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糖尿病腎症のステージごとの症状は?元となる糖尿病の原因や症状も確認

糖尿病腎症のステージごとの症状は?元となる糖尿病の原因や症状も確認

糖尿病の三大合併症の1つである糖尿病腎症は、血糖値の上昇から腎機能まで影響が及んだ状態です。

尿に含まれるタンパク質などを基準に、5段階のステージが分けられており、初期段階であれば症状の改善が見込まれます。

しかし、初期段階では症状がほとんどないため、病気を自覚するのが困難です。

では、糖尿病腎症のステージが進行する前に対策するには、どのようにしたらよいのでしょうか。

この記事では、糖尿病腎症の症状や対策法について解説します。

この記事でわかること
  • 糖尿病腎症のステージ
  • 糖尿病及び糖尿病腎症の症状
  • 糖尿病に気付くための対策

糖尿病腎症の元となる糖尿病の種類や症状も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、血糖値が高くなる糖尿病の合併症として発症する病気です。

糖尿病の悪化に伴って腎臓の機能も低下していき、最終的には腎機能が完全に停止してしまいます。

しかし、糖尿病になってからすぐに糖尿病性腎症になるわけではありません。

糖尿病性腎症の進行は、以下の5つのステージに分けられます。

糖尿病腎症のステージ
  • 第1期:腎症前期
  • 第2期:早期腎症期
  • 第3期:顕性腎症期
  • 第4期:腎不全期
  • 第5期:透析療法期

第1〜2期にかけては症状がほとんどありませんが、初期段階で見つけられた場合は、症状が改善する可能性があります。

第3期以降になると、元の腎機能に戻すのは難しい状態です。

糖尿病性腎症におけるステージの基準

糖尿病性腎症の5つのステージは、以下の2つの数値を基準に判断されています。

糖尿病腎症おけるステージ基準値
数値内容
尿タンパク値/アルブミン値・尿に含まれるタンパク質の値、もしくはタンパク質の1種であるアルブミンの値
・腎機能が正常な場合は、尿にタンパク質はほとんど含まれない
腎機能・GFR(eGFR)・1分間に腎臓の糸球体でろ過される血液の量を示す値
・通常検査では採血を行い、クレアチニンの値に対象者の年齢などを合わせて算出される「糸球体ろ過量(eGFR)」が用いられる
・正確なGFRを検査する場合は、24時間の畜尿や採血が必要になる
・GFRの数値が低いと、腎臓に異常が発生している

上記の値を割り出すため、糖尿病性腎症を簡易的に検査する際は、尿検査血液検査が行われます。

ステージごとの尿タンパク値とeGFRは、以下のとおりです。

ステージごとの尿タンパク値とeGFR
ステージ尿タンパク値(g/gCr)
アルブミン値(mg/gCr)
eGFR(ml/分/1.73m2)
第1期(腎症前期)正常(30未満)30以上
第2期(早期腎症期)微量アルブミン尿(30〜299)30以上
第3期(顕性腎症期)以下のいずれかに該当する
・顕性アルブミン尿が300以上)
・持続性タンパク尿が0.5以上
30以上
第4期(腎不全期)問わない30未満
第5期(透析療法期)透析療法中透析療法中

eGFRの数値に異常が発生するのは第4期からになるため、早期に発見する場合は尿タンパク値の方が重要になります。

糖尿病の種類

糖尿病性腎症の根本の原因になる糖尿病は、何らかの原因で糖分を取り込むインスリンの働きが不十分になり、血糖値が高くなる症状です。

糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病の2種類に分けられており、それぞれ原因や症状の現れ方などが異なります。

1型と2型の違い
1型糖尿病2型糖尿病
状態インスリンの分泌がほぼ無くなるインスリンの分泌低下、もしくはインスリンの機能不全
原因自己免疫の異常などが原因で、インスリンを作る膵臓の細胞が壊れる・遺伝の影響でインスリンの分泌低下や機能不全が起こる体質である
・生活習慣から肥満になり、インスリンの働きを鈍らせている
症状急激に現れる初期は自覚症状がなく進行して、徐々に現れる
発症年齢若年が多い何歳でも発症する可能性あり中高年が多い
体型の傾向瘦せ型が多い肥満の人が多い

1型糖尿病は免疫異常などが原因で急激に発生するため、自分で対策するのは難しい症状です。

インスリンの分泌がほぼ止まっているため、治療法も外部から行わなければいけません。

一方、2型糖尿病は遺伝が原因になる場合もありますが、生活習慣の乱れが症状の発生に大きく影響しています。

2型糖尿病の場合は、インスリンの分泌は止まっていません。

そのため、生活習慣を改善すれば糖尿病の進行を抑えて、元の状態に戻れます。

日本人の糖尿病患者の多くは2型糖尿病に該当しており、特に中高年かつ肥満の人は発症する確率が高くなります。

加齢とともにインスリンの分泌量は減少していってしまいます。
肥満もインスリンの効き目を悪くする要因です。
日本人は元々インスリンの分泌が少ない傾向にあるので、インスリンの効き目を高める工夫が大切になります。
インスリン量の分泌を増やすこちらの研究レポートもご確認ください。

糖尿病の症状

糖尿病の症状

糖尿病性腎症は糖尿病が進行してから発症するため、早めに糖尿病に気付いて改善すれば対策できます。

しかし、1型糖尿病の場合は急激に発症し、2型糖尿病の場合は初期の自覚症状がほとんどありません

そのため、糖尿病は進行するまで発見できない人もおり、結果的に糖尿病性腎症にも気付けなくなります。

糖尿病がある程度進行した場合は、以下のような高血糖の症状が現れ始めます。

糖尿病の初期症状
  • 喉の渇き・脱水症状
  • 尿量の増加
  • だるい・疲れやすい
  • 食べても体重が減る

それでも普通の疲労感と勘違いしてしまう症状が多く、進行しても気付かない可能性があります。

糖尿病性腎症の症状

糖尿病性腎症ではステージごとに体内の状態と、自覚症状が変化していきます。

糖尿病腎症の症状
ステージ体内の状態自覚症状
第1期(腎症前期)糖尿病の症状のみ(高血糖など)なし
第2期(早期腎症期)尿からアルブミン(タンパク質)が検出される血圧が上がるが、自覚症状はほとんどない
第3期(顕性腎症期)尿のタンパク質の増加腎機能低下むくみ
息切れ・胸の苦しさ
食欲不振
満腹感
第4期(腎不全期)腎臓のろ過機能の停止尿毒素の症状低血糖倦怠感
手足の痛み・かゆみ
貧血
第5期(透析療法期)腎機能の完全な停止筋肉のしびれ・痛み・強直
骨の痛み
顔色が悪い
易労感
嘔吐
発熱

第1〜2期では糖尿病性腎症の自覚症状がほとんどなく、元になる糖尿病も気付きにくいため、合併症の発見まで遅れる場合があります。

第4〜5期では腎不全、もしくは腎機能が完全に停止しているため、さまざまな身体の異常が併発します。

三大合併症やその他の症状

三大合併症の残り2つである糖尿病性神経障害糖尿病性網膜症では、以下のような自覚症状があります。

腎症以外の症状
原因主な自覚症状
糖尿病性神経障害手足のしびれ・痛み
異常な感覚・感覚がなくなる
胃腸の異常
立ち眩み
糖尿病性網膜症視力低下
視野の霞み

糖尿病性神経障害と糖尿病性網膜症はステージ分けされていませんが、進行した場合は感覚の消失や失明などに繋がる場合があります。

三大合併症以外にも、高血糖の影響から以下の症状が併発します。

  • 動脈硬化
  • 免疫機能の低下(感染症にかかるリスクが高くなる)
  • 脂質異常症
  • 骨粗鬆症
  • 歯周病

特に動脈硬化は心臓病や脳卒中、壊疽(えそ)に発展する可能性があります。

血液検査と尿検査を定期的に受けて状態を知る

糖尿病や糖尿病性腎症は発症直後に自覚するのは難しいため、定期的に検査を受けて症状をいつでも把握できる状態にしておくのが推奨されます。

血液検査と尿検査

糖尿病の診断では、以下の数値を基準にして、該当した項目によって糖尿病か否か判断します。

  1. 空腹時血糖値が126mg/dL以上
  2. 75gOGTが200mg/dL以上
  3. 随時血糖値が200mg/dL以上
  4. HbA1cが6.5%以上

判断基準は初回検査と再検査で、以下のように異なります。

検査回数糖尿病と診断される場合糖尿病の疑いと診断される場合
初回検査・1、2、3のいずれかと4
・1、2、3のいずれかと以下の症状のいずれかに当てはまる場合
1)典型的な糖尿病の症状
2)糖尿病網膜症
再検査・1、2、3のいずれかと4
・2回目のみ4
・初回と2回目の両方で4
・1~4に該当しない

典型的な糖尿病の症状は、高血糖や三大合併症の自覚症状が見られる場合に該当します。

一方、糖尿病性腎症は尿検査と血液検査で、以下の項目を見ていきます。

  • 尿検査:蛋白尿や血尿の有無、尿中アルブミン排泄量
  • 血液検査:血中尿素窒素(BUN)、推算糸球体ろ過量(eGFR)、血清シスタシンC

蛋白尿や血尿は尿の異常、血中尿素窒素と血清シスタシンCは腎機能の状態を把握するために検査します。

糖尿病に有効な治療法

糖尿病に有効な治療法

糖尿病に有効な治療法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。

1型と2型治療法
糖尿病の種類治療法
1型糖尿病インスリン注射
2型糖尿病食事療法
運動療法
飲み薬
インスリン注射(必要に応じて)

1型糖尿病はインスリンを分泌できなくなっているため、注射で補うほかありません。

一方、2型糖尿病は症状が進行していない場合、生活習慣の改善として食事や運動療法が行われます。

食事療法では栄養バランスや決まった時間に食事を摂り、運動療法では適度な運動で糖分の消費やインスリンの動きを高めていきます。

しかし、2型糖尿病でも症状が進行していると、食事と運動だけでは血糖をコントロールできません。

改善できなかった場合でも、引き続き適切な食事や運動はしつつ、以下の飲み薬を使用します。

  • インスリンの分泌低下を補う薬
  • インスリンの抵抗性を改善する薬
  • 糖の吸収や排泄を調節する薬
  • 上記の配合薬

血糖値をコントロールする薬でも効果が見られない場合は、2型糖尿病でもインスリン注射を行う可能性があります。

糖尿病の治療の基本は、インスリンの効果を向上させるための食事療法と運動療法です。

まずは糖尿病にならないために、普段の生活から肥満や糖質の摂りすぎ、血糖値の急上昇などに注意しましょう。
糖尿病の予防についてはコチラの記事も参考にしてください。

糖尿病性腎症に有効な治療法

糖尿病性腎症が併発していた場合、ステージによって以下の治療法が用いられます。

糖尿病腎症に有効な治療法
ステージ治療法
第1期(腎症前期)血糖コントロール
第2期(早期腎症期)厳格な血糖コントロール
血圧管理(降圧)
第3期(顕性腎症期)厳格な血糖コントロール
血圧管理(降圧)
塩分・タンパク質制限
第4期(腎不全期)血圧管理(降圧)
低タンパク食
インスリン投与
透析療法(必要に応じて)
第5期(透析療法期)透析療法
腎移植(透析療法での改善できない場合)

基本的には糖尿病と同じように食事や飲み薬によって、血糖をコントロールしていきます。

糖尿病性腎症では高血圧の症状も見られるため、血圧を下げる方向で血圧の管理も必要です。

第4期でも症状が悪化すると透析療法が行われる場合があり、第5期で腎機能が改善できないと判断された場合は、腎移植も選択肢に入ってきます。

糖尿病性腎症の食事基準

糖尿病性腎症において食事で血糖をコントロールする場合、影響のある栄養素は以下の基準で摂取していきます。

糖尿病腎症の食事基準
ステージ総エネルギータンパク質食塩カリウム
第1期(腎症前期)25~30kcal/体重1kg過剰な摂取は避ける高血圧の場合は6g制限なし
第2期(早期腎症期)25~30kcal/体重1kg1.0~1.2g/体重1kg高血圧の場合は6g制限なし
第3期(顕性腎症期)25~35kcal/体重1kg0.8~1.0g/体重1kg7~8g症状に応じて軽度な制限あり
第4期(腎不全期)30~35kcal/体重1kg0.6~0.8g/体重1kg5~7g1.5g
第5期(透析療法期)透析治療の基準に準ずる透析治療の基準に準ずる透析治療の基準に準ずる透析治療の基準に準ずる

最も影響があるのはタンパク質になるため、第1〜2期の段階でもタンパク質の摂取量は目安が設けられています。

上記はあくまで基準になるため、実際の摂取量は患者の体重や体調、体質によって変更されます。

糖尿病性腎症は定期的な検査で糖尿病と併せて対策しよう

糖尿病性腎症は初期段階だと、元となる糖尿病も含めて症状に気付きにくい状態です。

初期段階で発症を知るためにも、定期的な血液検査尿検査を受けておきましょう。

糖尿病性腎症の治療法では、糖尿病と同様に食事や薬によって血糖をコントロールしていきます。

ただし、ステージが進行すると透析治療腎移植の必要性が出てくる病気です。

大がかりな治療に発展させないためにも、検査で状態を把握して、早い段階から対策や治療ができるようにしましょう。

糖尿病と併せて対策

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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