糖状態が慢性的に続きインスリンが働かなくなると、糖分をエネルギーに変換できないため疲れやすくなるのが特徴です。

体だけでなく脳にもエネルギーが行き届かないため、感情をコントロールしている脳の動きも鈍くなり、イライラしやすくなります。

そして糖尿病は、亜鉛が尿中に多く排出してしまうため亜鉛不足になりがちです。

亜鉛が不足すると味覚障害を起こしやすく、今まで食べていた料理の味が薄いと感じたり物足りなくなったりします。

今までよりも濃い味の料理を好むようになった人は、他の初期症状も出ていないかを確認し、なるべく薄味にするように意識してみましょう。

さらに、糖尿病における高血糖は、血管が細くなったり狭くなったりする傾向にあります。

血管が細くなると体の末端にある足の爪にしっかりと栄養が届かなくなるため、爪に白い線ができる、白く濁るといった症状が出る人もいます。

体重減少の症状が現れる糖尿病の種類

体重減少の症状が現れる糖尿病の種類

糖尿病にはいくつか種類がありますが、大別すると1型糖尿病2型糖尿病の2種類です。

1型糖尿病と2型糖尿病を比較すると、発症しやすい年齢や原因などは異なりますが、いずれも症状の一つに体重減少があります。

症状の現れ方に違いがあり、1型糖尿病はある日突然症状が現れるのに対して、2型糖尿病では症状がゆっくりと現れるのが特徴です。

日本における2型糖尿病の発症割合は大きく、糖尿病患者のうち約95%が2型糖尿病だといわれています。

糖尿病1型・2型
1型糖尿病2型糖尿病
発症しやすい年齢中高年でもいるが小児から思春期までの若年者に多い40歳以上の中高年に多い
肥満との関係肥満とは関係ない肥満した人に多いがやせ型でも発症する
遺伝との関係遺伝は少ない傾向遺伝しやすい傾向
症状多飲や多尿、口渇、体重減少がみられる
小児の場合は夜尿も多くみられる
初期症状が分かりにくく、進行すると多尿や多飲、体重減少などがみられる
原因外的から守るはずの免疫がインスリンを作るβ細胞という細胞を壊してしまうため、すい臓で作られるインスリンがほとんど出なくなり、高血糖となる遺伝的要素に過食や運動不足などの生活習慣因子が加わり、インスリンが十分に働かなくなり発症する
治療法インスリン療法食事療法
運動療法
薬物療法
インスリン療法

糖尿病が悪化すると三大合併症を発症する場合もある

糖尿病で現れる体重減少多飲頻尿などの症状を放置し続けていると、さらに悪化していきます。

症状が重い場合には1ヶ月に体重が5〜10㎏減少してしまうケースもあり、さらに悪化すると嘔吐や強い体のだるさなどが現れて、最悪の場合は死に至る可能性もあります。

しかしそれだけでなく、悪化すると合併症に繋がってしまうのが糖尿病の怖さです。

以下は糖尿病がかなり進行した場合に発症しやすい合併症で、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

三大合併症
病名主な症状特徴
糖尿病性神経障害手足にしびれや痛みなどの感覚異常左右対称に現れる
進行すると下肢切断の危険もある
糖尿病性網膜症視力の低下進行すると失明の可能性もある
糖尿病性腎症肝臓の細い血管がつまる悪化すると人工透析

体重減少などの症状が現れたときに行う糖尿病の治療

体重減少などの症状が現れたときに行う糖尿病の治療

糖尿病の診断で行われるのが、血液中のブドウ糖がどのくらいあるかを調べるための血液検査や尿検査、問診などです。

検査の結果糖尿病だと診断された場合は、医師の指導を受けながら治療を進めていきます。

糖尿病の治療法というとインスリン注射のイメージがありますが、2型糖尿病の初期段階の場合、最初は食事療法と運動療法のみで治療を行う場合がほとんどです。

食事療法と運動療法を一定期間継続しても血糖値をコントロールできない場合には、飲み薬インスリン注射で治療を行います。

しかし、中期以降など進行具合によってはすぐにインスリン注射が必要になるケースもあるため、体重減少頻尿など気になる症状が出た場合には1日も早く検査を受けるのが大切です。

以下では1型糖尿病と2型糖尿病、それぞれ一般的な治療方法を紹介します。

1型糖尿病の治療方法

1型糖尿病治療方法

1型糖尿病は、自分の持っている免疫がインスリンをつくる細胞を壊してしまいインスリンがつくれなくなるのが原因で起こるため、治療にはインスリン注射が必要です。

インスリン注射で改善が難しい場合にはすい臓移植手術の方法がありますが、大きな手術となるほか体への負担もかかるため、症例数は多くありません。

インスリン注射に加えて大切なのが、食事療法運動療法です。

食事療法と運動療法を適切に継続できれば、インスリンを分泌しやすい体づくりも期待できます。

2型糖尿病の治療方法

2型糖尿病治療方法

2型糖尿病の発症には遺伝的要因に加えて生活習慣が関係しているといわれているため、基本的な治療方法は食事療法と運動療法です。

食事療法や運動療法でも不十分な場合には、薬物療法も行われます。

薬物療法には内服薬の投与やインスリン注射がありますが、最初は経口糖尿病薬による治療を行うケースがほとんどです。

経口糖尿病薬で改善がみられなかった場合には、インスリン注射との併用やインスリン注射に切り替えて治療を行います。

食事療法と運動療法が重要な理由

糖尿病の治療には、食事療法と運動療法が必要不可欠です。

その理由として、どんなに薬で糖尿病を改善しようとしても薬だけでは血糖値をコントロールできない点が挙げられます。

糖尿病とインスリンは深い関わりがありますが、日本人は欧米人と比べて元々インスリンの量が約半分といわれており、分泌量が少ないのが特徴です。

元々インスリンの分泌量が少ないにもかかわらず、現代の日本ではファーストフード高カロリーの食事が増加しています。

そういった食の欧米化も、日本で糖尿病が増加している原因の一つです。

しかし、規則正しくバランスの良い食事を意識すればインスリンの分泌を促して、糖尿病の悪化防止が期待できます。

糖尿病改善のために、食事で気を付けたいポイントは以下のとおりです。

  • 味付けは薄くして塩分の量を減らす
  • 食後血糖値を上げないために野菜、おかず、主食の順番で食べる
  • ゆっくりよく噛んで食べる
  • 朝、昼、晩の1日3食を規則正しく摂取する
  • 食事の量は腹八分目を心がける

適度な運動もさまざまなメリットがあり、高血糖改善やインスリンの作用を高める効果が認められています。

さらに、有酸素運動には内臓脂肪を小さくして肥満を改善に導き、インスリンの働きを妨害する物質を減少させる効果が期待できます。

糖尿病の改善に推奨されている運動は、以下のとおりです。

  • ウォーキングや水泳などの有酸素運動
  • 腹筋やスクワットなどの無酸素運動

特に水中運動は有酸素運動と無酸素運動どちらも行える運動であり、膝への負担も少ないため高齢者やケガが心配な人にもおすすめできます。

しかしジムなどに行かなくても、階段をのぼる、掃除や買い物など工夫次第で肥満改善となる運動は可能です。

ぜひ、自分のできそうな方法で体を動かすように意識してみましょう。

体重減少の症状が現れた場合はすぐに医師の診察を受けよう

この記事では、糖尿病と体重減少の関連性や糖尿病で現れやすい症状などについて詳しくお伝えしてきました。

糖尿病は太った人がかかる病気だと思われがちですが、糖尿病が進行していくと体重減少がみられる場合があります。

糖尿病の初期段階では症状を自覚するのが難しく、進行していくと重篤な合併症を起こす場合もあるため、早期に発見して早期に治療するのがポイントです。

糖尿病は早期発見できれば、重症化を防げます。

急な体重減少頻尿などの変化がみられたときや、健康診断などで高血糖の診断が出た場合は、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。

放置せず早めに受診しよう

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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