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高血圧と糖尿病が互いに切り離せない理由

高血圧と糖尿病が互いに切り離せない理由

高血圧と糖尿病は、日本で主要な生活習慣病として知られています。

高血圧患者における糖尿病の合併率は非高血圧患者と比べると2〜3倍、糖尿病患者における高血圧の合併率は非糖尿病患者と比べると2倍です。

参照元:高血圧治療ガイドライン2019 – 日本高血圧学会

多くの人が高血圧と糖尿病の合併症に悩まされていますが、その危険性は詳しく知られていません。

高血圧や糖尿病の原因や治療法を正しく理解すると同時に、合併症の予後まで知る必要があります。

この記事でわかること
  • 高血圧と糖尿病は合併する可能性が高い
  • 高血圧と糖尿病の合併症は予後が悪い
  • 認知症やうつ病のリスクも高まる
  • 隠れ糖尿病を放置しない
  • 薬物療法と併せて生活習慣の見直しが必要

高血圧や糖尿病を漠然と怖がるのではなく、自分の現状と照らし合わせて適切に対策を取りましょう。

目次

高血圧と糖尿病は合併する可能性が高く互いに影響し合う関係にある

高血圧と糖尿病は合併する可能性が高く互いに影響し合う関係にある

国立国際医療研究センターと株式会社教育ソフトウェアが共同開発した、糖尿病リスク予測ツールによると、糖尿病リスクを予測するための項目として以下のものが挙げられています。

  • 糖尿病の既往歴
  • 性別
  • 年齢
  • 身長
  • 体重
  • BMI
  • 腹囲
  • 喫煙の有無
  • 最高血圧
  • 最低血圧
  • 高血圧の薬を服用しているか
  • 脂質異常の薬を服用しているか
  • 余暇に運動をしているか
  • 砂糖入り飲料を常飲しているか

参照元:糖尿病リスク予測ツール第3版 – 国立国際医療研究センター

対象は糖尿病の診断経験がない30〜64歳ですが、BMIや喫煙の有無などに加えて、血圧が糖尿病リスクに影響しているとわかります。

高血圧と糖尿病の関係を知るためにも、高血圧と糖尿病それぞれについて見てみましょう。

高血圧とは

日本高血圧学会によると、診察室における最大血圧が140mmHg以上、または最小血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

高血圧には、以下のように二次性高血圧と本態性高血圧がありますが、約90%が本態性高血圧です。

高血圧の種類原因
二次性高血圧甲状腺や副腎などの病気
本態性高血圧はっきりとした原因がわからない

本態性高血圧の原因としては、遺伝的な因子に加えて次のようなものが複合的に影響しています。

  • 過剰な塩分摂取
  • 肥満
  • 過剰飲酒
  • 精神的ストレス
  • 自律神経の調節異常
  • 運動不足
  • 野菜や果物などのミネラル不足
  • 喫煙

参照元:高血圧 – 国立循環器病研究センター

食事や運動など、普段の生活習慣が高血圧の原因となっているのがわかります。

高血圧は自覚症状がほとんどなく、知らない間に体に負担がかかってしまうのも特徴です。

糖尿病とは

糖尿病は、インスリンというホルモンが十分に働かず、血液中のブドウ糖量である血糖値が上がってしまう病気です。

インスリンは血液中のブドウ糖を一定にコントロールする働きがありますが、インスリンの分泌が低下したりインスリンが効きにくくなったりすると血糖値が上がってしまいます。

糖尿病の判別には、食事を摂らずに測った空腹時血糖値や、血液中のヘモグロビン量を表すHbA1cの検査を実施します。

糖尿病の基準は、以下のとおりです。

糖尿病の診断基準
正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値~99mg/dl~109mg/dl~125mg/dl126mg/dl~
HbA1c~5.5%~5.9%~6.4%6.5%~

著しく高血糖の状態でない限り症状は出ないため、健康診断などで定期的に血糖値を測定する必要があります。

高血糖の症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • 喉が渇く、水をよく飲む
  • 尿の回数が増える
  • 体重が減る
  • 疲れやすくなる

他にも糖尿病という名前のとおり、尿が甘い匂いになる、尿が泡立つなども特徴です。

糖尿病には、主に1型糖尿病2型糖尿病の2種類があります。

1型糖尿病2型糖尿病
発症年齢若年に多い中高年に多い
症状急激に症状が現れて、糖尿病になる場合が多い症状が現れない場合もあり、気が付かないうちに進行する
体型やせ型の方が多い肥満の方が多いが、やせ型もいる
原因膵臓でインスリンを作るβ細胞という細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、血糖値が高くなる生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりして血糖値が高くなる
治療インスリンの注射食事療法や運動療法、飲み薬、場合によってはインスリンなどの注射を使う

参照元:糖尿病とは – 糖尿病情報センター

2型糖尿病は遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎや運動不足、肥満などの環境的な因子が影響しています。

高血圧と糖尿病に共通する生活習慣は多い

生活習慣が関わる本態性高血圧と2型糖尿病には、多くの共通点があります。

以下のような生活習慣がある人は、高血圧と糖尿病を合併する可能性が高いです。

高血圧と糖尿病 共通する生活習慣
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 肥満
  • 過度なアルコール摂取
  • 早食い、よく噛まない
  • 睡眠不足

運動不足や早食いは肥満につながるなど、それぞれの生活習慣も影響しあっています。

さらにこれらの生活習慣は、メタボリックシンドロームと呼ばれる状態を引き起こすのです。

メタボリックシンドロームは、おへその高さの腹囲が男性85cm以上女性90cm以上かつ血圧と血糖、脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れた状態を呼びます。

参照元:メタボリックシンドロームの診断基準 – 厚生労働省

メタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させ、心臓病脳卒中の原因となります。

高血圧と糖尿病を合併した場合の予後を、データや機序を通して見てみましょう。

高血圧と糖尿病を合併すると互いに影響し合うため予後が悪化する

高血圧と糖尿病を合併すると互いに影響し合うため予後が悪化する

高血圧も糖尿病も罹患者が多く身近な疾患ですが、合併すると予後は悪化します。

令和4年版厚生労働白書によると、リスク要因別の関連死亡者数は以下のとおりです。

順位リスク要因死亡者数
1高血圧196,400人
2喫煙187,200人
3高血糖100,800人
4高LDLコレステロール75,800人
5過体重・肥満51,800人

参照元:リスク要因別の関連死亡者数(2019年) – 厚生労働省

高血圧が死亡リスク要因の1位であり、高血糖は3位と上位を占めています。

高血圧は糖尿病発症のリスクを高め、運動不足や肥満など共通した生活習慣の乱れが両者に影響しますが、糖尿病が高血圧を悪化させる機序についても理解しておきましょう。

糖尿病は高血圧を悪化させる

糖尿病が高血圧を悪化させる機序として、主に以下の3つが挙げられます。

高血圧を悪化させる糖尿病
  1. インスリン抵抗性
  2. 腎機能の低下
  3. 血管のもろさ

それぞれが血圧を上げる要因となっており、実際には複合的に影響しあって高血圧を悪化させています。

インスリン抵抗性とは、糖尿病により血糖値を一定に保つ役割があるインスリンが働きにくくなった状態のことです。

インスリン抵抗性があると血糖値が上がりますが、その血糖値を下げるため、さらに多くのインスリンが分泌され続けます。

血中のインスリン量が多くなりすぎると、交感神経の緊張が高まり、血液中のナトリウムが増えます。

浸透圧のバランスを取るために血液量が増加し、結果として血圧が上がるのです。

さらに、ブドウ糖は細胞内でエネルギーとして使われますが、糖尿病で血管内に多くのブドウ糖がある状態が続くと、血管を傷つけて腎機能を低下させます。

腎機能の低下によりナトリウムがうまく排泄できなくなると、血液中のナトリウムが増え、血液量の増加により血圧が上がるのです。

血管内の過剰なブドウ糖は、活性酸素を発生させて血管壁を傷つけます。

傷ついた箇所にコレステロールが蓄積し、血管が柔軟性を失った結果、脆くなってしまいます。

血管が脆い状態では血流量に合わせて伸縮するのは難しく、血圧が上がりやすくなるのです。

以上のように糖尿病は高血圧を悪化させるため、合併症の予防や改善が必要となります。

他にも高血圧と糖尿病の合併により、様々な病気のリスクが高まります。

糖尿病によりインスリンが働きにくくなることが血圧にも悪影響を与えてしまいます。

ポリフェノールの一種には、インスリンの分泌を促す、インスリンの効き目を高める作用がみつかっています。
詳しくは「インスリンの効き目向上。空腹時と食後血糖値をまとめて下げる」の記事をご覧ください。

高血圧と糖尿病の合併症は認知症発症率が高まる

高血圧と糖尿病 認知症リスク

65歳以上の高齢者のうち、認知症の人数は2012年に15%でしたが、2025年には約20%になると推計されています。

参照元:日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究 – 厚生労働省

認知症になる原因として高血圧や糖尿病が挙げられており、合併症はさらに高リスクです。

中年期に高血圧や糖尿病のある人は、高齢期で認知症になる可能性が高いと証明されています。

特に合併症では動脈硬化のリスクが高く、脳梗塞や脳出血などによる脳血管性認知症になりがちです。

アルツハイマー型認知症の多さも、研究により示されています。

参照元:糖尿病や高血圧で認知症になりやすいでしょうか? – 国立長寿医療研究センター

認知症になると徐々に日常生活に支障が出てくるため、血圧や血糖のコントロールも困難になり重症化する可能性が高くなります。

さらには、薬の副作用や糖尿病による空腹感で、症状が憎悪する場合もあるのです。

反対に、高血圧や糖尿病の数値が安定すると認知症の症状も落ち着くケースもあります。

認知症予防の観点からも、高血圧と糖尿病の合併症を防ぐ生活が重要です。

高血圧や糖尿病は、体だけではなく精神的な病気にも関連しています。

うつ病との関連性も見逃せない

うつ病は気分障害のひとつで、日本では100人に6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります。

参照元:うつ病 – こころの情報サイト

うつ病の発症原因ははっきりとしていませんが、高血圧や糖尿病の患者はうつ病を発症する割合が高く、逆も多く報告されています。

参照元:循環器疾患とこころ糖尿病とこころ – 厚生労働省

病気になってしまったショックや、治療のストレスがうつ病の引き金になると考えられていますが、うつ病になると意欲低下から運動不足になりがちな点も問題です。

運動不足が高血圧や糖尿病の悪化を招き、さらに意欲低下により生活習慣や服薬などの自己管理が困難になります。

うつ病を合併した場合に、高血圧や糖尿病の予後が悪くなるのはそのためです。

高血圧や糖尿病の治療と、うつ病の治療は同時に進められます。

以下のような症状がある場合には、速やかに主治医に相談しましょう。

  • 体重が減った
  • 食欲がない
  • 眠りすぎる
  • 動きや話し方が遅くなった
  • 性欲が減った
  • 悲しい気持ちが消えない
  • 以前は楽しめていた活動に興味を持てない、楽しめない
  • 集中したり、物事を決めたりするのが難しい
  • 自分を大切に思えない
  • 失敗したわけではないのに罪悪感がある
  • 死にたいと思う

こころの不調が体の不調として現れる場合もあるため、何だかおかしいなど普段と違う感覚には意識を向けるのが大事です。

高血圧や糖尿病の診断を受けていない場合でも、検診では発見しづらい隠れ糖尿病と呼ばれる状態もあります。

食後の強い眠気やだるさは隠れ糖尿病の可能性がある

血糖値スパイク(隠れ糖尿病)

ファストフードなど炭水化物が中心の食事をした後に、強い眠気やだるさを感じた経験はないでしょうか。

これは食後の血糖値が急上昇、急降下する血糖値スパイクと呼ばれる状態で、隠れ糖尿病の可能性があります。

血糖値スパイクは食後高血糖とも呼ばれ、糖尿病の指標となる空腹時血糖は正常である場合が多いため、通常の検査で発見しづらいのが特徴です。

通常の食後2時間における血糖値は140mg/dL未満ですが、血糖値スパイクの状態では140mg/dL以上になります。

血糖値スパイクが起こると動脈硬化の危険性が高まり、そのままにしておくと血管のダメージが進み脳卒中心筋梗塞につながります。

参照元:食後高血糖 – e-ヘルスネット

食後に眠くなるのは当たり前だと思わずに、他にも以下のような症状がある場合は血糖値スパイクを疑ってみましょう。

  • 眠気やだるさ
  • 頭痛
  • 意識がもうろうとする

血糖値スパイクを調べるには、病院など専門の医療機関で検査をする必要があります。

血糖値スパイクの原因はインスリン不足や働きの低下

血糖値スパイクが起こるのは、インスリンの分泌が不足していたり働きが低下したりしているためです。

通常、食事をすると炭水化物などが消化吸収によってブドウ糖になり、血中に取り込まれて血糖値は一時的に高くなります。

その後すぐにインスリンが分泌され細胞がブドウ糖を取り込むため、食後2時間程度で血糖値は正常値に戻ります。

しかしインスリンの不足や働きの低下があると、細胞内へブドウ糖の取り込みがうまく行われず、血中に大量のブドウ糖が残ってしまうのです。

高血糖状態を解消するため、さらにインスリンが過剰に分泌されてしまい、今度は血糖値が急降下します。

このような血糖値スパイクの繰り返しは、血管にとって負担です。

本格的な糖尿病に移行させないためにも、血糖値スパイクが起こりづらい生活を心がける必要があります。

血糖値スパイク対策は食事の工夫と運動が効果的

血糖値スパイクを防ぐ

血糖値スパイクが起こるのを防ぐためには、普段の食事内容、方法の見直しや習慣的な運動が効果的です。

特に、以下のような点を意識すると良いでしょう。

  • 食事の際は、よく噛んでゆっくりと食べる
  • 炭水化物や糖質ばかりの食事をしない
  • 野菜や海藻類を取り入れる
  • 朝食を抜かない
  • 食後1~2時間に軽い運動をする

いずれも難しくはないものの、今までの生活習慣を改善しようという強い意志がないとできません。

血糖値スパイクの危険性を認識し、生活改善に取り組む意識が必要です。

すでに高血圧や糖尿病の診断を受けているのであれば、適切な薬物療法に生活改善を組み合わせましょう。

高血圧や糖尿病に対する薬物療法にはさまざまな種類がある

高血圧や糖尿病に対する薬物療法にはさまざまな種類がある

高血圧や糖尿病には有効な薬物療法があり、専門医師による指示の元で服用または使用します。

主な降圧薬は、以下のとおりです。

種類作用
カルシウム拮抗薬血管を広げて血圧を下げる
アンジオテンシン受容体拮抗薬1、アンジオテンシン変換酵素阻害薬2血管を収縮させる体内の物質をブロックして血圧を下げる
利尿薬血管から食塩と水分を抜いて血圧を下げる
β遮断薬心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げる

参照元:一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 – 日本高血圧学会

降圧薬は飲み薬で、高血圧のタイプや他疾患の有無などを考慮して選択されます。

一方糖尿病には飲み薬と注射薬があり、注射薬は大別するとGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤の2種類です。

糖尿病の薬を、以下の表に示します。

飲み薬注射薬服用および使用のタイミング作用
スルホニルウレア薬膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌の促進によって、血糖値を下げる
速効型インスリン分泌促進薬食事の直前に服用内服後すぐから効き始め、短時間で作用してインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる。
DPP-4阻害薬膵臓に作用するインクレチンの分解を抑制し、その作用を助ける。

インクレチンは血糖値が高いときにインスリンの分泌を促すとともに、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制し、血糖を下げる。
GLP-1受容体作動薬1日の最初の食事や飲水の前に、空腹の状態で服用膵臓にあるβ細胞のGLP-1受容体に結合し、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促すとともに、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制し血糖を下げる。
グリミン系膵β細胞で血糖値が高いときにインスリン分泌を促し、膵β細胞を保護する。

肝臓や骨格筋での糖代謝を改善する。
ビグアナイド薬肝臓から糖の放出を抑える、インスリンに対する体の感受性を高めるなどの作用により、血糖値を下げる。
チアゾリジン薬インスリンに対する体の感受性を高め、血糖値を下げる。
α-グルコシダーゼ阻害薬食事の直前に服用小腸からの糖分の消化や吸収を遅らせて、食後の高血糖を抑える。
SGLT2阻害薬尿細管から血液中へのブドウ糖の再取り込みを妨げ、尿の中に糖を出して血糖を下げる。
GLP-1受容体作動薬・1日1回もしくは2回注射

・1週間に1回注射
血糖値が高いときにインスリン分泌を促し、グルカゴン濃度を低下させ、血糖値を下げる。

胃や腸管での食べ物の移動が遅くなり、消化のスピードが遅くなる、食欲を抑えるなどの作用がある。
インスリン製剤・食事に合わせて注射

・食事のタイミングにかかわらず、1日のうち決まった時間に注射
・インスリンの追加分泌を補い、食後の血糖値の上昇を抑制して、食後高血糖を改善する。

・インスリンの基礎分泌を補い、空腹時血糖の上昇を抑制する。

・インスリンの基礎分泌を補い、空腹時血糖の上昇を抑えて、1日の血糖値を全体的に下げる働きがある。

・インスリンの基礎分泌、追加分泌を同時に補う
GLP-1受容体作動薬とインスリン製剤の混合1日のうち決まった時間に注射空腹時、食後の血糖値を低下させる。

参照元:血糖値を下げる注射薬 – 糖尿病情報センター血糖値を下げる飲み薬 – 糖尿病情報センター

糖尿病の薬には、服用および注射によって低血糖を起こすものがあります。

低血糖は高血糖よりも危険

低血糖は、軽症の場合汗をかくなどの交感神経症状が出ますが、無自覚なまま重症化する人もいます。

最悪の場合は昏睡など意識障害を起こし、死に至るケースもあるのです。

低血糖の症状として、以下のようなものが挙げられます。

低血糖 症状
症状の程度症状
軽度交感神経症状
・汗をかく
・不安な気持ち
・脈が速くなる
・手や指が震える
・顔色が青白くなる
中等度中枢神経症状
・頭痛
・目のかすみ
・集中力の低下
・生あくび
重度・異常な行動
・けいれん
・昏睡

参照元:低血糖 – 糖尿病情報センター

糖尿病の薬の中には、低血糖を起こす可能性が高いものとそうでないものがあります。

インスリンの分泌を促す薬を併用している場合には、特にリスクが高くなります。

自分の薬が低血糖を起こす可能性が高いものであるかを、必ず確認しておきましょう。

薬を服用してから食事までの時間が長引いてしまっただけでも、低血糖になる場合もあります。

高血圧も糖尿病も、薬物治療は医師の指示の元で正しく取り組むのが重要です。

ただし、高血圧や糖尿病は普段の食生活など生活習慣の乱れが原因で発症または悪化する場合が多く、生活習慣の改善なしでは対処できません。

特に食事は1日3回毎日繰り返されるため、影響が大きいです。

少しでも健康な体を取り戻すためにも、栄養バランスに気を付けた食生活を心がけましょう。

高血圧や糖尿病にはまごわやさしい食事を取り入れるのが効果的

高血圧や糖尿病にはまごわやさしい食事を取り入れるのが効果的

高血圧や糖尿病の予防改善には、脂質や糖質に偏りすぎないバランスの良い食生活が必要です。

日常生活の中で無理なく食生活を改善するためには、まごわやさしいを意識しましょう。

まごわやさしいは、健康に良い日本古来からある食材の頭文字を並べたものです。

現在では、学校給食にも取り入れられています。

まごわやさしいの食材の一覧を、以下に示します。

高血圧と糖尿病 食事内容改善1
豆類
ごま
ワカメなどの海藻類
野菜
しいたけなどのきのこ類
いも類

主食の他にこれらの食材を取り入れると、たんぱく質や食物繊維、ビタミン類などが無理なく摂取できます。

1食ですべての食材を摂取しようとするのではなく、1日のトータルで考えましょう。

頑張って品数を多くしなくても、焼き魚などの主菜に野菜やきのこなど具をたくさん入れた味噌汁を加えるだけでも多くの栄養素が摂取できます。

どれだけ栄養バランスにこだわったとしても、続けられなければ意味がありません。

栄養素やカロリー表を見て厳密に計算をするよりも、まごわやさしいと簡単に覚えて続ける方が効果的です。

さらには、主食を白米ではなく玄米や雑穀米に変えると、血糖値の急激な上昇を抑えられます。

GI値という、血糖値の上がりやすさを表す指標を参考にするのも良いでしょう。

塩分量を控えるのも重要

高血圧を予防し糖尿病の悪化を防ぐためには、塩分量を控えるのも重要です。

日本人の食塩摂取量は1日あたり約10gであり、世界保健機関が推奨している量の約2倍にあたります。

参照元:私たちの栄養課題 – 厚生労働省

高血圧患者の食塩摂取量は、1日あたり6g未満と指導されています。

日常的に使用するしょうゆや味噌などの調味料は塩分量が多いため、減塩タイプの商品を使用するなど工夫が必要です。

他にも塩分は、漬物や加工食品などあまり意識していないものにも多く含まれています。

普段どのくらいの塩分を摂取しているのかを知るためには、商品に記載されている成分表示を確認すると良いでしょう。

塩分量を控えるには、以下のような工夫があります。

高血圧と糖尿病 食事内容改善2
  • 漬物は控える
  • 麺類の汁は残す
  • 新鮮な食材を用いる
  • 具だくさんの味噌汁にする
  • むやみに調味料を使わない
  • 低ナトリウムの調味料を使う
  • 香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する
  • 外食や加工食品を控える

引用元:特定保健指導の対象とならない非肥満の心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン~生活習慣別保健指導の要点~ – 厚生労働科学研究成果データベース

これらの方法は食生活を大幅に変えなくても塩分量を減らせるため、効果的です。

このように、塩分や調味料などに気をつかい自炊をするのが最適ですが、コンビニ食を食べてはいけないわけではありません。

ただしコンビニ食を選ぶ際には、高血圧や糖尿病に配慮した工夫が必要です。

コンビニ食は主食のみに偏らないように選ぶ

コンビニ食は不健康なイメージがついていますが、主食のみに偏らないように選び、うまく利用しましょう。

1日3食手作りの食事をするのは、忙しい現代人には困難です。

食事を抜いてしまうと、次に食事をしたときに急激に血糖値が上がってしまい、体に負担がかかります。

すぐに食べられる出来合いのものが購入できるコンビニやは、我々の味方です。

コンビニ食の特徴として、丼ものやパスタなど炭水化物の主食に偏る傾向があるという点が挙げられます。

炭水化物が中心の食事は血糖値の急激な上昇を招きがちであり、さらには主食に合った濃い味付けとなるため塩分量も多いです。

コンビニ食を選ぶ際は、おにぎりに魚などの主菜、豆腐や野菜などの副菜を追加して、栄養バランスを意識しましょう。

栄養バランスがわからない場合は、まごわやさしいに沿って考えると選ぶのが簡単です。

コンビニ食には成分表示が付いているため、食塩量やカロリーの確認も併せておこないます。

食塩量やカロリーが過剰になってしまった場合には、次の食事で調整するなどの工夫も必要です。

何も気にせずに食事をしてしまうと、高血圧や糖尿病は悪化するものと自覚する必要があります。

食事の他にも、高血圧や糖尿病の予防改善には運動が効果的です。

ブルーベリーなどに多く含まれるプロアントシアニジンには、糖の吸収を抑えたり、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。

プロアントシアニジンを多く含む食材を意識するなど心がけましょう。
プロアントシアニジンを多く含む食品一覧

高血圧や糖尿病を予防改善する運動としてウォーキングが最適

高血圧や糖尿病を予防改善する運動としてウォーキングが最適

高血圧や糖尿病の予防改善には運動が必要ですが、ウォーキングは両者で推奨されています。

高血圧や糖尿病を改善するための運動を、いくつか以下に示します。

高血圧と糖尿病 運動
高血圧糖尿病
主な運動種目有酸素運動
・ウォーキング
・ステップ運動
・スロージョギング
・ランニング
有酸素運動
・ウォーキング
・ジョギング
・水泳

レジスタンス運動
・腹筋
・ダンベル
・腕立て伏せ
・スクワット
運動強度中等度中等度
運動時間30分以上20分以上
運動頻度定期的に、できれば毎日有酸素運動:週に150分か週に3回以上

レジスタンス運動:連続しない日程で週に2~3回

参照元:高血圧症を改善するための運動糖尿病を改善するための運動 – 厚生労働省

高血圧と糖尿病を合併している場合は、できれば毎日30分以上のウォーキングが効果的です。

通勤時に一駅分歩いてみる、普段は車で行く買い物を徒歩にしてみるなど、生活に取り入れながら始めてみましょう。

現状把握により効果的な高血圧や糖尿病の予防改善が可能になる

高血圧と糖尿病を合併する怖さを理解しても、他人事だと思っていては意味がありません。

現在の血圧や血糖値、そして生活習慣を把握するのは健康的な毎日を送るためにも重要です。

特に食事や運動、睡眠などは、日々意識するだけでも体調に変化が感じられます。

血圧や血糖値を正常に保てば、病気の予防や改善だけではなく生き生きとした生活を手に入れられるでしょう。

高血圧も糖尿病も、特に自覚症状がないまま進行する場合があります。

気が付いたときには重症化しているケースもあるため、定期的に血圧や血糖値を計測する必要があります。

そして簡単に取り入れられる食事や運動を、今日からでも始めるのが大事です。

高血圧と糖尿病 血圧・血糖値をコントロールし健康的な生活を手に入れよう

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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