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糖尿病の人が知らずにいると危険な神経障害と痛みの関係を解説

糖尿病の人が知らずにいると危険な神経障害と痛みの関係を解説

糖尿病には3大合併症と呼ばれる糖尿病神経障害糖尿病腎症糖尿病網膜症といった3種類の合併症があります。

3大合併症のなかで最も発症の頻度が多い糖尿病神経障害は、手足や足先の痛みにも関係しています。

痛みがあると、思うように身体を動かせずに日常生活の質が下がってしまうという人は多いのではないでしょうか。

今回は糖尿病神経障害と疼痛の関連性や疼痛についての治療、神経障害の予防についてまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病神経障害とは
  • 糖尿病神経障害による痛みの原因
  • 糖尿病神経障害によって起こる疼痛の治療法
  • 糖尿病神経障害を予防するには
目次

糖尿病神経障害によって自覚する身体の症状や痛みの原因とその治療を解説

糖尿病神経障害によって自覚する身体の症状や痛みの原因とその治療を解説

糖尿病神経障害は糖尿病の合併症として起こる神経障害で、知覚神経はもちろん運動神経や自律神経も障害を受けます。

神経障害は障害される神経で自覚する症状が異なり、症状によっては神経障害が原因ではないと感じるものもあるのです。

糖尿病神経症状は知覚神経と自律神経が障害を受けやすく、生活リズムの乱れや知覚の変化を症状として感じる人もいます。

とくに自律神経が障害を受けて生じる生活リズムの乱れや排尿障害は、単なる不眠や加齢による排尿障害などと思われがちです。

そこで神経障害が起こると体にどういった変化が起こるのか、どのような神経が障害を受けるのかという点について説明していきます。

症状

各々の神経が障害されると出現する症状の例を、以下にまとめました。

  • 知覚神経:主に触覚や痛覚などの感覚が鈍くなり、怪我などをしても気づかなかったり、不快な痛みが発生したりする等。
  • 運動神経:眼球や手足などの運動が障害されるため物が二重に見えたり足がうまく動かせなかったりする等。
  • 自律神経:発汗異常や活動と休息のリズムが安定しない、排尿障害が起こる等。

糖尿病神経障害では、末梢神経が障害を受けるため手先や足先の痺れや痛みに悩んでいる人は一定数いるといわれています。

糖尿病神経障害による手足のしびれの場合、左右対称に出ることが多いのが特徴です。手よりも足に先に症状が現れます。

普段から高血糖を防ぐ対策や工夫を取り入れるようにしましょう。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。

血糖値を下げる効能を持つ成分

痛みの原因

糖尿病になると体内の神経が侵される原因や機序は、現在の医学においては全て解明されているわけではありません。

しかし一説では、血糖値が高い状態が続くとソルビトールという物質が神経細胞に蓄積した結果、神経障害が発生するのではないかといわれています。

さらに血糖値が高い状態が続くと、毛細血管がダメージを受けて血流障害が起こるため、神経細胞に必要な酸素や栄養が供給されずに神経が障害を受けます。

糖尿病神経障害による痛みの基本的な治療についてを解説

糖尿病神経障害による痛みの基本的な治療についてを解説

糖尿病神経障害は、完治はしません

神経障害を悪化させないための予防として、血糖値をコントロールしていくのが治療をする上での基本です。

糖尿病治療は運動療法や食事療法、薬物療法の3つを基本として、必要な医療的介入をおこないます。

場合によっては、インスリン注射や自分自身で血糖を測定するといった自己管理が必要です。

そして血糖コントロールが良好になったら、疼痛に対する治療をします。

疼痛に対しておこなう治療は薬物療を基本に、さまざまな治療法がありますが疼痛は個人差があるため治療法は人それぞれです。

薬物療法

薬物療法は、第一選択となる治療のひとつです。

鎮痛剤や麻酔薬などのほかに、抗うつ薬や神経障害性疼痛治療薬を用いて痛みの緩和を図ります。

使用する薬は適切な使用方法で服用する必要があるため、必ず医師や薬剤師の指導に従って薬を服用しましょう。

ここからは、神経障害による痛みの治療に用いる鎮痛薬について紹介します。

NSAIDs

NSAIDs(エヌセイズ)は、非ステロイド性消炎鎮痛薬と呼ばれる種類の鎮痛薬です。

消炎鎮痛薬は、炎症によって生じる痛みに効果を発揮します。

炎症により痛みが発生すると、痛み刺激によってアラキドン酸という必須脂肪酸を原料としたシクロオキシゲナーゼという酵素が活発化します。

シクロオキシゲナーゼは痛みを起こす物質プロスタグランジンを生成し、結果として痛みが生じるのです。

NSAIDsはシクロオキシゲナーゼの抑制に関与するため、プロスタグランジンの生成が抑えられ、結果的に痛みが軽減します。

鎮痛効果の高い薬として知られていますが、薬の種類によっては胃痛や吐き気などの副反応が現れる場合があります。

胃痛や吐き気など気になる症状が出現した際は、我慢せずに医療機関を受診すると良いでしょう。

副反応の程度によっては、処方薬の容量を見直したり副反応に対する対症療法をおこなう場合もあります。

オピオイド

オピオイドは、NSAIDs以上に鎮痛作用が強い医療用麻薬です。

薬の作用が強いため、主にがん性疼痛や手術後の疼痛の緩和に用いられますが、糖尿病神経症による痛みが強い場合にも処方される場合があります。

オピオイドの作用は脳と脊髄にあるオピオイド受容体に結合し、痛みを生じさせる神経伝達回路を遮断し痛みを抑制します。

前述のとおり強い鎮痛効果を発揮する薬ですが、副反応も強いです。

オピオイドの主な副反応を、下記にまとめました。

  • 眠気
  • 便秘
  • 悪心や嘔吐
  • 呼吸抑制など

上記の副反応は日常生活に影響を及ぼす可能性があり、必要に応じて症状を和らげるための薬を服用する場合もあります。

眠気や呼吸抑制などの副作用は運転中の事故を招く可能性もあるため、正しい時間に容量や用法を守るのはもちろん、服用後の安静が大切です。

非常に強い眠気が出現するときは車の運転を控えるなど、日常生活が制限される場合も出てきます。

副反応について不安な点や心配な点がある際は、ひとりで悩まず医師や看護師に相談しましょう。

神経障害性疼痛治療薬

神経障害性疼痛治療薬は、主にプレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)などの薬です。

プレガバリンは神経障害性疼痛に対して最も多く選択されている薬で、神経同士の伝達物質であるカルシウムイオンの作用を抑えて鎮痛作用を発揮します。

ミロガバリンにもプレガバリンと類似した作用があり、糖尿病の末梢神経障害にも作用を発揮する薬として使用されています。

これらの薬にも副反応が存在するため、服用を始めたら副反応の出現に注意が必要です。

神経障害性疼痛治療薬の副反応を、以下にまとめました。

  • めまい
  • 意識消失
  • 眠気
  • 口腔内の乾燥
  • 便秘
  • 浮腫
  • 肝機能障害
  • 吐き気 など

服用開始時期はめまいや吐き気などの出現頻度が高いため、高齢者の場合は特に体調の変化を気に留めながら服用しましょう。

めまいを感じたら無理せずその場にしゃがんだり座ったりすると、転倒によるダメージを最小限にとどめられます。

抗うつ薬

抗うつ薬は、セロトニンノルアドレナリンといった神経伝達物質が細胞へ取り込まれるのを抑制して痛みを抑えます。

三環系抗うつ薬は人によって使用禁忌となる疾患があるため、既往歴によっては使用できない人もいます。

三環系抗うつ薬の使用禁忌となる代表例は、以下の通りです。

  • 閉塞隅角緑内障
  • 心筋梗塞の既往
  • 前立腺肥大 など

抗うつ薬は三環系抗うつ薬だけでもたくさんの種類があり、副反応も多岐に渡るため、服用開始時は副反応の症状により不快感を感じる場合もあります。

あまりにも不快な症状が出現する頻度が多い場合や、日常生活に制限が出るようであれば我慢せず医療機関を受診しましょう。

神経ブロック

神経ブロックは、痛みを起こしている神経そのものに麻酔をして痛みを緩和する方法です。

主として病院の麻酔科や整形外科、緩和ケア科でおこなわれています。

1回の注射で永久的に痛みが緩和されるのではなく、あくまでも痛みの緩和を手助けするひとつの手段です。

神経ブロックには、下記の通りいくつかの種類があります。

  • 交感神経ブロック
  • 硬膜外ブロック
  • 神経根ブロック
  • 三叉神経ブロック など

上記のほかに痛みを引き起こしている神経によって神経ブロックをする場所が異なるため、どこの神経に対して神経ブロックをするかは人それぞれです。

前述のとおり神経ブロックは定期的におこなう必要があるため、薬物療法と組み合わせて行うのが一般的です。

理学療法(リハビリテーション)

理学療法は痛みの除去を目的とはせず、痛みに伴う筋力の低下や関節の拘縮を防いだり、生活の質を維持したりする目的でおこないます。

理学療法も神経ブロック同様、薬物療法と組み合わせておこなうのが一般的です。

理学療法師やリハビリテーション科の医師が、その人の症状や既往歴などの背景をもとにいくつかの方法を組み合わせて実施するメニューを決めます。

理学療法は、主に以下のような種類があります。

運動療法

運動療法は、関節や筋肉などの機能を増強したり維持させたりするのを目的に運動機能を活かした治療法です。

関節可動域訓練や全身調節訓練など様々な運動器を用いて、対象者の状態に見合った機能訓練を実施します。

物理療法

物理療法は温熱療法や電気療法などの物理的なものを利用し、リラクゼーションや疼痛の緩和を目的におこないます。

温熱療法は局所の血流を促進させ痛みを緩和するだけでなく、痛みによって緊張した筋肉の緊張を低下させる方法です。

電気療法は低周波から中周波の電気を流し、筋肉を収縮に働きかけるためマッサージのようなリラクゼーション効果があります。

電気療法の場合は体内に金属が入っていると実施できないため、ペースメーカが挿入されている場合などは適応外です。

物理療法は、運動療法と異なり身体を動かす機会が少ないという特徴があります。

そのため物理療法だけでなく、運動療法と組み合わせておこなうのが一般的です。

・食後や空腹時の血糖値を抑制する
・インスリンの効き目を高め分泌を促す

など、糖尿病予防におけるポリフェノールの研究が進んでいます。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。

薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究

痛みの治療をおこなう際に気に留めておきたいポイントについて解説

痛みの治療をおこなう際に気に留めておきたいポイントについて解説

糖尿病の合併症のひとつである神経障害は、知らないうちに発症しているケースもある合併症です。

神経障害を放置しておくと、知らぬ間に感覚障害や排尿障害を引き起こすだけでなく疼痛を引き起こし、生活の質の低下を招きます。

1日でも早く疼痛を和らげるために厳格な糖質制限などをおこなうと、急激な血糖値の低下によって痛みが生じる可能性があります。

医療機関を受診せずに市販の痛み止めを服用する人もいますが、市販薬の使用は糖尿病腎症を発症している場合は腎機能の悪化を招く場合もあります。

血糖コントロールや疼痛コントロールは自分自身でおこなわず、医師の判断や指導を受けましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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