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意識障害を引き起こす糖尿病性ケトアシドーシスの原因と予防対策を解説!

意識障害を引き起こす糖尿病性ケトアシドーシスの原因と予防対策を解説!

糖尿病は血糖値が高い状態が長く続く病気で、経過によってさまざまな合併症を引き起こします。

合併症は、血糖値のコントロール不良が長期間続いて発生する慢性合併症と、意識障害などを引き起こすために緊急的な治療を要する急性合併症に分けられます。

糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病の急性合併症のひとつです。

糖尿病性ケトアシドーシスは喉の渇きや多尿、全身の倦怠感などの初期症状からはじまり、悪化すると呼吸困難や意識障害を引き起こします。

主に1型糖尿病患者に生じる合併症ですが、さまざまな要因が重なると2型糖尿病患者でも引き起こされるため、全糖尿病患者が予防しなくてはいけません。

今回は、糖尿病性ケトアシドーシスの原因や予防対策について詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす原因
  • 糖尿病性ケトアシドーシスの症状
  • 糖尿病性ケトアシドーシスの予防対策

糖尿病患者の体調が悪い日である、シックデイについても解説しています。

ぜひ、参考にしてください。

目次

糖尿病性ケトアシドーシスはケトン体が蓄積し酸塩基平衡が崩れた状態

糖尿病性ケトアシドーシスはケトン体が蓄積し酸塩基平衡が崩れた状態

糖尿病性ケトアシドーシスは、ケトン体による血液の酸性化と、重度の脱水によって引き起こされます。

身体はインスリンが不足すると、血液中の糖分をエネルギーとして取り込めずに、脂肪を分解してエネルギーを作るようになります。

その際に産生されるのが、ケトン体です。

ケトン体は通常、血液中に存在しません。

糖尿病性ケトアシドーシス

しかし、糖尿病や絶食などによって脳や筋肉のエネルギー源であるグルコースが利用できない場合に、代用のエネルギー源として肝臓で産生されます。

ケトン体は、アセト酢酸や3-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどの化合物の総称で酸性物質です。

そのため、多量のケトン体が生産され続けると身体は酸性に傾き、酸塩基平衡が崩れてアシドーシスが生じます。

また、高血糖状態になると腎臓は糖を多量の水分と一緒に尿として排泄させるため、身体は脱水状態となり腎前性腎不全が引き起こされます。

腎前性腎不全とは、脱水や多量出血などによって体液量が減少し、腎臓に十分な血液量が流れず尿が作られなくなる状態のことです。

腎前性腎不全は嘔吐などの症状によって脱水をさらに進めるため、血液中のケトン体濃度はますます上昇し、より重度のアシドーシスへと進行します。

酸塩基平衡

酸塩基平衡とは、体内での酸性物質とアルカリ性物質のバランスのことです。

通常身体は、細胞や臓器が正常に機能するように、酸性物質とアルカリ性物質のバランスを保っています。

ケトン体のような酸性物質が産生され続けて血液中に多く含まれると酸塩基平衡は崩れてしまい、血液や体液が酸性側に傾き、アシドーシスとなります。

反対に、血液中のアルカリ性度が高くなった状態は、アルカローシスです。

アシドーシス

通常、血液はわずかにアルカリ性であり、血液のpH値は7.35〜7.45の間で厳密に調整されています。

しかし、酸塩基平衡に異常が生じて血液中に酸性物質が蓄積してしまうと、血液中のpH値は低下します。

この酸性側に働く力が、アシドーシスです。

ケトン体の蓄積によって血液や体液が酸性となった状態を、ケトアシドーシといいます。

そして、糖尿病患者が引き起こすケトアシドーシスが、糖尿病性ケトアシドーシスです。

糖尿病性ケトアシドーシスは、主にインスリンが欠乏している1型糖尿病で起こります。

しかし、2型糖尿病でも起こる場合があるため、全糖尿病患者が予防すべき急性合併症です。

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

同じ糖尿病でも、1型糖尿病と2型糖尿病では発生機序が異なります。

1型糖尿病と2型糖尿病の違いを、下記にまとめました。

1型糖尿病2型糖尿病
発生機序・主に自己免疫の異常によって膵臓β細胞が破壊され、インスリンが分泌されず発症する
・内分泌臓器への免疫異常で発症する、甲状腺疾患を合併する場合もある
・インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食や運動不足などの環境因子が加わり、インスリン作用不足が生じ発症する
発症までの経過・急激に症状が出て発症する・明らかな症状がなく、気づかないうちにゆっくりと進行し発症する
家族歴・両親が1型糖尿病の場合の発症率は3〜5%
・両親のどちらか一方が1型糖尿病の場合の発症率は1〜2%
・両親ともに2型糖尿病であった場合の発症率は40〜50%
発症年齢・小児〜思春期に多い
・中高年でも認められる
・40歳以上に多い
・若年発症も増加している
肥満度肥満とは関係がない
やせ型が多い
・肥満または肥満の既往が多い
自己抗体・GAD抗体、IAA、ICA、IA-2抗体、ZnT8抗体などの陽性率が高いため1型糖尿病の診断に用いられる・陰性
治療・インスリン依存型でありインスリン注射が必須・食事療法
・運動療法
・投薬

1型糖尿病と2型糖尿病の違いのひとつは、1型糖尿病は主に自己抗体が関連している点です。

そして、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンが欠乏しているインスリン依存型という点も、大きな違いといえます。

自己抗体

自己抗体とは、自分自身の身体の成分に対する抗体のことです。

身体には、細菌やウイルスなどの外から侵入する抗原に対して抗体が作られ、自己を守る働きが備えられています。

通常、作られた抗体は自己の細胞を攻撃しません。

しかし、何らかの原因によって免疫異常が起きると、自己抗体は自己の細胞を抗原であると認識してしまいます。

この自己抗体によって膵臓は攻撃され、インスリンを分泌するβ細胞を破壊し、1型糖尿病が引き起こされます。

1型糖尿病患者が糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす誘因

1型糖尿病患者が糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす誘因

1型糖尿病患者がケトアシドーシスを引き起こす誘因は、以下の通りです。

  • 糖尿病発症時
  • インスリン注射を中断した場合
  • 感染症や外傷
1型糖尿病患者の糖尿病性ケトアシドーシス誘因

糖尿病発症時

1型糖尿病は、進行のスピードによって劇症型急性発症型緩徐進行型に分類されます。

1型糖尿病の約20%を占める劇症型は最も急激に発症するタイプで、数日間でβ細胞のほぼ全てが破壊され、インスリンがほとんど分泌されない状態に至ります。

そのため、1型糖尿病の初発症状が糖尿病性ケトアシドーシスであるケースは少なくありません。

劇場型の場合、高血糖症状出現後は一週間前後で糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされるため、速やかにインスリン注射による治療が必要になります。

インスリン注射の中断

1型糖尿病は、膵臓のβ細胞の破壊によってインスリンが欠乏する、インスリン依存型の病気です。

そのため、1型糖尿病患者がインスリン注射を中断してしまうと、血糖値は急激に上昇します。

高血糖状態になると、腎臓はブドウ糖を多量の水分と一緒に尿として排出させます。

その結果生じるのが、重度の脱水です。

高血糖による脱水状態の持続によってケトン体濃度が上昇し、糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされます。

感染症や外傷

感染症・外傷

感染症や外傷を患うと、炎症性サイトカインストレスホルモンの増加によって血糖値が上昇し、高血糖状態となります。

炎症性サイトカインとは、炎症の重要な調整因子で、細胞から分泌される低分子のタンパク質であるサイトカインの一種のことです。

炎症性サイトカインには、多くの種類があります。

主な炎症性サイトカインは、以下の通りです。

  • TNF-α
  • IL- 1
  • IL-6

これらの炎症性サイトカインは、免疫系を調整する上で重要な役割を果たしています。

ストレスホルモンとは、ストレス刺激によって体内に放出され、ストレス反応を引き起こすホルモンの総称のことです。

心身がストレスを受けると、急激に分泌が増えるため、ストレスホルモンと呼ばれています。

代表的なストレスホルモンは、副腎皮質から分泌されるコルチゾールです。

そのほかにもアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンといった物質の総称で、副腎髄質や交感神経などから分泌されるカテコラミンがあります。

炎症性サイトカインとストレスホルモンのインスリン分泌に関連する作用について、以下にまとめました。

物質作用
炎症性サイトカイン・インスリン抵抗性の増加や膵β細胞でのインスリン分泌を低下させる
・インスリン拮抗ホルモンの分泌を上昇
ストレスホルモン・コルチゾールは肝臓における糖新生を促進し、末梢でのインスリン抵抗性を増加させる
・カテコラミンは糖新生の増加やインスリン抵抗性の増加に加え、膵β細胞でのインスリンの分泌を低下させる

このように、感染症や外傷は血糖値を上昇させるため、通常よりもインスリンの必要量が大幅に増加します。

そのため、必要とされるインスリンを追加補給しない場合、糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされてしまいます。

糖尿病患者に引き起こされる主な感染症は、以下の通りです。

  • 一般的なウイルス感染や細菌感染
  • 尿路感染
  • 肺炎
  • 胆嚢炎
  • 足病変

糖尿病による高血糖状態は、好中球機能が低下するため、さまざまな感染症を引き起こします。

手洗いうがいをはじめとした基本的な感染対策や、清潔保持、ワクチンなどの予防医療が重要です。

2型糖尿病患者が糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす誘因

糖尿病ケトアシドーシスの患者のうち、20〜30%は2型糖尿病であるという報告があります。

2型糖尿病患者の糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす誘因は、以下の通りです。

2型糖尿病患者の糖尿病性ケトアシドーシス誘因
  • ソフトドリンクの多飲
  • SGLT2阻害薬の投与
  • 無治療や治療の中断
  • 感染症や外傷

ソフトドリンクの多飲

糖質を多く含んだ清涼飲料水を多量に飲むと、血糖値が急上昇し、インスリンの作用不足が生じます。

高血糖状態になると身体は細胞内に糖質を取り込めず、代わりに脂肪を分解するため、血液中にケトン体が増加します。

その結果生じるのが、ケトアシドーシスです。

ソフトドリンクによるケトアシドーシスは、ペットボトル症候群やソフトドリンクケトーシスと呼ばれ、とくに若年の肥満患者に多いと言われています。

2型糖尿病患者の糖尿病性アシドーシスでは、ソフトドリンクによる糖質の多量摂取が、最も多い誘因です。

SGLT2阻害

SGLT2阻害薬は近年使用患者数が増えている糖尿病治療薬ですが、従来の糖尿病治療薬とは作用機序が異なるため、副作用に気を付けなくてはいけません。

SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管からのブドウ糖の再吸収を抑え、尿から糖を排出させ血糖値を下げる飲み薬です。

SGLT2阻害薬の作用によって血糖値が下がると、血液中のインスリンが低下し、それによってグルカゴン比は増加します。

グルカゴンの働きは、肝臓での糖産生の促進です。

脂肪組織では脂肪分解が亢進し、産生された遊離脂肪酸は肝臓でケトン体に変化します。

エネルギー源として利用される割合はブドウ糖から脂質の方が増え、それにより適度に増加したケトン体は心機能向上に有益です。

しかし不適切なインスリンの減量や中断、脱水などが複合的に重なると、血液中のケトン体濃度が急上昇し糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされます。

SGLT2阻害薬の使用に関して日本糖尿病学会は、以下のように示しています。

  • インスリンやSU薬などのインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意する
  • 75歳以上の高齢者、あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する
  • 多尿による脱水、特に利尿薬の併用の場合には注意する
  • 発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する

自身の使用している治療薬の理解不足は、異変の発覚を遅らせる可能性があるため、主治医からしっかりと説明を受けるようにしましょう。

無治療や治療の中断

インスリンの分泌機能が低下している2型糖尿病患者では、1型糖尿病患者と同様にインスリン注射の中断や無治療によって糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされる場合があります。

感染症や外傷

感染症や外傷は1型糖尿病と同様、炎症性サイトカインやストレスホルモンの増加によって、インスリン必要量が通常よりも増えてしまいます。

必要分のインスリンが追加補充されない場合、糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす可能性があるため、より血糖コントロールが重要です。

・食後や空腹時の血糖値を抑制する
・インスリンの効き目を高め分泌を促す
など、糖尿病予防におけるポリフェノールの研究が進んでいます。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。
薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究

糖尿病ケトアシドーシスは重症化すると意識障害を引き起こしてしまう

糖尿病ケトアシドーシスは重症化すると意識障害を引き起こしてしまう

糖尿病性ケトアシドーシスの原因は、ケトン体による血液の酸性化と、重度の脱水です。

高血糖状態になると身体は細胞内に糖質を取り込めず、代わりに脂肪を分解するため、血液中にケトン体が増加します。

ケトン体が蓄積すると、ケトアシドーシスが発生し、尿中に現れるようになります。

糖尿病性ケトアシドーシス 症状

糖尿病による浸透圧利尿に加えて、体内から大量の水分が失われるために引き起こされるのが、重度の脱水です。

そのため脱水症状である強い口渇や疲労感、嘔吐などが初期症状として出現しますが、小児では腹痛を訴える場合もあります。

また、呼気からはアセトン臭が感じられます。

アセトン臭とは、甘酸っぱいような、果物の熟したようなにおいのことです。

アセトンはケトン体の一種で、揮発性があり呼気に混ざって体外に出ていくため、 ケトアシドーシスでは呼気時にアセトン臭が感じられます。

糖尿病性ケトアシドーシスが生じると、身体は酸塩基平衡を保つため、より多くの二酸化炭素を放出させアシドーシスを是正しようと働きます。

その結果出現するのが、クスマウル呼吸です。

クスマウル呼吸とは、深く速い呼吸が規則的に続く異常呼吸のことで、呼吸リズムの乱れや無呼吸はみられません。

脱水状態が持続すると腎前性腎不全が引き起こされ、ケトン体濃度はさらに上昇し、病態は進行していきます。

糖尿病性ケトアシドーシスが進行すると、極度の脱力感と眠気を感じ始め、意識が朦朧として吐き気が強くなります。

そして循環血液量の減少により血圧が低下し、ショック状態を招き、意識障害や最悪の場合は死に至る病気です。

糖尿病性ケトアシドーシスによる全死亡率は1%未満といわれていますが、高齢者や他の病気を合併している場合は、死亡率がより高くなります。

糖尿病性ケトアシドーシスの身体所見と検査所見を、以下にまとめました。

糖尿病性ケトアシドーシス
身体所見高度の脱水
アセトン臭
クスマウル呼吸
血圧低下
検査所見血糖値250〜1000mg/dl
尿中ケトン+〜+++
pH<7.3
Na値:正常〜軽度低下
K値:正常〜軽度上昇
FFA:高値
BUN:上昇
糖尿病性ケトアシドーシス 検査基準値

FFAとは遊離脂肪酸のことで、脂肪が分解されて生じる脂肪酸であり、糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝異常の指標として有用です。

BUNは、尿に由来する窒素量を示す単位で、腎臓による排泄障害があると増加します。

糖尿病性ケトアシドーシスが生じた場合は、早急に生理食塩水などの輸液によって身体に水分やナトリウムを補充しなくてはいけません。

また、適切なインスリンの投与によって、高血糖とアシドーシスを是正する必要があります。

身体に異変を感じた場合は、重症化を予防するため、早い段階で医療機関を受診するようにしましょう。

糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こさないためにはシックデイルールが重要

糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こさないためにはシックデイルールが重要

高血糖状態は好中球機能を低下させ、易感染状態を引き起こします。

そのため、糖尿病患者はさまざまな感染症に罹患するリスクが高くなります。

シックデイとは糖尿病患者が風邪や胃腸炎など糖尿病以外の病気にかかり、発熱や下痢、嘔吐などによって食事摂取ができない状態のことです。

日頃血糖コントロールが良好であっても、シックデイでは著しく血糖が上昇するため、糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされる傾向が高くなります。

糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こさないためには、さまざまな病気の感染対策や予防医療、そしてシックデイ時の対応が重要となります。

糖尿病患者 感染症対策1

感染対策

全ての感染症対策の基本は、手洗いとうがいです。

正しく効果的な手洗いとうがいのポイントを、以下にまとめました。

感染症対策ポイント
手洗い・流水でよく手を濡らした後、石鹸をつけ、手のひらをよくこする
・手の甲を伸ばすようにこする
・指先、爪の間を念入りにこする
・指の間をこする
・親指と手のひらをねじり洗いする
・手首を忘れずに洗う
・石鹸は十分に洗い流す
・清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かす
うがい・20ml程の水を口にふくみ、ブクブクして吐き出す
・もう一度水を口にふくみ、のどの奥まで届くように上を向き、15秒程ガラガラして吐き出す
・ブクブクうがいを1回した後、ガラガラうがいを3回ほどくりかえす

きれいに手を洗ったつもりでも意外と汚れているのが、指先や指の間、手首です。

物によく触れる指先は、とくに汚れが残る傾向にあるため、意識して洗うようにしましょう。

手洗いをするタイミングは、以下の通りです。

  • 帰宅後
  • 咳やくしゃみの後
  • トイレの後
  • 食事前

自身や他人の体液などに触れた場合も、必ず手洗いをしてください。

また、うがいは洗浄効果によってさまざまな病原体からの感染予防に有効であり、のどが本来持つ防御機能も高める効果があります。

うがいをするタイミングは、以下の通りです。

  • 帰宅後
  • 人混みから出た後
  • のどの乾燥を感じた時

全ての感染対策の基本である手洗いうがいの正しいやり方や、タイミングを意識して実施してください。

予防医療

予防医療とは、病気になった後に治療を受けるのではなく、病気にかからないように対策をすることです。

糖尿病は免疫機能の低下からさまざまな病気に罹患するリスクが高く、また重症化する傾向にあるため、ワクチン接種などの予防医療が重要になります。

米国疾病管理予防センターのガイドラインでは、糖尿病患者に季節性インフルエンザと肺炎球菌ワクチンの予防接種が推奨されています。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防し、重症化を防ぎます。

肺炎球菌ワクチンの接種がとくに推奨されているのは、以下に該当する場合です。

  • 65歳以上の高齢者
  • 心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患
  • 喘息やCOPDなどの呼吸器疾患
  • 糖尿病
  • 腎臓疾患

肺炎球菌ワクチンは接種してから抗体ができるまで、平均でおよそ3週間ほどかかるといわれています。

副反応として接種した部位の腫脹や熱感、痛みがありますが、5日程度で収まります。

肺炎球菌ワクチンの接種費用は、自治体によっては助成されるため、ぜひ調べてみてください。

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンの接種目的とは、ウイルスに感染した場合でも発症を抑える、発症しても重症化させないことです。

65歳以上の高齢者ではとくに、インフルエンザをきっかけに肺炎を起こす場合があります。

肺炎球菌ワクチンに加えて、インフルエンザワクチンの接種をあわせて実施し、重症化を予防しましょう。

シックデイルール

シックデイ時の家庭での対応の基本を、シックデイルールといいます。

シックデイでは通常より血糖値が高くなる傾向にあり、脱水や糖尿病性ケトアシドーシスによって危険な状態を引き起こしかねません。

そのため、シックデイルールをしっかり理解しておく必要があります。

自身の病状の変化を把握する

体調がよくないときには、自身の身体の病状がどのように変化しているか把握してください。

そのうえでしばらく経過観察をするか、医療機関を受診するかなどを検討します。

体温や血圧、体重は、日頃から測定と記録をしていると早い段階で変化や異変に気付けます。

血糖値は短時間で急上昇する可能性が高いため、普段から自己測定している場合、シックデイではいつもよりこまめに測定するようにしましょう。

医療機関を受診する症状の目安

糖尿病患者 感染症対策2

以下の症状が出現した場合は、速やかに医療機関の受診が必要です。

  • 350mg/dl以上の著しい高血糖
  • 250mg/dL以上の高血糖が続いている
  • 39度以上の発熱、または38度台の熱が長引く
  • 呼吸困難感や呼吸苦
  • 食事摂取が困難
  • 2~3日経過をみても体調回復の兆しがない
  • インスリンなどの治療薬の量の加減がわからない

旅行先などでシックデイを起こしかかりつけの医療機関以外を受診する場合は、治療経過がわかるように、以下の内容を伝える必要があります。

  • 糖尿病患者である
  • 使用している治療薬

お薬手帳や血糖値を記録している手帳などは、常に持ち歩くようにしましょう。

また、SGLT2阻害薬を服用している場合、シックデイでは一般的に休薬が推奨されています。

事前にかかりつけの主治医へ、シックデイ時の対応を確認してください。

2型糖尿病の初期段階であれば、食事や運動治療に取り組むことで、すい臓の機能が回復する方もいらっしゃいます。
特に普段の食事で意識して摂取しておきたい食材や成分についてまとめていますの、こちらの記事も参考にしてください。
インスリンの働きを高める食材、成分

糖尿病性ケトアシドーシスを予防するためには予防医療とシックデイルールが重要である

糖尿病性ケトアシドーシスを予防するためには予防医療とシックデイルールが重要である

糖尿病性ケトアシドーシスは、倦怠感などの初期症状からはじまり、悪化すると意識障害を引き起こす急性合併症です。

糖尿病性ケトアシドーシスは主に1型糖尿病に生じますが、感染症などの誘因が加わると、2型糖尿病を含む全ての糖尿病患者に引き起こされる可能性があります。

糖尿病による高血糖状態は、免疫機能の低下によってさまざまな感染症を招きます。

糖尿病性ケトアシドーシスの予防には、手洗いうがいをはじめとした基本的な感染対策や予防医療が重要です。

また、シックデイでは著しく血糖値が上昇するため、糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされる傾向が高くなります。

糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こさないためには、シックデイルールの理解も重要です。

そして糖尿病性アシドーシスは、重症化すると意識障害を引き起こすため、早急に治療を開始する必要があります。

早期に自身の体調の異変に気付くには、日頃からの血糖値や体温、血圧などの測定と記録が大切です。

体調や血糖値に変化があった場合は、速やかにかかりつけの医療機関を受診してください。

決して自己判断によるインスリン注射の中断や、治療の中断をしてはいけません。

シックデイ時の対応について、事前にかかりつけの主治医と相談し、いざという事態に備えておきましょう。

糖尿病患者の糖尿病性ケトアシドーシス予防には感染症対策やシックデイルールが重要

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

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