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糖尿病性神経障害による足のしびれは片足だけではなく左右対称に起こる!

糖尿病性神経障害による足のしびれは片足だけではなく左右対称に起こる!

厚生労働省による令和元(2019)年国民健康栄養調査では、20歳以上の糖尿病有病者は1196万人という結果でした。

日本人の5人に1人は糖尿病であり、すでに糖尿病は国民病といえます。

糖尿病自体は直接生命に関わる病気ではなく、適切な治療によって血糖値がコントロールできれば、病状を安定させられます。

糖尿病の最も重大な問題とは、血糖値がコントロールされず病態が進行し、合併症が引き起こされることです。

とくに糖尿病三大合併症は、生活の質を著しく低下させ、生命にも関わります。

三大合併症の1つである糖尿病性神経障害の主な症状は、足先や指先のしびれです。

糖尿病の末梢神経障害は左右対称かつ足先から少しずつ始まる点が特徴的であり、片足だけの場合は腰の脊椎の障害や脳血管障害などの可能性があります。

同じ足のしびれでも、背景にある病気が大きく異なる可能性があります。

しびれが片足だけの場合と、両足に生じている場合の違いを理解し、早い段階で適切な治療が開始できるようにしましょう。

この記事でわかること
  • 糖尿病性神経障害の症状
  • 片足だけに症状が出る病気
  • 糖尿病性神経障害を予防するための生活習慣

ぜひ、参考にしてください。

目次

三大合併症の1つである糖尿病性神経障害は両側の足先のしびれから始まる

三大合併症の1つである糖尿病性神経障害は両側の足先のしびれから始まる

糖尿病によって高血糖状態が長期間続くと、全身の細い血管や神経の障害が出現します。

その結果三大合併症である糖尿病性網膜症糖尿病性腎症糖尿病性神経障害が引き起こされます。

糖尿病性神経障害とは、糖尿病によって全身の神経に障害が起こることです。

主な症状は、運動障害や知覚障害、自律神経障害があります。

神経には、脳や脊髄といった中枢神経と、そこから手足や皮膚に広がる末梢神経があります。

糖尿病性神経障害で障害を受けるのは、主に末梢神経です。

末梢神経には体を動かす運動神経、痛みなどを感じる感覚神経、体の調節を行っている自律神経の3種類があります。

血糖値が高い状態が続くと、末梢神経に栄養を運ぶ血管の壁が厚くなり、血流が悪くなって末梢神経線維の機能は低下します。

その結果生じる主な症状が、しびれや痛みです。

血管は、末端に行けばいくほど細くなります。

そのため、末梢神経への栄養や血流が滞るのが早く、一般的には足先や足裏から症状が出現します。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • 何かが足の裏に貼りついているような違和感
  • しびれやチクチクした細かく刺すような痛み
  • 虫が這うようなムズムズ感
  • やけどのようなヒリヒリ感
  • 正座をした後のようなジンジンした感じ
  • 砂や小石の上を歩くようなゴロゴロした感じ

末梢神経障害は、糖尿病の発症から10〜15年で罹患した患者の半数近くが併発するといわれています。

また、三大合併症はヘモグロビンa1cが高くなると進行する可能性が上昇します。

ヘモグロビンa1c

ヘモグロビンa1cとは、糖尿病の診断に加えて、進行具合や改善の程度の重要な指標のことです。

血糖値が低い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量は減少し、ヘモグロビンa1cは下がります

逆に血糖値が高い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が増加するため、ヘモグロビンa1cは上昇します。

ヘモグロビンa1cの値別の、体にもたらす影響は以下のとおりです。

ヘモグロビンa1c身体への影響
5.6%未満普段の血糖値が正常範囲内にあり、影響なし
5.6〜5.9%時々血糖値が高めになっている状態現在の生活習慣が続くと身体に影響が出てくる可能性があり、食生活や運動習慣の改善が必要
6.0〜6.4%境界型の状態で、心筋梗塞や脳梗塞など発症リスクが高くなる
6.5%以上糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクがさらに高くなる
7.0%以上糖尿病の三大合併症の進行が早まる可能性が高い状態
8.0%以上糖尿病の三大合併症の進行が早まる可能性が非常に高い状態
9.0%以上糖尿病そのものによる倦怠感や疲労感が強く、感染症になると重症化のリスクが高い
10.0%以上糖尿病の治療のために医師から入院を勧められる状態

ヘモグロビンa1cが7.0%を超えると、三大合併症である糖尿病神経障害の進行が早まる可能性が高くなります。

糖尿病神経障害による症状は片側だけでなく、左右対称に始まります。

理由は、血液は左右対称に流れており、血糖値は左右で変わらないためです。

症状が片足だけの場合は糖尿病が原因ではなく、腰の脊椎の障害や、脳血管障害などによって症状が出現している可能性があります。

血糖値やヘモグロビンa1cが高めな方は、しびれ等の症状が出てしまう前に、血糖値を上げないよう意識をしていきましょう。

血糖値を急上昇させない食事成分などを知っておくと普段の健康管理にも役立つでしょう。

  知っておきたい血糖値を抑制する食品や成分

片足だけにしびれがある場合は糖尿病が原因ではなく脳血管障害や脊椎障害の可能性がある

片足だけにしびれがある場合は糖尿病が原因ではなく脳血管障害や脊椎障害の可能性がある

しびれは、さまざまな病気の症状として現れます。

長時間の正座など原因がはっきりしている場合は、そのまま放置していても問題ありません。

しかし、長期間治らないしびれや徐々に悪化しているしびれなどは、背景にさまざまな病気が隠れている可能性があります。

とくに、突然出現したしびれは脳血管障害の可能性が高く、早急に受診する必要があります。

前述したとおり、糖尿病神経障害による症状は片側だけでなく左右対称です。

片足だけにしびれがある場合は腰の脊椎の障害や、脳血管障害の可能性があります。

片足だけにしびれが出現する主な病気は、以下の通りです。

  • 脳血管障害
  • 脳腫瘍
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 帯状疱疹

それぞれの病態について、以下にまとめました。

脳血管障害

脳血管障害とは、脳に血液を供給する血管に障害が生じ、脳の機能が影響を受ける状態のことです。

代表的な疾患は、脳梗塞脳出血くも膜下出血があります。

脳血管障害によるしびれの特徴は、急に出現した片側性の症状です。

多くは筋力の低下を伴いますが、しびれだけの場合もあります。

原因

脳血管障害の主な原因は、動脈硬化です。

動脈硬化が進行すると血管の内腔が徐々に狭くなり、内部を流れる血液の量が低下します。

脳への血液供給が突然大きく障害されると、脳梗塞の発症に至ります。

動脈硬化を引き起こす基礎疾患は、以下のとおりです。

  • 高血圧
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 高脂血症

動脈硬化の原因となる高血圧によって動脈が破れ、脳出血やくも膜下出血などが引き起こされます。

脳血管障害は、日本人の死因の多くを占めます。

日常生活に影響を与える麻痺(まひ)などの後遺症を残す可能性があるため、症状出現時は速やかに医療機関へ受診してください。

脳腫瘍

脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称のことです。

脳腫瘍が発生すると腫瘍周囲はむくみ、脳浮腫が生じます。

脳の機能は、腫瘍や脳浮腫によって影響を受けます。

脳腫瘍や脳浮腫によって生じる症状は、頭蓋内圧亢進症状局所症状です。

頭蓋内圧亢進症状

頭蓋内圧亢進症状とは、脳腫瘍や脳浮腫によって頭蓋中の圧力が高くなり引き起こされる症状のことをいいます。

主な頭蓋内圧亢進症状は、以下のとおりです。

  • 頭痛
  • 嘔気、嘔吐
  • 意識障害 

局所症状

脳はそれぞれの部位で運動や感覚、思考や言語などのさまざまな機能を担っています。

脳腫瘍や脳浮腫によって、その部位の機能が障害され、局所症状が出現します。

局所症状の1つである、しびれをきたす部位として最も頻度が多いのが、視床(ししょう)と呼ばれる部位です。

視床は感覚神経の通る部位であるため、しびれや痛みが生じます。

脳血管障害と同じく、症状は片側性で出現します。

理由は、脳と身体の間の神経経路は交差しているためです。

例えば右視床が損傷されると、左側の身体に症状が出現します。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の一部が外に飛び出し、腰や手足に痛みやしびれを引き起こす病気のことです。

腰椎椎間板ヘルニアは多くの場合、片側の神経を圧迫する程度の大きさのため、しびれは片足に起こります。

腰が痛くなり、片足だけにしびれを自覚した場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性が極めて高いです。

腰椎椎間板ヘルニアは放置してしまうと、神経麻痺などの重篤な障害をもたらす場合があります。

腰痛や片側の足のしびれを自覚した場合は、早めに整形外科を受診しましょう。

帯状疱疹

帯状疱疹とは、水痘(すいとう)帯状疱疹ウイルスを原因として発症する病気のことです。

初期段階では、体の左右どちらかの神経に沿って皮膚の痛みや違和感などを感じます。

痛みは神経の炎症によって引き起こされ、ピリピリやジンジン、ズキズキと表現される場合が多いようです。

さらに、しびれを感じる場合もあります。

水痘帯状疱疹ウイルスは日本人の成人90%以上の体内に潜んでいるといわれていますが、通常は免疫力によって発症が抑えられています。

免疫力が低下し、ウイルスが活性化する原因は以下の通りです。

  • 加齢
  • 疲労
  • ストレス

過度の疲労やストレスを避け、免疫力が低下しないようにする必要があります。

50歳以上の人は、ワクチン接種によっても予防が可能です。

このように同じしびれの症状でも、背景にある病気は大きく異なります。

しびれの原因となる病気はすべて、治療が遅くなると後遺症が残る場合や、命に関わる危険もあります。

それぞれの違いを理解し、早期に適切な治療を開始できるようにしましょう。

糖尿病性神経障害を予防するためには食事や運動などの生活習慣の改善をしよう

糖尿病性神経障害を予防するためには食事や運動などの生活習慣の改善をしよう

糖尿病が発生したあとも、血糖値の高い状態が長く続くと、糖尿病性神経障害を含む三大合併症が引き起こされます。

三大合併症の併発は、生活の質を著しく低下させます。

三大合併症を予防するためには、血糖値を適正にコントロールできるよう、生活習慣を改善しなくてはいけません。

生活習慣とは、日常生活で繰り返し行われている行動や習慣のことです。

具体的には食事や運動、睡眠などで、趣味や嗜好品も含まれます。

一般的に三大合併症が引き起こされるのは糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の順番です。

糖尿病性神経障害の予防は、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症の予防にも繋がります。

血糖値の適正なコントロールを目的とした規則正しい生活習慣を知り、三大合併症を予防するとともに健康寿命を伸ばし、生活の質を高めましょう。

血糖値を適正化する食事療法

糖尿病の基本治療は、食事療法です。

厳しい食事制限ではなく、1日3食を基本にしたバランスのとれた食事を心がけます。

食事療法のポイントは、以下のとおりです。

  • 食事の時間は規則正しくする
  • ゆっくりよくかみ腹八分目で抑える
  • 朝食を抜かない
  • 満腹を避け、腹八分目を意識する
  • 寝る2〜3時間前までに食事を済ませる
  • 食品の種類はできるだけ多くバランスよく食べる
  • 野菜から先に食べる
  • 脂質と塩分は控えめにする
  • きのこや海藻などの食物繊維が多く含まれている食品を意識して取る

糖尿病と診断されても、摂取を制限される食品はありません。

食事療法は長期にわたるため、主治医や管理栄養士の指導を受けながら、ポイントを押さえて自分に合った方法を見つけましょう。

ブルーベリーなどに多く含まれるプロアントシアニジンには、糖の吸収を抑えたり、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。

プロアントシアニジンを多く含む食材を意識するなど心がけましょう。

  プロアントシアニジンを多く含む食品一覧

血糖値を適正化する運動療法

運動療法も食事療法と同じく、糖尿病の基本的治療です。

運動すると筋肉でブドウ糖や脂肪の利用が増加するため、血糖値の上昇が抑えられます。

さらに運動は、肥満の解消や動脈硬化の予防にも効果があります。

運動療法のポイントは、以下のとおりです。

  • 散歩や自転車、水泳などの有酸素運動を中心に行う
  • レジスタンス運動などの無酸素運動を適宜組み合わせる
  • 運動は毎日、少なくても週に3回は行う
  • 運動は1日30分以上を目安にする
  • 運動は低血糖を予防するため空腹を避ける
  • 血糖コントロールが不良なときや合併症が進行している時、心臓や肺などに病気がある場合は運動を控える

通常、血糖値は食後1時間頃にピークを迎え、その後徐々に低下します。

血糖コントロールを目的とした場合、最も血糖値が高くなる食後1時間頃に運動するのが最適であるといわれています。

運動する時間がとれない人は、通勤を徒歩や自転車に変えたり、階段を意識して利用したりするなど日常生活の中から活動量を増やすようにしましょう。

糖尿病性神経障害の発症予防や進行を防ぐには生活習慣の改善と早期発見が大切

糖尿病性神経障害の発症予防や進行を防ぐには生活習慣の改善と早期発見が大切

糖尿病の最も重大な問題とは、血糖値がコントロールされず病態が進行し、合併症が引き起こされることです。

とくに糖尿病三大合併症の併発は、生活の質を著しく低下させます。

合併症の発症を予防するためには、生活習慣を改善し、血糖値を適正に保たなければいけません。

三大合併症の1つである糖尿病性神経障害の主な症状は、足先や指先のしびれから始まります。

症状は片側だけでなく、左右対称です。

症状が片足だけの場合は糖尿病が原因ではなく、腰の脊椎の障害や、脳血管障害などによって症状が出現している可能性があります。

同じしびれであっても背景にある病気は大きく異なり、治療方法も全く違います。

しびれを自覚した場合は片側性なのか、両側なのか見極め、早い段階で適切な治療を開始できるようにしましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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