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空腹時血糖の正常値は70~109mg/dL!改善方法も紹介

空腹時血糖の正常値は70~109mg/dL改善方法も紹介

空腹時血糖は、血液内に含まれるブドウ糖の量を調整するインスリンの働きや状態を示す数値で、主に糖尿病の診断に使われます。

インスリンの働きが不十分だと、血液中のブドウ糖の量が増えて高血糖になります。

高血糖は、糖尿病だけでなく動脈硬化や高血圧などさまざまな病気の原因となるため、改善が必要です。

この記事では、空腹時血糖の正常値や基準値についてまとめました。

この記事でわかること
  • 空腹時血糖の正常値や基準値
  • 空腹時血糖が高くなる原因
  • 空腹時血糖を下げる方法

空腹時血糖が高い原因や空腹時血糖を下げる方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

空腹時血糖の正常値は70~109mg/dL!数値別に解説

空腹時血糖の正常値は70~109mg/dL!数値別に解説

空腹時血糖の正常値は70~109 mg/dLで、健康な人はこの範囲で維持されています。

空腹時血糖とは、10時間以上食事をとらずに測定した血糖値のことです。

血糖値は、食事や運動などの影響を受けて常に変動しています。

空腹時血糖は絶食後、1日の中でもっとも変動が少ないタイミングで採血します。

空腹時血糖の基準値は、以下のとおりです。

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値~99mg/dL~109mg/dL~125mg/dL126mg/dL〜

ここでは、空腹時血糖の正常値やそれ以外の数値について解説しています。

空腹時血糖が70~99mg/dLは正常値

空腹時血糖による判定区分1

空腹時血糖が70~99mg/dLの範囲内であれば、正常値です。

血糖値は食事や運動など日常生活の影響を受けるため、常に一定ではありません。

たとえば、食事後は体内に糖分が取り込まれるため、血糖値は上昇します。

他にも、短距離走などの瞬発運動や繰り返し高強度のトレーニングをおこなうHIITなどは、インスリン拮抗ホルモンが活性化するため、血糖値が上がる傾向です。

ただし、健康な人の体内では血糖値を一定に保つホルモンが分泌されるため、血糖値の上昇は一時的で時間が経つと正常の範囲内に収まります。

もしも、食事をとって2時間後の血糖値が一時的に140mg/dLを超える場合は、隠れ糖尿病の可能性があります。

隠れ糖尿病とは、空腹時血糖が正常値または境界型の範囲にあり、食後の血糖値のみ急激に上昇する人のことです。

空腹時血糖値が正常範囲でも、食後に血糖値スパイクを起こしているケースもあります。
特に食後血糖値は健康診断や病院での測定では気付きにくいことが多いので普段から血糖値の範囲を知っておくことはとても大切です。

また、血糖値を急上昇させない食事成分などを知っておくと普段の健康管理にも役立つでしょう。
知っておきたい血糖値を抑制する食品や成分

空腹時血糖が100~109mg/dLは正常高値

空腹時血糖による判定区分2

空腹時血糖が100~109mg/dLの範囲内の場合は、正常高値です。

正常高値とは正常値の範囲に収まっている高めの数値のことで、詳しく検査すると糖尿病や境界型を表す糖尿病予備群が見つかる場合があります。

1〜2ヶ月の血糖の平均を示す数値であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)を検査したり、ブドウ糖負荷試験をしたりすると糖尿病の診断が可能です。

正常高値者は、5年後に15人に1人の割合で糖尿病を発症するというデータがあります。

空腹時血糖が100~109mg/dLの人は、詳しい検査をするとともに数値の改善に取り組みましょう。

空腹時血糖が110~125mg/dLは境界型

空腹時血糖による判定区分3

空腹時血糖が110~125mg/dLの場合は、境界型です。

境界型は糖尿病予備群とも呼ばれ、放置すると高い確率で糖尿病を発症します。

さらに、糖尿病網膜症糖尿病腎症などの合併症のリスクも高まります。

合併症は糖尿病予備群のときから進行している場合が多い一方で、自覚症状が現れにくく発見が遅れる可能性が高いです。

糖尿病の発症に気づかず治療が不十分だと、知らないうちに合併症が起きるかもしれません。

境界型の人は、5年後に4人に1人の割合で糖尿病を発症するというデータもあるため、精密検査を受けるなどの対策をしましょう。

空腹時血糖が126mg/dL〜は糖尿病型

空腹時血糖による判定区分4

空腹時血糖が126mg/dL〜の場合は、糖尿病型です。

糖尿病の可能性が極めて高いため、できるだけ早く医療機関を受診する必要があります。

もしも、初めて空腹時血糖が126mg/dL〜となり、以下の自覚症状がない場合は糖尿病ではない可能性もあります。

  • のどが頻繁に乾く
  • 尿の回数が多くなる
  • 体がだるく感じる
  • 体重が減る

空腹時血糖が126mg/dL〜で、上記の症状がある場合は糖尿病の可能性がきわめて高いです。

他にも、空腹時血糖の数値に加えてHbA1cが6.5%以上の場合は、糖尿病と考えられます。

糖尿病はさまざまな合併症が起きる病気のため、早期発見が大切です。

自覚症状の有無にかかわらず、早めに医療機関を受診しましょう。

空腹時血糖が正常値より高い原因を5つ紹介

空腹時血糖が正常値より高い原因を5つ紹介

空腹時血糖が正常値よりも高い原因は、以下の5つが考えられます。

  • 糖尿病が原因でインスリンが十分に作用しなくなる
  • 糖代謝異常によって血糖値が異常に高くなる
  • ストレスによってホルモンが分泌される
  • 遺伝によって血糖値が高くなりやすくなる
  • 服用する薬によって血糖値が上昇する
空腹時血糖高い原因

体内では血糖値を一定に保つために、さまざまなホルモンが作用しています。

ただし、血糖値を下げる作用があるホルモンは膵臓から分泌されるインスリンだけです。

そのため、インスリンが不足したり効き目が低下したりすると、血糖値を下げられません。

ここでは、空腹時血糖が正常値より高くなる原因について解説しています。

糖尿病が原因でインスリンが十分に作用しなくなる

空腹時血糖が正常値よりも高い原因として、最も考えられるのは糖尿病です。

糖尿病になると体内のインスリンの分泌量が少なかったり、十分に作用しなかったりします。

インスリンはブドウ糖を細胞に取り込みやすくする働きがあり、血糖値を一定に保ちます。

しかし、糖尿病患者はインスリンの働きが不十分なため、血液中のブドウ糖を効率よく細胞に取り込めません。

その結果、空腹時血糖が正常値よりも高くなります。

糖尿病の種類は大きく分類すると、1型糖尿病2型糖尿病の2つです。

1型糖尿病は、膵臓からインスリンがあまり分泌されないのが原因で、急に症状が現れます。

2型糖尿病は遺伝的な要素だけでなく、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が主な原因です。

2型糖尿病は自覚症状がほとんどないため、気付かない間に進行している可能性があります。

糖代謝異常によって血糖値が異常に高くなる

糖代謝異常とは、糖の取り込みが効率よくおこなえず、空腹時や食後の血糖値が異常に高くなる状態のことです。

インスリン抵抗性、インスリン分泌低下などが原因で作用が弱まり糖代謝異常が引き起こされます。

インスリン分泌低下

膵臓の機能低下が原因でインスリンが十分に分泌されていない状態

インスリン抵抗性

運動不足や肥満が原因でインスリンが働きにくくなる状態

糖代謝異常は糖尿病とその予備群に分けられ、予備群でも食後の血糖値のみが異常に高くなる人が増えています。

食後の血糖値のみが異常に上昇する人は、動脈硬化症疾患になる可能性が高いです。

ストレスによってホルモンが分泌される

ストレスは、空腹時血糖が正常値よりも高くなる原因の1つです。

ストレスを感じると交感神経が刺激され、アドレナリンやコルチゾールなどの血糖値を上昇させるホルモンが分泌されます。

これらはストレスから身を守り、生命を維持するために欠かせないホルモンです。

しかし、日常的に強いストレスを感じて血糖値を上昇させるホルモンが常に分泌されると、血糖値が高い状態が慢性的に続きます。

例えば、コルチゾールの分泌は、朝に急上昇して夜には下降するのが一般的です。

一方、ストレスを感じている人はコルチゾールの分泌が1日中続いてしまいます。

食生活や運動不足のみではなくストレスも空腹時血糖に影響するため、適度にストレスを発散するとよいでしょう。

遺伝によって血糖値が高くなりやすくなる

空腹時血糖が高い原因として、遺伝も考えられます。

血縁者に糖尿病の人がいると、血糖値が高くなる体質が遺伝します。

特に、2型糖尿病は遺伝傾向が強く、両親ともに2型糖尿病の場合の糖尿病になる確率は40〜50%です。

遺伝するのは体質であるため血縁者が糖尿病であっても、必ず糖尿病を発症するわけではありません。

糖尿病は遺伝的因子だけではなく、不規則な食生活や運動不足などの環境因子の影響も受けて発症します。

血縁者に糖尿病の人がいる場合は、血糖値が高くなる体質ということを意識して生活習慣を整えましょう。

服用する薬によって血糖値が上昇する

服用しているによっては、空腹時血糖に影響を与える場合があります。

抗炎症作用や免疫抑制作用があるステロイドは、血糖値を上昇させる作用があるため空腹時血糖が上がる可能性が高いです。

ステロイドに含まれるグルココルチコイドはインスリン拮抗ホルモンのため、長期的に服用しているとインスリンが体内で作用しづらくなります。

他にも、利尿薬や甲状腺ホルモン製剤も血糖値を上げる作用があります。

服用している薬がある人は、医療機関を受診する際に医師に相談するとよいでしょう。

空腹時血糖を下げる方法は食事と運動の2つ

空腹時血糖を下げる方法は食事と運動の2つ

空腹時血糖を下げるためには、血糖コントロールをおこない血糖値を安定させる必要があります。

血糖値は食事や運動、ストレスなどにより1日の中でも大きく変動します。

血糖値を安定させるためには急上昇を防ぎ、高血糖になる可能性がある生活習慣の見直しが大切です。

生活習慣の改善は、糖尿病を含む生活習慣病の予防だけでなく、生活の質の向上にもつながります。

空腹時血糖を下げるためには、バランスの良い食生活と運動習慣を意識しましょう。

ここでは、空腹時血糖を下げるための具体的な食事や運動について解説しています。

血糖値の上昇が緩やかな食事を意識する

空腹時血糖を下げる食事

食事をとると、食事に含まれる糖が体内に取り込まれるため、血糖値は上昇します。

空腹時血糖を下げるためには、急激な血糖値の上昇を防ぐ食生活が大切です。

食事の際には、以下に気をつけると血糖値の上昇が緩やかになります。

  • バランスの良い食事を1日3食とる
  • 食事は腹7分目にする
  • 良くかんでゆっくり食べる
  • 野菜や海藻、きのこ類を積極的に取り入れる
  • たんぱく質多め、炭水化物少なめを意識する

1日2食や1食では食事の間隔が空くため、空腹時と食後の血糖値の差が大きくなり血糖値の急上昇の原因になります。

1日3食とると食事の間隔や量が均一になり、血糖値の乱高下を防げます。

良くかんでゆっくり食べると、インスリンの分泌と消化のタイミングが合わせられるため血糖値の急上昇予防が可能です。

他にも、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防げるメリットもあります。

野菜や海藻、きのこ類に多く含まれる食物繊維は、糖質の消化や吸収を緩やかにするはたらきがあるため積極的に食事に取り入れましょう。

近年の研究では、ポリフェノールの一種に「空腹時血糖値」「食後血糖値」を抑える効果が知られています。
普段の食事に上手に取り入れるなど予防をしていきましょう。

空腹時と食後の血糖値をまとめて下げるポリフェノール

有酸素運動とレジスタンス運動を継続的におこなう

空腹時血糖を下げる運動

運動をおこなうと、エネルギー源となる血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれるため、結果として血糖値が下がります。

他にも、継続的に運動すると、インスリンがよく作用する体質になるというメリットもあります。

空腹時血糖値の改善を目的とする場合は、有酸素運動とレジスタンス運動をおこないましょう。

有酸素運動をおこなうと血流が増えるため、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなります。

ウォーキングは道具不要ですぐに取り組めるため、気軽に始めやすくおすすめです。

普段歩くスピードよりも少しスピードを上げて歩幅も大きくすると、エネルギー消費量が増えます。

ウォーキング以外の有酸素運動は、以下のとおりです。

  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳
  • ラジオ体操

水泳は浮力によって体重が軽くなるため、足腰への負担が軽減できます。

ラジオ体操は家の中でもおこなえるため、運動へのハードルが低くて無理なく継続できる有酸素運動です。

レジスタンス運動とは筋肉トレーニングのことで、筋肉を鍛えると基礎代謝が上がりエネルギー消費量が増えます。

スクワット背筋かかとの上げ下げなど道具不要で簡単におこなえるものは、日常生活のなかでも継続が可能なためおすすめです。

自身の身体機能に合わせて、負荷を調整して取り組んでください。

空腹時血糖値の改善のための運動は、週に2〜3回程度取り組むとよいと考えられています。

空腹時血糖の正常値は病気や体の不調を知る重要な指標となる

空腹時血糖の正常値は病気や体の不調を知る重要な指標となる

空腹時血糖の正常値は70~109mg/dLで、この範囲を超えると糖尿病予備群や糖尿病の可能性があります。

高血糖は自覚症状がほとんどありませんが、そのまま同じ生活を続けると糖尿病や糖尿病合併症を発症する可能性が高いです。

空腹時血糖が高い原因は主に5つ考えられ、糖尿病や糖代謝異常などの病気だけではなく、ストレスや薬剤による影響もあります。

空腹時血糖の改善には、食生活や運動習慣の見直しが大切です。

よくかんで食べる、食物繊維を含む食材を積極的にとるなど、血糖値が緩やかに上昇する食事を意識する必要があります。

運動は、日常的に有酸素運動レジスタンス運動をおこなうと空腹時血糖の改善が期待できます。

空腹時血糖が正常値を超えている場合は、病気や不調の早期発見を目指してすみやかに医療機関を受診しましょう。

空腹時血糖の正常値を意識し病気や不調の早期発見を目指す

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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