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足の指が痛いのは糖尿病が原因の可能性がある!合併症の症状と予防法を解説

足が痛いのは糖尿病が原因!?合併症の症状と予防法

現在糖尿病の治療中で足の指が痛む人は、病気が関係している可能性があります。

糖尿病の合併症の原因は、体中の血管や神経に損傷を起こし、さまざまな症状を引き起こすためです。

今回は、糖尿病が足の症状を引き起こす原因と合併症を予防するための方法について解説します。

この記事でわかること
  • 足に痛みが出るのは糖尿病の合併症が原因の可能性がある
  • 合併症の予防や進行を遅らせるには血糖コントロールが必要
  • 糖尿病患者はフットケアが大切である

足の痛みを感じている人、糖尿病の合併症の症状や予防について知りたい人はぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病で高血糖の状態が続くと合併症により足に症状が出る場合がある

高血糖の状態が続くと足に症状が出る場合も

糖尿病で高血糖の状態が長く続くと、血行不良や神経の損傷が原因で足に症状が出る場合があります。

足は、神経の起点である脊髄から一番離れているためです。

糖尿病患者が足に感じる自覚症状には、以下のような症状があります。

  • 足にジンジンとした痛みが出る
  • 足の裏がピリピリするように感じる
  • 熱を帯びた焼けつくような痛みが出る
  • 足先や手先など体の末端に症状を強く感じる

病院では、問診と専用の道具を用いた検査により糖尿病との関連性を調べます。

糖尿病で足に痛みが出る原因は、大きく分けて以下の2つが考えられます。

  • 糖尿病神経障害
  • 糖尿病足病変

上記はどちらも糖尿病の合併症で、血管や神経の損傷が原因で発症します。

ここからは糖尿病神経障害と糖尿病足病変について、それぞれ詳しく解説します。

糖尿病神経障害が足に痛みやしびれを引き起こす可能性がある

糖尿病神経障害は糖尿病の三大合併症の一つで、足に痛みやしびれを引き起こす可能性があります。

糖尿病の三大合併症には、以下の3つが挙げられます。

  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病神経障害

これらは高血糖によって細い血管が損傷して発症する合併症で、細小血管症とも呼ばれます。

糖尿病神経障害は比較的早期に症状があらわれ、三大合併症の中で最も発症する割合が高くなっています。

参照元:e-ヘルスネット – 厚生労働省

糖尿病を発症してから約10年間で神経障害が出る確率は、およそ30〜40%程度です。

国内で糖尿病神経障害を発症している人は、数百万人と推定されています。

参照元:糖尿病性神経障害の診断 – 公益社団法人 愛知県医師会

糖尿病神経障害による障害が発生するのは、主に体性神経と自律神経です。

体性神経とは体の動きに関わる神経のことで、自分の意思でコントロールができます。

一方、自律神経は血圧や呼吸数など体の機能を制御するために無意識に働く神経です。

糖尿病神経障害は、体のどの神経に障害が起こるかによって症状が異なります。

体性神経に障害が出た場合は足から症状が出る人が多く、しびれや痛みなどの症状があらわれるのが特徴です。

自律神経に障害が出た場合は立ちくらみや便秘、下痢などの症状が出ます。

糖尿病を患っている人が足にしびれや痛みを感じる場合は、体性神経に障害が起こっている可能性があります。

糖尿病患者に起こる足のトラブルをまとめて糖尿病足病変と呼ぶ

糖尿病の神経障害や血行障害は足の症状を引き起こし、糖尿病患者に起こる足のトラブルをまとめて糖尿病足病変と呼びます。

糖尿病足病変の具体的な症状には、以下が挙げられます。

  • 足の変形
  • タコ
  • うおのめ
  • 水虫
  • 足の痛みや違和感など

神経障害は筋肉の萎縮をもたらし、足の変形につながります。

足の変形は特定の場所に力が加わるため、タコやうおのめができる原因の一つです。

神経障害により足の感覚も鈍くなり、タコやうおのめができても気付かない場合があります。

血糖値が高くなると細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まり、小さな傷や靴擦れから水虫などの感染症にかかるリスクが高まります。

足は体の中で心臓から遠く、血行障害の起こる確率が高い部位です。

血行が悪いと酸素や血液が足に行き届かず、傷の治りも遅くなります。

足に動脈硬化が起こると血管が細くなり、末梢動脈疾患と呼ばれる病気を引き起こします。

動脈硬化とは、全身に血液を運ぶための動脈が硬くなった状態のことです。

末梢動脈疾患の初期症状には、歩行後のふくらはぎや太ももの痛みが挙げられます。

症状が悪化すると、安静時にも足に痛みが出るようになります。

糖尿病の合併症は数年〜数十年かけてゆっくり出現するため、症状が出た時にはかなり進行している場合があるでしょう。

参照元:糖尿病の慢性合併症 – 糖尿病情報センター

合併症の予防や進行を遅らせるためには血糖コントロールが必要

合併症の予防には血糖コントロールが必要

合併症は一度発症すると完治が難しいため、予防や進行を遅らせるためには血糖コントロールが必要となります。

血糖コントロールとは高血糖を改善し、血糖値をできる限り正常の数値に近づけることです。

適切な血糖コントロールは合併症を予防し、合併症があっても進行を遅らせる効果があります。

血糖コントロールをする上で参考になるのが、血糖値とHbA1cの数値です。

血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を表しています。

参照元:e-ヘルスネット – 厚生労働省

HbA1cとは血液中にある糖分の状態を評価する指標のことで、過去2ヶ月程度の血糖値の状態がわかります。

日本糖尿病学会が発表している合併症を予防するための目標値は、以下のとおりです。

指標目標値
血糖値空腹時130mg/d未満l、食後2時間180mg/dl未満
HbA1c7.0%未満

参照元:血糖コントロールの目標 – 糖尿病情報センター

上記の数値はあくまで目安であり、患者によって体の状態が異なります。

そのため、血糖値やHbA1cの目標値は医師と相談しながら設定すると良いでしょう。

血糖コントロールの基本となるのは、以下3つの治療法です。

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

ここからは、それぞれの治療法について詳しく解説していきます。

食事療法は正しい食習慣により血糖値の安定を目指す

食事療法は正しい食習慣によりエネルギーの過剰摂取を防ぎ、血糖値の安定を目指します。

インスリンを分泌するすい臓の負担を軽減し、機能を回復させるのが目的です。

具体的には一日に摂取するエネルギーの目安を設定し、食事内容に気を配ります。

糖尿病だからといって、特別な食事を準備する必要はありません。

食事療法のポイントは、以下の3つです。

  • 自分にとって適切なエネルギー量を知る
  • バランスの取れた食事をする
  • 食べるタイミングや順番を工夫する

人によって年齢や一日の活動量が違うため、適切なエネルギー量も異なります。

食事療法では自分にとって適切なエネルギー量を知り、食べ過ぎないのが大切です。

一日の適切なエネルギーの目安は、以下の式で計算できます。
適切なエネルギー量(kcal)=目標体重(kg)※1×エネルギー係数※2

目標体重は、以下の計算式で算出します。

※1 目標体重の計算式

年齢目標体重の計算式
65歳未満身長(m)×身長(m)×22
65歳以上身長(m)×身長(m)×22〜25

エネルギー係数は一日の活動量によって数値に幅があり、以下が目安となります。

※2 エネルギー係数

活動量数値
軽い労作(大部分が座った状態の静的活動)25〜30
普通の労作(通勤や家事、軽い運動程度)30〜35
重い労作(肉体労働や活発な運動習慣)35〜

参照元:糖尿病の食事のはなし – 糖尿病情報センター

他にも日本医師会のホームページで性別や年齢、運動量などを入力すると自動で摂取カロリーの目安が計算できます。

参照元:健康の森 – 日本医師会

バランスの取れた食事は、食品を組み合わせてさまざまな栄養が摂れるように心がけます。

以下は、バランスの取れた献立の具体例です。

  • 主食
  • タンパク質を含む主菜
  • 野菜を含む副菜
  • 汁物

食事では、三大栄養素である炭水化物とタンパク質、脂質を摂取するのが大切です。

食事療法の献立を考える際は、食品を栄養素によって6つに分類した食品分類表が役立ちます。

血糖値は、食べるタイミングや順番によっても影響を受けます。
血糖値の急上昇を防ぐには、1日3食を規則正しく食べるようにしましょう。

食べる順番は野菜、タンパク質、炭水化物の順が血糖値の上昇を抑えるのに効果的です。

野菜に含まれる食物繊維には糖質の吸収を遅くする働きがあり、食事の最初に食べると血糖値の上昇がおだやかになります。

運動療法は継続的な運動により高血糖や肥満を改善できる

継続的な運動により高血糖や肥満を改善

運動療法は、継続的な運動により体内の糖質やエネルギーが消費され、高血糖や肥満を改善できます。

糖尿病患者の中にはインスリンの効きが悪い人がいますが、運動にはインスリンの働きを良くする効果もあります。

運動療法の具体的な内容は、大きく分けて有酸素運動とレジスタンス運動の2種類です。

有酸素運動は長時間継続できる全身運動で、ウォーキングやジョギングなどが挙げられます。

一方、レジスタンス運動とは筋力に負荷をかける動きを繰り返す運動のことです。

毎日ではなく、1セット10〜15回程度の筋肉トレーニングを週に2、3回行うのが推奨されています。
運動療法は継続によって効果が高まるため、無理なく続けられる運動を選びましょう。

運動習慣がない人には、負担が少なく器具も不要なウォーキングがおすすめです。

日常生活の中でも通勤で1駅分歩く、なるべく階段を使うなど少しの心がけで運動量を増やせます。

足に痛みがある人は運動によって悪化してしまう場合もあるため、医師と相談しながら取り組むのが大切です。

食事療法や運動療法で効果が出ない場合は薬物療法を行う

血糖コントロールは最初に食事療法と運動療法を中心に進められますが、効果が出ない場合は薬物療法で血糖値の改善を図ります。

糖尿病の薬物療法は薬の効果によって血糖値を下げ、合併症を予防する目的があります。

具体的な薬の種類は、大きく分けて注射薬と経口薬です。

注射薬は、処方された製剤を自分で注射します。

製剤の種類は、GLP-1受容体作動薬とインスリン注射薬の2種類があります。

GLP-1受容体作動薬はインスリンの分泌を促し、血糖値を下げるのに効果的です。

一方、インスリン注射薬はインスリンそのものを補充する働きがあります。

インスリン注射薬を使用すると低血糖が起こる可能性があるため、対策が必要です。

経口薬は、大きく分けて以下の3種類があります。

  • インスリンの分泌を促す薬
  • インスリンの効果を高める薬
  • 糖の吸収や排泄を促す薬

参照元:血糖値を下げる飲み薬 – 糖尿病情報センター

上記の作用を持つ薬を複数組み合わせた配合薬もあり、患者の症状に合わせて薬が処方されます。

血糖コントロールを行わずに血糖値が高いまま放置すると、神経障害や血流障害を引き起こし、さらに足にもトラブルが起こる恐れがあります。

糖尿病患者は足の異変に気付くのが遅れる場合があるため、血糖コントロールに加えてフットケアも重要です。

糖尿病患者の足を守るためには日頃からのフットケアが大切

糖尿病患者の足を守るためには日頃からのフットケアが大切

糖尿病患者は健常者に比べて足に症状が出るリスクが高く、足を守るためには日頃のフットケアが大切になります。

神経障害によって足の感覚が鈍くなっている場合があり、手当てが遅れる恐れがあるからです。

自覚症状が特になくても、日頃のフットケアにより足の症状の悪化を防げます。

フットケアの具体例は、以下の6つです。

  • 毎日足を観察する
  • 足を清潔に保つ
  • 爪を切り過ぎないようにする
  • 靴下を履いて足を保護する
  • 自分の足に合った靴を履く
  • やけどをしないようにする

ここでは足病変を防ぐためのフットケアについて、具体的に解説します。

毎日の入浴時や爪を切る時に観察して足の傷や変形がないか確認する

足の異変に早く気付くためには、毎日の入浴時や爪を切る時に足を観察し、傷や変形などがないかを確認します。

糖尿病患者は傷や感染症に自覚症状を感じず、症状が悪化してしまう恐れがあります。

足の神経障害や血行障害は、潰瘍や壊疽を引き起こす原因の一つです。

潰瘍は皮膚の一部が深く傷つき、えぐれた状態を表します。

壊疽は潰瘍がさらに悪化して皮膚や皮下組織が壊死し、黒色や暗褐色に変色した状態です。

足の潰瘍や壊疽を防ぐためには早期の発見と予防が重要なため、こまめに足を観察する習慣をつけましょう。

タコや水虫などを見つけた場合も、自己判断せずに病院を受診するのが大切です。

入浴時は足の裏や指の間も丁寧に洗って清潔に保つようにする

感染症を防ぐため、入浴時は足の裏や指の間も丁寧に洗って清潔に保つようにします。

高血糖の状態が続くと体の抵抗力が落ち、感染症にかかる確率が高まります。

菌が付着してから水虫を発症するまでは24時間程度かかるため、毎日の入浴で足を洗うと水虫予防に効果的です。

足を洗う時は石鹸をよく泡立て、やわらかいタオルでやさしく水気を拭き取ります。
皮膚をこすると傷ができる場合があるため、タオルで上から抑えるように拭きましょう。

皮膚が乾燥する人は、入浴後に保湿クリームを塗ります。

ただし、足の指と指の間に保湿クリームを塗ると湿って水虫の原因となる場合があります。

足の爪は角を落とさずにまっすぐ切り短くなりすぎないようにする

足の爪は角を落とさずに深爪を避けること

足の爪は角を落とさずにまっすぐ切り、短くなりすぎないようにして深爪を避けるのが大切です。

爪のまわりには神経や毛細血管が集まっており、深爪は痛みや化膿を引き起こします。

爪の角まで深く切り落としてしまうと、爪が皮膚に陥入して傷ができてしまう恐れがあります。

特に巻き爪の人は爪を長めに残し、角を落とさないように切るのがポイントです。
反対に足の爪が長すぎてもケガやトラブルを招くため、適度な爪の長さを保ちましょう。

爪が硬くてうまく切れない場合は、ぬるま湯にしばらく足をつけておくと爪がやわらかくなります。

最後に爪やすりで整えると表面がなめらかになり、ひっかかりを防げます。

なるべく素足を避け靴下で足を保護してケガや水虫から守る

足をケガや水虫から守るためには、なるべく素足を避け、靴下を履いて保護します。

靴下は衝撃から足を守り、知らない間に水虫に感染するのを防ぐ効果があります。

きつすぎる靴下や重ね履きは、血行を妨げる可能性があるので避けましょう。
靴下の素材は吸湿性の高い、シルクや綿などの天然繊維がおすすめです。

5本指ソックスも指と指の間の汗を吸収するため、水虫を予防する効果もあります。

アクリルやポリエステルなどの合成繊維は吸湿性が低く、足が蒸れる原因になります。

糖尿病患者は痛みや傷に気付きにくい場合があるため、傷や水虫の予防が大切です。

サイズにゆとりがあり自分の足の形に合った靴を選ぶ

合わない靴は足のトラブルにつながるため、サイズにゆとりがあり、自分の足の形に合った靴を選びます。

靴のサイズは、つま先に1cm程度余裕のある大きさが目安です。

小さい靴を無理やり履くと、靴の中で足が圧迫され、血行が悪くなってしまう恐れがあります。

人によって足の形や幅が違うため、サイズが同じでも靴のデザインによって履き心地が異なります。
クッション性があり、安定して歩ける靴を選びましょう。

特に運動する時には、紐で締め具合を調節できるスニーカーで足首を固定します。

神経障害がある人は、履く前に靴の中に小石や砂などが入っていないかを確認するのも大切です。

靴の中の異物は、思わぬケガや感染症につながる恐れがあります。

こたつや湯たんぽなど高温でない物でも低温やけどに気をつけて使う

糖尿病患者は暑さに鈍感なので低温やけどに注意

糖尿病患者は熱さに鈍感になっている可能性があり、こたつや湯たんぽなども低温やけどに気を付けて使う必要があります。

やけどをする可能性がある物には、電気毛布や電気ストーブなども挙げられます。

直接熱い物が触れるのを避けるためにも、靴下を履いて足を保護するのが大切です。

就寝時に暖房器具を使う場合は付けっぱなしにするのではなく、寝る前に切るかタイマー機能を利用します。

暖房器具を使う冬だけでなく、夏場に素足でプールや砂浜を歩く時も、やけどの危険性があります。

今回紹介したフットケアを行った上で、傷やタコなど足に症状が出た場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。

糖尿病患者や血糖値が高い人の足の痛みは合併症の可能性がある

高血糖の状態が続くと足にしびれや痛みが出る場合があり、糖尿病患者や血糖値が高い人の足の痛みは糖尿病の合併症の可能性があります。

糖尿病の合併症である神経障害や足病変は、足の指や裏に痛みやしびれを引き起こします。

合併症を予防し、進行を遅らせるためには血糖コントロールが大切です。

血糖コントロールは食事療法と運動療法、薬物療法により血糖値の改善を目指します。

糖尿病患者は足の症状が出るリスクが高くなるため、日頃のフットケアも必要です。

フットケアにより足の異変に早い段階で気付き、知らないうちに悪化するのを避けられます。

足の指が痛い人や足に症状がある人は、自分で判断せずに医療機関に相談してみましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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