健康診断の時期になると、血糖値について要経過観察などの結果が返ってくる人もいるのではないでしょうか。
食後の血糖値を改善したくても改善の方法がわからない人や、どんな食生活をしたら血糖を適正に保てるのか知りたい人も多いようです。
ここでは、血糖値について正常範囲や食後の血糖値を適正に保つための生活習慣も踏まえてひとつずつ解説していきます。
- 血糖値の種類や正常値
- 血糖値を調整する仕組み
- 食後血糖を適正に保つための生活習慣
血糖値の種類や正常値そして食後血糖が乱高下する理由がわかると糖尿病予防につながる
血糖値は、血液中にあるグルコース(ブドウ糖)の濃度を指す言葉です。
検査をするにあたって空腹の状態で測定した血糖値を空腹時血糖、食事を普通に摂取した状態で測定した血糖値を随時血糖といいます。
そのほかにも健康診断などでは、HbA1c(ヘモグロビンA1c)など血糖に関してさまざまな項目の検査がおこなわれているのです。
血糖値が年々気になりだしてきた人は、なぜ血糖値が上がってしまうのかも気になるところではないでしょうか。
これらの検査項目が糖尿病などの疾患とどのように関係し、どのような意味を持つのかといった内容について解説していきます。
検診で主に測定されている血糖値の種類
人間ドックや健康診断において、検査項目に指定されている血糖値の種類を以下の表にまとめました。
検査項目 | 略称 | 正常値(基準値) |
---|---|---|
空腹時血糖 | BS(Glu) | 0~99 mg/dL |
随時血糖 | BS(Glu) | 140 mg/dL以下 |
糖化ヘモグロビン | HbA1c | 4.7~5.5% |
空腹時血糖
空腹時血糖は、10時間以上食事を摂取せずに測定した血糖値の値を指します。
血糖値は前述したように血液中に含まれるブドウ糖の濃度を意味しますが、常に一定の数値を保つわけではなく食事の前後や食事内容で大きく変化します。
人間の生活するサイクルの中で、食事の影響を受けず比較的安定した血糖の数値を反映するのが空腹時血糖です。
健康診断では10時間以上絶食したうえで検査するため、検査項目には空腹時血糖として反映されます。
空腹時血糖値が正常範囲でも、食後に血糖値スパイクを起こしているケースもあります。
特に食後血糖値は健康診断や病院での測定では気付きにくいことが多いので普段から血糖値の範囲を知っておくことはとても大切です。
また、血糖値を急上昇させない食事成分などを知っておくと普段の健康管理にも役立つでしょう。
知っておきたい血糖値を抑制する食品や成分
随時血糖
随時血糖は、10時間以上の絶食をせず通常の食生活を送ったうえで測定する血糖の値です。
随時血糖を測定する場合は最終食事摂取時間や食事の内容は問わず、検査で示された数値がそのまま結果として正常なのか異常なのか判定されます。
随時血糖は食事の影響を受けていたとしても200mg/dLを超えると糖尿病型と診断されてしまうため、初回の場合は再検査を行うケースが多いです。
再検査をしても随時血糖200mg/dLであった場合は、糖代謝が正常に機能しているかどうか詳しい検査をおこないます。
糖化ヘモグロビン
糖化ヘモグロビンは、血液中のヘモグロビンというタンパク質にグルコースが結合したものです。
過去1〜2ヶ月の血糖値の平均的な数値を反映するもので、血液中のヘモグロビン全体に対してどの程度の糖が結合しているのかという割合を示します。
血糖値との違いは時間や食事の影響を比較的受けない点が挙げられます。
糖化ヘモグロビンは血糖値が高い時間が長ければ長いほど数値が大きくなるため、過去1〜2ヶ月という長期的な期間での血糖値を評価したいときに用いられる指標です。
血糖値は糖質といくつかのホルモンの働きによって調節される
糖質の働き
人間が生きていくために必要な栄養は食事によって得られ、主に腸から吸収されていきます。
たくさんの栄養素のなかで、生命維持のために重要な働きをするのが糖質です。
糖質のほとんどは食事や飲み物から得ていますが、食事を摂取しないときは肝臓で糖質が作られ血液と一緒に体内のあらゆる臓器に運ばれます。
インスリンの働き
インスリンは、各臓器の細胞に糖を取り込ませる働きをするホルモンです。
インスリンによって血管から各臓器の細胞内にインスリンが取り込まれるため、血液中の糖の濃度が下げられます。
糖は常に血液中の中にある程度存在し、食事によって一時的に血液中の糖は増えます。
しかしインスリンの作用で常に身体の細胞の中に取り込まれているため、血糖は一定の濃度で保たれているのです。
血糖値を上げる仕組み
血糖値は、食事摂取のタイミングとホルモンの働きによって上昇します。
食事摂取による血糖の上昇具合は、どんな食材を食べたかによって変化します。
食後血糖が比較的高くなる食べ物として挙げられるものは、パンやご飯など糖質を多く含む炭水化物です。
そのため、食事前や空腹時の血糖は低いのです。
一方食事だけで血糖値を調整するのは不可能なため、体内では血糖値のバランスを保つために血糖値を上げるホルモンがあります。
血糖が下がりすぎないようにすい臓からグルカゴンというホルモンが分泌され、肝臓でグリコーゲンとして蓄えられた糖を血液中に放出させて血糖値を上げます。
上記のように体内では血糖が下がりすぎないよう、食事とグルカゴンによって血糖が調節されています。
血糖値を下げる仕組み
血糖値は、運動やホルモンの働きによって低下します。
運動には有酸素運動と無酸素運動がありますが、有酸素運動は筋肉が動くため全身への血流が促進される運動です。
筋肉の血流が増えると、血液とともに酸素とブドウ糖が筋肉に届けられます。
運動の他にも血糖を調整するホルモンとして膵臓から分泌されるインスリン、インスリンを分泌させるホルモンとして小腸から分泌されるインクレチンがあります。
食事によってグルコースが小腸から吸収されると、インクレチンがインスリンを分泌させようとすい臓にはたらきかけます。
するとすい臓のランゲルハンス細胞からインスリンが分泌され、上昇した血糖値が元に戻るのです。
上記のような働きが、体内で血糖値を正常に保つための仕組みです。
血糖値を下げるにはインスリンの働きが大切になってきます。
ポリフェノールの一種には、インスリンの分泌を促す、インスリンの効き目を高める作用がみつかっています。
詳しくは「インスリンの効き目向上。空腹時と食後血糖値をまとめて下げる」の記事をご覧ください。
食事の方法や日々の運動を習慣づけて食後の高血糖を予防する
糖尿病の人もそうでない人も年齢とともに血糖値を指摘されるようになり、食後の血糖値が気になりはじめる人も少なくありません。
糖尿病の人は、特に食後の血糖値が容易に上がってしまうのです。
糖代謝に異常がない人の場合、食後一時的に血糖が上昇しても2時間すると食後血糖は140mg/dLまで落ち着くといわれます。
しかし糖尿病になるとインスリンの分泌などに異常がでてくるため、時間がたっても食後の血糖が下がりません。
食後の高血糖は、動脈硬化や脳血管疾患といった重大な合併症を引き起こすリスクが潜在しています。
食後の高血糖を防ぐため、心がけたい生活習慣を3つ紹介します。
1.食事の取り方を工夫する
食後に血糖値が急上昇すると、インスリンも大量に分泌されて血液中の糖分が速やかに減っていきます。
血液中の糖分が急に減少した結果、空腹感を感じてしまうため糖尿病のリスクが上がってしまいます。
そうならないためには、食べ方の工夫が必要です。
食べる順番の工夫
食事のときは糖質の含有量が少ない野菜や肉、魚などのタンパク質から食べ始めるのがよいでしょう。
特に野菜は炭水化物よりも食物繊維を豊富に含むため、食べ物の消化吸収を穏やかにし血糖の急上昇を防ぐ働きがあります。
さらに野菜や汁物によって空腹感がある程度抑えられ、その後の食欲が抑えられるため炭水化物の摂取量も少量で済むのです。
よく噛んでゆっくり食べる
食事の時は、時間をかけてゆっくりよく噛んで食べるのがポイントです。
噛む回数が多いとヒスタミンやセロトニンなどの満腹中枢を刺激する脳内物質、レプチンといった食欲抑制ホルモンが分泌されます。
満腹中枢が刺激されたり食欲抑制ホルモンが分泌されたりすると、適度な食事量で満腹感が得られます。
バランス良く食事を取る
糖質を制限すると高血糖が抑えられるのではという理由から、極端に糖質をさけた食事摂取をするケースがあります。
しかし極端な糖質制限は、インスリンの分泌を不安定化するため糖尿病のリスクとなる可能性もあります。
極端な糖質制限ではなく、野菜や果物はもちろん炭水化物といった栄養バランスを考えた食事メニューを摂取するのが望ましいです。
自炊せず外食を利用する場合は野菜を多く含む定食メニューを、自炊する場合は食事バランスガイドを活用するとよいでしょう。
2.運動を習慣づける
前述のとおり運動のなかでも有酸素運動は、血液中の血糖を減らす作用に関与するため食後の高血糖を防ぎます。
運動によって得られる効果を、以下のようにまとめました。
- 体内の血行を促進させ酸素や糖の消費量を高める
- 筋肉の細胞においてインスリンの働きを活発にする
- 血管の老化や動脈硬化を防ぐ
- 肥満を解消し筋力を増強させる
上記のような効果は食後の高血糖を防ぎ糖尿病を予防するだけでなく、老化による筋力の低下や肥満による生活習慣病の発症を防ぐ効果もあるのです。
特に食後は血糖が上昇する体内環境であるため、食後に数分間の休息を取ったのち、散歩など身体への負担が少ない運動を30分程度実施するとよいでしょう。
体調が悪い日などは無理におこなわず、適度な疲労感を目安とした運動からはじめるのがおすすめです。
自分の年齢や生活リズム体重に見合った運動量や方法で、1日30分から1時間を目安に運動する習慣をつけるのがポイントとなります。
どのような方法においても無理のない方法で継続するのが大切
毎日仕事で忙しく自炊がままならないという人や持病で食事内容が決まっているなど生活背景には個人差があります。
食後の血糖を下げるために前述したような方法を生活習慣のなかに組み込むのは理想的ですが、なかなか難しいという人も少なくありません。
日々忙しく過ごしている人は、休日にちょっとした運動をしたり外食の内容を見直したりするところから始めてみるのがおすすめです。
持病で継続的に医師の治療を受けているという人は、自分自身の生活習慣と不安な点について医師や看護師に相談しましょう。
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