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血液中のグルコースが高いと指摘されたら見直したい生活習慣を解説!

血液中のグルコースが 高いと指摘されたら見直したい生活習慣を解説!

グルコースとは、果物や穀類などに多く含まれ、自然界に最も多く存在する単糖類のことです。

グルコースはぶどうから発見されたため、日本語ではブドウ糖とも呼ばれます。

グルコースは脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質であり、人体にとって重要な栄養素の一つです。

血液中のグルコース濃度を血糖値といい、膵臓から分泌されるインスリンによって、その値はコントロールされています。

血糖値の高い状態が長期間続くと、血管の壁が傷つきコレステロールが蓄積します。

この蓄積したコレステロールは血管内にプラークという塊を形成し、その結果生じるのが、動脈硬化です。

動脈硬化はさまざまな合併症を引き起こすため、血糖値が高いと指摘された場合は、生活習慣を見直さなければいけません。

今回は、血液中のグルコース濃度である血糖値が高い場合の、見直したい生活習慣について解説します。

この記事でわかること
  • 血液中のグルコース濃度の上昇が引き起こす身体への影響
  • 動脈硬化が引き起こす合併症
  • 血糖値の改善や動脈硬化予防のために見直す必要がある生活習慣

血糖値の基準値についても解説しているため、ぜひ、参考にしてください。

目次

血液中のグルコース濃度が高くなると引き起こされる身体への影響

血液中のグルコース濃度が高くなると引き起こされる身体への影響

炭水化物などの糖質は、消化と吸収によって最終的にグルコースに分解され、血液中に入ります。

血液中のグルコースの濃度を、血糖値といいます。

グルコースはエネルギー源として利用されるため、身体にとって重要な栄養素のひとつです。

とくに脳では、どの臓器よりも多くのエネルギーを消費します。

そのため、脳を正常に機能させるには、必要量のグルコースをしっかり摂取しなければいけません。

しかし必要以上の糖質摂取などによって、血糖値が基準を超えて高い状態が続くと、身体にはさまざまな悪影響が及びます。

血糖値の基準

血糖値が高い状態が持続するのが、糖尿病です。

糖尿病の診断には、下記の血液検査が用いられます。

  • 空腹時血糖値
  • ヘモグロビンa1c

空腹時血糖値とは、10時間以上絶食した後の早朝空腹時の血糖値のことです。

食事と採血時間との時間関係を問わずに測定した血糖値は、随時血糖値といいます。

ヘモグロビンa1cとは、過去2か月程度の血液中の糖分の状態を評価する指標のことです。

血液中のグルコースがヘモグロビンとくっつくと、糖化ヘモグロビンになります。

ヘモグロビンa1cは、この糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で血液内に存在しているかを%で表しています。

空腹時血糖値とヘモグロビンa1cの基準値を、以下にまとめました。

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値〜99mg/dl〜109mg/dl〜125mg/dl126〜mg/dl
HbA1c〜5.5%〜5.9%〜6.4%6.5〜%

境界型とは、2型糖尿病になる前段階の状態のことをいいます。

境界型は糖尿病予備軍とも呼ばれ、糖尿病と診断されるほどではないが、正常値よりは血糖値が高いという状態です。

糖尿病は急に発症する病気ではなく、ゆっくり少しずつ進行し、境界型を経て糖尿病に移行します。

境界型では自覚症状がほとんどないため、健康診断などで血糖値の高さを指摘されても、多くの人はそのまま放置してしまいます。

しかし、糖尿病に移行しないよう、正常高値や境界型の段階で生活習慣を見直さなくてはいけません。

通常血糖値は食後2時間程度で低下しますが、血糖値が下がらず高い値が続く状態を食後高血糖といいます。

食後高血糖では、動脈硬化などの合併症が発症する危険性が上昇します。

食後高血糖

通常、食後2〜3時間の血糖値は110mg/dl未満です。

しかし、食後2時間を過ぎても血糖値が140mg/dl以上の場合、食後高血糖と診断されます。

食後高血糖は、空腹時血糖値やヘモグロビンa1cの値では分からず、75g経口ブドウ糖負荷試験という検査が必要になります。

75g経口ブドウ糖負荷試験

75g経口ブドウ糖負荷試験とは、10時間以上の絶食後、75gのブドウ糖を含む液体を飲んで血糖値の推移を測定することです。

75gのブドウ糖液を飲んでから30分後、60分後、120分後に採血をして値を評価します。

食後高血糖は活性酸素を発生させ、血管の内壁を傷つけます。

その傷の修復のために血管壁が肥厚し、硬くなる状態が、動脈硬化です。

動脈硬化が原因で発症する病気

動脈硬化が進行すると血管が血流に耐えきれず、破裂したり、狭くなった血管に血栓ができて詰まったりします。

動脈硬化が原因で発症する主な病気を、以下にまとめました。

病気病態
虚血性心疾患・動脈硬化や血栓で心臓の血管が狭くなり、心臓に酸素や栄養がいきわたらず、運動やストレスで前胸部などに痛みや圧迫感が生じる状態
大動脈弁狭窄症・心臓の弁のひとつが開かず、心臓から全身に血液が正常に送り出せなくなる状態
・進行すると、狭心症や心不全となる
脳卒中・血栓による脳血管の閉塞や破れなど脳血管に障害が起きている状態
・脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類に分けられる
血管性認知症・脳卒中によって脳内の神経組織が破壊され、それが要因となって現れる認知症
うつ病・気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの精神的な症状に加え、不眠や倦怠感などの身体症状が現れる状態
閉塞性動脈硬化症・手足の動脈の狭窄もしくは閉塞によって、栄養や酸素が十分に送り届かず、手先や足先の冷感や筋肉の痛みが出現する状態
大動脈瘤・心臓から全身に血液を送る大動脈の一部がコブのように拡大し、破裂の恐れを呈する状態
大動脈解離・血管壁の亀裂から血液が流れ込み、本来とは別のもうひとつの血流ができた状態

血管の破裂や詰まった位置が、心臓であれば心臓病、脳であれば脳梗塞や脳出血などの脳卒中が発症します。

脳卒中などの脳血管疾患は、血管性認知症へと移行していきます。

そして、うつ病の発症要因は、心理的要因だけではありません。

近年、うつ病は動脈硬化などの生活習慣病と関連しているといった研究が多く発表されています。

このように、血液中のグルコース濃度が高い状態が続くと、動脈硬化が進行し、さまざま病気を引き起こすリスクが高くなります。

そのため、健康診断や人間ドックなどで血液中のグルコース濃度である血糖値が高いと指摘された場合は、生活習慣の見直しが必要です。

血液中のグルコース濃度を下げるために見直さなくてはいけない生活習慣

血液中のグルコース濃度を下げるために見直さなくてはいけない生活習慣

血糖値の高い状態が長く続くと糖尿病を発症し、動脈硬化が引き起こされます。

動脈硬化の進行は、脳卒中や心臓疾患など命に関わる重篤な病気を起こすリスクが高くなるため、大変危険です。

血糖値を改善し、糖尿病や動脈硬化を予防するためには、生活習慣を見直さなくてはいけません。

生活習慣とは、日常生活で繰り返し行われている行動や習慣のことです。

具体的には食事や運動、睡眠などで、趣味や嗜好品も含まれます。

規則正しい生活習慣は血糖値の改善や動脈硬化の予防だけでなく、健康寿命を伸ばし、生活の質を高めます。

自身の生活習慣が糖尿病や動脈硬化に影響していないか、比較してみましょう。

糖尿病や動脈硬化の原因となる主な生活習慣とその改善策を、食生活と運動、その他に分類しまとめました。

食生活

原因となる生活習慣改善策
・早食い
・満腹になるまで食べる
・朝食を抜く
・コレステロールの多い食事を好む
・炭水化物が多い
・野菜をあまり食べない
・寝る2時間以内に食事をする
・インスタント食品や外食が多い
・1日3食とる
・主食、主菜、副菜を意識した食事
・よく噛む
・腹八分目を意識する
・寝る2〜3時間前までに食事を済ませる
・野菜から先に食べる
・色々な食材を組み合わせて食べる
・海藻やきのこなどの食物繊維が多く含まれている食品を意識して摂る

糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病予防の基本は、食事療法です。

厳しい食事制限ではなく、1日3食を基本にし、バランスのとれた食事を心がけます。

外食やコンビニで食事を済ませる場合でも、主食と主菜、そして副菜を意識するようにメニューを選んでください。

さらに睡眠前に食事をすると、体内の温度が下がらずに眠りが浅くなったり、エネルギーが消費されずに体脂肪として蓄積されたりします。

糖質や脂質は脂肪として体内に蓄積される傾向にあり、消化吸収にも時間を要し胃腸に負担がかかります。

特に夜間は活動量が少ないため、糖質や脂質が少ない食事を摂るようにしましょう。

運動

血液中のグルコース濃度を下げるために見直さなくてはいけない生活習慣
原因となる生活習慣改善策
・座っている時間が長い
・徒歩や自転車を使用せず、車を利用している
・階段を使用せず、エレベーターやエスカレーターを利用する
・運動習慣がない
・毎日30分以上の有酸素運動をする
・通勤を徒歩に変える
・階段を利用する

血糖値の改善や動脈硬化予防には、食事療法と併用して運動療法を継続すると、より効果的です。

運動不足は、以下の原因となります。

  • 肥満
  • 血圧上昇
  • 中性脂肪の上昇
  • HDL-C低下

HDL-Cとは、動脈壁や末梢細胞に蓄積するコレステロールを回収し、肝臓へ逆転送するなどの抗動脈硬化作用のある善玉コレステロールのことです。 

動脈硬化症疾患予防ガイドライン2012では、HDL-Cは40mg/dl以上を推奨しています。

運動療法はHDL-Cを増大させ、血液中の脂質値に好影響を及ぼします。

他にも運動は、インスリン抵抗性の改善にもつながり、糖尿病や動脈硬化の予防に大変有益です。

有酸素運動とは、酸素を使い体内の糖質や脂質をエネルギー源とする筋肉への負荷が比較的軽い運動のことで、以下のような種類があります。

  • エアロビクスダンス
  • エアロバイク
  • ステップエクササイズ
  • 水泳
  • アクアウォーキング
  • ジョギング
  • ウォーキング
  • サイクリング
  • ハイキング
  • クロスカントリースキー

これらの運動を、ややきついと感じる程度の強度で行ってください。

慣れない運動を初めて行う場合は、筋肉や骨を痛める可能性があります。

すでに動脈硬化がある場合は、激しい運動によって心筋梗塞を起こす危険もあるため、運動の種類や強度については主治医へ相談しましょう。

運動に慣れてきたら、レジスタンス運動も取り入れます。

レジスタンス運動とは、スクワットや腕立て伏せなどの筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動のことです。

レジスタンス運動による筋肉量の増加は、糖の処理能力をさらに改善させます。

自分の好みに合った運動を楽しみながら行えるようになると、継続できるようになります。

運動する時間がとれない人は、通勤を徒歩に変える、階段を意識して利用するなど日常生活の中から活動量を増やしてみてください。

その他

原因となる生活習慣改善策
・ジュースをよく飲む
・おやつなどの間食を多く摂る
・お酒をよく飲む
・喫煙
・睡眠不足
・ストレスが多い
・適度な飲酒
・禁煙
・十分な睡眠をとり心身を休める
・自分に合ったストレス解消方法を見つける

適度なアルコール摂取は、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを増加させ動脈硬化を予防します。

しかし、過度のアルコール摂取は肥満や高血圧を引き起こし、動脈硬化を進行させます。

厚生労働省は適度な飲酒量に関して、1日平均純アルコールで約20g程度と示しており、主な酒類の換算の目安は以下の通りです。

お酒の種類ビール
中瓶1本
500ml
清酒
1合180ml
ウイスキー、
ブランデーダブル60ml
焼酎35度
1合180ml
ワイン
1杯
アルコール度数5%15%43%35%12%
純アルコール量20g22g20g50g12g

目安表を利用し、アルコールの過剰摂取を予防してください。

過剰なストレスや慢性的なストレスでは交感神経が優位な状態が続き、自律神経のバランスが崩れます。

自律神経とは、体温や血液循環、消化や代謝など身体機能を調整している神経のことです。

自律神経の乱れは血圧を上昇させるため、血管や心臓への負担が増大し、血管壁が傷つき動脈硬化を引き起こします。

自身に合ったストレスの緩和方法を見つけ、ストレスとうまく付き合いながら生活できるようにしましょう。

効果的なストレス解消方法を、以下にまとめました。

  • 睡眠を7〜8時間とる
  • 散歩やストレッチなどの適度な運動
  • 友人や家族と会話する
  • 自分の思いをノートなどに書き出す
  • 音楽を聞いたりや景色を見たりなどの五感を使った体験をする
  • 映画鑑賞や読書で泣いたり笑ったりする
  • 創作や作業を取り入れる
  • 瞑想

とくに睡眠は、心身をリセットする大切な時間です。

ストレスや疲労感を感じた場合は、いつもより早めの就寝を心がけてください。

反対に、心身に悪影響をもたらすストレス解消方法は以下の通りです。

  • 過度の飲酒
  • カフェインの過剰摂取
  • 暴飲暴食

過度の飲酒やカフェインの過剰摂取は、睡眠障害を引き起こします。

暴飲暴食も胃腸障害をきたし、睡眠を妨げる可能性があります。

自分に合ったストレスの解消法がうまく見つけられない場合は、心療内科などの専門家へ相談しましょう。

生活習慣を見直し血糖値や動脈硬化の悪化を防ぎ健康寿命を伸ばそう

生活習慣を見直し血糖値や動脈硬化の悪化を防ぎ健康寿命を伸ばそう

血液中のグルコース濃度である血糖値が高い状態は、動脈硬化を引き起こし、重篤な合併症を招く恐れがあります。

血糖値や動脈硬化は、数日で改善するものではなく、日々の生活習慣の見直しが重要です。

規則正しい生活習慣は血糖値の改善や動脈硬化の予防はもちろん、健康寿命を伸ばし、生活の質を高めてくれます。

今までの生活習慣の全てを一気に変えようとするのは、容易ではありません。

医療機関などの専門的なサポートを受けながら、できる範囲で少しずつ自分に合った方法を取り入れ、規則正しい生活習慣を継続させましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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