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インスリンの働きを解説!不足した際の問題や治療および不足防止対策も紹介

インスリンの働きを解説!不足した際の問題や治療および不足防止対策も紹介

インスリンとは、人間の身体で生成されて重要な働きをするホルモンのことです。

人間の健康を維持するうえで欠かせないインスリンですが、具体的にどのような働きをしているのか知らない人も多いのではないでしょうか。

近年は生活習慣病のリスクが高い時代であり、インスリンの働きがさらに重要視されています。

インスリンの働きや役割について理解を深め、健康な生活を送るための知識として活用してみてはいかがでしょうか。

今回は、インスリンの働きや、インスリン不足が身体に及ぼす悪影響、不足する原因、インスリン不足に陥る前の予防方法などについて解説します。

この記事でわかること
  • インスリンは血糖値を下げる貴重なホルモン
  • インスリンの不足は糖尿病の原因となる
  • 肝臓機能の低下などによりインスリンが不足する
  • 重度の糖尿病に罹患した場合はインスリン療法を実施する
  • バランスの良い食事など適切な生活習慣の維持によりインスリン低下を予防できる

今回の記事を参考にしてインスリンの働きについて理解を深め、日常生活に活かしてみてください。

目次

インスリンは重要な働きを持つホルモン

インスリンは重要な働きを持つホルモン

人間は体内でさまざまなホルモンを生成しますが、インスリンはその中でも特に重要なホルモンの1つです。

インスリンの働きや特徴のうち、主なものを以下に3点紹介します。

インスリン
  • 血糖値を下げる働きを持つ
  • 糖尿病予防に欠かせない
  • 膵臓で生成され分泌されている

人間の体内において、インスリンの代替として活用できるホルモンは無いといわれています。

唯一無二の働きをするインスリンが不足すると、身体に多くのトラブルを引き起こしてしまいます。

人間の健康維持にとって欠かせないインスリンの働きや特徴について正確に理解し、病気の発生を未然に防ぎましょう。

血糖値を下げる働きを持つ

インスリンは、体内の血糖値を下げる働きがあるとされているホルモンです。

人間の体内にはさまざまなホルモンが存在していますが、血糖値を下げる働きを持つのは、インスリンのみです。

インスリンは、食事の直後など血糖値が上昇するタイミングで分泌され、体内の細胞の表面にあるインスリン受容体に結合します。

インスリンが結合したインスリン受容体は、血液中のブドウ糖を取り込み、細胞自身のエネルギー源として利用します。

エネルギー源として活用されずに余ったブドウ糖は、グリコーゲンや中性脂肪に合成され体内に貯蓄できます。

エネルギー貯蓄作用もインスリンが担っており、幅広い働きを持っているのがわかるでしょう。

上記のように、インスリンは血糖値の上昇により分泌され、血糖値を下げて身体の健康を保つという重要な役割を担っています。

糖尿病予防に欠かせないホルモン

インスリンは、糖尿病予防に欠かせない重要なホルモンです。

血糖値の調整を行う体内成分は、インスリン以外にはありません。

インスリンの働きが弱まってきたり、調整機能を超える糖質を摂取していたりすると、糖尿病になる可能性が高まります。

インスリンを分泌する膵臓の働きが弱まってしまうのも、糖尿病につながる要因です。

近年の研究では、日本人は欧米人に比べてインスリン分泌の能力が低く、十分なホルモン分泌を維持できなくなるのが早いとされています。

糖尿病を予防するために貴重な存在であるインスリンを正常に分泌するためには、体内の健康の維持が重要であるといえるでしょう。

膵臓で生成され分泌されている

インスリンは、臓器の1つである膵臓で生成され分泌されるホルモンです。

膵臓の中にあるランゲルハンス島(膵島)と呼ばれる細胞の集まりの中に、β細胞があります。

インスリンは、体内の血糖濃度が上昇すると、β細胞より分泌されます。

インスリンの働きにより、血液中の糖分が細胞に取り込まれ、エネルギー源として活用される仕組みです。

インスリンの働きによって、各細胞は活動に必要なエネルギーを獲得するとともに、血液中の糖分濃度が一定に保たれます。

血糖濃度の調整や細胞への糖分取り込みを行えるホルモンは、現状インスリンのみであり、重要な役割を担っています。

インスリンは血糖値を下げ、糖尿病を防ぐためにも重要なホルモンとなります。

ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンには、インスリンの分泌を促す作用が確認されています。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。
インスリンの働きを高めて空腹時血糖値を抑える作用

インスリンが不足すると身体に支障が及ぶ

インスリンが不足すると身体に支障が及ぶ

インスリンが不足したり十分な働きができない場合、身体に支障が及びます。

血糖値の過度な上昇は、糖尿病を始めさまざまな疾患の原因になります。

重度の糖尿病は、日常生活に甚大な支障を来す可能性のある怖い病気です。

健康を維持するために、インスリン不足を未然に防ぎ適切な血糖濃度を維持する必要があります。

インスリン不足により起こる身体のトラブルについて、主な要素を以下で紹介します。

  • 糖尿病の原因となる
  • 糖尿病の合併症を引き起こす

インスリン不足の影響について理解を深め、健康維持のために活用してください。

糖尿病の原因となる

インスリンの不足は、糖尿病の原因になります。

糖尿病は、生活習慣病の代表例といわれ、血糖濃度が慢性的に高い状態になりさまざまな症状を引き起こす病気です。

人間は、食事などで摂取した成分を体内で分解し糖分の形にしたのちに腸で吸収します。

吸収された糖分は血液に入るため、食事の後は血糖値が上昇するのが一般的です。

インスリンの働きが不十分な場合、血中の糖分はエネルギー源として活用されず、血中に残り続けてしまいます。

そのため、慢性的に血中濃度が高い状態が維持され、糖尿病に発展します。

糖尿病は、状態により以下の2種類に分類可能です。

糖尿病の原因インスリン
  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病

1型の方がより重大な状況ですが、共に身体に甚大な支障を来します。

より重大な状況である1型糖尿病

糖尿病はインスリン不足により引き起こされる病気ですが、1型糖尿病はインスリンの分泌が根本的に出来なくなってしまっている状態を指します。

インスリンを分泌する膵臓内のβ細胞が破壊されてしまい、ホルモン分泌が枯渇してしまうのが1型糖尿病です。

体内でインスリンの生成ができない状態になってしまうため、外部からインスリンを補充する治療が必須となります。

1型糖尿病は、現状では完治が難しい病気で、継続してインスリンの補充を必要とします。

発生の原因もはっきりしておらず、予防が難しい病気といえるでしょう。

生活習慣病に該当する2型糖尿病

糖尿病患者の大部分を占める2型糖尿病は、生活習慣病の1つとされています。

インスリンの作用が相対的に不足して発症します。

1型糖尿病は完治が難しいとされているのに対し、2型糖尿病は治る可能性があります。

1型糖尿病と異なり、膵臓のβ細胞におけるインスリン分泌の活動が無くなっているわけではないので、対処次第で症状の改善が図れます。

しかし、一度罹患すると再度発症するリスクが高いため、血糖値を正常に保つための行動を継続するのが重要です。

2型糖尿病は、本人の行動次第で予防や症状の改善ができるため、病気に対する正しい知識を持って適切に対処しましょう。

糖尿病の合併症を引き起こす

糖尿病になると、関連する数々の合併症を引き起こす可能性があります。

糖尿病の合併症のうち、主なものは以下の3種類です。

三大合併症
  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性神経障害
  • 糖尿病性腎症

糖尿病性網膜症は目の病気で、放置していると失明する確率が高まります。

糖尿病性神経障害は、眼球の動きや手足の動きに支障を来す病気です。

糖尿病性腎症は腎臓に悪影響が及び、放置していると腎臓の機能が低下して透析治療を受けなければならない病気です。

さらに、動脈硬化や心筋梗塞および脳卒中など死亡に至る恐れのある合併症を引き起こしたり、歯周病が進行したりします。

糖尿病を起因として、他にも多岐にわたる合併症を引き起こす危険があります。

インスリンが不足してしまうのには原因がある

インスリンが不足してしまうのには原因がある

インスリンの不足により、糖尿病やその合併症のリスクが高まると紹介しましたが、なぜインスリンが不足してしまうのでしょうか。

前述の1型糖尿病の場合には、根本的にインスリンを生成する細胞が活動できなくなるのが要因です。

一方、2型糖尿病は何らかの要因で十分なインスリン分泌が得られないために発症します。

2型糖尿病におけるインスリン不足が発生する主な原因を、以下に2点紹介します。

  • 膵臓の機能低下によるインスリン分泌不全
  • 十分なインスリンの働きが得られないインスリン抵抗性

2型糖尿病は、以上の内どちらかが起こる、あるいは併発すると発症します。

膵臓の機能低下によるインスリン分泌不全

2型糖尿病とインスリン不足1

インスリン分泌不全とは、膵臓の機能が低下してインスリンが十分に生成されず、分泌量が減少する状態のことです。

膵臓の機能が低下する要因はさまざまですが、主に加齢や遺伝的要素が影響しています。

中高年になって糖尿病のリスクが高まるのは、膵臓の機能が低下するのが主な要因です。

インスリン分泌不全で十分なインスリンが分泌されないと、血中に糖が溜まってしまい血中糖度が高くなってしまいます。

血中糖度が慢性的に高い状態が続くと、糖尿病に発展してしまうでしょう。

十分なインスリンの働きが得られないインスリン抵抗性

2型糖尿病とインスリン不足2

インスリン抵抗性とは、十分な量のインスリンが分泌されているものの、働きが十分でなくインスリンの効果が得られない状態のことを指します。

インスリン抵抗性が発生する原因として多いのは、肥満です。

運動不足や食べ過ぎによる肥満状態になると、インスリンの働きが十分に得られなくなってしまいます。

したがって、バランスの良い食事や適度な運動など健康的な生活スタイルを維持する自身の取り組みにより、インスリン抵抗性は予防が可能です。

肥満によるすい臓機能の低下で、インスリンの効き目が悪くなり血糖値が下がりにくくなります。

ポリフェノールの一種にはインスリンの効果を高める機能がありますので、普段の生活に取り入れていくのもオススメです。
アカシアポリフェノール-薬科大学・国立大学が注目する効果とは

重度の糖尿病治療にはインスリン療法を用いる

重度の糖尿病治療にはインスリン療法を用いる

糖尿病の症状が軽度の場合には、基本的な生活の見直しなどにより改善を図るのが一般的です。

しかし、症状が進み自助努力では症状の改善が難しい段階に達した重度の糖尿病の治療には、インスリン療法が適用されます。

インスリン療法に対して、恐怖感を覚える人も多いかもしれません。

今回の記事を参考に、糖尿病に関する正しい知識を身に着けて、治療を検討してみてください。

インスリン療法の主な特徴や対処法として、以下に4点紹介します。

インスリン療法 主な特徴や対処法
  • 他の治療法で対処が難しい場合に適用
  • 患者自身による自己注射が基本
  • インスリン注射の基本的な使用方法を順守するのが大切
  • インスリン製剤を適切に取り扱うのも重要

インスリン療法についての正しい理解を深めて、適切な治療に臨みましょう。

他の治療法で対処が難しい場合に適用

インスリン療法は、他の治療法では対処が難しいと判断される場合に適用されます。

インスリンは、身体の健康を維持するうえで欠かせないホルモンです。

前述のように、1型糖尿病の場合には自分でインスリンを生成できないため、インスリン療法による体外からのホルモン摂取は必須です。

2型糖尿病の場合にも、膵臓を始めとした身体への負担を考慮して、比較的早い段階でインスリン療法を始めるケースも多いです。

血糖値が上昇しすぎて緊急を要する場合や、糖尿病を患っている人が手術を受ける前後などにも、インスリン療法を実施します。

患者自身による自己注射が基本

インスリン療法は、患者本人による自己注射が基本です。

自分自身で注射をするのに、恐怖心を抱く人も多いかもしれません。

しかし、近年は自分自身で注射をしやすいインスリン療法専用の注入器や注射針が開発され普及しているため、使いやすいタイプを選択して治療できます。

ご自身でのインスリン注入治療をする際には、以下の2点について選択する必要があります。

  • インスリン注入器の種類
  • 注射針の種類

インスリン療法は根気強く継続して実施する必要があるため、使いやすくご自身と相性の良い器具を選択するのをおすすめします。

インスリン注入器には種類がある

インスリン注入器には、いくつかの種類があります。

近年では、以下の2つのタイプを利用するケースが多いです。

インスリン注入器 種類
  • プレフィルドタイプ
  • カートリッジ交換タイプ

プレフィルドタイプとは、あらかじめインスリン製剤がセットされたペン型の注入器と一体になっている器具のことを指します。

カートリッジの交換が不要で、軽量タイプのものが多いです。

プレフィルドタイプの注入器は、廃棄の仕方が定められているため、適切な処分をする必要があります。

カートリッジ交換タイプは、インスリンが入ったカートリッジを注入器にセットして活用します。

カートリッジ内の製剤が無くなった際に、新しいカートリッジに取り換える必要があります。

注射針の種類も複数ある

インスリン療法に用いられる注射針も、種類がいくつかあります。

針は太さと長さによって分類され、用途に合わせて使い分けされるのが一般的です。

インスリン療法に利用される針は非常に細いため、ほとんど痛みを感じない人も多いです。

針の長さは、短ければ良いというものではなく、体型に合わせて適切な長さの針を選択する必要があります。

針の長さや太さの適正を判断するのは難しいため、専門医のアドバイスを受けながらご自身に合ったタイプを選択するのが大切です。

インスリン注射の基本的な使用方法を順守するのが大切

効果的なインスリン療法を実施するためには、インスリン注射の基本的な使用方法を順守するのが大切です。

いくら継続して治療を行っても、正しい手順をできていなければ十分な効果は得られません。

インスリン注射は、皮膚の最も薄いところと筋肉の間に針を通す皮下注射と呼ばれる方法が一般的です。

他の注射方法と比較して、皮下注射は痛みが少ないとされています。

注射の接種時間の順守や、毎回針の交換を欠かさない点など、インスリン療法の注射には細かいルールが定められています。

専門医から指導されたインスリン注射の使用方法に関しては、正確に守るのが大切です。

インスリン療法 順守する点

インスリン製剤を適切に取り扱うのも重要

インスリン注射の方法に加えて、インスリン製剤の取り扱いにも配慮しましょう。

インスリン製剤の取り扱いで特に注意する点は、保管する際の温度です。

インスリン製剤は、一般的に30度を越える環境に置いていると、その働きを失ってしまいます。

夏場は、車の中や室内の温度が高くなりやすいため、製剤の保管場所や保管方法に配慮する必要があります。

さらに、インスリン製剤は低温の環境における保管にも適していません

継続して高い効果を得るために、製剤の保管方法には十分な配慮をするのが重要です。

インスリン不足を防止するための対策を紹介

インスリン不足を防止するための対策を紹介

インスリン不足に陥って糖尿病を発症する前に、適切な対策を講じるのがおすすめです。

インスリン不足が起こる要因のうち、食べ過ぎや運動不足による肥満は自分自身の取り組み方次第で予防の余地があります。

普段から健康を意識した生活を送り、糖尿病の罹患リスクを軽減しましょう。

以下に、インスリン不足を予防するための基本的な対策を3例紹介します。

インスリン不足予防
  • バランスの良い食事を心がける
  • 適度な運動を継続する
  • 定期的な検診を受けて状態を確認する

いずれも難しいものではなく比較的簡単に取り組める方法であるため、ぜひ実施してみてください。

バランスの良い食事を心がける

インスリン不足の対策には、バランスの良い食事が欠かせません。

適度なエネルギー量で、栄養素の偏りがないバランスの取れた献立を考えるとよいでしょう。

糖質だけでなく、脂質の摂りすぎも肥満の原因となります。

献立の栄養素に配慮し、バランスの良い食事を継続するのが大切です。

食材だけでなく、食べ方もインスリン不足と関連していると考えられます。

よく噛んでゆっくり食べたり、夜遅い時間や寝る前には食事を控えたりして、健康に良い食事の仕方や時間を工夫してみてください。

適度な運動を継続する

適切な食事に加えて、適度な運動を継続的に実施しましょう。

運動には、血中の糖質の分解を助けて血糖値を下げる効果があります。

さらに、運動により身体の筋肉量が増加し、代謝の改善やインスリンの働きを高められる点も注目したいポイントです。

インスリン不足への対策に効果のある運動として、有酸素運動と筋力トレーニングが推奨されています。

やみくもに体に負荷をかければよいというわけではなく、無理のない範囲で継続して実施するのが大切です。

専門医の指導を受けながら、適度な量の運動を継続して実施するとよいでしょう。

定期的な検診を受けて状態を確認する

定期的な検診を受けて、糖尿病のリスクを確認するのもおすすめです。

勤務先で実施する定期健診では、血液検査を実施するケースも多いため、ご自身の血糖値が正常かどうか確認ができます。

身長および体重の計測によりメタボの進行度を判断するBMI値を算出したり、尿検査により尿中ブドウ糖度を検査したりするのも効果的です。

近年は、働いていない人や主婦向けに自治体が定期的な健康診断の機会を提供するケースも増えています。

最寄りの病院で糖尿病のリスクを確認する健康診断を実施してくれる場合も多いため、定期的に検診を受けて健康上の問題に早期に気付けるようにするとよいでしょう。

インスリンの働きを理解し健康維持に努めよう

インスリンの働きを理解し健康維持に努めよう

インスリンは、血中糖度を調整するために働く貴重なホルモンであると紹介しました。

血糖値を正常に作用させる体内の分泌物は他にないため、インスリンは健康維持に欠かせません。

インスリンが不足すると、糖尿病を始め、関連する合併症を引き起こしてしまうリスクが高まります。

重度の糖尿病を患ってしまった場合には、インスリン療法を余儀なくされる場合もあります。

インスリン不足を予防するために、規則正しい日常生活やバランスの良い食事および適度な運動を心掛けるとともに、定期的に検診を受けて早期に身体の異常を発見できるようにしましょう。

インスリン不足を予防する

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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