MENU

血糖コントロールの目標値は患者の状態に合わせてHbA1cの数値を設定する

血糖コントロールの目標値は患者の状態に合わせてHbA1cの数値を設定する

血糖値は高すぎると糖尿病や合併症を引き起こす可能性があるため、調整が必要です。

高血糖や糖尿病と診断された患者には、目標値が設定されて、血糖コントロールをするための治療が行われます。

この記事では、血糖コントロールで行われる際の目標値について、数値の基準や改善方法をまとめました。

この記事でわかること
  • 血糖コントロールで参照されるHbA1cの基本
  • 血糖コントロールの目標設定や目標値
  • 血糖コントロールするための治療方法

血糖値が高いと診断されて、血糖コントロールを行う必要性が出てきた人は、参考にしてください。

目次

血糖コントロールではHbA1cの数値を基準に患者の状態を判断する

血糖コントロールではHbA1cの数値を基準に患者の状態を判断する

糖尿病や高血糖の患者に対して、血糖コントロールを行う場合、血糖値の変動はHbA1cを参照します。

HbA1cとは、血液中のヘモグロビンに結合した糖分の割合を示した数値です。

血糖値が高いときはHbA1cも高くなり、ヘモグロビンに結合した糖分は、赤血球の寿命が尽きる120日まで変動しません。

血糖値をそのまま判断材料として使用した場合、直前の食事や運動の影響から血糖値が影響を受ける可能性があります。

一方、HbA1cは過去2ヶ月間における血糖値を反映した数値になるため、対象期間の血糖値の状態をより正確に判断できます。

血液検査におけるHbA1cの判定基準は、以下のとおりです。

血液検査の基準正常正常高値血糖予備群(境界型)糖尿病型
HbA1c〜5.5%5.6~5.9%6.0〜6.4%6.5%~

糖尿病の検査では血糖値とHbA1c、尿検査の結果を合わせて糖尿病か否かを判断していきます。

しかし、血糖コントロールの目標値として提示されるのは、基本的にHbA1cのみです。

血糖コントロール値は患者の状態によって設定される目標が変わる

血糖コントロールが行われる場合、患者の高血糖や糖尿病がどの程度進んでいるかによって、治療の目標が変わります。

血糖コントロールの目標目標が設定される患者
血糖正常化を目指す際の目標食事療法や運動療法で目標を達成できる、または薬物療法中でも低血糖などの副作用がなく達成できる患者
合併症予防のための目標目標値に対応する血糖値は、空腹時血糖130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満が目安
治療強化が困難な際の目標低血糖などの副作用、その他の理由で治療強化が難しい患者

上記の中で血糖正常化を目指す際の目標が、高血糖や糖尿病の初期段階にあたります。

それぞれの目標における血糖コントロールの目標値は、以下のとおりです。

目標血糖正常化を目指す際の目標合併症予防のための目標治療強化が困難な際の目標
HbA1cの目標値6.0%未満7.0%未満8.0%未満

実際に目標を設定するときは、医師や栄養士が患者の状態を見て、適する目標を判断していきます。

血糖コントロールには、普段からの改善対策が必要となります。
特に食事面での見直しを考えられている場合は、こちらのページも参考にしてください。

65歳以上で特定の症状が見られる患者は通常とは別の目標値が設定される

血糖コントロールは、65歳以上の患者に該当するとき、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が適用される場合があります。

高齢者糖尿病の目標では、患者の特徴や健康状態によって、以下の3つのカテゴリーに分けられています。

カテゴリー分類65歳以上の患者の特徴・健康状態
カテゴリーⅠ認知機能正常かつADL自立
カテゴリーⅡ軽度認知障害~軽度認知症、または手段的ADL低下、基本的ADL自立
カテゴリーⅢ中等度以上の認知症、または基本的ADL低下、または多くの併存疾患や機能障害

カテゴリーⅠは認知機能が正常であり、生活に必要な基本的な動作が全て自立して行える状態です。

血糖コントロールの目標値は上記のカテゴリー分類に加えて、重症低血糖に対する治療薬の有無も参照されます。

カテゴリーごとの血糖コントロールの目標値は、以下のとおりです。

カテゴリーⅠカテゴリーⅡカテゴリーⅢ
重症低血糖が危惧される薬剤の使用なし7.0%未満7.0%未満8.0%未満
重症低血糖が危惧される薬剤の使用あり・65歳以上75歳未満:7.5%未満(下限6.5%)
・75歳以上:8.0%未満(下限7.0%)
8.0%未満(下限7.0%)8.5%未満(下限7.5%)

高齢者糖尿病の目標についても、医師や栄養士が患者の状態を見て判断していきます。

血糖コントロールは食事や運動を基本にして必要な場合は治療薬も使用する

血糖コントロールは食事や運動を基本にして必要な場合は治療薬も使用する

血糖コントロールの目標値が設定された場合、数値を下げる方法は食事や運動の改善が基本です。

糖尿病の治療では食事療法運動療法と言われており、食べ物や運動量の改善から血糖値を正常な範囲に戻していきます。

しかし、糖尿病や高血糖が進行している場合、食事や運動の改善だけでは血糖値を下げきれない患者もいます。

そのような患者には血糖値を下げる治療薬の投与や、場合によってはインスリン注射も必要です。

血糖コントロールの内容は、設定した目標値に合わせて医師や栄養士が内容を決定します。

適した食材や運動量は患者ごとに異なるため、自己判断ではなく、指示された内容に従いましょう。

食事では糖質以外の栄養素も調整してバランスよく摂取する指示が出される

食事では血糖値を直接的に上げる糖質以外にも、血糖値や糖尿病に関連する栄養素の摂取量が調整されます。

  • 炭水化物、砂糖:血糖値を下げる糖質を多く含むため、摂取量を制限される
  • 脂質:肥満が血糖値を下げるインスリンの効果を薄めるため、摂取量を制限される
  • 塩分:三大合併症の糖尿病性腎症を発症している場合、制限される場合がある
  • たんぱく質:糖尿病性腎症を発症している場合、制限される場合がある
  • 食物繊維:血糖値の上昇を緩やかにするため、摂取量を増す場合が多い

糖質を含めた栄養素は身体に必要であるため、一切摂取しないのは身体に悪影響です。

そのため、栄養素の摂取量は調整しつつも、バランスのよい食事内容が指示されます。

診察した医師や栄養士が調整すべき栄養素や目標を反映した食事の例を示してくれるため、参考にしましょう。

運動は毎日の有酸素運動からインスリンの働きや身体の代謝を改善する

血糖コントロールで指示される運動は有酸素運動であり、行った場合は以下のような体内で効果が表れます。

  • 運動自体が血糖値を下げるインスリンの働きを高める
  • 運動によって摂取した糖質や脂質をエネルギーとして消費できる
  • 筋肉量の増加から基礎代謝が上がり、平常時もエネルギーの消費量が増える

摂取した糖質や脂質はエネルギーとして使われますが、過剰摂取するとインスリンの働きやエネルギー消費でも使いきれません。

そのため、運動の効果を最大限に発揮するためには、栄養素の摂取量の調整が重要です。

有酸素運動の例としては、以下の運動が挙げられます。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳

エネルギー消費の改善や基礎代謝の向上に求められるのは、1回の激しい運動ではなく、毎日継続できる運動です。

運動する内容は医師と相談しつつ、自分が続けられる運動量や回数を見つけていきましょう。

近年の研究では、ポリフェノールの一種にインスリンの分泌を促し効き目を高める作用が発見されています。
詳しくは「ポリフェノールが血糖値を下げる効能を科学的に実証」をご覧ください。

治療薬は食事や運動の改善で足りない部分を補う形で投薬される

血糖コントロールで治療薬が使用される場合、食事や運動による治療も続けながら、足りない部分を投薬で補う形になります。

糖尿病や高血糖で投薬されるのは、以下の治療薬です。

  • インスリンの分泌低下を補う、もしくは抵抗性を改善する治療薬
  • 糖分の吸収、排出を調整する治療薬
  • 上記の成分を配合した治療薬

上記の治療薬で血糖値を下げられる可能性を高められますが、薬の効果は一時的です。

治療薬の補助で徐々に改善して、最終的には食事と運動のみで血糖値を調整できるように目指していきます。

治療薬の追加でも血糖コントロールが困難な場合は、注射などでインスリンを直接的に補う治療が行われます。

投薬や注射の必要性は医師が判断するため、患者個人では食事や運動による改善を目指していきましょう。

血糖コントロールは設定された目標値を食事や運動を基本にして改善していく

血糖コントロールでは患者の状態に合わせて目標を設定して、HbA1cが目標値を下回るように調整していきます。

目標値を達成するための治療方法は、食事と運動が基本です。

食事は糖質の摂取量を調整しつつ、その他の栄養素も必要に応じて増減させていきます。

運動は有酸素運動が効果的であり、エネルギー消費の改善や基礎代謝の向上から血糖値を下げていきます。

ただし、食事や運動のみで改善できない場合は、治療薬による補助も必要です。

目標設定や治療内容は医師や栄養士が指示してくれるため、目標を達成できるように血糖コントロールしていきましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

目次