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HbA1cの目標値は年齢や健康状態から設定される?血液検査の基準も確認

HbA1cの目標値は年齢や健康状態から設定される?血液検査の基準も確認

HbA1cは血糖値の状態を判断する際に使われる数値であり、パーセントで表記されています。

血液検査の結果で目にする機会が多いですが、糖尿病の治療や対策においてはHbA1cの目標値を設定する場合があります。

この記事では、治療や対策で設定されるHbA1cの目標値についてまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病の可能性が疑われるHbA1cの数値
  • HbA1cを用いた糖尿病の判断基準
  • HbA1cの正常化や予防になる目標値

血液検査で使用されるHbA1cの基準値も記載しているため、糖尿病の検査を受ける人も参考にしてください。

目次

HbA1cはヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示している

ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、血液中のヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示した数値です。

食事で摂取した糖分は血液中でブドウ糖に変換されて、以下のように利用されます。

  • すい臓から分泌されるインスリンが細胞の受容体に結合して、血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用する
  • 余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成される

しかし、過剰な糖分摂取やインスリンに異常が発生した場合、血液中のブドウ糖は消費されません。

消費できなかったブドウ糖はヘモグロビンと結合して、糖化ヘモグロビンになります。

HbA1cは糖化ヘモグロビンを全体のヘモグロビン量で割った場合、数値化できます。

HbA1cは血糖値との関係性から糖尿病の判定において有用な数値である

HbA1cと血糖値は密接な関係にあり、血糖値の高低によって、以下のようにHbA1cの数値にも影響が出ます。

  • 血糖値が低い場合:ブドウ糖の量が少ないため、HbA1cは低くなる
  • 血糖値が高い場合:ブドウ糖の量が多いため、HbA1cは高くなる

HbA1cは赤血球の寿命とされる120日間、結合したブドウ糖の数値が変動しません。

そのため、血液検査で判明したHbA1cの数値から過去2ヶ月間における血糖値の状態を把握できます。

糖尿病は高血糖が続いている状態であるため、血糖値は糖尿病の判定で有効な判断材料です。

しかし、血糖値は食事や運動によって数値が変動します。

HbA1cは血糖値のみで判断できない情報を補える点で、有用な数値となっています。

HbA1cと血糖値の両方が基準値を超えた場合に糖尿病と判定される

血液検査を行う場合、血糖値は基本的に空腹時の数値が参照されます。

HbA1cと血糖値の判定と基準値は、以下のとおりです。

判定HbA1c空腹時血糖値
正常〜5.5%70~99mg/dL
正常高値血糖5.6~5.9%100~109mg/dL
予備群(境界型)6.0〜6.4%110~125mg/dL
糖尿病型6.5%~126mg/dL~

糖尿病型は当てはまった数や症状によって、糖尿病の確定、もしくは再検査を判断されます。

  • HbA1cと血糖値の両方が糖尿病型:糖尿病
  • 空腹時血糖値のみ糖尿病型で、糖尿病の典型的な症状、もしくは糖尿病性網膜症の症状が明確にある場合:糖尿病
  • 空腹時血糖のみ糖尿病型で、糖尿病や糖尿病性網膜症の症状がない場合:再検査
  • HbA1cのみ糖尿病型:再検査

正常高値血糖や糖尿病予備群に該当する場合は、血糖コントロールを指示される可能性があります。

HbA1cを下げるには、普段からの改善対策が必要となります。
特に食事面での見直しを考えられている場合は、こちらのページも参考にしてください。

再検査でもHbA1cと空腹時血糖の数値が判断基準として利用される

HbA1cと血糖値のどちらかが糖尿病型になったとき、1ヶ月以内を目安に再検査が行われます。

再検査の判定は糖尿病か糖尿病の疑いのどちらかになり、以下のような基準になります。

再検査の判定初回検査で空腹時血糖値のみ糖尿病型初回検査でHbA1cのみ糖尿病型
糖尿病・どちらも糖尿病型
・空腹時血糖値のみ糖尿病型
・HbA1cのみ糖尿病型
・どちらも糖尿病型
・空腹時血糖値のみ糖尿病型
糖尿病の疑い・どちらも糖尿病型ではない・どちらも糖尿病型ではない
・HbA1cのみ糖尿病型

再検査で糖尿病の疑いと判定された場合、3〜6ヶ月以内に再々検査を行って経過を見ていきます。

血糖コントロールの目標によってHbA1cの抑えるべき数値が変わる

血糖コントロールの目標によってHbA1cの抑えるべき数値が変わる

HbA1cの目標値は、血糖コントロールの目標によって、抑えるべき数値が変わってきます。

日本糖尿病学会が発行する糖尿病治療ガイドにおけるHbA1cの目標値は、以下のとおりです。

血糖コントロールの目標HbA1cの目標値目標の注釈
血糖正常化を目指す際の目標6.0未満食事療法や運動療法で達成可能な状態、または薬物療法中でも低血糖などの副作用がなく達成可能な状態
合併症予防のための目標7.0未満血糖値の数値としては、空腹時血糖130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満が目安
治療強化が困難な際の目標8.0未満低血糖などの副作用、その他の理由で治療強化が困難な状態

上記は特定の健康状態にあたる65歳以上の高齢者、及び妊婦を除いた成人に対する目標値になります。

血糖コントロールの目標については、患者ごとの年齢や臓器障害、サポート耐性などを考慮して設定されます。

実際に血糖コントロールを実行する際は、健康状態や治療歴などを伝えて、医師の指示に従ってHbA1cの数値を下げましょう。

血液検査ではHbA1cが5.9を超えると糖尿病予備群になるため、正常化を目指す際は6.0未満が目標になります。

血糖コントロールには糖の吸収を抑えることが大切です。
最近の研究で、ポリフェノールの一種に食事からの糖吸収を抑える効果があることが明らかになっています。
詳しくは「糖質の吸収を抑え、食後血糖値をコントロールする成分」の記事をご覧ください。

高齢者糖尿病の場合は患者の健康状態や薬剤使用の有無で目標値が変わる

65歳以上の高齢者の場合、以下の特徴や健康状態にあたると、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が適用されます。

  • カテゴリーⅠ:認知機能正常かつADL自立
  • カテゴリーⅡ:軽度認知障害~軽度認知症、または手段的ADL低下、基本的ADL自立
  • カテゴリーⅢ:中等度以上の認知症、または基本的ADL低下、または多くの併存疾患や機能障害

上記のカテゴリーと重症血糖が危惧される薬剤の使用の有無によって、HbA1cの目標値は以下のように設定されます。

重症低血糖が危惧される薬剤の使用なし重症低血糖が危惧される薬剤の使用あり
カテゴリーⅠ7.0%未満・65歳以上75歳未満:7.5%未満(下限6.5%)
・75歳以上:8.0%未満(下限7.0%)
カテゴリーⅡ7.0%未満8.0%未満(下限7.0%)
カテゴリーⅢ8.0%未満8.5%未満(下限7.5%)

重症低血糖は自分で低血糖に気付くのが難しい状態であり、昏睡やけいれんなどの他人の助けが必要な重い症状が発生します。

血糖コントロール目標を設定する際、薬剤の投与を受けている人は、医師に共有しておきましょう。

HbA1cの目標値は年齢や健康状態に合わせて適切な数値が設定される

HbA1cはヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示しており、血糖値が高くなるほどHbA1cの数値も高くなります。

さらに、赤血球の寿命である120日間は数値が変動しないため、過去2ヶ月間の血糖を把握する際にも役立つ判断材料です。

血液検査では血糖値とHbA1cは同時に検出されて、糖尿病型に当てはまった数と症状から糖尿病か否かを判定できます。

HbA1cの目標値は、検査結果や健康状態から血糖コントロールの目標に合わせて設定されます。

医師の判断から目標が設定されるため、年齢や症状を共有しながら、自分に適した血糖コントロールを実践していきましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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