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糖尿病は遺伝する!糖尿病と遺伝の関係を詳しく解説

糖尿病は遺伝する!糖尿病と遺伝の関係を詳しく解説

糖尿病は、生活習慣が大きく影響する疾患の一つです。

生活習慣病と認知度が高く、今や日本人の6人に1人は糖尿病予備軍といわれています。

他人事ではない糖尿病ですが、遺伝が関係している場合があるとご存知でしょうか。

最近は健康診断の問診などで、血縁者の糖尿病の人がいないか質問を受ける場面も多いです。

この記事では、糖尿病が遺伝するのかについて詳しく解説します。

この記事で分かること
  • 糖尿病とはどんな病気なのかを詳しく解説
  • 糖尿病は2種類あり、その多くは生活習慣によるもの
  • 糖尿病は、遺伝によって糖尿病になりやすい体質がある程度決まっている
  • 遺伝の影響と同時に、生活習慣も大きく関係している
  • 糖尿病になりやすい体質でも、少しの心がけでリスクを減らせる

日常の生活の中で気をつけたい糖尿病予防のためのポイントも紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。

目次

糖尿病とは

糖尿病とは

糖尿病は、血液中に糖が多く含まれている状態が持続する病気です。

食事から摂取した炭水化物が糖に分解された後、ブドウ糖として吸収され血液中を流れています。

血糖値

本来、血液中のブドウ糖は筋肉などの細胞に吸収され、エネルギーとして体で消費されます。

血液中のブドウ糖を吸収するには、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンが必要です。

しかし、糖尿病は何らかの原因で血液中のブドウ糖が細胞内に吸収されず、多くのブドウ糖が血液の中に残ったままの状態になります。

血液中のブドウ糖の濃度を血糖値といいますが、糖尿病では血糖値が高いまま推移し、空腹時でも血糖値が下がりにくくなります。

血糖値が高い状態が続く糖尿病は、全身の臓器や血管に影響を及ぼす病気です。

糖尿病は、進行に伴って以下の3大合併症を併発します。

  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病神経障害

糖尿病は、時間をかけてこのような合併症を引き起こします。

検査結果や状況に合わせ、継続した治療が必要な疾患です。

糖尿病は2種類に分類される

糖尿病は、高血糖を引き起こす原因の違いによって2種類に分類されます。

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病

この2種類の糖尿病は、血糖値が高くなる病態は同じですが、原因が異なります。

1型と2型 特徴

2種類の糖尿病の特徴を、以下の表に分かりやすくまとめました。

1型糖尿病2型糖尿病
原因自己免疫疾患、膵臓β細胞が減少する疾患食生活
発症年齢小児や若年層に多い40歳以上に多い
体型痩せ型、普通体型が多い肥満体型が多い
自己抗体の有無陽性率が高い陰性

1型糖尿病は、自己免疫疾患などが原因となり膵臓からインスリンが分泌できないため、血糖値が下げられません。

1型糖尿病を発症するのは、子どもなどの若い年齢層に患者が多い点も特徴の一つです。

一方、2型糖尿病は食事内容などの生活習慣が影響し発症します。

そのため、発症年齢は中年期以降が多く、肥満症の人が多いです。

糖尿病患者全体の割合では、圧倒的に2型糖尿病患者が占めています。

糖尿病は遺伝する病気

糖尿病は遺伝する病気

2種類の糖尿病のうち、遺伝するのは2型糖尿病です。

1型糖尿病では、遺伝要因が関係する場合もありますが、その多くは家族歴と関係がありません。

ここからは、2型糖尿病と遺伝について解説していきます。

家系に糖尿病の人がいると発症率は高くなる

糖尿病と遺伝の関係

両親のどちらかが糖尿病の場合、子が糖尿病を発症する確率は40%程度と言われています。

父親よりも母親が糖尿病のケースの方が、子に遺伝する確率は高いとされています。

両親とも糖尿病の場合は、その子どもが糖尿病になる確率は70%程度と非常に高いです。

家系に糖尿病の人がいる場合は、同じような生活をしている人と比べても、糖尿病になる確率が高くなります。

健康診断などの機会に、医師から血縁者の糖尿病の人はいないか質問された経験はないでしょうか。

肌の色や体型などと同じように、糖尿病になりやすい体質も遺伝によってある程度決まっています。

糖尿病そのものは遺伝しませんが、インスリンの働きが良くない体質を受け継ぐことで、糖尿病のリスクが高まります。
また日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌が少ない傾向にあるため、特に注意が必要です。

インスリンの分泌を促したり、働きを高める効果のある成分も近年の研究により明らかになっています。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

糖尿病の遺伝と生活習慣は密接に関係している

糖尿病と遺伝の関係は、研究によって関連遺伝子が特定されています。

しかし、親から遺伝し糖尿病を発症するケースでは、生活習慣などの環境要因が大きく影響しています。

ともに生活する家族は、多くの場合同じような食事を摂るでしょう。

糖尿病になりやすい遺伝子をもつ家族が、糖尿病の要因となるような食生活をしていると糖尿病を発症するリスクが上がります。

近年、糖尿病に関係する遺伝子の研究が進み、普通の食事ではインスリンは正常に分泌されるが、高脂肪食を摂取するとインスリンの分泌が減るというデータもあります。

糖尿病は遺伝だけが原因ではなく、食事などの生活習慣を含めて意識することが重要です。

日本人は遺伝的に糖尿病になりやすいって本当?というテーマで動画解説しています。こちらも合わせてご覧ください。

糖尿病の遺伝が心配でも生活習慣次第でリスクを低減できる

糖尿病の遺伝が心配でも生活習慣次第でリスクを低減できる

生活習慣を心がけると、遺伝で糖尿病になりやすい体質の人でもリスクを下げられます。

糖尿病のリスクを下げるには、以下の2つの点を意識すると良いでしょう。

  • 食事の内容や食べ方
  • つらくない程度の適度な運動

それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

食事の内容や食べ方

糖尿病を発症していないのに、過度な食事制限は必要ありません。

しかし、家系で糖尿病になりやすい体質かもしれない人は、より気をつけた方が良いでしょう。

糖尿病になりやすい人が特に気をつけたい点は、以下の3つです。

糖尿病発症の傾向ある方の留意点
  • 肥満
  • 血糖値の急激な上昇
  • 血糖値が下がる時間の確保

肥満になると、インスリンの効果が発揮しにくくなります。

そのため、高脂肪や過剰に糖分を含む食事の習慣化は避け、バランスのとれた食事を意識しましょう。

しかしながら、美味しいものを楽しむのも食事の醍醐味です。

普段何気なく食べている食事の摂り方も、実は血糖値に大きく影響します。

食事の際に意識したい点は、以下の2点です。

  • 空腹時に甘い物を1口目に食べない
  • 食事と食事の間隔を空ける

この2つを意識するだけでも、血糖値の急上昇を抑えられます。

空腹時に甘いものを1口目に食べない

血糖値スパイクを防ぐ1

空腹の状態で、お菓子パンなどを食べると糖分が一度に吸収されて急激に血糖値が上昇します。

急激な血糖値の上昇は血糖スパイクとよばれ、好ましくない状況です。

血糖値が急激に上昇すると、膵臓から大量のインスリンが分泌されます。

一気にインスリンを分泌する機会を繰り返していると、膵臓の細胞が疲れてインスリンが十分に分泌できなかったり、タイミングが遅れたりするようになります。

その結果、血糖値がなかなか下がらずに高血糖状態が続くのが、食後高血糖とよばれる状態です。

食後高血糖は、健康診断で利用される検査項目では発見しづらく、糖尿病になるリスクが上昇します。

1口目は野菜などの食物繊維を食べるのが理想ですが、朝食など野菜を準備する時間がない場合も多いです。

そのようなときには、牛乳を先に飲むと血糖スパイクが防げます。

普段ブラックコーヒーを飲む人は、カフェオレにするのも良いでしょう。

牛乳は、血糖値を急激に上げない食品の一つです。

牛乳以外にも、血糖値の急上昇を防ぐ食べ物はたくさんあります。

血糖スパイクを防ぐには、食後血糖値の上昇度合いの指標であるGI値(Glysemic Index)を参考にすると良いでしょう。

血糖値スパイクを防ぐ2

GI値は、食品に含まれる糖質の吸収しやすさにより、食後2時間の血糖値の推移を数値化したものです。

GI値が低いほど血糖値を上げにくい食品で、食物繊維やタンパク質を多く含んでいます。

GI値の数値によって、以下のように分類されています。

GI値分類特徴
70以上高GI食品・炭水化物を多く含むみ、糖の吸収速度が速い
・血糖スパイクを起こしやすい
56〜69中GI食品・糖の吸収速度は比較的穏やか
55以下低GI食品・食物繊維やタンパク質を多く含む
・糖の吸収速度が遅く、血糖スパイクが起きにくい

最近では健康意識の高まりもあり、パッケージに表記されている物も増えています。

食品選びや、食べる順番を意識する際にはぜひ参考にしてみて下さい。

ブルーベリーなどに多く含まれるプロアントシアニジンには、糖の吸収を抑えたり、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。
プロアントシアニジンを多く含む食材を意識するなど心がけましょう。

プロアントシアニジンを多く含む食品一覧

食事と食事の間隔を空ける

血糖値を下げる時間確保1

食事と食事の間隔を空けると、血糖値が下がっている時間が確保できます。

間食を何度もしていると、常に血液中に糖分が吸収され、血糖値が高い状態が維持されます。

間食を繰り返すと、血糖値が下がりきらないまま、次の間食や食事でさらに高血糖になる可能性が高いです。

常にインスリンが分泌されると、膵臓に負担がかかり、十分なインスリンが分泌されなくなります。

高血糖が続く負のループに陥らないためにも、しっかりと血糖値が下がった状態を確保しましょう。

つらくない程度の適度な運動

血糖値を下げる時間確保2

運動は、血糖値を下げるために有効です。

ウォーキングなどの有酸素運動は、筋肉に血流が豊富に行き渡り、ブドウ糖が細胞に吸収されやすくなります。

気持ちよく動ける程度の運動でも、ブドウ糖をエネルギーとして消費できます。

習慣化が重要であるため、無理なく続けられる通勤やながら運動などを生活に取り入れると良いでしょう。

糖尿病の指標となる検査を定期的に受けるための受診もおすすめ

糖尿病の遺伝が気になる人や、医師から糖尿病に気をつけた方が良いと言われた経験のある人は、定期的な血液検査がおすすめです。

HbA1cという血液検査項目が、糖尿病の指標になります。

HbA1c値と生活習慣

過去1〜2ヶ月間の血糖コントロールの平均値が反映されるため、日々の生活習慣が反映されやすいのが特徴です。

基準値は5.5%以下とされ、5.6%を超えると糖尿病が強く疑われるとされています。

定期的にHbA1cの推移を確認すると、生活習慣を振り返るきっかけになります。

自分の生活のコントロールは、継続は重要で意外と難しいものです。

生活習慣を意識した結果が数値に反映され、定期的に確認できると肯定感が増します。

その結果、健康的な習慣に対するモチベーションが上がり、維持継続に繋がります。

自分の現在の状態を知り、より良い状態を維持するために、ぜひ定期的な検査を受けてみて下さい。

糖尿病の遺伝は生活習慣でリスクを減らそう

2型糖尿病は、遺伝の要素が発症に大きく影響します。

しかし、生活習慣病でもある糖尿病は、日々の食生活などを意識すると発症のリスクを下げられます。

遺伝によって受け継いだ体質は、自分の力では変えられません。

毎日少しずつ意識を積み重ねると、自然に体調が良くなったり、食事や運動を工夫する楽しみが見つかる可能性もあります。

糖尿病の遺伝が心配な人も、そうでない人も、健康な未来のためにぜひ実践してみて下さい。

生活習慣でリスク減少

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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