糖尿病は進行するとさまざまな症状が出てきますが、その1つに手がしびれるような感覚が現れる場合があります。
手がしびれる症状は、合併症の糖尿病神経障害に当てはまる可能性があり、早期に治療しないと状態が徐々に悪化します。
手のしびれは他の病気からも発生するため、糖尿病だけが原因になるとは限りません。
では、どのような基準で糖尿病が原因と判断するのでしょうか。
この記事では、手がしびれる原因や糖尿病について解説します。
- 手がしびれる原因と疑いのある病気
- 糖尿病としびれの症状の関係性
- しびれや糖尿病の検査方法
しびれに関連する他の病気や検査方法についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
糖尿病は合併症の糖尿病神経障害の影響から手のしびれが現れる
糖尿病による手のしびれは、三大合併症の1つである糖尿病神経障害に該当します。
糖尿病は初期段階では症状がほとんどありませんが、血糖値が高い状態やインスリンの分泌異常が継続すると、以下のような症状が現れ始めます。
- 喉の渇き、脱水症状
- 尿量の増加
- 体の疲れ、だるさ
- 多量に食べても体重が減る
上記の症状とともに手のしびれを感じた場合、糖尿病や糖尿病神経障害はある程度進行している状態です。
手がしびれる際の感じ方や症状が出ている範囲によっては、他の病気が原因の可能性もあります。
手がしびれる症状は運動麻痺と感覚の異常に分けられる
手がしびれる際の症状は、運動麻痺と感覚の異常に分けられます。
運動麻痺はしびれる感覚と同時に、以下のような症状が発生しています。
- 手の動きが悪い、動かない
- 力が入らない
一方、感覚の異常は以下のような症状が発生しています。
- ジンジン、ビリビリした感覚がある
- 熱を帯びた感覚がある
- 痛みや刺激を感じにくい
- 感覚が完全になくなる
しびれた感覚が痛みのように感じる人もいれば、しびれから感覚が鈍る人もいるため、人によって感じ方は異なってきます。
糖尿病神経障害の場合は、感覚の異常の方が現れる確率が高いですが、人によっては運動麻痺の症状も見られます。
糖尿病神経障害以外にも手がしびれる原因になる病気がある
手がしびれる原因として考えられるのは、以下の項目です。
- 神経が圧迫されている
- 血管や血流が悪化している
- 代謝の異常
- 炎症
- 薬の副作用
スポーツなどで手や指を使い過ぎたときも、手に軽度の炎症が現れてしびれる場合があります。
そのため、手のしびれが必ず重大な病気につながるわけではありません。
別の病気の治療で処方された薬が体に合わなかった場合も、薬の種類によっては手足のしびれを引き起こします。
しびれの原因がはっきりとわからず、以下のような症状が顕著に見られる場合は、特定の病気の疑いがあります。
- 体の片側にしびれの症状が出ている→脳卒中
- 顔や首を動かした際に両手のしびれが強くなる→頚椎症や頚椎症性神経根症などの首の病気
- 手や指のしびれに加えて足のしびれも顕著に出る→糖尿病神経障害
- 上記に当てはまらない場合→手根管症候群
糖尿病が原因になる際は、手だけでなく、足のしびれも現れる可能性が高くなります。
いずれの病気が原因である場合も、しびれの範囲が広い、もしくはしびれが強いときは早めに診察を受けましょう。
糖尿病による手足のしびれの場合は左右対称に出る、安静時に強く出るといった特徴もあります。
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糖尿病は体内のインスリン分泌異常が原因
手がしびれる原因の1つである糖尿病は、体内のインスリン分泌の異常から、高血糖の状態が継続する病気です。
インスリンは体内でブドウ糖をエネルギーとして利用する際に、すい臓から分泌されます。
しかし、以下のような原因からインスリンの分泌量や効果に異常が発生すると、ブドウ糖をうまく消費できなくなります。
- 1型糖尿病:自己免疫異常からインスリンの分泌ができなくなる
- 2型糖尿病:肥満や遺伝の影響から、インスリンの分泌量が減る、もしくはインスリンの働きが悪くなる
日本の糖尿病の多くは2型糖尿病に該当しますが、1型糖尿病も発症する可能性は十分あります。
1型糖尿病と2型糖尿病を判断する基準は、以下のとおりです。
1型糖尿病の可能性が高い | ・喉の渇きや疲れなどの糖尿病の自覚症状が急激に現れた ・若い人で糖尿病の症状が発生した |
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2型糖尿病の可能性が高い | ・親族に糖尿病患者がいる ・メタボリックシンドロームなど肥満に関する症状や病気と診断されている(脂質がインスリンの働きを弱めている) ・高齢で糖尿病の症状が発生した(年齢が上がるとインスリン分泌量が減る) |
しかし、上記の基準だけでは完全に判断できないため、糖尿病の種類を判別する検査が必要です。
糖尿病神経障害は糖尿病の影響から、神経につながる血流の悪化や神経の代謝の異常が発生して、しびれや感覚の鈍りを引き起こします。
感覚がなくなると、体に傷がついても簡単に気付きません。
損傷部分の悪化や傷口から感染症にかかって、さらなる病気を併発する可能性もあります。
症状の悪化や別の病気を防ぐ意味でも、糖尿病および糖尿病神経障害は、早い段階で発見しましょう。
しびれの原因を探るために正常な感覚であるか検査する
手のしびれに対する治療を行うためには、症状の進行度や原因を明確に定める必要があります。
しびれの症状の進行度は、以下のような検査から判断されます。
- アキレス腱反射テスト:ゴムハンマーでアキレス腱を打診して、反射の状態を確認する
- 振動覚の検査:音叉を軽くたたいて関節にあて、関節から振動を感じるか確認する
- 感覚検査(モノフィラメント):ビニール糸のモノフィラメントを患者に見えない状態で軽くあて、接触部分にあたった感覚があるか確認する
反射や感覚に顕著な異常が見られる場合は、軽い炎症ではなく、糖尿病などの病気が原因である可能性を探っていきます。
手のしびれが気になる場合や糖尿病の疑いがある場合の受診先
手のしびれが長引いて、原因の見当がつかない場合は、病院で以下の科を受診してみましょう。
- 神経内科
- 脳神経外科
- 整形外科
- 総合診療科
病院によっては、手足のしびれ外来などのしびれ専門の受診先もあります。
受診する際は神経系を専門で診てくれるところが望ましいですが、近くの病院に該当する科がない場合は、整形外科や総合診療科でも診察を受けられます。
一方、糖尿病の検査や診察を行うのは、以下の受診先です。
- 内科
- 糖尿病内分泌科
糖尿病内分泌科の方が専門的な受診先になり、症状が悪化しているときは、専門的な治療のために内科から移される場合もあります。
糖尿病神経障害は明確な数値では判断できない
糖尿病や糖尿病の疑いがあるとすでにわかっている患者の場合、診察でしびれの原因が糖尿病神経障害によるものか、先に判断します。
しかし、糖尿病神経障害は、明確な数値で判断できるわけではありません。
他の病気と比較して、糖尿病神経障害は以下のような特徴が見られます。
- しびれの症状が出た時期がわからない:初期症状がほとんどないため、しびれの症状も気付かないうちに現れる場合が多い
- 上肢よりも下肢(股関節・ひざ関節・足関節)に症状が出ている:長い神経繊維に影響がでるため、下肢の方に症状が現れる場合が多い
- 運動障害よりも感覚の異常が見られる:細い神経繊維に影響が出るため、痛みや熱を持つなど感覚異常の方が現れる可能性が高い
糖尿病神経障害の疑いがあると判断された場合は、糖尿病の検査のみを行い、糖尿病に対する治療法が施されます。
上記に当てはまらない場合は、糖尿病以外の病気から発症した可能性も視野に入れて、専門的な検査を行います。
糖尿病対策にはインスリンの働きが大切になってきます。
ポリフェノールの一種には、インスリンの分泌を促す、インスリンの効き目を高める作用がみつかっています。
詳しくは「インスリンの効き目向上。空腹時と食後血糖値をまとめて下げる」の記事をご覧ください。
糖尿病以外の病気を除外するための検査
手がしびれる原因が症状だけで明確にわからない場合は、以下のような検査を用いて、病気を絞っていきます。
- 血液検査:糖尿病やビタミンの欠乏などを確認する
- ABI(足関節上腕血圧比):血管の細さを測って、血管に異常がないか確認する
- CT、MRI:体内の状態を写して、神経の圧迫や脳血管の状態を確認する
- DPNチェッカー、筋電図・神経伝導速度検査:神経障害を測定する
血液検査は糖尿病の判定にも用いられますが、その他の病気も血液中の状態から判定できる場合があります。
糖尿病か否かを判定するための検査
糖尿病の詳しい検査を受けていない場合は、糖尿病の進行度がどの程度であるか、専門的な検査で判定されます。
糖尿病の検査は、主に以下の3種類が行われます。
- 血液検査:血糖値や血液中の糖質含有量を表すヘモグロビンA1cが、糖尿病の基準値を超えていないか確認する
- 尿検査:糖尿病の場合は余分なブドウ糖やタンパク質が尿として多く排出されるため、尿中のブドウ糖やタンパク質の量に異常がないか確認する
- 抗体検査:1型糖尿病の疑いがある場合は、免疫異常の原因となる抗体の有無を確認する
基本は血液検査と尿検査で判断されますが、健康診断などで行われる検査だけでは糖尿病の進行を正確に把握できません。
簡易的な検査で糖尿病の疑いがあると判断された場合は、糖尿病専用の検査を受けましょう。
一方で、抗体検査は既に糖尿病と診断された患者に対して、1型糖尿病か判断するために行われます。
検査結果から完全な糖尿病か、糖尿病の疑いがあるに当てはまると、糖尿病に対する治療に移ります。
糖尿病に対する治療は食事と運動療法が中心になる
糖尿病と診断された場合、以下のような治療が施されます。
- 食事療法:糖質や肥満の原因になる脂質を制限しつつ、バランスの良い食生活ができるような指導を行う
- 運動療法:インスリンの働きを活発にするため、適度な有酸素運動を提案する
- 薬物療法:糖尿病に関してはインスリンの分泌や尿量を調節する薬、糖尿病神経障害に関してはプレガバリンやデュロキセチンの痛み止めを症状に合わせて処方する
- 注射:1型糖尿病に該当する人、もしくは薬物療法で改善できなかった人に注射でインスリンを補う
食事と運動療法はしびれの元になる糖尿病に対する治療であり、インスリンの働きが正常に戻れば、糖尿病神経障害の症状も緩和されます。
糖尿病神経障害は軽度であれば食事や運動のみでも改善が可能です。
有酸素運動はウォーキングやジョギングが推奨されますが、運動の内容以上に、継続的な運動が重要です。
薬物療法は糖尿病神経障害によるしびれの症状が顕著に現れている患者に対して、痛み止めを中心に処方されます。
一方で、インスリンの分泌についてはなるべく食事や運動から改善を目指すため、最初は薬が処方されません。
手がしびれる原因が糖尿病の場合は早めに検査や治療を受ける
手のしびれはさまざまな病気が原因で起こり得るため、治療を行うには病気を判断する必要があります。
糖尿病神経障害は痛みなどの感覚の異常が多く、手だけでなく、足も含めてしびれが出る場合が多くなります。
自分で症状をうまく説明できない場合は、複数の検査から原因を探れるため、病院で診察や検査を受けましょう。
糖尿病の進行が初期段階であれば、食事や運動によって手がしびれる症状も改善する場合があります。
早期の発見が症状の改善につながるため、手のしびれが気になる場合は早めに医師の診断を仰ぎましょう。
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