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糖尿病と血圧の意外な関係性や治療のポイントを解説

糖尿病と血圧の意外な関係性や治療のポイントを解説

糖尿病は糖尿病腎症や糖尿病性網膜症、糖尿病神経障害の3大合併症に注意が必要ですが、実は高血圧も糖尿病に合併しうる生活習慣病です。

糖尿病と高血圧は一見関係ないように感じますが実は密接な関係があり、糖尿病患者の4〜6割が高血圧を合併するといわれています。

では、糖尿病と高血圧にはどのように関係しているのでしょうか。

今回は糖尿病と高血圧の関係性や高血圧、糖尿病にはそれぞれどのような治療が必要なのかを説明していきます。

この記事でわかること
  • 糖尿病で高血圧が起こるメカニズム
  • 糖尿病治療と高血圧治療のポイント
  • 高血圧や糖尿病を予防するための生活習慣
目次

糖尿病が高血圧を引き起こす4つの理由やメカニズムについて詳しく解説

糖尿病が高血圧を引き起こす4つの理由やメカニズムについて詳しく解説

糖尿病には高血圧の原因となる要素が多数あり、糖尿病治療をしているときに血圧が高いと指摘されるケースがあります。

高血圧を指摘されていない人でも、糖尿病治療をしている場合は高血圧の予防を始めるのも大切です。

実は糖尿病と高血圧は密接に関係しているため、予防や治療のポイントにも類似点や共通点があります。

糖尿病と高血圧の関係性を知っておくと糖尿病の治療に役立つだけでなく、より効果的に高血圧が予防できるでしょう。

糖尿病や高血圧はがんや心疾患、脳血管疾患にも関係しているため早期からの治療が大切です。

糖尿病による血糖値の上昇

糖尿病の人は糖尿病でない人と比較すると、平常時および食後の血糖値が高いです。

血糖値は体内の水分の浸透圧に大きく関係しており、血液中に占める糖質の割合が高くなると身体は正常な血糖の濃度を保つために働きかけます。

血液中の血糖の濃度を下げるには水分が必要となるため、水分の浸透圧が高まり血管内の水分量が多くなり血液量が増えるのです。

身体中を循環する血液の量に比例して心臓から拍出される血液量も増えるため、血液が流れる際に生じる血管への抵抗も強くなってしまいます。

血液量が増えたり血管への抵抗が高くなったりするだけでなく、日常的に感じているストレスなどの影響を受けて高血圧を発症します。

糖尿病による糖代謝の変化

血糖値が高くなるとインスリンの分泌状態に問題が起きたり、インスリンの効果が弱くなったりするのが原因で高血圧を起こします。

血糖値の上昇によってインスリンの効きが弱くなる状態をインスリン抵抗性と呼びますが、糖尿病はインスリン抵抗性が起きている状態なのです。

長い期間血糖値が高い状態が続くと、膵臓は血糖値を下げようとインスリンを分泌しようと絶えず働くので膵臓に負担がかかります。

体内のインスリン濃度が上昇するとナトリウムがうまく排泄されなかったり、交感神経が活発化されたりして血管が収縮されます。

交感神経はアドレナリンやノルアドレナリンを放出させるため、血管が収縮して血圧が高くなるのです。

糖尿病性腎症によるもの

糖尿病で起こる合併症として、糖尿病性腎症があります。

腎臓の機能障害により血液を濾過して尿を生成する機能が低下したり、レニンというホルモンが分泌されたりするため血管が収縮し血圧が上がるのです。

腎機能障害は腎臓にある糸球体の血管を細くしてしまうため、腎臓の濾過機能が低下し尿量も減少します。

そして高血圧自体も腎臓の仕事量を増やすため、腎機能障害が高血圧を招いた結果として腎機能をさらに悪化させる悪循環に陥ります。

動脈硬化の進行によるもの

糖尿病は血液中の血糖が高い状態なため、血糖コントロールがうまくいかなかったり悪化したりすると動脈硬化の進行を招きます。

動脈硬化が進行して血管の壁の収縮能が低下し柔軟性を失うと、次第に血管が狭くなるため血圧も上昇するのです。

動脈硬化は、糖尿病だけでなく高血圧でも進行します。

高血圧や糖尿病により血管の内皮細胞が傷つくと、傷がついた部分に悪玉コレステロールなどが蓄積し、やがて血栓症や閉塞性動脈硬化症などの疾患を引き起こすのです。

糖尿病患者の40~60%が高血圧の傾向にあります。
血糖コントロールと併せて血圧へも注意が必要です。

ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンには、血糖値と血圧に対する作用が確認されています。
高い抗酸化力で血圧を下げる働き

高血圧治療と糖尿病治療は血圧管理と血糖コントロールがポイント

高血圧治療と糖尿病治療は血圧管理と血糖コントロールがポイント

高血圧と糖尿病は密接に関係しているため、血圧の管理と血糖コントロールが両者の治療をするうえで大切なポイントとなります。

高血圧と糖尿病の両方を罹患している人は、まず自宅で血圧を測定してみましょう。

一般的に至適血圧は120/80mmHg未満とされており、至適血圧より血圧が高くなるとがんや心血管系の疾患に罹るリスクが高くなっていきます。

高血圧と診断された場合の降圧目標とされる血圧は、以下の通りです。

  • 診察室血圧(病院で測る血圧):140/90mmHg未満
  • 家庭血圧(自宅で測定する血圧):135/85mmHg未満

しかし糖尿病や腎機能障害をともなっているかそうでないかの違いによって、血圧の目標値が異なります。

糖尿病を伴っている場合の血圧目標値

糖尿病が伴っている場合の血圧のコントロール値は、130/80mmHg未満とされています。

毎日の血圧が130〜139/80〜89mmHgである場合、血圧習慣を改善して3〜6ヶ月後を目処に再び血圧を評価し、140/90mmHg以上であれば直ちに治療を始めます。

再評価の時点で血圧が改善しない場合には、降圧薬の服用が必要となるケースが多いです。

降圧薬は、基本的に以下の種類の薬剤が第一選択になります。

  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
  • アンジオテンシン受容体拮抗薬

上記の薬は腎機能を保護したりインスリン抵抗性の改善に働きかけたりする作用があるため、積極的に用いられる場合が多いです。

糖尿病と高血圧を伴っている場合には、薬物療法だけでなく食事療法や運動療法なども並行して行われます。

糖尿病を伴っていない場合の血圧目標値

糖尿病を伴っていない人の血圧の目標値は、140/90mmHg未満と定められています。

高血圧は糖尿病を伴っていない場合でも腎臓に負担をかけるため、腎機能の評価が必要です。

腎機能を評価する指標のひとつに尿蛋白の有無があり、尿蛋白の有無によって血圧の目標値が以下のように異なります。

腎機能の評価目標血圧の数値(診察室血圧)
蛋白尿なしの場合140/90mmHg未満
蛋白尿ありの場合130/80mmHg未満

※両者とも家庭血圧は125/75mmHg未満が望ましい。

上記のように血圧の目標値が定められているため、毎日の血圧が130〜139/80〜89mmHgである場合は生活習慣を改善して3〜6ヶ月後に再評価を行います。

しかし家庭血圧が常に140/90mmHg以上であったり、180/100mmHgであったりと極端に血圧が高い人は早期の治療が必要です。

高血圧治療に用いる薬には、以下のものがあります。

  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
  • アンジオテンシン受容体拮抗薬
  • カルシウム拮抗薬
  • その他の利尿薬

糖尿病を合併していない場合でも、高血圧は腎臓に負担をかけるためACE阻害薬などを利用して腎臓の保護を図ります。

ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬などを組み合わせても血圧が思うように下がらない場合は、カルシウム拮抗薬利尿薬を組み合わせるケースが多いです。

腎機能が低下している場合は、腎臓に負担をかけないよう塩分制限も同時に行う必要があります。

腎機能障害の程度にもよりますが、基本的な1日の塩分摂取量は3〜6g/日未満が望ましいです。

高血圧治療と糖尿病治療は血糖コントロールも大切

血糖コントロールは糖尿病の人だけでなく、血圧が高い人にも良い影響を及ぼします。

高血圧は塩分の摂りすぎで起こる場合が多いものの、前述したように糖分を摂りすぎても起こるのです。

血糖値の上昇を抑えれば体内の浸透圧の変化や交感神経が優位になるのを防ぐため、血圧の上昇も抑えられます。

さらに、糖質を摂取しすぎると体内で消費されなかった余分な糖質がコレステロールとなって体内に蓄積されます。

つまり糖質の摂取量を控えて血糖を良好にコントロールできれば、中性脂肪の減少や動脈硬化も抑制できるのです。

結果として糖尿病を患っている人は糖尿病と高血圧の進行が抑えられ、高血圧を伴っていない糖尿病の人でも高血圧の予防が可能になります。

糖尿病や高血圧を予防するために大切な生活習慣

糖尿病や高血圧を予防するために大切な生活習慣

糖尿病や高血圧の治療もしくは予防には、規則正しい生活習慣が必要不可欠です。

薬物療法だけでなく毎日の食生活や運動習慣なども、高血圧の予防や糖尿病の進行を防ぐうえで非常に大切な治療に含まれます。

糖尿病予防は食事療法と運動療法が大切ですが、高血圧についても同様に食事と運動が大切だといっても過言ではありません。

ここでは、両者を予防するうえで大切なポイントについて解説していきます。

糖分と塩分を抑えた食事を摂取する

糖尿病と高血圧の要因は、過度な糖質と塩分の摂取です。

塩分や糖分の摂りすぎは体液の浸透圧バランスが変化し、高血圧の要因となるためどちらか一方を抑えればよいわけではありません。

塩分の摂取は1日10グラム未満、可能であれば6グラム未満が望ましいとされており、糖分摂取は1食あたり40〜50グラムの摂取量が望ましいとされています。

塩分摂取量を減らすためには塩分含有量の少ない食材を選んだり、調味料の代わりに出汁を活用したりし工夫する方法もあります。

糖質を減らす場合は主食となるご飯やパンの量を減らし、代わりに野菜やたんぱく質を多めに摂るか食べる順番を変えるなどの工夫が必要です。

すでに糖尿病治療で血糖降下薬を服用している場合は、低血糖を起こす可能性があるため糖質制限を始める前に主治医へ相談するのがよいでしょう。

カテキン、イソフラボン、アントシアニンなどで知られるポリフェノールには、血糖値と血圧への抑制効果があることが知られています。

食生活から対策したい方はこちらの研究レポートもご確認ください。
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喫煙や飲酒の習慣を見直す

アルコールを摂取すると、肝臓でグリコーゲンを糖質に変性させる働きが促進されます。

そのため飲酒によって高血糖を来たし、結果的に高血圧となる場合があるのです。

飲酒をする際に酒の肴として、塩分を多く含む塩辛やスナック菓子などを食べたり飲酒の後にラーメンなど塩分を含む食べ物を摂取したりして高血圧となる人もいます。

喫煙は糖尿病や高血圧に関係していないように感じられる場合もありますが、実はタバコを吸うと体内で交感神経が刺激され血糖が上昇します。

タバコにはインスリンの働きを妨げる作用もあり、糖尿病のリスクはもちろん糖尿病の治療も妨げるのです。

さらに喫煙は動脈硬化を促進させるため、高血圧とも密接に関係しているだけでなく将来的に心血管系の疾患や脳血管障害を引き起こすリスクがあります。

糖尿病や高血圧の予防、進行を抑える目的だけでなく将来的な疾病を予防するためにも禁煙外来を活用するなどして喫煙や飲酒の習慣を見直しましょう。

日常的に運動する習慣を取り入れる

糖尿病と高血圧の基本的な治療のなかには、運動習慣も含まれます。

日常的に有酸素運動を取り入れると、血管を拡張させ血圧を下げるだけでなく筋肉でのエネルギー消費量が増えるため、体内での糖の消費量が増え血糖値が下がります。

さらに運動にはインスリンの効果を高める作用もあるため、食後高血糖の改善だけでなく糖尿病の治療効果も高めるのです。

高血圧に対する運動は1回30分以上を目安に、ややきつめの運動を週3回程度行うのが推奨されています。

高血圧や糖尿病治療の目的で運動療法を開始する場合の注意点は、以下の通りです。

  • 治療を開始したばかりの場合主治医に確認する
  • 運動前に血圧を測定し血圧が高い場合は実施しない
  • 食前や空腹時には運動しない
  • 体調が悪い時には運動を見合わせる
  • 運動中に体調不良があった場合には中止する

上記を守ったうえで、無理のない程度での運動量から始めるとよいでしょう。

糖尿病と高血圧を予防の第一歩は生活習慣を見直すところから

糖尿病と高血圧を予防の第一歩は生活習慣を見直すところから

高血圧や糖尿病は自覚症状に乏しく、ある程度進行してから発見される場合も少なくありません。

高血圧や糖尿病が進行すると、動脈硬化腎機能障害だけでなくがん心血管系の疾患脳血管障害を引き起こします。

そして血圧と糖尿病は密接に関係しており、糖尿病を患っていると高血圧を合併している可能性もあります。

糖尿病は薬物治療はもちろん食事療法や運動療法が基本となりますが、高血圧は家庭において自分の血圧がいくつなのかを把握するのが大切です。

処方薬の用法や用量をしっかり守り、規則正しい生活習慣を心がけるだけでなく自分自身の体調と向き合うところから始めてみましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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