血糖値が高いと言われた人や、糖尿病と診断された人の中には「糖尿病で食べてはいけないものは何?」と思う人もいるのではないでしょうか。
糖尿病と診断された人でも、摂取するエネルギー量と栄養のバランスに問題がなければ、絶対に食べてはいけないというものはありません。
しかし食べ過ぎると糖尿病悪化につながってしまう食べ物や飲み物があるため、食事方法で気を付けたい点がいくつかあります。
この記事では、糖尿病で食べ過ぎてはいけないものや、糖尿病において重要となる食事方法ついて解説します。
- 糖尿病で食べ過ぎてはいけないものの特徴
- 糖尿病で食べ過ぎてはいけない食べ物や飲み物
- 糖尿病の悪化させないための食事方法
糖尿病で食べ過ぎてはいけないものがあるのか知りたい人や、食事で気を付ける点を押さえておきたいという人はぜひ参考にしてください。
糖尿病で食べてはいけないものはないが食べ過ぎると良くないものはある
糖尿病で食べてはいけないものがあると思っている人も多いですが、実際には絶対に食べてはいけないというものはありません。
しかし、適量を超えて食べ過ぎてしまうと、糖尿病に悪影響を及ぼす食品はあります。
特に糖尿病の人が食べ過ぎないように意識したい食品の特徴として挙げられるのが、以下の3つです。
- 糖質の多い食品
- 高カロリーな食品
- 塩分や脂質の多い食品
糖尿病の食事において重要なのが、1日に摂取する適正なエネルギー量の把握と、栄養バランスのとれた食事です。
炭水化物やたんぱく質、脂質を基本とした三大栄養素のバランスが大切で、それに加えてビタミンやミネラルなどもまんべんなく取り入れましょう。
糖質を多く含む食品を食べ過ぎると血糖値を急上昇させる可能性がある
糖質が多い食べ物は、血液中に含まれる糖の濃度である血糖値を急激に上昇させる可能性があるため、食べ過ぎに気を付けたい食品です。
健康な人の場合、食後に血糖値が上昇するとインスリンというホルモンが分泌されるため、約2時間以内に血糖値は正常値に戻ります。
それはインスリンが、血液中の糖をエネルギーとして利用できるように、細胞に糖を取り込ませて血糖値を下げる役割をしているからです。
糖質の多い食品を食べ過ぎるとさらに血糖値が上がるため、エネルギーとして消費細胞に取り込めなかった糖が血液中にあふれ、血管に負担をかけてしまうのです。
そして何年も血糖値が高いままの状態が続くと、血液が糖でドロドロになったり血管を傷付けたりして、糖尿病の合併症を引き起こす可能性が出てきます。
過度な糖質制限は避けた方が良いですが、血糖値の急激な上昇を防ぐためにも、糖質が多い食品の摂り過ぎには気を付けましょう。
糖尿病対策には、食事からの糖をコントロールすることが大切です。
最近の研究で、ポリフェノールの一種に体内での糖の吸収を抑える効果があることも知られています。
詳しくは「糖質の吸収を抑え、食後血糖値を上がりにくくする成分」の記事をご覧ください。
高カロリーな食品を食べ過ぎると肥満につながる
高カロリーな食品も、食べ過ぎてしまうと糖尿病を悪化させる可能性があります。
糖尿病は1日に摂取する適切なエネルギー量を守って、体重増加を防ぐために血糖値と体重のコントロールをするのが必要不可欠です。
肥満は、インスリンの効きが悪くなり作用が弱まるインスリン抵抗性を引き起こす原因の1つとされているため、高カロリーの食品を食べ過ぎるのは避けた方が良いでしょう。
塩分や脂質が多い食品の食べ過ぎは糖尿病の合併症リスクを高める
塩分や脂質を多く含む食品の食べ過ぎは、高血圧や動脈硬化を引き起こす原因となり、血管に悪影響を及ぼす合併症のリスクを高める可能性があります。
糖尿病の食事療法における塩分摂取量の目安は、男性は1日8g未満、女性は1日7g未満です。
ただし、すでに高血圧の疾患がある場合には、1日6g未満の減塩が推奨されています。
梅干しや塩辛、漬物など塩分が多く含まれている食品はできるだけ控えて、毎日の食事も薄い味付けを心がけましょう。
糖尿病を悪化させないために食べ過ぎてはいけないもの
糖尿病の人にとって毎日の食事は重要であり、糖尿病を悪化させないためには血糖コントロールを意識した食品選びがカギとなります。
上手に血糖コントロールを行うために、食べ過ぎてはいけないものとして挙げられるのは以下のとおりです。
- 白米やパンなどの炭水化物
- 洋菓子や和菓子などお菓子全般
- ファーストフードや超加工食品
- 清涼飲料水やフルーツジュース
- アルコール類
糖尿病はいくつかの種類がありますが、主に自己免疫異常などが原因で起こる1型糖尿病と、生活習慣などの環境が起因して起こる2型糖尿病の2種類に分けられます。
そして、全体の糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病といわれています。
2型糖尿病の主な原因は過食や偏食、運動不足など生活習慣の乱れによるものであり、特に食事は重要です。
食べ過ぎると糖尿病を悪化させる食品を知って、糖尿病悪化のリスクを防ぎましょう。
白米やパンなどの炭水化物
白米やパン、麺類などの主食を過剰に食べると、糖尿病の進行リスクが高まるため特に気を付けましょう。
炭水化物には糖質が多く含まれており、血糖値の上昇を抑える働きをもつ食物繊維の含有量が少ないのが特徴です。
そのため炭水化物を摂り過ぎると、体内で速いスピードで消化吸収されてしまい、食後の血糖値の急上昇につながります。
食事で主食を摂る際は白米の代わりに玄米や雑穀米にする、パンであればライ麦パンや全粒粉パンにするなど、全粒穀物に置き換えてみましょう。
食物繊維の多い全粒穀物に置き換えると、食後の血糖値の急上昇が抑えられます。
洋菓子や和菓子などお菓子全般
洋菓子や和菓子を問わず、一般的にお菓子全般には多量の砂糖が使用されているため、食べ過ぎには気を付けましょう。
特に避けた方が良い代表的なお菓子は、以下のとおりです。
- 菓子パン
- ケーキ
- ドーナッツ
- ポテトチップス
- クッキー
これらのお菓子には、多量の砂糖に加えて炭水化物も多く含まれている傾向があります。
特に空腹時に摂取してしまうと、血糖値が急激に上昇する可能性が高いため避けた方が無難です。
小腹を満たしたいときには、食事で摂れない栄養素を補えて血糖値に影響が少ないアーモンドやカシューナッツなどのナッツ類、寒天ゼリーなどを適量食べるのをおすすめします。
ファーストフードや超加工食品
ファーストフードや超加工食品は、代表的な高カロリーかつ高脂肪の食品のため、食べ過ぎには気を付けましょう。
代表的なファーストフードとして挙げられるのは、以下のとおりです。
- ハンバーガー
- フライドポテト
- フライドチキン
- ピザ
- ラーメン
超加工食品とは糖分や脂肪分を多く含み、保存料や添加物を加えて、常温保存や日持ちするように加工された食品のことを指します。
超加工食品の代表的なものは、以下のとおりです。
- 菓子パン
- 総菜パン
- カップ麺
- スナック菓子
- ミートボール
- チキンナゲット
ファーストフードや超加工食品には、塩分も多く含まれている食品がほとんどのため、高血圧を発症するリスクも考えられます。
さらに飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が含まれている場合も多く、動脈硬化や心疾患などの合併症を引き起こす可能性があります。
ほかにもファーストフードや超加工食品の多くは食感がやわらかく、食べ過ぎてしまう傾向にあるため、気を付けたい食品の一つです。
清涼飲料水やフルーツジュース
糖尿病の人にとって清涼飲料水やフルーツジュースも、過度な摂取は控えたい食品です。
特にコーラやスポーツドリンクなどの清涼飲料水は多量の砂糖が含まれているため、飲んだ後すぐに血糖値が上昇します。
そして、フルーツジュースは果物が入っているから体に良いと思う人も多いですが、市販のフルーツジュースには一般的に砂糖が多く加えられています。
積極的に摂取したい飲み物として推奨されているのは水ですが、水以外を楽しみたい場合には無糖のコーヒーやお茶、無糖の炭酸水を選ぶと良いでしょう。
アルコール類
1日20~25g程度の適度なアルコール摂取は、糖尿病のリスク軽減の可能性があるとされています。
しかし過剰に摂取すると、すい臓から分泌されるインスリンの働きを抑制し、血糖値を上昇させる可能性があります。
そしてアルコールの過剰摂取は、高血糖を引き起こす一方で低血糖にもなり得ます。
血糖値が高くなったり低くなったりする理由として挙げられるのは、以下のとおりです。
- アルコール飲料には糖分やカロリーが多く含まれているため上がる
- アルコールが肝臓の働きを抑制して、低血糖になっても肝臓から糖が排出されないため下がる
- インスリン分泌薬を使用している場合は成分が体内に滞ってしまうため下がる
薬などの影響もあるため、糖尿病と診断されている人はアルコールを飲んでも問題ないかを医師に確認するようにしましょう。
糖尿病を悪化させないために重要となる大切な3つの点
糖尿病を悪化させないためには、食べ過ぎてはいけないものに加えて、食事で気を付けたい以下の3点を押さえておくのも大切です。
- 自分の1日の適正なエネルギー量を把握する
- 栄養バランスと食べる順番を意識する
- 食事はゆっくりとよく噛んで食べる
適正な摂取エネルギー量は、年齢や普段の活動量などによって一人ひとり異なるため基本的には医師と相談しながら決めますが、目安として計算式を用いて把握できます。
そして1日3回の栄養バランスを意識したメニューと、ゆっくりと時間をかけて行う食事は、血糖値を安定させるためのカギとなります。
主食やたんぱく質を含むおかず、野菜や乳製品に果物など、1日の中でさまざまな栄養素をバランスよく摂取しましょう。
1日に摂取する適正なエネルギー量を把握する
1日に摂取する適正なエネルギー量は、血糖値の上昇や合併症の進行を抑えるために重要な指標となります。
自分の適正なエネルギー量の目安を把握して、食事のコントロールに役立てましょう。
1日に摂取する適正なエネルギー量は、以下の計算式で算出できます。
- 自分の標準体重を算出する:標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22
- 適正なエネルギー量を算出する:適正なエネルギー=標準体重(㎏)×25~35
最初に自分の標準体重を計算したら、標準体重と日頃の活動量によって当てはまるエネルギー係数をかけて、1日あたりの適切なエネルギー量を算出します。
エネルギー係数は、以下の3つから自分の活動量に合うものを選んで計算してください。
- デスクワークが多い人:25
- 立ち仕事が多い人や家事や軽い運動をしている人:30
- 力仕事が多い人や活発な運動をしている人:35
性別や年齢、合併症の有無などによっては、上記の計算式が適用できない場合もあります。
実際に食事療法を始める際や適切なエネルギー量を詳しく知りたい人は、かかりつけの医師に相談して決めましょう。
栄養バランスと食べる順番を意識する
糖尿病の悪化を防ぐために、栄養バランスの良い食事を意識して、血糖値を急激に上昇させないような食べ方を心がけましょう。
そして食物繊維、ビタミンやミネラルも忘れずに摂りたい栄養素です。
特に食物繊維は、血糖値の上昇を抑えてインスリン分泌能力の改善が期待できるほか、少量でも満腹感が得られるメリットもあります。
以下のような食材は食物繊維が豊富なうえ、ビタミンやミネラルも含まれているためおすすめです。
- 玄米や雑穀米
- モロヘイヤやブロッコリーなどの野菜
- わかめや昆布などの海藻類
- えのきやまいたけなどのキノコ類
栄養バランスに加えて、食べる順番も血糖値に影響を与えるため大切です。
食事の際は、最初に食物繊維の多い野菜などの副菜、最後に主食となる炭水化物を食べるように順番を意識すると血糖値の急上昇を抑えられます。
- 食物繊維の多い野菜やキノコ類、海藻
- 魚や肉などたんぱく質のおかず
- ご飯やパン、麺類、イモ類などの炭水化物
そして、血糖値の急上昇を防ぐには、1日3食なるべく決まった時間に食べるのも大切です。
朝昼晩の食事の中でも特に重要なのが朝食で、1日の最初に摂る朝食で糖質を減らして食物繊維をしっかりと摂ると、昼食後の血糖値上昇も抑えられるとされています。
さらに米国内分泌学会の研究では、午前8時半までに朝食を摂ると血糖値の上昇が抑えられて、糖尿病リスクも低下するという報告もあります。
朝は特に食物繊維が豊富で血糖値の上昇が穏やかな納豆、もずくなどの海藻類、ヨーグルトなどがおすすめです。
普段から朝食を摂る習慣がない人は、昼食後の血糖値の上昇を抑えて糖尿病悪化を防ぐためにも、少しだけでも朝食を摂る習慣を始めてみましょう。
ブルーベリーなどに多く含まれるプロアントシアニジンには、糖の吸収を抑えたり、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。
プロアントシアニジンを多く含む食材を意識するなども心がけるとよいでしょう。
プロアントシアニジンを多く含む食品一覧
食事はゆっくりとよく噛んで食べる
糖尿病を悪化させないためには、食事の際ゆっくりと時間をかけて、よく噛んで食べるのも大切です。
人は食事を始めてから満腹感を感じるまでに約20分かかるとされているため、1回の食事で最低でも20分は時間をかけてゆっくり食べると良いでしょう。
時間をかけてよく噛んで食べると、以下のようなメリットが得られます。
- 血糖値の急激な上昇が抑えられる
- 満腹中枢が満たされて食べ過ぎ防止になる
- よく噛むと唾液の分泌が増えるため、胃腸の負担が減る
- 唾液の分泌により、糖尿病の症状の一つである喉の渇きを抑えられる
早食いは過食につながるだけでなく、同じ食事量を食べたとしても血糖値がより上昇してしまうリスクがあります。
食事の際は20分程度は時間をかけて、1口30回を目安に、ゆっくりよく噛んで食べるように意識してみてください。
糖尿病で食べてはいけないものはないがバランスの良い食事を目指そう
この記事では、糖尿病で食べてはいけないものや、糖尿病の食事で気を付けたい点について詳しくお伝えしてきました。
糖尿病の人が食事をするうえで、絶対に食べてはいけないものはありません。
毎日の食事選びや食べ方の工夫次第で、糖尿病に重要となる血糖値の上昇を抑えられます。
糖尿病で食べ過ぎてはいけない食品や血糖値を上げない食べ方を意識して、1日3食バランスの良い食生活を始めましょう。
PickUp この記事に注目が集まっています