厚生労働省による平成28年の国民健康栄養調査によると、糖尿病にかかっている人の数は約1,000万人です。
そのうち2型糖尿病の割合は約9割であり、一般的に糖尿病というと2型糖尿病を指します。
糖尿病は完治が難しく、進行するとさまざまな合併症を発症させる可能性が高くなります。
糖尿病の悪化と合併症の発症を防ぐためには、早期発見と適切な血糖コントロールが重要です。
- 2型糖尿病とは
- 2型糖尿病の治療方法
- 2型糖尿病の合併症
2型糖尿病の基本的な治療法や合併症の種類について解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
2型糖尿病とは
2型糖尿病は、インスリンが分泌されにくい、またはインスリンが効きにくくなるため血糖値が高くなる病気です。
血糖値が高い状態が長く続くと、血管内が傷つき血管障害が起こります。
血管障害は糖尿病の合併症を発症しやすくするため、早期発見と血糖コントロールの改善が必要です。
食後高血糖を放置すると、血管障害を進行させ糖尿病の発症リスクも高めます。
糖尿病は、早期発見が重要です。
ここでは2型糖尿病の原因や種類、隠れ糖尿病について解説します。
2型糖尿病の原因
2型糖尿病の原因には、遺伝的な影響と生活習慣が関係しています。
遺伝的に糖尿病の因子をもった人が生活習慣を悪化させると、2型糖尿病の発症リスクを高めます。
不規則な食事や喫煙、睡眠不足、ストレスは血糖値を上げてしまいがちな生活習慣です。
加齢に伴ってインスリンの分泌が低下するため、多くは中高年で発症します。
健康診断などで血糖値が高めと診断されても改善しないで放置した結果、発症する例も少なくありません。
家族に糖尿病の人がいる場合や肥満が気になる人は、定期的な血糖値の検査で数値を把握しましょう。
2型糖尿病の症状
2型糖尿病は、発症の初期段階では症状が出にくい病気です。
数年かけてゆっくりと進行していくため、症状が現れたときにはすでに糖尿病にかかっている場合が多くあります。
2型糖尿病の典型的な症状は、以下の通りです。
- 喉の渇き
- 尿の回数が増える
- 体重が減る
- 疲れやすい
- 集中力がなくなる
糖尿病の症状がでたときは、早めに医療機関を受診する必要があります。
肥満が気になる人は、食後の状態も意識してください。
気になる場合は、医療機関で食後血糖値を調べましょう。
境界型といわれる隠れ糖尿病について
糖尿病は、検査結果によって数値のグループ分けがされます。
糖尿病の疑いがない場合を正常型、糖尿病を強く疑う場合を糖尿病型といいます。
境界型とは、正常型と糖尿病型の間の数値のことです。
糖尿病の境界型は、隠れ糖尿病とも呼ばれます。
食後高血糖による血管障害は、隠れ糖尿病の段階から進みはじめます。
正常型の範囲内であっても空腹時血糖値が100〜109mg/dLか、HbA1cが5.6〜5.9%の場合は、将来糖尿病を発症するリスクが高いとされています。
血糖値が正常型であっても、上記の値に該当していないか必ず確認しましょう。
糖尿病検査の基準値
空腹時血糖値 | HbA1c | 75g経口ブドウ糖負荷試験 | |
---|---|---|---|
正常型 | ~109mg/dL | ~5.9% | ~139mg/dL |
境界型 | 〜125mg/dL | 〜6.4% | 140〜199mg/dL |
糖尿病型 | 126mg/dL~ | 6.5%~ | 200mg/dL~ |
特に食後血糖値は健康診断や病院での測定では気付きにくいことが多いので普段から血糖値の範囲を知っておくことはとても大切です。
また、血糖値を急上昇させない食事成分などを知っておくと普段の健康管理にも役立つでしょう。
知っておきたい血糖値を抑制する食品や成分
2型糖尿病の治療方法
2型糖尿病の治療は、基本的に食事療法と運動療法によって行います。
治療の目的は、糖尿病と合併症の進行予防です。
糖尿病は完治が難しいため、治療によって血糖コントロールを行い、安定した血糖値を目指します。
血糖コントロールは、健康寿命を保つためにも大切です。
糖尿病の治療は効果を感じにくく、途中で治療をやめてしまう人も多くいますが、高血糖を放置すると糖尿病を進行させてしまいます。
糖尿病の人はもちろん、隠れ糖尿病の人も安定した血糖値を保つために治療を継続しましょう。
糖尿病の基本となる治療方法について、解説します。
食事療法
1日の中でも血糖値は食事や運動、ストレスによって変動し、特に影響を与えるのは食事です。
暴飲暴食や糖質の多い偏った食事は高血糖を起こす可能性が高いため、食事の取り方を改善して血糖値をコントロールします。
主な食事療法は、以下の通りです。
- 1日3食を摂る
- 栄養素をバランスよく摂取する
- ゆっくり噛んで食べる
- 不規則な時間帯を避け、規則的な時間に食事をする
2型糖尿病で多い食後高血糖を防ぐためには、食事の順番も大切です。
食物繊維の多い野菜やきのこなどから食べ始め、最後にご飯などの主食を食べると血糖値の急上昇を防げます。
食事療法は医療機関で栄養士の指導を受け、正しく行いましょう。
運動療法
運動療法にはインスリンの効きをよくする効果や、血糖値の上昇を抑える効果があります。
食後1〜3時間後に運動をすると、食後の血糖値上昇が改善されます。
肥満の人は中性脂肪を減らす効果が期待できるため、運動療法の継続が大切です。
運動には、酸素を取り込みながら全身の筋肉を使う有酸素運動が適しています。
有酸素運動と併用して週に2〜3回のレジスタンス運動を行うと、より効果的です。
水中運動は有酸素運動とレジスタンス運動の両方を行えるため、2型糖尿病治療に最適です。
運動療法は、合併症やその他の疾患の影響によってできない場合があるため、主治医に相談のうえで行うようにしましょう。
2型糖尿病の初期段階であれば、食事や運動治療に取り組むことで、すい臓の機能が回復する方もいらっしゃいます。
特に普段の食事で意識して摂取しておきたい食材や成分についてまとめていますので、こちらの記事も参考にしてください。
インスリンの働きを高める食材、成分
薬物療法
薬物療法は食事と運動療法を継続しても、血糖コントロールの改善ができない場合に行う治療法です。
薬物療法の種類には、飲み薬と注射薬による治療法があります。
2型糖尿病の飲み薬には以下のような作用があり、複数の薬を組み合わせたり注射薬と併用したりして使用します。
- インスリンの効きをよくする
- インスリンの分泌を促進させる
- 糖の吸収を調節する
- 糖を分解する酵素の働きを抑える
服用する飲み薬の種類は、体格や肥満度、インスリンの分泌量など一人一人の糖尿病の状態に合わせて決定します。
注射薬には、インスリンそのものを注射するインスリン製剤とインスリンの分泌を高める作用をもつ薬剤があります。
インスリン療法は、体内でインスリンを十分に分泌できなくなった場合、インスリン製剤によって体内にインスリンを補充する治療法です。
インスリンの分泌を高める作用をもつ薬剤をGLP-1受容体作動薬といい、2型糖尿病の治療に使用されます。
膵臓への負担を抑えて血糖値を下げる作用があり、単独の使用では低血糖のリスクが低い注射薬です。
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2型糖尿病の合併症
2型糖尿病は、血糖コントロールがうまくできていない状態が続いたり、治療をせずに糖尿病を放置したりすると合併症を発症しやすくなります。
全身の血管に影響を与える糖尿病では、体のあらゆる場所に合併症を発症します。
糖尿病で注意しなければならない合併症は、慢性合併症と急性合併症です。
合併症は、安定した血糖コントロールによって予防できる病気です。
気づいたときにすでに合併症になっていた場合は、早急に治療をしてさらなる進行を食い止める必要があります。
2型糖尿病で起こりえる合併症について、解説します。
三大合併症
三大合併症は、慢性合併症を代表する糖尿病特有の病気です。
初期症状がわかりにくい2型糖尿病では、三大合併症の症状が出てはじめて糖尿病に気がつく人が多くいます。
放置すると重篤な状態へ進行するため、早期発見が重要です。
三大合併症の種類
糖尿病網膜症 | 目の網膜にある、細い血管に障害が起きる病気。 進行すると視力低下や失明する場合がある。 自覚症状がほとんどないため、年に1度の眼底検査が必要。 |
---|---|
糖尿病性腎症 | 腎臓の細い血管が損傷して起こる病気。 腎臓が機能しなくなると、人工透析が必要になる。 初期症状がほとんどなく、定期的に尿検査でアルブミン数値を調べる必要がある。 |
糖尿病神経障害 | 全身の神経に影響を及ぼす合併症。 足先や指先に障害が起こりやすく、足の細胞が壊死すると広範囲の腐敗を防ぐために足を切断をする場合がある。 初期段階から手足のしびれなどの症状が出る。 |
動脈硬化による合併症
動脈硬化は、血糖コントロールの悪化によって高血糖が続いた場合に起こりやすくなる合併症で、心臓や脳などの太い血管に影響を及ぼします。
動脈硬化とは、本来は柔らかくてしなやかな血管が、硬く弾力を失った状態になることです。
動脈硬化によって血管の詰まりが起こると、血液の循環が悪くなります。
動脈硬化によって起こる合併症
冠動脈疾患 | 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に障害が起きる病気。 狭心症や心筋梗塞など。 定期的な心電図検査によって、予防ができる。 |
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脳血管障害 | 脳の血管が詰まったり、血管が破れたりして起こる病気。 脳梗塞や脳卒中など。 頭痛やめまいなど急に症状が出た場合、早急な治療を必要とする。 |
急性合併症
急性合併症とは、急激に症状が起こり早急な治療を必要とする合併症のことです。
治療が遅れると、意識障害や昏睡などの命にも関わる重篤な状態を起こす場合があります。
2型糖尿病で可能性の高い急性合併症
糖尿病性ケトアシドーシス | 体内でインスリンが不足し、著しく高血糖状態になる。 脂肪を分解してエネルギー源として利用する際に、血液中にケトン体が増加し発症する。 急激な症状が起こり、治療が遅れると意識障害を起こす。 2型糖尿病では、甘い飲み物などを大量に飲むと発症する場合がある。 |
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高浸透圧高血糖症候群 | 異常な高血糖状態によって起こる合併症。 極度の脱水によって、意識障害を起こす場合がある。 感染症や、糖尿病以外の病気などが原因で発症する。 2型糖尿病で起こりやすく、高齢者に多い。 |
低血糖 | 血糖値が異常に下がった状態。 冷や汗や手足のふるえが起こり、意識を失う場合もある。 糖尿病の薬や、運動などが原因で起こる。 低血糖が起こったときは、早急にブドウ糖の補給を行う。 |
2型糖尿病は食事と運動による治療を基本とし、糖尿病の進行と合併症の予防が大切
2型糖尿病は、インスリンが上手く機能しないため血糖値が下げられなくなる病気です。
遺伝や生活習慣の悪化が、主な原因となって発症します。
糖尿病の治療の基本は、食事と運動による治療です。
食事と運動で効果が得られない場合は、薬物療法による治療を行います。
2型糖尿病では、さまざまな合併症を起こします。
合併症は、治療が遅れると命にも関わる重篤な疾患であり、早期発見による進行予防と早急な治療が重要です。
2型糖尿病はうまく血糖値を安定させられなかったり治療を途中でやめたりすると、合併症を発症しやすくなります。
食事や運動を基本に日々の生活習慣を見直し、上手に血糖コントロールをして危険な合併症を予防しましょう。
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