ピロリ菌ってなに?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の中に生息する細菌で、胃の中の強い酸性環境(胃酸環境)でも生き延びることができる菌です。ピロリ菌に感染すると、胃や十二指腸に炎症や潰瘍を引き起こす可能性があることが知られています。ピロリ菌は、主に汚染された水や食べ物を通じて感染すると言われており、また家族内での感染が多いことも知られています。ピロリ菌の感染が疑われる場合には、早めに医師に相談することが大切となります。
ピロリ菌の感染メカニズム
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃に感染する菌であり、ピロリ菌独自の生存戦略によって胃や十二指腸の粘膜に定着し、胃炎、胃潰瘍や胃がんを引き起こします。
①胃酸の中和(ウレアーゼの生成)
ピロリ菌が胃の中で生き残るためには、胃酸環境へ適応する必要があります。通常ピロリ菌以外の菌は、胃酸があり生息することができません。一方で、ピロリ菌はウレアーゼを生成することで、胃酸を中和することができます。そのため、強酸性の胃内でもピロリ菌が生存することが可能となります。
②鞭毛を使った移動
胃の粘液層は、胃の内部を保護するバリアとして機能しています。しかし、ピロリ菌は鞭毛と呼ばれる運動器官を使って胃の粘液層を通り抜けることができます。そのため、ピロリ菌は胃の上皮細胞近くに移動することができます。上皮細胞に移動したピロリ菌は、胃粘膜に強固に定着することで、長期間胃の中で滞在することが可能となります。
ピロリ菌が炎症や潰瘍を引き起こすメカニズム
ピロリ菌は(ヘリコバクター・ピロリ)胃の上皮細胞に付着し、様々な物質を分泌することが知られています。その物質が胃の粘膜に炎症を引き起こし、最終的には胃潰瘍などの疾患を発症させることがあります。また、胃の炎症が続くことで胃がんのリスクも高まることも知られています。
①CagAタンパク質
ピロリ菌が持つCagAタンパク質は、Type IV分泌装置を通じて上皮細胞内にてがんタンパク質として機能します。CagAタンパク質によって細胞内のシグナルが混乱し、細胞の形態変化や異常な増殖を引き起こすことが知られています。
②VacA毒素
ピロリ菌が分泌するVacAは細胞内に空胞(小さな空洞)を形成し、正常な細胞機能を妨げることが知られています。また、細胞機能を阻害するだけではなく、ヒトのエネルギーの元を生成するミトコンドリアを障害してアポトーシス(細胞死)を誘導することも知られています。細胞機能の妨げや細胞死を誘導することで、胃の粘膜組織が損傷していきます。
③慢性的な炎症の誘発
ピロリ菌感染によって、胃の上皮細胞や免疫細胞が炎症を引き起こすサイトカインと言われる物質を放出することが知られています。この炎症性のサイトカインは、局所的に炎症を悪化させることが知られており、炎症が持続することで胃炎や潰瘍の原因となるほか、胃がんのリスクが高まると考えられています。
ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌の主な感染経路は経口感染(口を介した体内への侵入)と言われています。
ピロリ菌の感染する時期は胃の発達が未熟で胃酸分泌が弱い幼少期(5歳以下)です。
主なピロリ菌の感染経路
①経口感染
ピロリ菌は主に経口感染によって広がります。汚染された水や食べ物を摂取することで感染が起こることが一般的と言われています。
②人から人への感染
ピロリ菌の感染者との接触を通じてピロリ菌が伝染することがあります。
特に、感染者の唾液や口腔内の分泌物を介して感染(共有の食器やキスなど)・幼児への食べ物の口移しなどが多いと言われています。
ピロリ菌の感染のリスクが高い環境
ピロリ菌は、衛生状態が悪い地域や家庭内での感染が主と言われています。
①衛生状態が悪い地域
汚染された井戸水や未処理の排水など上水道が整備されていない地域や食品衛生が十分でない環境では、ピロリ菌の感染リスクが高まると言われています。
②家庭内感染
同じ家に住む人々の間で、生活習慣を通じて感染が拡大することがあります。
特に、ピロリ菌の感染は幼少期に起こることが多いとされており、ピロリ菌感染後、菌は適切な治療をしない限り、長期間胃内に定着することも知られています。
③その他の感染経路
汚染された医療器具によって、感染が報告されるケースもございます。しかし、医療器具は厳密に衛生管理を徹底されていることも多く、感染は非常にまれとなります。
日本と海外におけるピロリ菌感染状況
ピロリ菌の感染を防ぐためには、適切な衛生管理を行うことが重要となります。
例えば、清潔な水を飲む・食品を適切に洗浄や調理する・食器の共有を避ける・手洗いを徹底するなどが効果的と言われています。
そのため、ピロリ菌感染は、衛生環境が整っていない開発途上国で多いと言われており、先進国では低いと考えられています。日本では、衛生環境が整ってきたことで、近年感染率が低下していますが、中高年層ではピロリ菌に感染している方も多いと言われています。
ピロリ菌感染の主な症状
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染は多くの場合、無症状で進行します。しかし、長期間ピロリ菌感染が続くことで、胃や十二指腸の粘膜に炎症を引き起こし、様々な症状が現れることがあります。
①胃の痛みや胃の不快感
上腹部に鈍い痛みや不快感を感じることがあります。特に、空腹時や食後に症状が強くなることがあります。
②胸やけや吐き気
胃酸の逆流や胃の機能障害による胸やけや吐き気がみられることがあります。
③食欲不振
胃の不調が原因で、食欲が低下する場合があります。
④げっぷや胃の膨満感
消化不良に関連したげっぷや胃が張った感じが続くことがあります。
ピロリ菌に関するご相談
ピロリ菌に感染することで、胃や十二指腸に炎症や潰瘍を引き起こすことが知られています。また、ピロリ菌に感染している状態で治療をせずに放置すると胃がんのリスクが高まると言われています。そのため、早めに消化器内科専門医による診断が必要となります。ピロリ菌に関して些細なご不安がございましたら、四ツ谷駅から徒歩5分の四谷内科・内視鏡クリニックまでご遠慮なくご相談ください。